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2009年5月23日(土)

『菊50銭C12x121/2 未使用』
標記のアイテムは、あの当時は秘かにお持ちの方はいても、表面上は売買実績ゼロ、A先生も欲しいけどお持ちでないというパターンでの専門カタログの評価だったと思います。でも私としては、他の誰にも知られずに、何故か確信的にそこにあることは知っていて、絶対に落とせると思ってました。情報でも評価でも、取り扱うジャンルとしては菊あたりは結構自信が有ったのです。
ウエールズ=カーディフのWesternStampAuction、知る人ぞ知るレベルのオークションハウスです。何人かのブローカー的な日本人にとっては罪作りな、毎回連続して長~いディスクライブでのJapanの「コレクション」が出てました。このオークションハウスは最低値を指定しても不落の場合の5%のペナルティーを科さない、出品者にとっては有難い、応札者のとっては面白みの少ないやり方をしてました。長い目で見れば、オークションハウスとしては、このマナーは絶対に損するし、いずれは廃れるのですが。このやり方を認めるのは、当時のイギリスでは他にWarwickとGibbonsがそうでした。だから、この3社には、かのR.& S. S・・・・が腕によりを掛けて、売るために作った作品が毎回出ていたのです。もっとも、ここらの事情がはっきり分かったのは暫く先になってのことですが。
この時の少し後のロンドンのH.R.HarmerでのウッドワードのPostalForgeryを貼ったカバーの落札ちが、根回し、調整、談合一切無しのガチンコのビッドで、ほんの数百ポンド(下のほう)=スピロの偽物のシートよりも安かった・・事で分かるように、外国のオークションでは「菊」をまともに評価している人は皆無でした。しかも、50銭の目打は18完の一種として、完全に隠れていたのです。私の取り扱い品目はこの当時でもゼネラルなので、カタログをべースにはせずに、珍目打への評価は少なくとも日専++で平気に飛び込んでました。しかも、カーディフはウエールズ、ロンドンから数時間は掛かるのです。
この当時は、エージェントも使わずに、ただ単純にメールビッドをしてました。でも結構成果は上がっていて、Findでの掘り出しは極当たり前の如く、無競争のあっけの無い数字で落ちてました。だから当然、この50銭C12x121/2も幾らで買うかでなく、オークションの場に始めて売り物として提示したら、誰が幾らで買うのだろうか・・、確実に欲しがるであろう、A先生に誰がぶつかるのかが関心事でした 。
今と違ってビッドの結果は知れるのは、インボイスが郵便で来るのを待つしか有りません・・・。そしてこのロットに対する数字の記載はなかったのでした。暫くして、風の便りが聞こえて来て、当時有った銀座のサンフィラの店頭に、50銭C12x121/2の未使用が並んでいた。値段は・・・、一瞬で消えた・・とのことでした。問わず語りの情報では、キタゾノ君が、日本への帰国の前日に、たまたま「ロンドン」で開催されたWesternのセールに出て、そこでメールビッドと強烈に競って買ったロットの一枚だということです。実際、Westernがロンドンでセールをやるなんてことは有り得ないケースなのですが。普段の通りにウェールズでやっていれば、単なる未使用セットの値段で私の手元に来たはずなのです。切手に対する相性が有って、50銭のC12x121/2未使用には未だに縁がないのです。勿論掘り出し前提ですが、他額面は一揃い、多分2セットは只で手にしているはずですが、50銭に関しては最初の強烈な経験がずっと邪魔をしてくれるのです。
このオークションハウスでは、この直ぐ後、多分次回か次々回のセールに、葉書の書留年号2字AIKOKUMARUが出て、こちらはきっちり買えました。プライベートで収めた相手は既に逝り、現品はご健在な時点で引き継いでくれる方に渡ってます。50銭は時を経ずして、サンフィラのフロアセールにでて、A先生が大願成就、菊のC12x121/2を未使用で完集され、めでたく日専の評価も大いに改正されました。その後も私は掘り出しの経験はないのですが、プライベートの取引や、オークションへの他の方の出品物としては4~5回は扱ってます。世の中に結構な枚数は有るのですが、まだ欲しくてウエーティングリストが長いので、何れは掘り出し記録に載せられると思ってます。単なる記憶上の拘り以上の意味はないのですが、これだけ1枚抜けはシャクですから。
因みに、このWestern、その後の20数年の取引で、実際に買ったのはほんの数回、というよりも欲しい物が出たのが一度だけ、改色1銭ブッチの未使用が数十枚の桜切手のリーフに混じっていたときだけ。ただこの時は写真版に載ったので、セールへのビッドとしてはちょっと別のパターンになったのですが。そして時を経て去年のこと、P.A.Wildeから手紙が来て、WesternStampAuctionは消えました。
次回は大白25銭L12 未使用、面妖なメールセール、New Yorkの英領ギアナ1Cにも繋がる会社での出来事でし

2009年5月21日(木)

『ノスタルジー』
最近イギリスから届いた手紙を開いたら、オークションの廃業連絡、支払い済みのカタログ購読料の返金のインフォメーションでした。「Bonhams」というよりも、サザビー、クリスティーに続くステータスのオークション企業、Phillipsの切手部門のオークション業務を行っていた会社です。私にすれば、Phillipsの名前でオークションをやっていた時代のNew Bond の古~い建物、迷路状態の建物で、一人では切手部門には辿り着けないオフィースに強い印象が有るのです。オークションとしては、Japanの大コレクションの売り立てや、記憶に鮮明な大きい掘り出しはないのですが、カタログの編集方針が、全世界のコレクション・アキュムレーションをトップに並べて、しかも参考値の高い順にロッティングをしていて何時も同じスタイルの編集手法の印象が強いのです。押しなべて値段の設定は割安で、売りきりが前提なので、ここに出ている全世界のぶ厚いアルバムを買って、ページをちぎって国別に売れば結構商売になるので、イギリスを中心に世界中のゼネラルディーラーや、中小のオークションハウスの効率の良い仕入れのソースになってました。
売りの需要は引続き幾らでも有るはずなのに、買いの意欲が追いつかずに、ビジネスとして成り立たないとしたならば、業界にとってはいい話では有りません。
イギリスの切手部門のクラシカルな4大オークションハウスといえば、ギボンズ、ハーマー、ロブソン・ロー、フィリップスで誰も異論を唱えません。でもギボンズは出版・アルバムは残っても、オークションはWebが主体です。去年の旧小20銭貼りカバーの出品など奇跡的な出来事でした。ハーマーは経営がイタリア人だし、ロブソン・ローも2度名前が変わってます。そして最後がフィリプス・・・。
Bonhams=Phillipsに限らず、最近はオークショニアの永久的な廃業の連絡を貰うことが多いのです。私の経験を踏まえて、思い出深い経験を幾つか書いて見ましょうか。買った物、買えなかったものを含めて、殆どどこにも書いてないはずのお話です。
今回の弊社のフロアに出ている目玉が旧小30銭の11L、チューリッヒでのRobson Loweでのアレン大佐のコレクションに有ったものです。私はまだ、動いてなく、カタログをライブでは見ていません。でも、当時の新進気鋭のコレクターがメールビッドで落として、どこにも出さずに秘かに持っていて、直近にE-bayでもっといい状態の物を手に入れて、ダブったからと出品してくれたのです。何人かに聞きましたが、この直近の掘り出しに気づいた人はいないようです。
私の経験でも、30銭11Lは多分7~8枚は扱ってます。その内の3回は海外での掘り出しです。まだ直接外国に行く前に、メールで落としたロットに入っていたことも有るのです。確か1980年代の前半、最初に11Lを手にした頃、偶然にも他の目打の珍品の入手のチャンスが来たのです。目打の珍品で、当時はまだ表で売られた記録がなかったもの。菊50銭C12x121/2 未使用、大白25銭L12未使用、小判・菊・田沢を3枚オークションの表紙に並べて売ろうかなと思ったのです。1枚は既に手元にあり、後の2点も手を伸ばせば届く所に有りました。
『菊50銭・・・に続く・・・』

2009年5月12日(火)

『スタンプショー=ヒロシマ‘09 ドラフト詳細』
5月16日―17日に開催されます、標記催事に本年も弊社は出店いたします。一般販売品としては、小判切手の未使用・使用済みの新規商品を大量に増やしました。それ以外のジャンルでもカバー・単片類でOPP入りの新商品を1万点以上追加しております。
特別企画として、200ロットは「ドラフト制」で会場にお越しいただいた方なら、平等のチャンスでお求めいただけるように展示即売いたします。
初日=16日の10時~11時30分に、ご希望品に1点~何点でも投票していただき、第一位投票の方~から優先的にお求め頂きます。投票NOの若い札が優先になります。登録は10時~投票締め切りの11時30分を目途といたします。受付はご記名登録の後、抽選箱に「あ~ほの記号(30名分)++で各記号に1位~10位+の順位を明記した投票用紙」を入れてありますので、1回だけ引いて頂きます。ある品物にご希望のランクが同一順位の複数の投票が重なった場合のみは「あ>い>う・・・>ほ」の優先順位になりますが、通例は単純順位の若い投票が優先です。あ1位は全てに優先しますが、あ2位は、ほ1位に負けます。昨年の場合、あ1位と、い1位がかぶってしまい、い1位の方はご希望品が買えませんでした。上手な駆け引きで投票して下さい。
今回は特に、大量のU小判の未使用の即売の優先権を4ロットで出品しています。このロットに限り、複数の方にご覧いただけます。勿論若い投票をされた方がチョイスした後に2番手~3番手・・の方に見ていただきます。1ロットを15分程度の考えております。
商品のお渡しは、11時30分に投票を締め切って、落札者確定の発表は13時を予定しております。出来れば当日にお引取り下さい。何時もの通り、ジャパン・スタンプ商会の会員の方は代金後払いでお渡しします。次回に一部の対商品をUpいたします。

2009年3月28日(土)

『非課税・無税・免税』

本年2月16日から輸出入に関しての通関手続きが変わり、輸出も輸入も20万円を超える物品を国際郵便で送るか受け取る場合は、全て通関手続きが必要になりました。概略を説明すれば、従来は賦課課税方式で税関が手続きをしていた物の内、20万を超える物は本人(実際は委任を受けた代理人)が手続きするように変わったのです。実務上は、輸入(納税)申告を必要とする可能性がある国際郵便物=価格が20万円を超える物が届けば、税関でなく、郵便事業会社からその旨の連絡が来るのです。まず最初にやることは、迷わずに代理人選任の委任状をFaxで送ること。自動継続で半永久に有効です。同時に荷物の説明も事業会社の該当部署にFaxですれば良いのです。

内容物に関しての説明の仕方は、以前の税関や通関業者=乙仲さんにしていたのと同じです。違うのは書類を出して説明する相手が税関直接でなく、委任状を出した乙仲の郵便事業会社になるだけで、税額とかの実質面は変わっておりません。ただ、当局の周知が不十分な為、予備知識がない人にとっては、今までは無縁だった予想外の手紙の文面に戸惑われる方が増え、私に対してプロ・アマ問わず既に7名の方から手続きに関してのお問い合わせが来ております。その回答は極めてシンプルで、電話で空で返事ができるのですが、過度な心配をされる方も結構おられるのでここに簡潔にまとめておきましょう。硬直した法律用語を用いた堅苦しい法解釈でなく、実務に即して書いていきます。私の数十年の経験で、散々税関や乙仲と遣り合って、あくまで日本切手を中心とした郵便切手の輸入に関してですが、最も効率よく通関できる方法も把握できております。ただ、私自身が実践的に実務で用いる判断を主としますので、厳格に分析すれば一部法解釈では不適当な表現になる場合もあるのですが、それは聞き流しておいて下さい。例えば、新小判1円の未使用は郵便法上は1円として使えるものの、ここではその判断を用いてはおりません。それを強弁することに意味は無く、話を複雑にするだけなので、如何に楽にかつ費用を掛けずに通関するかを論じます。

まず、本邦に郵便切手を輸入するに際して課税される可能性の有る税金は「関税」と「内国消費税=5%」の2種類ですが、日本切手に限定すれば、一切税金は掛かりません。ただ、税金が掛からないという同じ事実でも、法的には3種類に分かれるのです。「非課税・無税・免税」です。結論としては何れも税額はゼロですが、完全に意味は違います。

本邦に於いて郵便切手として通用する物は、有価証券であり、税番は49.07で資本の移動と同じく「非課税」です。この場合の有価証券の定義は、郵便法上の効力の解釈でなく、プレミアの付いてない時代の額割れ切手が該当します。貨物の全てが、これに該当するなら、税番を言う=未使用の新しい日本の切手です、で問題なく通関できます。時として額面合計を問われるのですが、これは後述します。郵便料金納付に供せない、使用済の日本切手及び外国切手の場合は、収集品・骨董品で、税番は97.04に変わります。この税番は、関税は「無税」=料率がゼロですが、内国消費税5%が掛かります。外国切手の場合、この消費税は税関がミスをしなければ、本来免れることは出来ませんので、申告の上支払って下さい。但し、日本切手の場合は、更なる最重要のファクターが有って、「日本」の使用済の場合は、関税定率法14条―10の、「本邦から輸出したのち、形状を変えずに再輸入した物品は無条件で免税にする」という規定があり、これで消費税も「免税」になるのです。このケースは知識に基づいて、強く主張しなければ結構揉めるし、海外のオークションハウスの場合、グリーンラベル上のdeclareおよびorigin=原産国を悪意がなくても「Japanese stamp only」と書いていないケースが多いのです。この申告が有れば、見落とす税関が悪いので、幾らでも強気で話せるし、かなりのケースで異議申し立ても効くのですが、リスクヘッジをする意味でも送り主に「Postage stamps ; origin Japan」の申告をするように要求して下さい。これをして、税金が課税された場合、クレームを付けるのですが、申告書に書いてない場合は、乙仲さんの出来によっては、例えばUPSヤマトの場合など、かなりの上の立場の責任者でも、社のポリシーとして、小口の貨物などいちいち調べる程の料金を貰ってないので手間が掛かる仕事はしない、貨物の表面の情報を基にして、自己判断で通関して何が悪い・・等の暴言を吐く輩もいるのです。この考えには与しませんから、私は如何なるケースでも国内外を問わず、ヤマト運輸は使いません。

FedEXやDHLの場合は、一般的には現品のチェックもするし、慣れているせいも有って、証明書類さえ有れば手続きで間違うことは少ないのですが、貨物の特性で、同じ性質の同じ形状の商品の反復・継続でなく、1回毎にまちまちで複雑な内容の輸入なのでケースバイケースで対応せざるを得ないのです。送り主や乙仲はそれを想定してませんから、私でさえ、今までに2回は通関できずに差出人戻しになりました。前述した通り、日本切手の場合、どう転んでも税金は掛かりません。但しそのことと、正しい書類を出さずに済ませられるというのは別問題なのです。特に困るのは、明らかな過少申告です。こちらは口を酸っぱくして、Full declareで Fullinsurance の要求を出すのですが、守ってくれない場合が多いのです。額面100万円の未使用切手のインボイスで、US$100の申告では説明が通りません。税関は税額ゼロならそれでOKですが、頭の固い乙仲は、何故過小申告をするかのかを聞いてきます。確実に内容が把握出来ている場合は、事情を説明したり、先方に正しいインボイスを訂正で出させるのも可能なのですが、オークションの出品物を始めての相手が送ってきた場合などは、何が入っているか全く予想も付かず、かなりのトラブルの可能性も有るのです。大阪税関の外郵出張所が大阪中央郵便局に有った時は何度も直接出向いて、税関職員立会いで開封確認ができましたが、関空や成田ではそれも出来ません。それでも、郵便ルートで来る場合は、従来の場合、説明をする相手が、正に「税関」其の物なので話がすんなり通ったのです。ところが、乙仲通しの場合は、FedEXでもどこでも、お上の名前を使って自分でなく、「税関がこう言っている・・・」の一点張りで、インベントリーリストの提示や、詳細な切手の枚数の確認を要求してくることも有るのです。税関が書式を整えろと言っている、それをそのまま伝言しただけだというのが乙仲の言い分ですが、これは100%嘘で、税関内部の職員に聞いたところ、税関はその種の要求は絶対にしない。密輸や脱税の可能性がなければ、すんなり通すのが仕事だからという返事です。このケースの場合、近ければ自分で行って説明できるのですが、それが無理ならば形式上は相手に理があるので、乙仲と遣り合って喧嘩をしても無駄なので、私の場合は専門知識のある第三者の「相談官」を使うのです。全ての税関に必ず一人います。そして確実に話は聞いてくれるのです。税関と税額で揉めるケースはゼロで、あとは書類が整っているかだけ、それも税関の名を騙った乙仲が無意味な要求を出しているケースをクリアするのに頼むのです。5回はお世話になってます。相談官とは連絡が取れれば冷静な会話が成立するので困ったときには是非使って見て下さい。乙仲では相談官の存在自体を秘匿し、連絡先を知らないと嘘をついてまで教えない場合が有りますが、直接税関に聞けば分かります。

細かいことを言えば、スコットアルバムのJapanのコレクションの場合、琉球や満州、南方などが1割位は混じっていると思しき場合など、印刷が日本だからとか、かつて=当時は日本領だったから日本製だと、理屈で強弁するよりも、幾許かの日本以外の外国切手も有ります、その部分は消費税を払いますの方がすんなり行くかも知れません。案分比例での正確な評価など誰も出来ないので、阿吽の呼吸でやるしかないのです。私の場合は、消費税が本則課税なので、払っても払わなくても確定申告で精算になるので、何時払うかだけの差しかないのです。ただ、簡易課税の人や、消費税の申告義務のない人の場合は、払うと損、払わなければラッキーなので努力のし甲斐が有るでしょう。

今回の制度の変更の場合、親切この上ない郵便事業会社が一切無料で通関手続きをしてくれるのです。これは使わない手はないのです。ただ、制度が始まって慣れてないし、今だけのイニシャルな手続きもあるし、結構手間取っているようですが、将来的には慣れてくるし貨物ベースの乙仲に説明するよりは楽だろうと思います。切手の場合、税番の49類と97類、関税定率14条・・を滑らかに説明できれば事はスムーズに進むのです。このケースは知識をひけらかして何らのマイナスにはなりません。

次回もこの関連ですが、輸出に使うEMSの裏話を少ししましょうか。国際郵便約款を熟読して、ネットを使えば効率よくこのサービスを利用出来るのです。

2009年2月25日(水)

『追加情報』

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今回のセールのLot3093に関し、当コラムに記事を書いたところ、4名の方から貴重な情報を頂いたので、ここに訂正記事を掲載いたします。
まず、結論的にはこのマテリアルの正しい記載は、「菊10銭8枚貼書留11倍重量代金引換墺太利宛」になります。内訳は外信第1種基本料金10銭+割増し10倍=6x10銭・書留10銭であって、代引き書状の場合は郵便物の上に手数料等は貼付しません。
このポイントで、「りす」氏より、代引きは取り扱い料だから切手は貼らず、差出し時に窓口で現金で納めるのではという意見を貰いました。同氏が菊10銭2枚貼のドイツ宛の外信代引き書留を所持しており、また金子入り書状(内国通運会社等の外部に委託のため)、別段急便・別仕立(ある種の後納・後精算)等では同様に郵便物上には切手貼付という形式では納付しないケースもあるという指摘です。現象面ではその指摘は正しいのですが、代引きの場合は制度的に明記された、より説得力のある根拠があるのです。
「とど」氏からは、明治36年の郵便便覧から情報を見つけてきて、一般の書状の代引き料は4銭で均一、価格表記が必須で14銭、つまり8倍重量書留=10銭+42銭+10銭+4銭+14銭の80銭ではという指摘でした。郵便便覧の数項目を追いかけての解明で着眼点はいいのですが、噛み砕いた表現でないため、ちょっと解釈に迷う表現もあるのです。但し公文書なのでデータは正確に載ってます。この制度は、UPUの包括のサービスでなく、2国間で締結した条約で、かつ国際為替の手続きが可能な相手国に限られます。多分アメリカは無理ですし、欧州及び同属国に限られますが、勿論一覧表も出ています。ただ、料金の解明に使うと、プロ級のアナリストでも間違ってしまうこともあるのです。
東京の下見会で、「馬渕直人」氏がコピーをくれました。明治42年の坂野鉄次郎(東京郵便局長・法学士)著で、後藤新平(逓信大臣)が題字を書いた、「通信要録」=三省堂書店発行の該当のページです。他のケースでも、郵便規則や法令の原文は中々読みづらいのですが、「郵便読本」「郵便法概説」といった解説書なら随分わかりやすく説明してくれてます。「要録」の根拠は明治33年の旧郵便法及びその細則や付随する規定なのですが、見やすい表と、カナ雑じりでない文体で解説してくれています。
代引き料金は1899.9.1、1922.1.1、1938.5.1に変わっている(リス君の情報)ですが、今回の出品物の場合、最初の料金体系と手続きが適用されているはずです。別項に記事を載せますが、外信便で代引きに出来るのは、「書留通常郵便」「価格表記書状及び箱物」「小包郵便」です。価格表記は必須の併合要因でなく、差出人が望めば物品保証を付けられるという意味でしょう。ここでは代引きに絞りますが、書状と小包では大いに扱いが違います。通常郵便(書状)は代引き料は4銭=10サンチューム均一で取り立て金送付の為替料と共に差し引いて、差出人に為替金を証書で送付する。小包は代引き料は差出人より徴収し、為替料は要しない=代引き金額8円まで毎に8銭という高額のための別ルールでしょうか。小包に関しては、この表現以上の解説はないので、現金納付でなく切手を貼付しての支払いだと解釈しています。
この解説本で結構実務的な要素はわかるのですが、国際郵便での扱いなので、元になる条約文は万国郵便条約に拠るのです。「730」氏が送ってくれました。明治40年万国郵便条約第6号、同細則規則・逓信省告示第555条です。
詳細は別記で間違いはないのですが、「Remboursement」の文字は筆書き又は印刷で、名宛国の貨幣で代引き金額をローマ字及び数字で記載、訂正不可、差出人の住所氏名、差出地及び差出日付を均しくローマ字で記載・・・。等と定められています。特徴のある柿色の△ラベルは絶対の貼付義務ではないようです。
あくまで私の知る限りではありますが、このアイテム以外の外信代引きは、小包のフロントが2点、満州地区差出の封書が1点(切手脱落)、りす君の持ってるカバーあたりでしょうか。料金面もクリアできましたので今回の落札者及び人知れずにお持ちの方は是非ご利用下さい。

2009年2月7日(土)

『速達3点』

今回のPA57の出品物の内、オークション誌には書きたいけど書けないテーマのお話を続けます。共通ワードは「速達」ですが、郵便制度上の、早く送るという目的を超えて語れる要素が有るものです。

まずはLot2649 二二六事件が絡んだ「速達」です。

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カバーと葉書が各1点、評価的にはカバーの、2種の検閲関係印、裏の小型「戒厳令ニ依リ開緘」表に大型「戒厳司令部査閲済」が押されている。この例が一般的というか、他に有るのか否かは知りません。見覚えがない使用例なので多分珍しいし、出品者の評価もこちらのウエートが重いのでしょう。でも、私的な好みでは、葉書の速達=濁点楠公の新改鹿8銭貼の東京の市内速達の文面に興味を引かれます。「拝啓 明二八・九日も引続き休業致し候に付御通知申上候 敬具」 二月二七日 東京府立第一中学校。戒厳令に拠る中学校の休校通知です。27日に出してその日に配達されてます。速達ここに在りの証明です。

検閲もなければ、文中に、叛乱云々の記載はなくても、正に二二六の速達そのもの、連れは、相当数出てるはずなので、この文面を手がかりに上手に探せば連れが見つかるかも知れないのです。

Lot3067 紫雲丸事故の付箋つきカバー

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国鉄戦後五大事故というのがあって、1951年の「桜木町事故」、1954年の「洞爺丸事故」、

1955年の「紫雲丸事故」、1962年の「三河島事故」、1963年の「鶴見事故」、いずれも死者が3桁を超えてます。郵趣的に直に絡むのは、「○○の事故・・・」又はもう少し固有名詞の少ない説明での遅延の詫び状の付箋つきのマテリアルです。日本絡みで有名なのは、洞爺丸、木犀号墜落、イタリアでのフィリピン航空墜落、よど号乗っ取りが良く知られてますし、何れも弊社のセールで数回は扱っており、いつもそこそこの値段で売れてます。クールにランク付けすれば、値段=「人気」は洞爺丸>よど号>木犀号>イタリアの並びです。このテーマは、国際的にも認知されていて、広い意味では、飛行試行の事故飛行中止や、川支延着や差出人戻し等の、正常に配達されなかった郵便物も含まれます。

ローカルの雑誌に発表はされていて、垂涎の的となりながら、現物が競の場に出て来ていなかったのが、今回の「紫雲丸事故カバー」そのものです。高松郵便局の事故から4日目の付箋付の通信事務書留速達、中には銀行宛の書留便、事故の悲惨さは次元が違うのですが、郵便物の取り扱いとしては完璧な措置が講じられてます。セールでもホットな競りになるでしょう。

3点目はLot3363 通信事務の第2種速達 京都中央郵便局の特殊部差出

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文面が強烈に面白く、「本日青ポストに投函されました・・、速達には切手が貼ってありませんでしたので、便宜当局で立替えて・・、追ってお電話を・・・」です。最近とんと見かけない、速達専用の青ポストですが、昭和28年には郵政も制度としての速達には強烈な責任感で仕事をしていたのでしょうか。

ちょっと嫌味を言うならば、料金不足の速達郵便物に「便宜立替て切手を貼って速達の扱いをするべし」は、郵便法には有り得ない規定だし、郵便約款(或いは郵便規則)にもその定めはないはずです。ただ、個人の郵便局員が、勝手に出来る仕事ではないので、地方郵政局か、中央局レベルの通達では有ったのかも知れません。実際、数回前の弊社のセールには、速達料金不足の郵便物に、郵便局が貼り足して、便宜配達し中身を渡して、封筒のみを取り戻して、差出人から料金を徴収した例があり、その根拠の法令も、確か地方郵政局の通達で出ていたことが確認できた実例も有るのです。ただ、これは郵便法の概念でならNGなので全国に適用される制度にはならなかったのか、いつの間にか沙汰闇に消えたのです。今回のマテリアルも流れとしては同じでしょうか。私はこういう話は好きなので、結構高い評価をするのですが、残念ながら反応してくれる人は少ないのです。実際、どういう使い方をするかは難しく、単に持ってないから集めるというレベルの人ならば、ちょっと料理に困るでしょう。結果を楽しみに待ちましょうか。

2009年1月31日(土)

『外信代引カバー・完全状態』

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第57回フロア・49回メールオークション誌は2月12日に発送します。今回もまた時間ギリギリまで編集作業を引っ張りましたが、それでもまだまだ次回への積み残しが出ています。かっちりした記事は必要ないのですが、アキュムレーション的なアルバムやストックブックで頂いていた物は、掲載記事を書くまでに相当な作業量と集中力を要するのです。グレードの高いものを黒台紙に発行順に並べてしまえば、1日200ロット以上の相当なスピードで書けますが、その準備作業に手間がかかるのです。記事の有る無しは全く無関係ですし、元よりグレード的に出品に適しないものが混じっている場合はどうしても後回しになるのです。次回あたりから更に取捨選択を厳しくせねばならないでしょう。オークショニアに出来る作業量には限りが有ってその範囲で運営しないと業として成立しませんから。

さて、今回のセールにはかなりの書き甲斐の有るものが出ています。私の編集のポリシーは、事実を有るが儘に書くことですが、記事を見た人が果たして分かってくれているのかなと思う場合も有るのです。ただ、矢鱈と珍品とか、現存何点という表現は主義として使いません。それは主観に属するし、自分で把握できてない情報も数多くあるに違いないという自制心からなのです。オークショニアは、マテリアルを提供すれば良い訳で、そのアイテムへの評価は買った人の責任で表現してくれればいいのです。切手展への作品にユニークと書いて、間違ってもそれは所有者が責を負うべきことですから。

Lot3093 菊10銭8枚貼書留オーストリア宛は、随分と書ける要素があるのです。オークション誌レベルなら、5行のディスクライブで必要十分な情報を書けるのですが、ここで思うままに詳しく書いて見ましょうか。この記事を書くに当たって、何時もながら「片山七三雄・Florian Eichhorn」両氏の多大なるご協力を得たことを特記して先を続けます。

2006年の夏だったと思います。誰からのメールか忘れたのですが、E-bayで面白い物が出て、その落札者は弊社に何時も結構面白い出品物を送ってくれる人だという情報でした。この時点では、出品物としての具体的な話でなく、コレクションとして残すつもりみたいかなニュアンスでした。ただ、画像を見て、その希少性は即座に分かったので、詳細のデータを突き詰めて見たのです。このケースになると聞ける相手は前述の2人に限られます。

マテリアルの解説に移ります。「菊切手10銭8枚貼書留代引(Kr.11.25=45円)墺宛小早川商会発 紫櫛YOKOHAMA30.5.13 柿色△REMBOURMENTシール貼」

Rembourmentはフランス語で「代金引換」の意味を持ち、このラベルはUPUの情報誌1907.10.1にて紹介されています。外信の代引の制度は始まりは1899.9.1で確定ですが、終わりは多分1940年1月あたりと思われます。現在はその制度は有りません。この時の対象国は欧州の14カ国と更に16カ国かそれ以上の植民地(独・仏・伊・蘭・と在トルコとモロッコ局)であり、金額の表示は相手国の通貨で表示され、外国為替のレートが適用されます。代引き料は邦貨で8円迄毎で8銭です。

該当のカバーの場合80銭の内訳は、基本料金20グラムまでが10銭・3倍重量で15~50グラムまでの追加が6銭X2=12銭、書留料10銭、代引料が8銭X6=48銭=合計80銭でぴったりです。代引額がオーストリアKrで11.25、この時のレートは1Kr≒4円なので45円、40円~48円の範囲で48銭の料金になるのです。封筒が21X16センチなので35~50グラムまで、差出しが小早川商会なので、45円相当の未使用の郵便切手を送ったと推定できます。完璧に辻褄は合うのです。2年前の情報交換ではこれにてケリ、縁があれば出品してくれるかなとの思いでそのままになってました。

その後気をつけて見てましたが、これに類する物が発表された情報には接してません。ただ、アイホン君から貰った情報では、他にドイツ宛が2点有る、但し貼り合わせは菊10銭2枚の20銭だけ、代引きラベルは貼って金額の表示もあるが、料金分の切手は貼付なし、

その他に、切手脱落のカバーの情報もかつて聞いた覚えがあるのです。ただ、完全状態で、料金のきっちりクリアできるのは、今回の出品物が初めてかもしれません。

2年も間が開いて、取りあえずは縁がなかったかなと思ってましたが、年末に突然送られて来ました。E-bayでの落札値は、定かではないのですが、数字を聞いた時点で「良い買い物だな」との印象が残ってます。このアイテムに関しては、小早川の名前は何のマイナスにはなりませんし、きっちり評価できる人が何人かはいるでしょう。結果を楽しみに待ちましょう。私が現時点で知り得た情報はこれが全てです。さあ、3月8日のフロアで首尾よく落札できた幸運な方は如何なる表現でこのマテリアルを料理するでしょうか。

2008年11月11日(火)

『オークション誌発送しました』 

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本日夕刻、何時もの大阪支店の集荷扱いで、11月29-30日のフロアPA56・12月2日締め切りのメールMA48を国内はゆうメール、海外は航空便の印刷物(一部地域はEMS)にて合計1930名に発送致しました。順調なら、今週金曜日頃のお届けになる予定です。
今回は、オークション誌は3冊で900グラム弱の分厚い冊子で届きます。弊社のフロアは流石に11月に2回目ということも有り、何時もよりロット数は少なく2540ロット、カタログも薄目です。にも拘らずの、ぶ厚さは、今回はスペシャルゲストの第1回=創刊号のオークションカタログを同封しているからなのです。「スター☆オークション」、ハイグレードの日本の航空郵趣のコレクション、516ロットは全てカバー・葉書類です。売りたては縁有って、弊社のフロアセールの2日目の午後1時スタートで、場所は大阪駅前第三ビルにて開催です。土曜日は昼過ぎから下見可能です。
ここでは表紙をお見せします。弊社の会員様には自動的に同封でお届けしますが、それ以外の方で興味をお持ちの方は
auction@jipp.jp
へお問い合わせ下さい。

2008年10月8日(水)

『文献出品』  

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JAPEX特別フロアセール、PA55は昨日、郵便事業株式会社大阪支店の集荷で発送しました。現状では特に遅延の要因がありませんので今週中のお届けになる予定です。
私の方は、当然ながら11月末のセールの編集の真っ只中、物量ともに良い物が来ています。まだ1500ロットしか書けてなく、想定ノルマの1/3ですが、入稿日の10月30日にはギリギリに間に合わせることが出来るでしょう。目玉はさておいて、昨今の風潮がオークションの出品にも色濃く現れて来ています。売り物が非常に多いし、売ることを前提にした出品が増えてます。勿論、その方向に導くべくお誘いしているからなのですが、オークションでも、プライベートのお話でも、連続しての売り物が有るのです。売り手としては早い者勝ちみたいな雰囲気です。
今回の出品で目立ったのが「文献」、それも良質の人気のある(或いは有った)ものが5人位から来ています。最低値は一任か、指定があってもずいぶん安く付いてます。オークションに出てきて、売れるものは決まっていて、カタログや雑誌は対象外で単行本が主流になるのです。だから5人から来れば否応なく同じものがダブります。市田さんの大作シリーズ、沢さんの小判切手、ウッドワードの翻訳本、いずれも3組重なってしまいました。名鑑も2組です。ここらは全てが私に一任なら、統一した値段を付けられるのですが、指定ありの人がいて、矢鱈と安い設定でくるのです。墨六が5000円、これはないと思うのですが、オークションなのでそのままの値段で出しました。一般的に同じものが同じ回に出た場合、入札も不便でしょう。このケースは、メールセールに関しては、Orビッド、どちらかを希望の入札で受け付けます。フロアセールでは条件の設定が複雑になるのでこの便宜は図れません。またメールでも単純に機械的に処理しますので結果としては有利不利が出てもクレームは厳禁です。
豪華本や名鑑は、郵趣家は物持ちが良いというか、随分と歩留まりが高いのでマーケットに戻って来ることが多いのです。それをこなす新規の需要がなければ値段は当然弱含みます。いい本が買いやすくていい時代なのですが。ちょっとした別格が、ぺプローの手彫り切手シート写真集・117葉です。これだけはフロアに出しました。確か3人ぐらいから頼まれていて、相場も教えているので、いい値段まで競るでしょう。知る人ぞ知る、オークションの文献出品の目玉になっているものも出ています。水谷行秀作品集、久野の機能実験、行徳さんの昔の本=郵便の種別と使用例、春日部郵趣の発光特集、ここらは墨六よりも高いことが有るのです。皆さんよくご存知だから。序でなので文献を買う場合のちょっとしたヒントをあげましょう。弊社では絶対に大丈夫なのですが、市田さんの竜切手と青一で、買ってはいけないものが有るのです。当初の正規販売品は問題なしですが、その後の著者取りか、予備のもので、写真が付いてない=青一は別冊の写真本無しが出回っています。事情の詳細は書きませんが、今の出品者もオークショニアも知らないのでしょうが、買った人は抜けた部分の補充が利かずに役に立たない悲劇に見舞われるので十分注意してください。弊社の場合は、写真の有る無しを絶対に書きますが、即売でも知らない者同志の取引は危険なので十分注意してください。オークションでも即売でも、知っていて教えずに売るのは詐欺に等しいので責任ある人はやらないとは思いますが、最近はそのケースもチラホラ見えて来ています。
出品募集のギリギリにやって来たのが、ちょっとしたリーフに貼ったコレクション。スコットアルバムなので出所はアメリカでしょうか。解説も要りません。文句なしのラストロット、スーパー・ゼネラル・ブローカー=●君(イニシャルは書けません。怒られるので)、2番札になれるかな?