改めて、法律第50号 昭和47年6月1日公布・同年12月1日施行の郵便切手類模造等取締法を載せておきます。

第一条 郵政大臣又は【外国政府】の発行する郵便切手その他郵便に関する料金を表す証票に紛らわしい外観を有する物は、製造し、輸入し、販売し、若しくは頒布し、又は郵便切手その他郵便に関する料金の証票の用途に使用してはならない。

2 前項の規定は、同項に規定する物で【郵政大臣】の許可を受けた【もの】を製造し、輸入し、販売し、又は頒布する場合には、適用しない。

第二条 前条の第一項の規定に違反した者は、一年以下の懲役又は五万円以下の罰金に処する。

飯塚博正さんからアドバイスを頂きました。法令用語の解説です、「者」と「物」と「もの」には使い分けがされているのです。「者」は自然人や法人、「物」はそれ以外の有体物で、「もの」は抽象的なものに用いるとのことです、人物は「者」物体は「物」、自然現象や人の気持ちみたいな目に見えない存在物、宇宙のような漠然としたものが「もの」ということでしょうか。2項の【もの】ですが、助詞が【を】なので、【物】に置き換えて良いと思います。対象物が違法か否かで、それを製造・頒布した者が法に問われるということです。対象物の違法性が確定していてこそ、処罰の対象になるのです。

この法律で全てが決するのでは有りません。『総務省の郵便切手類の模造等』に実務上の詳しい説明が出ていますので、是非読んで頂きたいのです。

総務省|郵政事業|郵便切手類の模造等 (soumu.go.jp)

「取締りの対象となる郵便切手類とは」の項目に使用済みは対象外と明記され、未使用の【現行切手】に紛らわしい物が本法の対象と記されています。この定義は後で論じます。直ぐ後に、》総務大臣の許可を得たときは製造等ができる場合があります』に続いて【許可をされたとみなされ、許可申請を要せず、製造等ができる場合】が示されています。主として、サイズや材質で切手と間違える恐れが無いケースを示しています。その最後に、(9)外国で製造された模造切手類を輸入する場合で、そのものが当該国の郵便切手類等取締関係法令に違反しないもの。ただし、郵便切手類模造等取締関係法令の規定のない国から輸入する場合を除きます。と記されています。数回前に書きましたが、現行の【郵摸】法の起案の際の郵政省の便箋に書かれていた、万国郵便条約73条(模造変造等の処罰に関する条束)を批准している、UPU加入国がその対象だと思います。第一条の【外国政府】の発行した切手模造品が、日本の【郵政大臣】の許可を受けねばならないという事では有りません。当然ながら、世界中の切手をデータベース化して、違法・適法の判断を日本の当局がやるはずもないのです。【外国政府】と【郵政大臣】とを繋げる発想は普通の人ならば持たないと思います。外国切手のみほんやプルーフは当然ながら対象外です。許可申請は不要です。

【現行切手】の定義は簡単では有りません。特に郵趣家が持っている生半可な知識が邪魔になるのです。郵趣家は条文に書かれていない言葉まで、自分の知識に置き換えて常識では通用しない判断をすることが有るのです。ここでの議論はあくまで【郵摸】法です。現行切手=郵便法上の有効な物とはどこにも書かれていないのです。郵便切手に誤認される物を排除するのが目的です。郵便法に有る定義をそれ以外の法律に機械的に適用させるのは無理だと思います。旧【郵摸】=明治42年の逓信省令にも有るのです。第3条 ・・・【現行郵便切手】・・・、ここでも郵便法に限定しての有効性には触れられていないのです。郵趣家の思い込みで同時に思い上がりなのですが、郵便法での効力を一律に引用していることが多いのです。係争になり、最高裁に行って、確定判決だ出れば別ですが、全ての法律に於いて、郵便切手の有効性が郵便法上の規定にのみ合致するとは私は考えていないのです。現行切手の定義は、普通に流通している物で額面で購入できるものと置き換えて良いと思います。実務で言えば、海外からの輸入貨物に掛かる消費税ですが、効力を有する日本の郵便切手は有価証券なのでHSコード49:07で非課税です。でも、菊1円や月雁は郵便料金として使えますが、それを理由にして有価証券の主張は出来ません。49類=有価証券でなく、97:04の日本製の骨董品として免税の結論を得るのです。額面を生かす事よりも骨董的な価値が上なので、その判断を優先させるのです。このケースでは、法律の適用根拠が違っていても、結果は同じ事なので争うのは無意味です。旧【郵摸】は施行が明治42年なので、郵便料金としての使用禁止は、竜と桜、「5厘を除く」旧小判だけです。明治42年では一部ですが新小判はまだ現役だったと思います。この時点なら菊と新小判が現行切手、法律はそのまま続くのですが実情に追随して適用範囲は変化します。大正時代になれば、新小判と菊は現行からは外れるし、終戦時なら田沢・風景も非現行だと思います。郵便法で生きているから、それが現行切手だと主張して論を張るのは、一部の郵趣家だけなのです。今の【郵摸】でも、手彫と5厘以外の旧小判、昭和の追放切手、1回国勢、飛行試行以外は【現行切手】だから【郵摸】の対象だと考えているとは思いません。細かいことに拘れば、GHQ命令での追放切手には記念切手は含まれません。軍国主義や戦意高揚の物がNGならば、日韓併合も満州建国10年も国立台湾も当然その対象になるのですが、これらは【現行切手】という認識外なので対象から外しているのです。旧小判5厘が郵便法を根拠にして有価証券だと言い張る人の意見は認めたくありません。結論付けるなら、異論は有るでしょうが、1円未満の全ての切手と新小判~田沢の1円~10円が非現行かなと思っているのです。次は、警視庁保安課との遣り取りに入ります。