2010年5月19日(水)

『iPad』
数日前の新聞に、アメリカからEMSで送らせた、iPadが、受取人には封筒と外装だけで到着し、機械本体が抜かれていたというニュースが出ていました。EMSでは日本の場合、保険を掛けない場合でも、一般的には2万円は補償されます。ただ、郵便物自体は届いての、中身抜き取りなので、後のトラブルを避けるために、受け取った時点で開封せずに局員に提示するのが肝要です。局への持参は無用で、電話一本で課長代理さんか、総務主任さんが即座に来てくれるはずです。アメリカからのEMSの事故は、弊社でも水濡れの被害を受けたことがあり、航空機での水蒸気のせいということで、2万円の補償を受けました。高い保険を掛けていたり、より高額の補償となると、原則現品も戻されないし、中々大変な手続きになりますが、最低額の場合は普通はスムーズに通ります。
逆のケースも有るのです。ロシアから売り込みのメールが来て、値段を交渉して合意、先方からのオファーなので、当然商品は先に来ます。値段は異存は無い、ただ、どのように送金するかが問題なのです。この場合は、原則先方の希望通りにやりますが、この時はUS$のキャッシュがリクエストでした。当然航空書留で送ったのですが、封筒は届いたけれど、現金が入っていない、のクレームです。封筒が届けば、相手がロシアなら、事故調査も無理でしょう。イギリスですら書留亡失で調査請求をして最終の返事が来ず、最低額の補償になったことも有りました。ロシアのケースは、兎も角、その封筒を返送させましたが、変に開けた跡は全く無い、受取人が嘘を付いてなければ、正にキャッシュだけが見事に抜かれてしまったのです。結局この時は、2度払いで、再送金を銀行を通してしたのですが、銀行もT/Tの受け付けはしてくれるのですが、送金人による、リスクの同意、事故が起きても責任を取れない旨の通告を受けました。金額が大きければ、L/Cなり、商社を通すなりの手段も有るのですが、切手の商売ではそれは実際的では有りません。この時に買ったのは、支那字を中心の菊の消印のロット、CHEFOOのローラーとかの使える物も有りました。今度の広島の催事に出しますが、果たして2度払いの元がとれるのでしょうか。結構、面白いものを持っている相手なのですが、確実な送金手段が無く、一方的にこちらがリスクを負っては商売が続けられないのです。
海外相手となると、日本国内での取引では起こりえないトラブルが多発します。パナマにオークション誌を送ったのですが、航空便では1ヶ月で届きません。EMSは取り扱いが無く、FEDEXは3日で届くのですが、1万円以上のコストが掛かります。WEBでの情報のやり取りで、ビッドを受けるまでは出来るのですが、落札した場合の送品の手段がないのです。パナマ相手には、FEDEXはドキュメントしか受けません。郵便局も運が良ければ、その内着くでしょうのレベル。保険を掛けても、的確に補償されるとは限りません。実際問題、アマチュアの小規模ビジネスは無理なのです。 もう随分前のことになるのですが、郵政弘済会が東京海上火災とタイアップして、記録扱いの外郵に対して、通関の際の金額とは無関係で、差出人の申し出た金額に対して、1万円当たり60円の料率で保険を受けていたことが有ったのです。事故が起きたことが書類で確認できれば補償の対象になりました。亡失でなく、抜き取りとか、破損の場合は難しいのですが、郵便事故のリスクヘッジを引き受けてくれるという事実で一定の安心感が有りました。ただ、EMSの登場=1万円に対して@20円という保険料率が普及すれば勝負にならず、何時しかこのサービスは消えました。
弊社の場合は、イスラエルへ結構高額な送品があるのです。でも、彼の地の場合、切手の輸入には30%の関税が掛かります。税関への告知書に書けば、これがまともに取られます。受取人が同意すれば、幾ら税金を払うかは、こちらとしては関しないのですが、相手は当然高額の税金を嫌います。但し送品者としてはリスクを除去する必要が有るのです。数年前までは、EMSのデコ=declareを最小にして、それとは無関係の保険を掛けるという便法・・・、例えば鑑定依頼を受けた物が偽物だった・・・、実際の価値はゼロ、但し返品の義務を先方の申し出の金額で掛ける・・・みたいな理屈を口頭で言えば、然るべき部署に確認を取って、郵便局は受けてくれたのです。保険の書類は、郵便局に留まり、それを外した書類を基に税関で通関がされるので、申告額と保険の申し出額が一致しなくても、少なくとも引受の時点では通用したのです。郵政弘済会の保険が正にその精神でしたから。
でも、通関に関する手続きが厳格化され、20万円以上の輸出入には書類が要るようになってからは、この理屈は通りません。随分、大阪国際支店とかとやり取りをしましたが、通関の事務取り扱い規定をどう読んでも、便法が見つからないのが実情です。個々に、損保会社と交渉して、差し出した郵便物が亡失、破損の場合は、慰謝料を貰うというみたいな視点での保険を探すしかないのです。海外のディーラー向けには、ロイズを使った、その手の保険はあるのですが、日本の場合は聞いていません。結局、イスラエルの場合は、EMSの補償限度2万円で送るしかないのです。結構スリルが有りますが。
別件でも、思わぬ困難に見舞われます。パキスタンから、20年間続くストーカー攻撃、日本のビッグなコレクションがある。ホテルを用意するから、カラチに来てくれ・・・。何度、コピーを送れ、と言っても、2~3点の現行外信のSCANしか来ないのです。先方の一覧表の番号が正しければ、数千万のボリュームだし、相手はそれなりのステータスの郵趣家らしいのですが、どうにも相性が合いません。達者な人を推薦しても話は進まず、何度もこちらに同じ内容のオファーが来るのです。
トルコから突然書留が来ました。トルコリラ=TRYで1600、邦貨で10万円ぐらいの現金とWant Listが入っていて、普通の使用済みの1種1枚の大量の注文です。今年が、「トルコに於ける日本年」だとかで、その際に日本切手のコレクションを作る為に必要な物を買いたいということです。SAKURAの番号で来て、掛け率50%なら喜んで売ることが可能です。ただ、問題が有って、TRYのお札をどうやって日本円に換えるかです。しかも、1000と500。かつてやった取引で、かなりの金額のスイスフランを1000Fr.札で貰ったことが有りました。東京銀行とシティーバンクに持ち込みましたが、ケンモホロロ、S.Fr100でも、両替は困難、1000では相手にされません。昨今は、金券屋でも外貨が合法的に扱えるようになり、少しはましでしょうが、TRYでしかも1000は現金化できる可能性は薄いでしょう。取り敢えずは、返送して、US$か£かユーロのお札か、銀行送金して欲しいのリクエストを出しました。果たしてどうなるのでしょうか。
こちらの尺度に有った作業なら、損得のベースを除いても、幾ら手間が掛かってもやりますが、社会的に見て先方の期待と、日本における現実がマッチしていないケースを滞りなく処理するのは大変なエネルギーが要るのです。返事は全て英語が必須ですし、時間が有り余っている状況では有りませんから。海外の、恐らくはかなりのレベルのコレクター=切手展に出品するマテリアルが欲しいという人がオークションのメンバーに入って来て、驚きの高いビッドをすることも有りますが、全ての記事を英語で訳せ、状態を詳しく説明せよ、みたいな要求も有るのです。このケースは、無条件で断ります。弊社のオークションは、自己責任だし、日本語の説明が滞りなく理解でき、規定を遵守することが参加の条件なのですから。これは、日本国内からのビッドでも同様、自分は高額品を買う上客だから、特段の配慮をせよ・・というのは全く通用しない話なのです。この種の要求は、ストレートに除名への道に通じているのです。無論警告はするのですが。