2010年10月21日(木)

『珍品カバーの検証のご協力のお願い』
おそらくは最後になるであろう、日専分冊の戦前版2011-12が発刊された。遠からず手にされるだろうと思う。例年の通り、私は本年も巻末にコラムを書いている。今回は17ページで、興味を持っていただける内容だと自負している。ここで概略を書くのもくどくなるし、これからの内容は当記事を読んで頂いていることを前提としたい。まだ目にされてない方は是非お読みいただきたい 。
17ページで起承転結をつけてはいるのだが、ペンディングの部分を説明したい。記事のポイントは、和桜赤2銭貼 水口検査済のカバーが、悪意で作られた偽物である。切手は本物、宛名文字・消印が後年の作り物である。そしてそれを郵趣的なポイントで分析して、解明し、証明したということである。郵趣マーケットに2タイプの水口検査済の印が存在し、出所から完全に2グループに分かれる。然るに、この局では真正な印は1種しか使用しておらず、いずれかのグループは全て偽である。そして一方のグループの宛名は、その時期には存在し得ない表記である。墨の色や消印の感じも不自然さが有って、この偽のグループの出所は1990年代後半の名古屋のMSA(全日本切手交換会)と、現在進行形のヤフーのtomopu0527のIDでの出品の2箇所なのである。
このカバーの場合、真偽の検証に必要なファクターが揃っており、郵趣的な要因で説得力のある判定結果に導けている。ただこれは条件としては奇跡的であり、これ程の恵まれた情報量を持つカバーというのは希である。
今回の記事で指摘した偽カバーの作り方は3パターンに区別できる。
①基本的には本物のエンタの一部を変造して価値を高めた物。後貼や貼変えなど。
②台の封筒は本物、丁稚便などのスタンプレスを用い、本物の切手を貼り、偽の消印を押した物。
③白い封筒に宛名等も後で書き、本物の切手を貼り、偽の消印を押した物。何れも、かなり出来栄えが良く、簡単には判らない。逆に余りに珍品過ぎ、綺麗過ぎるために作り物ではと疑われる本物も存在すると思われる。
①は疑って見ればかなりの部分は見抜ける。しかし②③の真偽の判断が非常に困った状況である。この状況を放置も出来ないので、ここ数ヶ月、有力な協力者の手助けを受け、郵趣的な要因以外のファクターでの真偽の判定を試みている。放射性元素の半減期での検証は無理、それ以外の物質の成分分析をチャートを読んで、責任者の署名入りの鑑定書付でやれば、一つの要素で15万円位はかかる。筆跡鑑定も絶対的ではない。
鑑定書という表現ではなく、考古学的な検証という、ある意味、試行錯誤からスタートした調査で面白い現象が見つかっている。ポイントを絞っての調査でなく、明らかに偽の手彫のカバー数通の調査、分析を依頼したところ、明治初年のカバーならば、有り得ない要素が発見できている。一つは、本来その時期には使われているはずの物質が見つからず、逆にその時期には有り得ない物質が存在する。この2つの事実が、偽カバー上の、それぞれある種の特定の条件で出て来ているのである。
今までに検証してもらったのは、私の手元に有る数点のカバーである。郵趣界的に検証を要する重要な物は、1990年代の後半のMSAと今のヤフーのtomopu0527の出品物である。心当たりの物を買われた方に呼びかけたい。正規の郵趣界での鑑定でなく、私の持っている偽カバーの検証で、重要な要因が見つかっている、然るべき装置を備えた研究機関で科学的な分析を受けてみませんか。まだ、この検証は極めて私的な調査であり、マテリアルに対しての真偽の確定には直接にはリンクしていない。ただ、標本数が増えて、説得力の有るデータが蓄積できれば、将来的にはその可能性も出て来るのである。
次回の会合は11月初旬の予定、上記に該当するルートで入手された手彫のカバーで、抹消印又は重要な証示印が朱色の物、黒印でインクの油滲みが目立つ物の提供をお願いしたい。鑑定書の有無は、分析には何らの妨げにも、助けにもはならない。分析は完全なる非破壊で行い、結果は依頼者にのみ、メモの形でお教えする。所有者の意思を無視して、如何なる郵趣メディアにも公表しないことをお約束する。逆に、協力者は郵趣界とは全くの無縁の立場の組織であり、その属性の詮索はご容赦願いたい。現状では窓口は私のみということにしておいて頂きたい。
この文のみでは、私の意図するところが語れないし、誤解を呼ぶ恐れもある。是非、日専のコラムを熟読した上でご判断いただきたい。何分にも、先方のご好意による分析であり、ビジネスベースの取り扱いでないことは切にご了承願いたい。ご協力いただける場合は、まずメールでご連絡をお願いする。より詳しく説明しご納得の上でお送り願いたい。分析費用は、現時点ではご心配は不要である。