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日仏コンビが35通

既にご案内の通りなのですが、Robert Siegelの MAGNOLIA コレクションのカタログが届きました。表題はJapanese Foreign Mail and Post Officeなのですが、Stephan Chazen氏のフランス横浜局コレクションがメイン、デグロンカバーが主体で日仏コンビが35通並んでいます。彼はアメリカの独立系の石油会社でシェールオイル大手の著名企業、オクシデンタ・ペトロリアムのCEOでした。北海油田での大事故とか、直近ではウオーレン・バフェット氏のバークシャー・ハザウエイが、株を15%所得した事がニュースになっています。

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当時は意識してなかったのですが、弊社でも結構買っていただいていたのです。当初はエージェントの名前での取引だったのですが、何時しかお支払や発送はご本人宛になっていました。金額は大きいのですが、先方が保険会社と特約を結んでいるので、FedEXの着払い、輸送保険付き、お支払いは、即刻での振込みなのでストレス・フリーの取引が出来ていました。思い出深いのが、旧中国大龍3銭と旧小5銭のコンビネーションのハワイ宛、手数料込みで1000万円を超えました。海外からのテレフォンビッドが2人で競って、値段を切ってビッドを依頼していたChazen氏が負けました。極めて貴重な敗北だったと思います。このエンタは、ハワイ宛の料金が抜群に面白いのですが、ふと思いついて記事にして、片山七三雄氏と山崎文雄氏が解明してくれました。落札者はフランスの中国人のDr.で、お父上とは長い付き合いをしていたのです。品物は香港のオークショニアのジェフリー・シュナイダー渡しをリクエストされたので、丁度しょっちゅう行っている頃だったの、持参して、問題は無くビジネスを完了できたのです。今にして思えば、結構ハードなディールをやっていたのです。

今回のセールは、彼のコレクションの極一部です。何せ、デグロンがゴミのように並んでいます。でも多分、アメリカ局の方がグレードは上だと思います。私が扱った物でも、HAKODADIや、神奈川領事館、ニューヘーブン→生野のコンビネーションが有りますから。Siegelなので、如何様や、空売りは無いと思います。これだけ並んでいれば、参考値に惚れて、ちょっかいを出したくなる人もいるでしょう。実際、絶好のバーゲン・ハンティングかも知れません。でも、私は手を出しません。落としても、デグロンを100万+で買える人の顔が思い浮かばないのです。

達者なブローカーさんも十分、物のチョイスをして下さい。ひねりの要素が有る物を一見安く落とせても、いざ売るとなるとしんどいかも知れません。目を瞑っての、最低値一任で弊社に送って来られても、私は料理できる自信が無いのです。この並びを見せられれば、物に対する敬意が消滅して冷静な評価が下せないのです。知り過ぎるとビジネスが出来ません。

このカタログに広告が出ている、香港の文華拍売有限公社=AVAオークションですが、ついこの間までは、初耳でした。落札結果を見ても、中国ものが突拍子もない値段で落ちています。Chazen氏自身の関係者の会社かなと思っていたら、中国人が教えてくれました。お前がよく知っている香港人がやってるぞ・・。D・・、W・・、いや、言われれば心当たりが有るような、無いような、何年か前のJAPEXで会ったのは確かなのですが、その後のビジネスの印象は有りません。それに、今の香港は何がどうなってるか分かりません。ここ数年は行きもしないし、ビッドも全くやっていないのです。Chazen氏の弊社でのお買い上げは、ほんの数千万円、でも、期待していた物には不思議な程に食いついてくれたのです。今となれば、もっと真面目に商売すれば、他の同業者位のお付き合いも出来た人だったかなと思うのです。所詮は、弊社が扱う純日本物では彼の好みからはズレていると勝手に思い込んでいたのです。

Siegelがポット出の香港のオークションハウスに広告スペースを提供する位なので、さぞや凄い金額のビジネスが隠れているのでしょう。軽く見ても数十億円、いや一桁上かも知れません。デグロンカバーの数を見て、私の認識が如何に甘いかを改めて認識した次第です。

出品物到着

つい今しがた、手彫切手9点の出品物がレターパック+で届きました。各メディアに広告を出している中国系のディーラーさんからです。

竜100文1版Pos13 未・100文腕落ちが未と済・200文腕落ち済・200文2版無地 未・500文2版無地 未・洋桜6銭ワとヨ 未・書き十 済、最初の1枚は本物ですが、他はどこかでよく見るような物で、送り先を間違えたのでしょう。まさか、高買いはしていないと思いますが、突然かけて来た電話の雰囲気では、【お宝ゲット】としてハイテンションの風情でした。

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5分後にお返ししましたよ。

5月のオークションの編集を進めています。面白い物が1点有りました。竜200文1版の初期印刷、地名入り検査済の局名欠け、必死になってプレーティングをしたのですが、1ミリ刻みに写真を辿ってもピッタリ来ないのです。まさかと思って2版で調べたのですが、勿論合いません。1時間は掛けたと思います。1版のプレーティングのミスでは有りません。

結論は、極精巧な偽物、上に書いた8点とはレベルが違います。オークションに出しますので、是非ご一覧下さい。

お急ぎください

4月1日から切手や葉書の書損手数料が変わります。大雑把に言って、現在は現在は@5円なのですが、今後は1回で100枚以上なら10円に変わります。今後も多くの条項で、郵便約款を変更して、恣意的に条件を悪化させることが予想されます。既に、額割れの相場が大幅に安くなってしまっています。

今ならやれることを書いて見ます。例えば50円切手を手数料5円を低額切手でレターパックプラス=520円に交換して下さい。ご自分で使える程度は残して、超える分は465円で現金化出来ます。計算式とすれば、465÷520(+55手数料)=465÷575=80.87%です。バラの50円切手をストレートに切手で売ってもこのレートにはなりません。1枚5円の手数料でやれる内に頑張ってみる価値は有ると思います。レターパックプラスの金券ショップでの買い入れ価は、実需に依る物なので暫くはこの数字は保てると思います。でも、実務上は1回で100枚未満しか@5円で交換できないのは辛いと思います。3月31日までに是非頑張ってみて下さい。

惜別

年会費の切り替え期になったのでこれに絡んだご連絡や、喪中欠礼のお葉書がたくさん届いています。中には、完璧な郵趣人生を自己完結された稀有な方からのご連絡も有りました。お年ゆえに収集の終了のご連絡、お礼の言葉も頂きました。書かれたご本人のお気持ちは十二分に理解できているのです。そこに書かれたお言葉が全てです。問わず語りなのですが、以後一切の連絡はご無用の意味でしょう。でも、そのお気持ちと、ビジネスに於けるルールでちょっとした齟齬が生じてしまうのです。12月3-4日のフロアセールは、本年最後のオークションなのです。弊社の年会費は暦年制で、1月1日から12月31日が期限です。ご逝去のご連絡を頂いたならば、その時点でジ・エンドなのですが、収集を止めるのご連絡が迷うのです。全く以て変な意味や、何らかの思惑は有りません。有効期間の会費を頂いている方への義務として、機械的に発送しているのです。何の反応も期待はしていないのです。ただ無視をしてくれれば、年度末を以てすべての御縁は切れるのです。勿論、ご連絡を頂いた以降は、継続のお願いも致しません。

でも、この扱いをした場合、強烈なクレームが来ることが有るのです。縁切りの連絡をしたのに、何故オークション誌を送って来るのか、です。このケースには返事のしようが無いのです。説明をするのが正しいやり方かも知れません。でも、ご意思に反したアクションだと怒りに火をつけるかも知れません。黙って忘れる事といたしましょう。

少し前に書いた、Stephen Chazen氏の訃報ですが、彼を最大の顧客として付き合っていた、Andy Holz氏の情報も間接的に聞こえて来ました。少し前にルガノに送ったオークション誌が戻って来て、嫌な予感がしていたのですが、スイスのディラーから聞いたという噂では、とっくに亡くなっているという事です。ここに来て随分と淋しい話しが続きます。少しは明るいお話も書いてみたいと思うのですが・・・。

無くなった。

世の流れなのでしょうか、ビジネスに於いて当たり前だった物が何時の間にか消えてしまっているのです。勿論、予告はされていたのでしょうが、そのままスル―していて、実際に事が起きてから対応策に慌てることが有るのです。

落札代金の支払いに、時々海外から貰っていた【トラベラーズチェック】はもはや過去の遺物です。日本での販売は2014年3月31日に終了しています。昔は海外への仕入れに円建ての物を持って行き、ヨーロッパの中央駅のCHANGEで外貨に両替して使っていたのです。最近の海外の仕入れはオークションオンリーなのでT/Cとはいつしか縁が切れていました。今では、貰った場合でも、銀行や郵便局では現金化が出来ません。効力自体は永久なので、町の両替商を使うなどで現金化は出来るのですが、ちょっとややこしくなっています。海外送金に使っていた、送金小切手=Demand Draftもなくなりました。今では送金は完全に電子化されていて、SWIFTやBICS,IBANが要るのです。マネロン対策も有るのでしょうが、ここに来て対応が矢鱈と厳しくなって来ています。郵貯ダイレクトは、法人は拒否ですし、取引銀行でさえ、1年に1回は仕向け(支払いの送金)、被仕向送金(受け取り)の予定を、ヒアリング・シートでの提出を要求して来ます。全ての金融機関でそうなっています。これは金融庁の指導であり、監査の時のアリバイ証明なのですが、ちょっとしたストレスになるのです。飛び込みでの送金というのはハードルが高くなっています。それ以上に、国内取引でもペーパーの手形・小切手が遠からず消えるのです。2026年頃という話です。ほんの少し前の大きい商売で、銀行振出の自己宛小切手を使ったのですが、窓口で大分不思議がられました。既に滅多にないケースみたいです。

私の場合は、イギリスポンドとアメリカドルの口座を現地で開いて、小切手での受け払いが出来ていたのです。ドルは1995年にWells Fargo銀行で開いたのですが、当初も随分苦労したのです。アメリカの社会保険番号がないのですが、非居住者が小切手を切る為の当座口座の開設を目指したのです。交渉して、然るべき証明が有ればやれることになったのですが、予想外に大変でした。この証明はアメリカ領事館でやってくれるはずだったのですが、折悪しく阪神・淡路大震災の直後でした。領事館へ出向いたのですが、アメリカ人以外には対応できない、日本人なら日本の法的手続きを取りなさい、でケリです。そのやり方も有るのです。単なるペーパーの書類では受けてくれません。国際的にも通用する、Nortary Publicというシステムです。公証人役場に行って、公証人に私が私で有る事の証明を貰い、その上で、公証人が正規の公証人である証明を外務省にやって貰うのです。外務省の支部が大阪府庁に有るので何とか出来たのです。当座の口座なので、貰ったドルのチェックは郵送でアメリカの銀行に送ります。そこに貯めて、支払いにドルの小切手を切るのです。随分と重宝できていたし、為替手数料も助かっていたのです。でも、突然にレターがやって来たのです。非居住者のアカウントの保持が許されなくなったのです。一月位の猶予は有ったのですが、相手はアメリカの銀行です。黙っていれば、口座残金の没収も有り得ます。幸か不幸か数万ドルの残が有ったのです。切られた期日までに必死になって支払える相手を探しました。取引頻度の高いオークショニアとエージェントにデポジットとして預けたのです。今後の海外取引の手段を何とか考えねばなりません。選択肢は限られているのです。

郵便の話に入ります。郵趣の5月号で報道されたのですが、イギリス切手で過去から流通している物の内、普通切手とクリスマス切手の大部分の物が2023年1月31を以て無効になるのです。記念切手は現状ではセーフです。外形上で簡単に区別が可能なのですが、普通切手とクリスマス切手では、デジタルコード(切手の右側に印刷されるQRコード)付きで無いと使えません。偽造防止は目的との事です。旧切手は期限を定めて有効な物に交換できるのですが、それ以降は無効です。イギリスの通貨単位の変更と、ユーロ導入時のケースと同じです。かの国の郵趣のマーケットにとっては非常に大きいマイナスになるでしょう。同じ事が日本でも起きないとは限りません。日本郵便とすれば過去の負債をチャラに出来る絶好のチャンスなのですから。

日本でも、既にこれに近い事態が起きています。支払い手段での郵便切手の劣後化です。法体系とすれば、最上位に郵便法(国会での議決)、次いで郵便約款(総務省での認可)、最後に郵便事務取扱規定(日本郵便が定める)のはずなのですが、この流れが蔑ろにされているように思えるのです。改めて郵便法28条を書いて置きましょう。(料金支払いの方法及び時期) 郵便に関する料金は、この法律若しくはこの法律に基づく【総務省令又は郵便約款】に別段の定めがある場合を除いて、郵便切手で前払をしなければならない。②略。明治6年の郵便規則、16年の郵便条例、戦後の旧郵便法、大改正前までの新郵便法でも、同様の条文は有ったのですが、郵便事業者の役務の提供に対する支払い手段は、唯一【郵便切手】だったのです。確か昭和40年代の郵政省の若手官僚が時の事務次官の指示で研究会を立ち上げて、郵便法の逐条解釈をやったことが有るのです。その本の該当箇所にも、唯一の支払い手段が郵便切手だとする表現が有った気がするのです。極めて例外的に、大きい金額になるようなケースでは、現金による支払いも排除しないというニュアンスでした。

今の28条も精神は同じなのですが、【別段の定めがある場合】という言葉を拡大解釈しているのです。別納郵便等での、支払い手段からの郵便切手の排除の事です。民営化直前に、広告郵便と区分郵便での郵便切手の排除の動きが出た時に、議論に入ろうとしたのですが間に合いませんでした。民営化をきっかけにして、何でも【郵便約款に書いてあるでしょう】の返事になってしまいます。民間企業の論理に、郵便法の精神は対抗できないのです。争っても勝てないので無駄な事はやりません。ちょっと前の【東芝ゼロ円】の件で面白い情報に接しました。総務省郵便課と私の議論に関して、郵便課が法解釈を日本郵便に問うたのです。監督官庁が監督される民間企業に尋ねたのです。のけ反りましたよ。総務省郵便課はその程度の能力しか有りません。郵便約款の変更など、やりたい放題にやっても郵便課はストップを掛けないでしょう。東芝ゼロ円は、東京地検の結論が不起訴なので、案件としては終わっています。警視庁保安課も同じ轍は踏まないという返事でした。この件のきっかけになった、郵便切手模造取締法に関しては、最上質の資料を持っているので結論を纏めて報告したいのですが、その時間が取れません。現郵摸の制定時の趣意書から入らないといけないし、大本の起点にはサンフランシスコ平和条約やUPU条約が大いに絡んできているのです。大局論でなく、実務的な私と郵便課とのやり取りだけでも、オフレコ条件の物はカットしますが、オンレコで出すべき往復文書だけでも100頁近く有るのです。何度か書きかけているのですが、行きつ戻りつになってしまいます。何れ時間が出来れば、思い出話としてなら書けるかも知れません。

久しぶりの朝鮮速達

JAPEXセールの入稿が終わりました。オークション誌の発送は10月7日ですが、Webでダウンロードされた方の、事務所での下見は1日(土)から可能です。気になる物を、先行して取りあげておきたいと思います。ひょんなとこからやって来たのが朝鮮の京城速達です。基本3銭・書留10銭・速達10銭、内容証明は謄本貼付なので、新毛13銭と風景10銭の貼り合わせで完璧です。韓国系の人から物が来れば、まず探すのが【速達】です。でも空振り続きで、100連敗だったと思います。私のオークションのキャリアで、物を扱うのは今回が初めてだと思います。

随分と時間がたっているのですが、朝鮮速達で覚えているディールが2回だけ有ったのです。大阪のアベノスタンプのメールオークションに2次昭和貼の葉書が出ています。料金ははっきりとは覚えていないのですが、勿論全国化以降の8銭時代です。最低値は300円、何人かが見つけていて、珍品コレクターの、私が付けた綽名では、珍品に対して鋭く反応出来る金糸雀さん・埼玉のN先生が15万位でのお買い上げだったそうです。☆印のビッド、ノンリミットの落せだったのでしょう。この時は、もうお二人のノンリミットのビッダーの尼崎のM先生と鎌倉の大御所さん達は気づいてなかったようなのです。出品者は、福岡・行橋のM君です。よくぞ1000円の即売で田畑や伊藤に売らずに、アベノさんに出品した物だと当時話題になっていました。もしかすると東郷7銭貼で1銭不足の見逃しだったかも知れません。落札された人はJAPEXに来てくれるので、今度聞いて置きましょう。

もう1件は物凄く微妙な話になるのです。1980年の頭です。何回か、George Alevizosが東京でタカハシさんのハンマーでフロアセールをやっているのです。この時に、朝鮮速達が出ています。はっきりと思えているのは、この時に私が榎さんと初めて言葉を交わしたことです。朝鮮物が纏まって出ていて、朝鮮字の単片のセットをお買い上げ、目打も普通のものなので、一杯持っているのに何でまた買ったのかを問うたのです。返事はいまや覚えていません。このセールで、もう一人と話をしたのです。水口正春氏です。ここで買った、薄汚いし、読みにくいエンタ(か葉書)を自慢げに見せられました。絶対の自信は無いのですが、多分【菊】だったと思います。速達制度のフォアランナーみたいな話をした記憶が有るのです。彼の印象の強い言葉が有って、出品記事によくぞ、【Special Delivery】と書いてあったものだ・・・。なのです。当時はこれで終わったのですが、20~30年経ってから、探って見たくなったのです。出品物としてAlevizosのカタログが来たときは丹念に見ているのですが、未だに探し切れていないのです。数年前に水口氏に会った時に聞きました。Alevozosの速達、どうした?今なら100万かな?このレベルの話なら、当然向こうも覚えています。とっくにMSAで売ったけど安かっぞ・・。40年前なので、私の記憶がズレている可能性も有るのです。本池さんの鳴美の速達の本に、田沢時代の葉書が出ています。MSAに出て、買えなかったそうなのです。もしかすれば、私がこれと間違えている可能性も否定できません。遠からず、Alevizosのカタログを纏まって見せて貰えそうなので是非確認したいと思います。40年ぶりの懸案が解明できるかも知れません。

今回の出品物、韓国の超有名な人からの出品でした。でも、絶対に速達の価値は分かっていないと確信していました。韓国系の人と話をする際に、必ず枕詞で速達探してよと言うのですが、何も頼んでないのに紛れ込んでいたのです。余りに高くなって、勘違いされるのは鬱陶しいのですが、当日のフロアでのバトルを複雑な思いで楽しみたいと思います。朝鮮速達の現物を手元に置いてのおチャラケ記事、まさか書けるとは思っていませんでした。

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訃報です。

今日メールを貰いました。アイホン君からです。ここんとこ、ご無沙汰のアメリカ人で、ちょっと気になる人がいたのです。Stephen Chazen  76歳 Sept.22に旅立ちました。アメリカの独立系の石油会社のCEO、フォーブスの長者番付の常連でした。Occidental Petroleum は、北海油田の大事故で知られていますが、彼は確か3代目ぐらいの経営者でした。多くの会社の経営に携わっていたと思います。

1920年までの中国関係の郵便史がメインで、純日本も少し絡んでいます。ビッダーとしての、弊社とのお付き合いは、大分前の大龍3Cと旧小判5銭とのコンビネーションカバーのハワイ宛、絶対に落とせる自信が有ったでしょうが、強烈なライバルが現れて、彼はアンダービッダーだったのです。900万か950万だったと思います。出品者はご健在だった榎さん。喜んでくれました。弊社のハンマープライスのレコードです。落札者は在フランスの中国人、リクエストされたので、香港のジェフリー・シュナイダーのオフィスに持参しました。UPU絡みでのハワイ宛の料金が非常に面白いのですが、片山七三雄氏と山崎文雄氏の御助力で解明出来たのです。彼は知っていたのかな。漏れ聞く所では、彼がオークションで負けたのはこの時が初めての経験だったかも知れません。

彼の私セールでのビッドでのエージェントは、Andy Holtzなのですが、他にも居たと思います。私の記憶では何故かGeorge Alevizosの名前が残っているのです。ドイツの小さいオークションに竜100文の西京検査済の極美のカバーが出たのです。安ければ欲しかったのですが、300万円位になりました。日本人は当然ノータッチ、エージェント同志がChazenの札で競ってしまったみたいな印象を受けました。香港のセールでは、Andyの依頼を受けたエージェントがテレフォンビッドをやってました。顔見知りのMichael Jhonsonでした。兎も角強かったのです。私が村岡さんと若桑さんから預かった、在日外国局の札も結構強かったのですが、香港のフロアでは掠りもしませんでした。背の高いM.Jがテレフォンビッドの受け手になったロットは、その瞬間でノーチャンスになるのです。実際に私が一桁間違えた物まで、しっかり落し切りました。

弊社でのお買い上げで、印象深いビジネスが2件あるのです。白井二実さんの外国局です。完璧に買ってくれました。1000万位になったので、白井さんの最晩年を過ごす費用にお役に立てたと思います。或る意味奇跡的な僥倖だったのです。もう1件は、ニューヘブンから但馬八鹿へのコンビネーションカバーです。絶対に高値で売らねばいけない理由が有ったのです。確か520万だったかな、オークショニアとしては、結構なリスクを被ったのですが、乾坤一擲、勝負したのです。Andyからのテレフォンビッドのリクエストが来た時点で、勝てることを確信したのです。フロアでのコールが早すぎると怒られましたけど。このマテリアル、一杯書けるネタが有るのです。墓場に持って行く気は無いのですが、まだ全ての案件が片付いてはいないのです。だから本当の最後の結論を書けるのは、私がハンマーを置いた瞬間になると思います。さあ、何時のことでしょうか。

Andy Holzのルガノのオークション、近年は活動していないのです。気になっていて調べるつもりだったのですが、最良の顧客の状況が原因だったのでしょう。彼もいい加減稼いだのでハッピー・リタイア出来ているのかな。私にしても、一つの思い出深いディールが終わったことがはっきりと判りました。Chazenコレクション、既に売りに出ているのかも知れません。アメリカのオークションハウスに出るはずです。キーワードは【Magnolia】、目玉の中国には、水原明窗コレクションの大龍3枚貼のアメリカ発上海宛のコンビネーションカバーが有る筈です。

世界中のアジアの郵便史を扱うオークションハウスが随分とお世話になっていた人なのです。日本人で彼と接点が有った人、私以外に何人いるのかな。

34年ぶりの再会です。

8月のオークション誌の編集が佳境に入って来ています。後3週間弱で入稿せねばなりません。何時もの同じで結構きついタイムテーブルで動いています。

本当に偶然なのですが、全く繋がりの無いお二人から同じような物が届きました。偶然としか言いようが有りません。欧文櫛型YARUTOです。最初は1.5銭のオンピース、後が3銭のオフペーパーです。記憶に有ったので、ちょっと探ったら、キッチリと資料が見つかりました。昭和63年12月28日の日本郵趣連合の鑑定書、署名者は金井宏之氏です。【真正では有りません】の結論に私も同意いたします。印色が気に入らないのです。疑って見れば、幾つも瑕疵が見つかります。今回の出品物は、この現物を剥がした物です。34年ぶりのご対面です。現時点ではルートを手繰っての出所のトレースはしていないのですが、少なくとも複数人の手を経ての流通だと思います。偽物として出品して啓蒙するよりも、黙って返すことと致します。

当時の噂では、ある人の固有名詞付きで出何処が話題になっていました。名古屋方面だったと聞きましたが、定かでは有りません。もう1点の3銭のオンピースは、当時に私が入手して、サンプルとして持っていた物です。1.5銭の方は別の人からの今回のセールへの出品でした。この3点を並べれば、雰囲気は全く同じです。素性も出所も一緒でしょう。全く繋がりの無い2か所からの30有余年を経ての私の手元での再会です。こんなことも有る物だと改めて実感したのです。まさか、もっと続けて出るとは思わないのですが、もし見かけたら十分に注意が必要だと思います。

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こんな物が・・・見つかりました。

手元に超一流の越後国の初期消印のコレクションが来ています。8月のセールから順次オークションに出品いたします。竜から旧小判4銭貼までの不統一のカバーが主体です。殆どが表に出ていなかった物だと思われます。まともな珍品で無いのですが、毛色が変わった物を見つけました。小判1銭葉書の〇新潟消です。着印から、12年11月29日の抹消だと分かります。故玉木国夫氏のメモが有り、12年の使用例が2点見つかっているとの記載でした。もしかすれば、その現物がここに有るのかも知れません。新版・明治郵便局名録=近辻喜一氏校訂に新潟の抹消印が時系列で出ています。不統一での抹消は〇新、そして〇新潟しかないのです。単片は改桜20銭チと旧小2銭紫が有りますし、出現している額面から判断すれば、同年代=12年と推定される物が他にも若干あるかと思います。9年のそれは私に来た資料からは見出せません。

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この2点の葉書は最初にコピーを貰った時には、【複写】のメモ書きが有りました。一瞥して、正に一方はコピーだと思ったのです。でも、現物は違っていました。同じ物?が2枚重なって入っていたのです。画像をしっかり見てください。〇新潟の右辺の欠落、二重丸印のデータと特徴、どう見ても同じ物でしょう。でも、物は2枚です。宛名も文面も一見【コピー】に見えたのです。でも、疑ってよくよく見れば細かい差異が見つかります。コピーや変造では無いでしょう。同じ人が同じタイミングで2枚の葉書を書いたのです。同時に投函、全ての行程で同じタイミングで抹消されたのでしょう。こんな偶然、どうすれば起きるのでしょうか。奇跡としか言いようが有りません。今回のコレクションには、もっと本筋の良い物が本当に沢山有るのです。それは是非次回のオークション誌でお目に掛けるようにいたします。赤二の◎、記番エンタ、不統一の単片からスタート致します。

支那字の消印のお話です。

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今回のセールは目玉が一杯有るのですが、想定外のテーマでのご出品が有りました。中国本土での方針が原因で、字入切手の切手展での扱いが難しくなるそうで、展示に出せなくなるのでやる気が失せてしまったので売りたいとういうことでやって来たのです。中国での切手展での扱いとなると私は全く不案内です。詳しくは判る人に聞いて頂きたいと思います。

Lot2737~2795なのですが、その分野のコレクターにとっては垂涎のマテリアルが並んでいます。随分と前の強烈な印象の文献上で知られていても、マーケットに出てくることは想定していませんでした。コレクションのリーフそのものをジャスト100リーフ預かったので、記事の編集は楽でした。物が良いのでストレスが無いのです。最低値はご一任だし、今の評価で出品して、売れる値段は場での競りにお任せです。でも、良くも悪くも30年ほど前のコレクションなのですが、マテリアルの本質部分は当時も今も変わっていません。そして時を経たことにより、希少性の確定という視点で見れば、より輝きが増した物も目立ちます。

でもちょっと気になったのが、国際展に出品されたリーフ上での記述の内で数多くのアイテムに書かれていた、【現存1点=only one, unique、3点の内の1点】とかいう定量での希少性の表現はどうなのかと思うのです。採点基準での知識のポイントを明らかに意図して、これでもかという言うぐらいに書かれています。英語ならそれ程は気にはならないのですが、日本語でのこの記述には違和感を覚えます。弊社のオークションでの記述ならば、100%削ります。限られた条件での定量表現をご自分の名前で書くのは良いのですが、ご自分の知らない場所での物の有無など分かるはずは無いのです。オークショニアのポリシーとしては使いたくない言葉です。切手展ではそれを書いて、間違っても自己責任だから構わないのですが、オークショニアはそのリスクを負いません。実際に30年経ってもここにしかない物も有りますが、軍事郵便系と郵便使用の物は年を経れば連れが出て来てユニークでは無くなります。数が増えても相対的な希少性には変化は無いのですが、定量の希少性を示すのが、【国際切手展】では必須の知識の証明手法という変な常識には与したく無いのです。ゼロで無い物は時を経れば増えますよ。それと国際展でのトラッドの使用例は、機械的にオフカバーがNGというのもどうなのでしょうか。今回のLot2762 博山、2763の周村は電信取扱所なのでエンタは無いでしょう。そしてオフカバーも私の記憶ではここに有る物が唯一の存在かと思います。チョロ消なので高くはならないでしょうが、何人からビッドが有って、どなたが買ってくれるのかに注目しています。リーフの作り方次第で、切手展にも使える性質の物だと思います。使い方によっては持ち主の知識の証明になる物なのです。3点並べた内の支那菊5銭の丸一は今回のセールとは別口ですが、この局は推測はされていても見つかっていなかった物で、恐らくはユニークです。でもこちらは郵便印だと思うので、エンタの出現を待ちたいと思います。単片では切手展のコレクションには使えない物でしょう。

在支局(含む山東省)の消印で思い出深い物が2点有るのです。年号2字のSHIN・・・と欧文櫛のWEI・・・です。単片のチョロ消ですが、多分私しか気づいていないお話が有るのです。30年というかそれ以上の前のお話から入ります。時間を見つけて書きましょう。オーストラリアのおばさんとトリノのドクター、共通項は1971年の国際切手展に日本切手のコレクションを出していた人なのです。

今回のオークション、売上とかハンマープライスの額にはリンクしないのですが、書けるネタが一杯有るのです。金銭的には地味ですが表に出して記録しておきたいテーマです。時間を見つけて書いてみたいと思います。オークションの結果に影響を与えるのが嫌なので終わってからにしたいと思います。