プロローグ

XRF=蛍光X線分析装置による珍品カバーの真偽の判定、急スピードで進んでいます。確定的な結論に導くには、まだ幾つかの懸案は残るのですが、100点ほどの具体的なアイテムを分析することにより、出来ることが明瞭になり、方向性は、はっきりと見えてきました。快く試料を提供して下さった方々に感謝いたします。かなり控えめに見積もっても、総額で1億円は下らない詐欺事件ですが、責を負うべき人物には何らのペナルティーは課されておりません。そしてそれは今後も極めて困難だと推察されます。事を荒立てて、検証しても、金銭的に益を受ける物は居ず、数多くの方の財産権が棄損される可能性が強いのです。でも、事実を知り、不確定な疑いを白日の物に晒せる手段を得た以上、何もせずに悔いを末代に残すことは出来ません。時間をかけて詳細を報告いたしますが、検証を進めれば進めるほど、特定の人物による悪意が、巧妙かつ広範囲であることが明確になりました。そして現時点でも、弊社のXRFを用いることにより、真偽のみならず、如何にして作ったまでも、高確率で証明できるようになったのです。偽物を真正品の値段で買ったという、金銭的な被害を受けた数多くのコレクター以外にも、流通に携わった、私も含めたディーラーも、鑑定委員長の席にいた、故金井宏之氏、故澤護氏も完全に欺かれていたことが明瞭になる事実が判明しております。一流、著名のキャプションが付くコレクターで、全く被害を被っていない人は皆無だと思います。数多くの人は、ある種の茫洋とした疑いを持っていたのですが、悪意の輩は、それを超えて事を為していたのです。所有者の許可を得た物に限るのですが、現物を画像で示し、分析結果を添えて、説明していこうと思います。実際問題、疑うことは出来ても、肉眼・目視で100%見抜くことは誰も出来ませんでした。それが可能になったのです。XRFの機械は安くないし、弊社には金銭的なメリットを与えてくれないのですが、事実を知りたいという、好奇心を満たしてくれるくれる高揚感と、事実が判明した達成感で、もう十分に元は取れたと思います。

分析手法をごく一部開示いたします。現時点で確定している知識だけでも、元素番号22=Ti=チタンは、国内外の何れでも、昭和12年以前には商業化されていないことが確認できました。四日市市の石原産業の磯部薫氏が、情報をくれました。何時から、実用化されたか、更にインキにチタンブラックとして、白色顔料として使われたかを更に詰めようとしています。昭和30年か40年代までTi不使用≒不存在時期としてカバーできると思っています。XRFでは、Tiは、明瞭に分析できるので、Tiが存在しえない時期のカバー又は単片に、Tiが出てくれば、ほぼ確実に偽物と言い切ることが出来るのです。極僅かな例外への対処法もわかっておりますが、複雑になるのでここでは触れません。Tiを根拠にした分析は、私が今ターゲットにしている人物の悪事に関しては極めて有効ですが、明治時代に作られた、那覇ボタの真偽の判定は出来ません。その時点でTiが存在していないので、偽物にも現れてこないのです。それ以外にも、HgとZn等で、それなりの情報も取れるのですが、それは後日に回します。

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