2023年12月の3度目の出品の日付がちょっと微妙だったのです。セールの当日はご健在、精算日前にご逝去でした。税理士さんと調整して、発生主義を取り入れて、セール当日を故人の取引に組み込みました。残りの3回分は、相続税の確定申告のタイムリミットを意識しました。こちらの扱いは、故人の申告義務からは外れるのですが、実際に金銭が動いたので何らかの手続きが要るのです。セールの日付が相続税申告に間に合う物は、数字がFix出来るので支払額を被相続財産に合算します。項目は現金です。譲渡所得なので申告義務も有るのですが、故人は既に申告できまないので相続人に引き継がれます。このケースでは、1点で30万超の物が無かったので申告は不要でした。残った物に関しては、再出品の原稿が仕上がっている物はその金額を用いました。未整理分は、私が評価して項目ごとに一覧表を作りました。所謂、精通者評価価格一覧表です。主導権を取ったのが、私なのか税理士さんなのか分からないのですが、オークショニアとしてお客さんに交付した書類で事足りるのです。税理士さんは、終わった物は勿論ですが、それ以外の物のデータも添付書類として税務署に出したと言ってました。
私にすれば仕事の一環として何時ものリズムでやっただけなのですが、税理士さん的にはちょっとビックリだったかも知れません。切手コレクションの扱いに苦慮していていると言われてました。譲渡所得の申告に於ける原価の証明をエビデンス付きでやるというのは普通は無理な作業なのです。今回は楽だったのですが、過去の取引でデータの証明が難しくても私なら目一杯手品を使います。同種の物の取引実績を並べるのです。税務署さんは結構話を聞いてくれるのです。今回は偶々運が良かったのでしょうが、あと数年すればAIを使ってオークションでの流通のデータ収集などちょろい話しになっているかと思います。ご遺族からメールを頂いたのですが、私と水口(清音)さんに費用を支払いたいとのお問い合わせでした。私は、税務申告のお手伝いもオークション業務の一環だから無料だし、水口さんも友情の証としてのお手伝いなので受け取る訳はないのです。
ある人を介しての突然のお申し入れでした。ご本人は体調が思わしくなく、入退院を繰り返していたと思います。見覚えの有る筆跡で太いマジックで書かれたメモ付きでした。自分の切手のコレクションをオークションで処分して、代金は同居している唯一の親族の銀行口座に振り込んで欲しいという趣旨でした。直近まで正に、その分野に於いては数社のオークションでの最後の買い手みたいな勢いで買い漁っていたように見えていたので、随分とふんぎった風に見えました。程無くして出品物を受け取ったのですが、予想を上回る揃いっぷりでした。サラリーマンとしての勤めを終えてからご自分の体調を自己判断して、長年の積もり積もった収集欲を一気に解き放ったやに見えました。闇雲に手を出すのでなく、絞ったテーマの内の特定の要件を充たす物に狙いすまして矢を放つのです。ピンポイントの狙い撃ちなので、このタイミングでは彼に勝てる人は最早居なかったと思います。
問わず語りなのですが、依頼主のお気持ちは分かっていました。資産の現金化もそうですが、人生を掛けたコレクションがマーケットでどう評価されたかの結果を知りたかったのでしょう。セールがスタートした時点でもご自宅と病院を出たり入ったりだったと思いますが、本当の状況は聞けていませんし、無理に急がずとも数年は時間が有るかなと思っていたのです。オークシニアは人の時間を差配は出来ません。だから他の方のそれと同じような流れで編集に入ったのです。スタートは2023年8月のセール、当然の如く目玉は11月のJAPEXセールに持って来ました。あとはゆっくり、で止む無しでしょう。記録を辿れば、既に6回のセールで売っています。そして今も継続中・・・。送金先は当初からご希望通りに親族の方の口座でしたが、出品者としての登録は最初の2回はご本人、目玉のJAPEXセールの結果はお手元に届いたはずです。12月に逝去のご連絡を受けて3度目から変更したのです。早すぎたか、やっぱりな、かは分かりませんが驚きは感じませんでした。オークショニアとしてやるべき作業に入ったのです。コレクションは既に手元に来ています。スケジュールは動き出しているのです。それなりの金額の売上になるのです。売ることは勿論ですが、私のポリシーとして、税務手続きも含めてご依頼人に出来る限り多くの果実を残したいのです。私が持っている知識と情報で判断して、正々堂々と手続きをして無税で相続人さんが引き継げると読みました。
切手コレクションの売却です。ご本人は直近で亡くなっています。居住していたマンションは同居のご親族に引き継がれるはずです。小規模宅地等の特例を使うので、必然的に相続の申告が必要になります。税理士さんを使う可能性も有るし、税務署に相談に行くやも知れません。資産の大部分は趣味の郵便切手かと思います。オークションで売って、代金は想定される相続人さんの口座に振り込んでいます。確定している事実を前提にして動かないといけません。このケースは余りないのです。申告義務者が知識を持って無いと怖いのです。そして税理士さんは経験したことが無い筈です。所得原価の計算式で、表面上のルールに捉われて、思い込みで変な計算をされれば酷い事になるのです。だから、余計な事ですが相続人さんにメモを送りました。私は今までも何度か書いて来ていますが、一番まとまっているのが昨年の【さくらカタログ】の広告です。これをもし税理士さんを使うのなら、是非読んで貰うようにアドバイスしたのです。依頼した税理士さんは矢鱈とプライドの高い飛び込みや紹介でなく、被相続人のお友達だったのです。即、連絡をくれました。率直に言って、真面目過ぎるタイプですが、理詰めで説明すれば分かってくれると読みました。
相続本体に関しては、私は口を挟みません。お手伝いは切手の処分に限定です。要素的にはちょっと複雑なのです。被相続人ご健在時の売却が2回、2023年8月と11月、ご逝去が同12月なので相続税の申告のタイムリミットが2024年10月になります。このケースでは逝去後の4か月以内に【準確定申告】をせねばいけません。2023年の所得を本人名義でやるのです。リタイアしたサラリーマンならやらずに済むと思うのですが、JAPEXセールで結構な数字の売上になっています。伝票上は被相続人の売上ですが、資金は相続人の銀行口座に入っています。目立つ数字です。この説明がいるのです。こうなると私の出番になるのです。売上自体は被相続人の相続資産に合算されますが、その種別は【現金】としてです。不動産・有価証券等と合計して、相続税の基礎控除(配偶者無しで相続人1名の)3600万を超えた分に課税されます。この計算式には紛れは生じません。同時に、所有者=故人の【準確定申告】に於いて、譲渡所得の申告義務も生じるのです。私から見れば、簡単だし、何の心配も要りませんでぶった切るのですが、税理士さんは真面目に悩んでしまいます。口座に入っている金額に目が行くのです。譲渡所得ですが、不動産とは別個の物です。書画骨董扱いです。課税要因は利益が出ている事が必須です。一般のコレクターではレアケースです。さらに個別の条件で一点又は一組で30万以下の物は生活用資産と見なされて、無条件で課税対象外になるのです。言葉を変えれば、オークションの支払明細書を見て、手数料を差し引いて30万を超えた物だけが課税される可能性が残るのです。これに大前提として、利益が出ている物という条件が追加されます。売って受け取った金額から買った時の原価を差し引くのです。赤字ならそのロットは無罪放免です。ご本人が健在なら、ある程度は説明できると思います。コレクターが収集目的に人と競ってオークションで買って、それを時を経ずにご自分抜きでオークションで売って、往復の手数料を払って利鞘を得るのは極めて困難なのです。理屈でも、実態でもそうなのですが、それを第三者に証明せねばならないのです。真面目な税理士さんのご希望の趣旨は容易に知れました。やりきる自信も有りました。
確か二桁超が30万円以上のハンマーでした。購入先は弊社とあと2社のオークションハウスです。弊社の分は7年間の伝票を直ぐに取り出せます。ロット番号が判ればオークション誌から物の確定と購入時の価格も分かります。目に見える書類で完璧な紐づけが出来るのです。他の2社は、私のスキルでは困難です。だから誰よりも役に立つ人にメールを送ったのです。JAPEXセールのアレとアレとアレ、どこで買ったか調べてよ・・。翌日、オークション誌を抱えて来てくれました。10数点の一覧表を作りました。売っての手取り額から買い値を引いて、赤字と黒字をチャート化するのです。数点黒字が有ったのですが、トータルでは勿論赤字です。損益通算が出来るので益が出て無いので申告義務は有りません。更に、譲渡所得なので基礎控除の50万も使えます。私ならこのルールで、申告不要ですよ、税務調査が来ればそれはその時、説明できますよ・・とぶっ飛ばすのですが、真面目な税理士さんが相手なので、懇切丁寧な一覧表を作りました。協力者は勿論、水口(みなくち=濁らない)公秀さんです。赤字なので税務署に提出したか否かは分かりませんが、【準確定申告】の税額がゼロだったのご報告は貰いました。でも、まだまだ作業は続きます。相続に関してですが、オークションで売るという事が如何に楽かが判ります。他人に説得力を持って証明できるのです。次回はその解説です。
3~4年前だったと思います。娘さんからの電話なのですが、会員さんでご逝去の連絡を頂いたのですが、故人がメモで弊社に依頼するようにと書いてあったので、コレクションの処分が可能かどうかを聞かれたのです。勿論ポジティブに返事をしたのですが、量が多いので整理が出来次第連絡する・・で終わっていました。キャリアの長い方で、武蔵の消印とボタのエンタがメインとして収集されていました。印象深かったのが、某老舗オークションが切りの良い回数の開催になった際に会員番号1番として祝辞を書かれていたことです。逆引きして収集キャリア60年以上の方なのです。お名前に記憶が有ったので当初のお電話の雰囲気から、正に落ち着けばお声が掛かると思いつつ何のアクションも起こしていなかったのです。後で判ったのですが、処分を急がないして、それ以上に奥様が売りたくないという雰囲気だったので手付かずのままだったのです。
去年、奥様も亡くなられて、部屋の片づけが必要になって動き始めたのです。改めてご連絡を頂いた時点で、大量のガサ物の始末は終わっていたのです。故人のお住まいが東京に近い武蔵国なので、色んなところで名前を聞く東京で一番元気な買い取り屋さんが一括で持ち返ったとの事でした。でも、話しがちょっと前後するのですが、本当のメインのコレクション、アルバム20冊は残っているのです。故人の遺言のせいかどうかは微妙なのですが、買いに行った人がメインのコレクションを見て、自分には手に負えないので、私に頼むようにと言って残して行ったそうです。名前は良く聞くし、共通の知人を通して私の事も知ってくれているのかなと思うのですが、直接には会った事は無いのです。
お待ちしていたお呼び立てですし、丁度タイミングが合ったので、ご自宅へ出かけて行って、物を確認しました。話の流れからして、買い取りは有り得ません。キャリアの長い方のコレクションのエキスなので、必然的にオークションでやりましょうにしたのです。ざっくりした数字を出そうと思いました。買い取りで無く、あくまで評価ですし、エンタが主体のアルバム20冊なので1時間でやれるのです。未使用・FDC・葉書系は全部先に持って行ってくれていたのでしょう。切手は墨六・MLL・キ半銭入りの手彫が1冊有ったので評価の助けになりました。相続は既に完了していますが、相続人が複数なので資金の流れがハッキリ判るようにして欲しいとのご希望でした。銀行振込みにして税金面の一応のルールを説明して、余程の事が無い限り税金は掛からないことを保証したのです。税務関係で何かあればこちらで対応する事を約束しました。相続人さんのご商売の関係でしょう。オークションの精算の書類一式を税理士さんに渡したらそれなりの数字になっていたので、この分の譲渡益の説明を求められたのです。ストレートに連絡を貰ったのですが、要件がはっきりしているので答えやすいのです。1分で納得してもらえました。こちらの案件では、相続には私はノータッチです。だから聞かれたことにだけ答えました。
書画骨董の単純な譲渡であり、1点で30万以下は生活用資産の売却ゆえに申告不要、超えた物も所得原価を考慮にせずに全額差益と評価しても、50万以下なので、譲渡所得の基礎控除の範囲に収まる故に申告不要だったのです。前日の件と、今回と2日連続しての未知の税理士さんからのお問い合わせは正に確定申告が始まっている事の現れでしょう。私の場合は、慣れているし、法的にも正しい解釈が出来ている自信が有るので、説明をすれば理解してくれる相手と対峙するのは何のストレスも有りません。税理士先生の方が不動産の譲渡とゴッチャにしていて、30万条件と所得原価を矢鱈と厳格に捉えている人が多いので要注意なのですが、税務職員はまさか間違えないと思います。でも、中々に微妙なケースも有るのです。この話はもうちょっと後に廻します。次回は、税務申告、フルメニューのお話です。純確定申告・相続税・譲渡所得・精通者評価価格・・対応に当たった人が、余りにも生真面目な税理士さんなので、マジで疲れたのですが、何時もながらの強~い味方が助けてくれたのです。私は仕事の一環で、相方は友情故にベストの結果を得られたと思います。
昨年の4月に亡くなられた方のご遺族からの突然のお電話でした。相続税の申告に入っていて、著名な葬儀屋さんから紹介された税理士さんにお願いしていて、切手のコレクションの話をしたら、専門家に評価を依頼するように言われたとの事でした。お名前に覚えが有って、ここ数年に亘って毎回数十万円レベルで未使用切手を弊社のメールオークションとバザールで買ってくれていた人でした。リタイアした後に切手屋でもやるつもりみたいな買いっぷりでした。制定と年賀富士山小型シート、雁と見返りが5シート以上有りました。ご自分の買いたい値段が決まっていて、それ以下ならダブっても平気で買ってくれていたのでしょう。見事な位の未使用切手のストックが残っていたのです。この品揃えでは金額は大きくても、オークションでは高く売るのは無理なのです。往復の手数料が重いのです。即金で買える数字を出したら、速攻でOKになりました。もしかしたら、TVにCMを出している買い取り屋さんも来ていたような雰囲気でした。この人たちには負ける筈は有りません。
相続のデッドラインに少し余裕が有ったので、アドバイスしたのです。税理士さんは切手を含めての相続を勧めています。被相続財産としの評価を望まれています。相続人は奥様と娘さんです。プライベートの資産状況は聞けませんが、あくまで一般論として配偶者控除を使って、奥様が相続するように話しました。配偶者控除で1.6億円又は50%まで無税になるからです。でも、遺産分割協議書は既に出来上がっていて、相続は100%娘さんになっていたのです。剰え不動産は登記まで完了です。聞けば、要介護認定を受けていて、法的な行為は出来ないということでした。私が話したところ問題は無さそうだし、相続に於いての係争の恐れも無く、署名・捺印さえできれば問題なく配偶者控除利用で税金が抑えられると見えたのにです。不動産の方は外野は口出しできませんが、せめて切手は奥様の口座に払いたかったのですが叶いませんでした。こちらとしては何方に払っても損得には影響しないのですが、出来るだけ手取りが多く残る様にお手伝いしたいのです。このケースでは基礎控除が4200万、配偶者控除不使用なのでプラスは有りません。不動産と金融資産で無税の基礎控除の数字は超えるので、切手の分に関しても否応なしに一定率の相続税が発生してしまいます。娘さん曰く、自分は一切嘘が付けない性格なので、税理士さんが言うとおりにやりたいとの事でした。だから、コレクションをピックアップする直前に、下見で評価した約定金額を銀行口座に振込んで、売買契約書を2部、収入印紙貼付で作り、思い出の為にご自宅に残したい物の精通者評価価格一覧表を添えて、これで申告して下さいにしたのです。
完全に終わったつもりだったのですが、2日前に電話を貰いました。税理士さんが故人の切手の売買での差益の申告が必要だと言って来ているとのことでした。通帳の数字を見れば、それなりに大きい数字なので、念の為のお問い合わせだと思います。ルールを娘さんに説明して、税理士さんに繋いで貰うのが筋でしょうが、説明能力に危惧を感じたのです。だから私が説明するからと言ってこちらに電話を貰いました。ポイントを絞らないといけません。今更、配偶者控除云々は言いません。お問い合わせの趣旨を聞きました。相続ですか、譲渡ですかです。譲渡での差益の申告との返事なので、ここらはソラで回答が出来るのです。真面目にレクチャーしましたよ。切手コレクションの売却は譲渡所得だけれど、不動産とは異なります。書画骨董と同じです。一点又は一組で30万円以下の物は生活用資産と見なされて、一切が申告対象外です。今回のケースでは、購入時の弊社のオークションのカタログからして1点で30万円超の物はなく、普通の未使用切手なので値上がりもしていません。だからトータルで大きい金額になっていても、譲渡所得の申告は不要です。この説明で先方も納得してくれました。本来なら、所得原価と必要経費を差し引いたり、損益通算したり、年間の譲渡所得の基礎控除50万を使うとかもするのですが、この人の場合は、30万条項一発で解決できたのです。税務署が聞いて来れば、私が対応致します。
でも、どう考えても、切手だけでなく、不動産の相続で配偶者控除を一切使わない理由が見えてこないのです。お元気そうだったし、普通に話せたし、署名・捺印は問題なく出来たのにです。葬儀屋さん紹介の税理士さんで無く、初っ端から私に声を掛けてくれれば幾らでもお手伝いできたかなと思うのです。
時期が時期だからなのですが、直近で税務申告へのお問い合わせが、出品者サイドの税理士さんから続いて来ています。相続した切手コレクションの売却と、その後に売った場合の譲渡所得についてです。弊社のスタンスとして、遺品のご出品受付に際しては、コレクションの処分で終わらず、税務申告への対応までを業務の一環としてやるので、相続とその後の譲渡に関して税務申告が必要ならば私に連絡する様にお願いしています。今までの実務経験で判っているのですが、郵便切手コレクションの売却に際しては、基本的には税務申告は不要なのです。買って、売って、特例を目一杯使って、それで差益が出てこそ申告が必要なのですが、そんな幸運な方は極めて限られます。現役のコレクターはそのメカニズムをご存じなので心配はいらないのですが、ご自分がお金を払っていない相続に関しては、所得原価がゼロで、譲渡所得に於いて自動的に認められる5%を引いた物に課税されるという思い込みが有るのです。この場合の原価は、被相続人さんが買った金額を用いるのです。昨今よりも高い時に買われている事が多いのです。でもこのルールは、納税義務者ご本人だけでなく、切手コレクションの売却を扱ったことの無い税理士さんもよく間違えているのです。無駄な税金は払ってはいけないし、頭の片隅にルールをインプットしさえすればその愚を避けることは出来るのです。昨年後半に扱った3件では、私が書類を作って、税理士さんに申告時にやるべきこととやる必要が無い事を区分けして説明したので、丸く収まっていると思います。因みに、利益が出ていないから税務申告不要というのは、一般のコレクターの場合であって、業者さんや、セミプロでも【業として】売買されている場合は前提条件が異なりますし、計算式が違います。【業として】の定義は、総合判断で為されます。お金を借りている、人を使っている、場所を借りている、広告を出している等々の要因を元にして決するのですが、今回はその人たちは対象外として論じます。3件共に、相続を因として弊社が仕事をやったのですが、かなりのボリュームの額になりましたし、何れも支払いは銀行口座振り込みなので必然的に確定申告の際に、税理士さんの目に留まったので弊社へのお尋ねになりました。中々にドラマチックだし、バラエティー豊富な案件なので、詳しく論じて行きたいと思います。切手コレクションの処分に於いては、真っ正直にやって、法的にも何ら問題なく、特にオークションを利用する事が如何に有益なのかを説明したいと思います。税務署にバレルから、オークションに出さずに一括で買い取りますという甘言を信じてはいけません。時間をかけて詳しく書いて行きましょう。
震源地を静岡とする案件は、それなりに動いています。年末年始でペンディングになっていた事案が二つ完結しました。この件以外にも私が知っていることは沢山有るのですが、状況を見つめながらの情報開示になります。件の人物のヤフオク出品も極めて動きが緩慢になっています。だからと言って懸案解決とはならないのですが、少し風景が変わって来ています。同時に、かねてから危惧していた事態も顕著化して来ました。無知ゆえの、悪意なき【2次流通】です。弊社への出品だけでも少なくとも5名から来ています。メールでのお問い合わせレベルで、速攻で蹴った物も有るのですが、普段の出品物に混じって、変な物が来ているのです。画像だけなら欲目に絆されて迷うケースも有るのですが、現物を手に取ればまさかミスはしないでしょう。細部を見なくても、色と紙のインプレションが真正の物とは異なります。私の仕事に関してはストレスを感じることは有りません。
でも、ヤフオクで善意の落札者に渡った物の2次流通が御気の毒なのです。情報通の方が調べてくれたデータでも、直接・間接混合で複数のIDで、明らかに出所が同一の物が1000点以上ある事が判っています。村送りや高級の手彫など10万円超の物のオンパレードなのです。総額は軽く数千万単位になっています。昨年末の物をちょっと引っ張って来て置きましょう。善良なコレクターが知らずにお持ちの物もお気の毒ですが、購入者の手を離れての独り歩きも始まっているのです。
Yahoo!オークション – 1円〜 日本切手 竜銭切手 半銭/壹銭/五銭 計6点 印有無 ヒンジ跡有無 y94-3354605【Y商品】
Yahoo!オークション – 1円〜 日本切手 未使用 竜文切手 五百文/二百文/百文/四十八文 計5点 ヒンジ無 y94-3321493【Y商品】
Webで見れば、色に惚れてしまうかも知れません。疑って慎重に見れば間違えないのですが、当初はそれなりの値段で買っているのでしょう。出品者の、【福ちゃん】は大手のリユースの買い取り屋さんです。資本的には、バイセルテクノロジーに買収されたそうですが、相変わらず随分とメディアに膨大な広告を打っています。広告費と人件費を賄える利鞘が稼げているという事は、特に切手に於いていかに安く買っているか想像出来てしまいます。このあたりのアナライズも時間を見つけて書いて見ようと思います。
12月7-8日の弊社のオークションの際に、数人から声を掛かられました。ヤフオクに鑑定書付でかつお釣りのシートと、銘10、久米島の田型が出てる、最低値1円スタート・・、買い値からしてなんじゃ、ムジャ、ムジャ・・でした。弊社はヤフオクではストアなのでビッドは厳禁です。ちょっかいは出せないのですが、取りあえずでウオッチに入れました。オープンになっている情報で、必要十分に状況が把握できました。インパクトが強かったのは、かつお釣り無目打のシートです。鑑定書はどう見ても本物です。日付も完全に私の記憶と一致しています。郵趣サービス社がシートで入手して分割した物で、元は保家茂さんの遺品で有名な名品で有る事が判りました。鑑定書の日付は2005年1月22日、署名はマスキングされていましたが、天野安治氏です。販売時のデータでは、売値は単片で@135,000円、銘10は250万です。一部カッター?での裁断の際にミスって不良品になったと聞きましたが、物自体は完売だったと思います。郵趣サービス社のビジネスポリシーは、現則として原価の倍付けなので、買い値は700万かなみたいな話をした覚えが有ります。社運を賭けた大勝負、見事な大勝利に終わったのです。銘10の鑑定書の日付は2005年2月19日です。2点共に依頼者は郵趣サービス社、鑑定署名者は天野安治氏、なんの矛盾も有りません。まず最初に100面シートで鑑定書の交付を受け、小売りの際に全品に個々の鑑定書を取得したのです。目打有りシートの分割では保証書付きと、何にも無しがほぼイーブンなのですが、無目打の方は100%鑑定書が付いています。普通は無くさないのでその後のディールは皆鑑定書付で為されている筈です。重要な情報を教えましょう。無目打分で、銘10に別の組織の真正の鑑定書付が存在します。最初は東海地方から、次は東京から、異なる方が弊社に出品してきました。ハッキリしているのは、何れも透かしが有った事です。署名者の名前は書きませんが、透かし入りの本物は無いと思います。透かし無の本物で市場に有るのは1点だけでしょう。
ヤフオク!をアナライズして見ます。出品者の評価数は2000強だし、変な評価も有りません。扱っている物は、日本と中国の切手だけだと思われます。ごく単純に分析すれば、切手専門で無い買い取り屋さんの切手販売部門かなと思います。失礼ながら郵趣品への知識は皆無です。安く買って、最低値1円で出して、トータルで利が出ればそれでOKみたいなビジネスモデルに見えるのです。ここまで書いて来た事も、この後に書くことも、推測なのですが滑らかに書けるのです。久米島は、既に書いた通り、弊社で売ったシートの分割です。買ったディーラーさんが、フランクリン・ミント社にシートの状態で売って、F社が茶色の豪華ホルダーに仰々しい解説書を添えて、随分と良い値段で分割したのでしょう。ちょっとした嫌味を言うならば、Pos8=1字ズレの定変をどう扱ったか聞いて見たい気がするのです。F社にそのセンスは無いでしょう。ここがやった仕事なら、数十万の利鞘でなく、100万単位で抜いているはず、第1コーナー田型なら一体いくらで売ったのかな。かつお釣りの無目打銘10のコレクターさんの買値はキッチリ250万です。さぞやビックコレクター・・いや我々が存じ上げている人では無いと思います。少し読み過ぎだけれど、同じ時期に同じ出品者が出していた、琉球の米価暫定シートの完揃いも同じルートの物かなと思うのです。他にも一杯有ったりして・・。今回のヤフオク出品者さんの素性は全く不明ですが、切手などはほんのオマケみたいな大きい商売をされている組織の一部かも知れません。
最低値1円スタートはOKです。不自然では有りません。本来は久米島田型もかつお釣り銘10も、それなりの相場で落ちていた筈です。チョンボを2つしています。余計な事をやって、あたらチャンスの芽を自ら摘んでしまったのです。小チョンボは、鑑定者の名前にマスキングした事です。個人情報保護の観点でやったのでしょうが、このケースでの署名者の名前は公扱いで良いのです。隠すことに依り、競りの参加者に胡散臭い事を糊塗していると推測されてしまうのです。大珍品が3点、普通なら絶対に出てこない物が唐突に出現、誰もが買い気より疑念に捉われてしまうのです。そして大チョンボは100面シートの鑑定書を売りに出したこと。出品者の無知をさらけ出している愚挙ですよ。悪意は無かったと思います。単に知らなかっただけでしょう。知識が無いから真偽が判りません・・は本当だと思います。でも、買う人にすれば、無目打の100面シートは有り得ない、それが権威ある鑑定書付で出て来ている、これには当然手は出さない、ならば他の2点はどうなんだろう。鑑定書が付いていても、良からぬ悪事が潜んでいるやも知れない・・と読むのです。100面シートの鑑定書は、郵趣サービス社のサービス精神の現れです。商売のテクニックで採ったけれど使い道が無いのです。だったら最上顧客の銘10の250万さんに進呈しようという事でしょう。序でに100面シートの表・裏のカラーコピーを付けてです。最初に貰った人も、これに関しては何らの意志表示をしていません。ヤフオクへの出品者も単なる紙っぺらのつもりだったと思います。でも、鑑定書付の本物の100面シートと思い込んで当初55万で落とした人、さぞやショックだったでしょう。取り消したのは結構ですが、再出品はいただけません。ヤフオクに於いても、その意図は無くても無知は罪なのです。今回のディールで、シートの鑑定書のヘンテコな出品が無かったなら、銘10の落札値はガラリと変わっていたと思います。幾らで落ちたかは言わぬが花としておきます。多分、久米島田型にも影響を与えているのです。今のヤフオク、氾濫している手彫の偽物だけでなく、怖い物が一杯なのです。逆に言えば、適格に判断できる人にとっては、美味しい狩場でも有るのです。鉄火場だけれど、銘10に関しては、当たりが見えてるスクラッチを見事に射止めた人が一人は居たことは確かです。
これにて、今回のお話はfin・・、いや、もしかしてTo be continuedだったりして。イントロで使った久米島のシートのコピー他は、オークションの出品に際して20~30人が申し込んでくれました。そして今回も5名程からご注文が有ったのです。ここの情報だけでの反響なので凄いと思います。だから、かつお釣りの銘10が弊社のオークションの出たならばどんな結果になるか、夢を見てみたい気分なのですよ。
かつお釣り切手のバイブルと言えば、山本義之・中井輝典共著の【郵便切手資料 かつおつり切手】で誰も異論を挟めません。でも、今となれば使い勝手の良さから言えば、1996年6月1日発行の、Bordeaux=久野徹君発行の研究主体同人誌第24号が上回っているのです。発行に当たって情報提供を依頼されたので、知っている事で表に出して構わない事実を教えた記憶が有るのです。昭和天皇に踵を接して生を受け、昭和の最後の日の数日後に鬼籍に入られた山本義之さんをはじめ、この本に登場している方たちは既に黄泉の国へと旅立たれている方が殆どで、現役で郵趣人として活動報告に接することが出来る方は皆無です。そして目打有りシートの行方に通じているのは、もしかして私しかいないかなと思うのです。12月8日締切のヤフオクのディールを見て、ふと記録を残しておこうと思ったのです。久野君の記事には異論は有りません。元ネタが間違っていれば兎も角、発表されたデータの検証の精度は高く評価できるのです。だからこの記事をベースにして書き進めます。
目打入りの完全品で郵趣界に登場したのは2シートだと思います。1シートは分割して販売、別の物は切られずに永久保存の聖地に入りました。分割シートのデータは、昭和40年に50枚ーが@1万円で卸売りされました。この時は物だけが単独で動いています。鑑定書は無論、販売時の伝票的な物も私は見知っておりません。2次分割は昭和41年1月14日に@35000円で売られました。この際には新生スタンプ・山本義之・中井輝典連名の証明書付きでの即売です。2度の販売で80枚近いかつお釣りの目打有の単片が存在し、ほぼ半数に証明書が付いています。最近の取引では当時の経緯を知らずに、鑑定書(証明書)の有無を気にする人が多いのですが、事情を知っていれば、購入に際して殊更に費用を払って鑑定書を取る必要は無いのです。糊付・透かし無・全型12の3要素を充たす偽物は有りません。私がオークションに載せる場合は鑑定書の有無はまったく気にしないのです。2次分割の@35000円はカンムリ10銭と同値だったそうですが、今となれば市場での人気とその価値は随分と差が付いています。かつお釣りに関して言えば、切手か否かで大論争に成ったのですが、それは今更白黒つける必要はなく、特に流通に於いてはコレクターの判断に委ねれば良いのです。私はオークションの出品物としてはそれなりに扱っていますが、自分で商品として買い取った事は皆無なのです。この切手だけは売り買いに於いて商品としては扱えないトラウマが有るのです。
山本さんとのお付き合いは、昭和の末期の数年間だったのですが、濃密な時を共にできたと思います。同氏は「シート」と「みほん」と「かつお釣り」で名を轟かせたビッグコレクターです。梅田の電子会館に入っていたゴムの会社に創業者の特権?で個室をお持ちで、毎日出社されていました。物と金との受け渡しで随分と通った覚えが有るのです。シートの内、メインの1次昭和から透かし無は勿論高額まで全揃いでしたが、私が知遇を得る前にすでに処分済みでした。その前と後が残っていてオシドリ5円や震災はオークションで売ったのですが、当時の知識として最大限に分類した出品記事を書いたので随分と褒めてくれました。みほんに関しては、山本さんの情報網には、海外からの里帰り品のデータは入っていません。元号が平成に変わってから私が扱った、震災と朝鮮字と支那字1.5銭青の平仮名みほんをお見せする事は叶わなかったのです。雑談で、旧毛軍事の山東省使用の少なさとか、旧小5厘の2次ボタの価値とか結構盛り上がった話しが出来たのです。プライベートのご処分でお世話をした戦前記念は、カンムリ10銭、トンボ1.5銭、日清の5銭の片割れ抜けの3種以外はコンプリ、欠けてる物も入手のチャンスは有ったけれど、足元を見られてのやたらとえぐい値段のオファーなので買われなかったそうです。みほんは没後にご遺族から私が買い取りましたが、昭和版の本に使った物だけが有りました。明治・大正版の物は皆無でその写真のプリントだけが今も私の手元に有ります。布告とかは借り物が多かったのかも知れませんが、手彫~田沢や戦前記念が1枚も残っていないというのが不思議ですが最早検証の術は有りません。ご遺族と話をしたのですが、ご自分で処分された切手の代金は、100%、檀家総代をされていた地元のお寺か神社に寄進されたとの事、ご家族は1円も貰っていなかったそうです。私が買い取ったみほんと月雁と見返りの数十シートを除いてですが。生前に売るべきものは売り切って、最後に残った大物がかつお釣りの完全シートでした。現物以外に、郵政当局から大日紙業への発注書、記事が掲載された内外の雑誌や新聞の切り抜きが山ほどスクラップされていました。購入価格は100万円、でも【テルスケ】=中井輝典さんが酒飲みで、その酒代が100万かかったので、原価は200万だと言われていた事が印象に残っています。本音で言えば、執念で収集された物に関しては、ご本人が在命中は余り扱いたくは無かったのですが、突然のご命令が天から下りて来たのです。橘さん経由で何とか売る術を考えるようにとの事でした。私が描いた絵は、シートを分割して@10万で、銘版とコーナーに色を付けて支払いベースで1000万なら行けるかなと思ったのです。分割されたシートに有った、Pos6の北原印はこちらに有るか否かは覚えていないのです。売れ残った場合の後処理とかの付帯条件を考えようとしたのですが、アイデアを提示する前に速攻で拒否されました。分割まかりならぬです。未来永劫にかどうかは兎も角、シートのまま持ってくれる人を探してくれ・・でした。値段の交渉で無く、情念に於いて切ってくれるななので動きは完全に封じられます。選択肢が無いのです。無理やり伝手を辿って、最終的には逓博に収まりました。勿論、資料一式耳を揃えてです。物凄く安かったし、私は何らのコミッションも貰っていません。この時、悪魔が囁いたのです。山本さんの条件は、値段には拘らない、兎も角切らずに売りたい・・なので、お年を考慮すれば商売できる可能性が有るのです。売り先を明確にする必要は有りません。口約束で大丈夫です。買い手との交渉で出てきた値段でなら、私でも喜んで買えたのです。10年抱えてほとぼりを冷ませば美味しい商売が出来るのです。でも、化けて出て来る怨霊に祟られるかも知れません。迷いは全く無かったのです。
公式にはオープンになっていないのですが、この目打有りのシートは、逓パーク=郵政博物館に入っています。手嶋さんと浅見さんの東京の消印の豪華本の出版記念パーティーで、当時の逓博の館長だった井上さんに聞きました。山本さんのかつお釣り、特別展示されませんか。怪訝な顔をされました。かつお釣り・・あれは、森山欽司先生が亡くなられて直ぐ後に、真弓先生の秘書の人が紙の手下げに入れて持って来てくれた、乃木の朱2銭L12のシートとかと一緒に寄付してもらった・・という返事でした。この会話でのかつお釣りは、無目打の事なのです。この話はそれなりに知られているのですが、目打有りの方は郵趣品の墓場に入った後は、誰もその姿を見ていません。この扱いになるならば、私が買い取って、13年抱えてマーケットに戻した方が山本さんの思いに叶ったのかなと時々思うのです。
久野君の記事で触れられている通り、目打有りと無目打共に、日本の郵趣会に於ける存在数は各2シートだと思います。その内各1シートは郵政博物館に有る筈です。民間に有った目打有りは前述の通り、分割されてマーケットの花形と化しています。最後の無目打を書きましょう。保家茂(ほけ・しける)さん、砂防会館と参議院郵趣会の世話人をされていた方の旧蔵品です。これでも現在進行形のドラマが起きているのです。
オークショニアとして、よく聞かれる質問が有るのです。今どの分野の物が一番人気が有りますか?聞いてくる人には悪意は無いのですが、答える立場で言えば、超愚問だしタブーのテーマなのですよ。正解は、全てのジャンルで安いですよ、以前の値段では絶対に売れませんよとしか言えないのです。もっと嫌味で返事するなら、貴方がお持ちのコレクションの、絶対に売りたくない物が一番の売れ筋ですと応えることも有るのです。伝統郵趣のテーマで、特定のジャンルに火が付いたのは遠い昔の事だし、今やカラーマークなどは扱いたくない物の最右翼に位置しています。特に人に秀でたスキルをお持ちの人が分類できる物に対して、誰もが判るごときに活字が躍って火が付いてしまうというのは怖い現象なのです。集める人が簡単に確実に分類できる物で無いと文化として昇華し郵趣界に於いて普遍の地位を保つ事は出来ないのです。特別に出来る人の尺度でキャンペーンを張ってはいけません。
普遍的な基準で、オークションで高くなる物ならば説明できますよ。物自体に希少性があり、それに伴う人気が付いて来て、なおかつ綺麗な物なのです。記念切手の未使用ですら、カンムリ・トンボ・制定のNHで極フレッシュ、ウエルセンターならオークションでは明らかに相場以上の値段を超えても半端ない人数のビッドが入ります。良い値段で落ちて、しかもビッド数が二ケタ近くて、同じ物が有れば次も確実に売れるだろうと読めてしまう物も有るのです。でも、ほんの少しの違いで、私が【極美】と書くか、【美品】と書くかでビッド10が一気に1~2に落ちてしまうのです。コレクターの物に対する欲求の度合いは私の読みを遙かに超越しているのです。希少性は普遍的です。でもコンデションはその場限りの刹那の幻で消えるのです。手前味噌の評価をすれば次は奈落が待っているのです。コンディションの対しては、厳しすぎる位の尺度で臨まないといけません。
随分と前なのですが、イギリスのロブソン・ローかクリスティーに琉球の100円加刷とカンムリの極美の田型が出たのです。センターもパーフェクト、NH フレッシュです。1回限りの出品なら、とても転売狙いの値段ではおさまりません。予想通りに相場を超える高値で落ちました。ところが、その後のチューリッヒとロンドンでのセールに、毎回必ず1点以上が続いて出て来るのです。皆同じ状態ですが同一品では有りません。情報通に探りを入れたら、シートを分割していることが分かりました。銘10とコーナーは田型+の分割なのでオークションでのロット数は20位かな。数年続いたと思います。ネタが割れたのでビッドし易かったし、いつしか値段も落ち着いて来たのですが、私の評価では最後になって辛うじて1~2点買えただけだったような気がします。情報はオープンになったし、無茶値で無く、誰もが転売前提でビッドするので、もうちょっと度胸が有れば、物の状態に惚れて、相場を超えて落としても商売できたかなと後悔してるのです。田型だから高く売れるものでは無く、単片にしたほうが売りやすいし、オークションでの競りが期待できるステータスだけに惜しい事をした物です。2点共にシートは、ユニークに近いし、状態を加味すれば、圧倒的なNo1ですが、シートで残すことに何の意味も有りません。珍品シートを潰して怪しからんという非難は全く当たらないのです。この2点の出所は仏蘭西だと聞きました。超目玉のこのクラスだけが単独で出てくることは考えにくいのです。
予想通りに連れが有りました。ビッグな2点が終わった後に、シートが売りに出たのです。大白20銭12x12.5と25銭13x13.5、同じ出所で極美だと読みました。値段的にも100円加刷よりは手頃だし、普通切手のアドバンテージも有るのです。1点限りだと決めつけて、タカハシさんと乗りでヤル事にしたのです。これ1点なので下見は不要なので出かけずに、単純計算してカタログ値の6掛け+でキタゾノ君に札を預けました。ビックリのレポートが来たのです。入れた数字の3分の1で落ちました。フロアで予想外の事態が起きていたのです。日本物を扱うビッダーは我々以外に一人だけ、フランス在住の中国人=Kong Wen-Sunだけでした。彼が下見してオークショニアにクレームを付けたのです。シートと書いてあるのに横で2分割、不味いだろうと言うのです。この時のオークショニアは、アンケ・スロットクさん、ポーランド出身の女性だけれど、責任ある立場の人です。即座に決断して、記事相違だから、メールビッドは全部キャンセル、場での競りオンリーにしたのです。参考値も安いのですが、メールはノービッド、それを売り切る為なのでロハの値段でスタートです。普段なら、中国人とは調整してのビジネスも出来るのですが、この時は時間的な余裕がなく、ガチンコでの競りになりました。向うはカタログ値のみを根拠にして、一定の数字で機械的に降りるのでこの条件なら負けることは有りません。エンドユーザーのやり方では、この銘柄なら、当然2分割になるのです。落ち値が安いので分けっこには色んなパターンが有るのですが、私が分割ルールをオファーしたのです。上下各2列、合計40枚、銘版とコーナー10B全部とそれ以外の60Bに切りましょう。値段はイーブンです。ご希望の方を選んでください、です。銘柄良しで状態極美、選択の優先権は私には有りません。でも、結果は予想通りというか期待通りになりました。私はどうしてもビジネスにロマンの色を眩してしまうのです。オークションで売ったと思います。銘10は2点共、天野先生がお買い上げだったような気がします。買い値が安いので商売とすれば楽でしたが、売れた値段は期待ほどでは無かったような気がします。売った数字ははっきりとは覚えていないのです。
ビジネスからロマンを消し去ることが出来なかった大きいディールが有ったのです。【かつお釣り】のシートです。勿論目打有の完成品です。完全に無報酬で動いたのです。尊敬すべきご老人の望みを叶えるには、このパターンしか無かったということで、かつお釣りが良い値段で売りに出る度に無理やりに自分を納得させているのです。35年経っているのでここで書いてしまっても良いのかなと思うのです。無目打シートに行く前に、目打有りを語りましょう。これに関しては鑑定書は要りません。無いと買えないという人は野暮な人だと言えますよ。
見覚えの有るマテリアルでした。久米島切手の第1コーナー田型です。数十年前にシートを扱ったことが有ったのです。必ずしも現存1点では無いのでしょうが、単なる田型で無い第1角なので調べれば簡単に分かるのです。シートの表裏の写真とを早速突き合わせてみたのです。随分前にシートを出品物として持ち込んでくれたのは大阪在住のご夫婦でした。由緒正しきお家柄で、ご主人は1736年創業の米両替商の末裔、今に至るも代々ご当主がお名前を継がれていて、有能な経営者としてご活動、時流に合うビジネスを手広くやられていました。ご来社当時のメインビジネスは1951年に開業された文具店、上手に時代の変遷に合わせて業態をチェンジされていて、今はインバウンド狙いと猫ちゃん文具で名をはせておられます。奥様は関西人には良く知られている政治家の妹さん、お二人でビジネス外でも日本文化に根差した芸術品を対象にした公益財団法人を設立されて京都で博物館を運営されています。ご主人は既に亡くなられて奥さまが引き続いて館長をされているのです。
随分前のお付き合いなのですが、切手でも良い物をお持ちだったと思います。数年かけて綺麗さっぱりと売り切りました。その中でも最もインパクトが強いのが、【久米島のシート】だったのです。出品物として預かったので、手品は使えず、そのままシートで出すしか無いのです。コレクターでは手が出ません。確か東京の業者さんが最低値で買ってくれたような気がします。その後の動きは聞いていなかったのですが即売で分割されたのでしょう。ご夫婦ともに気さくな方だったので、持ち込まれたときに結構雑談をしたのです。久米島シートがご自慢の逸品でした。随分と前に阪急百貨店に通っていて、催事か、常設の切手の売り場を持っていたトクモトさんの店で買ったと言われてました。現物以外に書類を数点貰ったのです。メモ書きの『証明書』を信じるならば、購入先は催事での森下浩さん、日付は昭和51年4月13日になっています。
折角の超一流の資料なので、弊社のオークションで売る際に世に知らしめて残したいと思ったのです。だから出品物のシートの表裏、森下さんの証明書、シャバリン氏旧蔵と思われる使用済シートのコピー、元逓信従業員沖縄戦記・久米島郵便局之部(再コピー)を作って確か1000円で配布したのです。かなりの人が買ってくれたし、このシートのコピーさえあれば、真偽は簡単に分かるのです。ご希望でしたら、余分に作っているので、一式1000円送料込みでお譲り致します。中々の力作だと思います。今回のヤフオクの出品は、Pos1の耳の折れ具合等で正に現物であることは容易に知れました。ヤフオク出品から更なる意外な情報が得られるのです。物は弊社のオークションで落とした東京のディーラーさんのシートで確定です。でも出品のおまけに私が関わっていない資料が付いていたのです。1945年10月1日発行 久米島切手解説書、立派?な茶色のホルダー入り、作成者は【フランクリン・ミント】です。弊社のセールでのお買い上げは、切手商組合加盟業者さんでF・Mintでは有りません。でも、素人のお金持ちに売るのなら、ネタとすれば良い物でしょう。化粧して付加価値を高める作業をやったのなら、中々に達者な商売だったかなと思います。起点が昭和51年(1976年)の阪急百貨店、終点が今月のヤフオク、その間に弊社のオークションが入ります。48年の時空の中に3回のディールが有ったのです。キーになるディーラーさんはよく知っている相手だし、勿論話も出来るのです。来年2月頭に会うので、その時に聞いて見ようと思います。うちのオークションで買った、久米島シート、フランクリン・ミントに売ったの?数十年経過の商売なので、多分正直に答えてくれると思います。
ヤフオク!の落札値は316,000円、今の相場は単片で15万なら当たり前に売れるでしょう。だから落ち値としては滅茶安だと思います。その理由も分かっています。不思議な現象なのですが、合理的に説明が出来てしまうのです。オークションに於ける心理学です。ヒントはかつお釣りのシートです。テーマとすれば久米島よりも数倍は面白いネタが有るのです。楽しみながら書いて行きましょう。ちょっと焦らして、私しか知らないシート分割話に飛びますよ。大白20銭と25銭のシートをぶった切ったのです。