日別アーカイブ: 金曜日, 2月 19, 2021

情報公開

【ビジュアル印影集】準備が完了致しました。ご注文をお受けいたします。特に最初は集中が予想されますので、発送まで少し時間がかかる場合がございます。必ずお送りしますので暫くお待ち願います。会員さんは後払いでお願い致します。今月末発行の「郵趣」3月号にも広告を出しています。当初はドット集中すると思います。作る方とすれば、各国で複数注文が纏まっている方が有難いのです。オークション業務との兼ね合いも有るのですが、今からご注文を受け付けして頃合いを見てコピー機を動かして、発送は3月頭からとさせて頂きます。前金を頂いても優先発送は致しませんので、後払いでのご注文をお願いいたします。

少しコアな情報を開示して置きましょう。郵趣界に於いて、最近は本当に本が売れなくなっています。専門書もカタログもコレクション集も全てでです。幸い、的確な手段を取れば、印刷コストが大幅に下がっているのですが、郵趣出版も鳴美もスタンペディアもビジネスとすればとても合わない仕事をやられていると思います。本で儲けるというよりも、社会的な意義を重要視されているのでしょう。頭が下がる思いです。今回の図録は弊社が編集しているのではないのですが、実務上の頒布のコストは完全に弊社が負担せねばなりません。イニシャルコストとして、編集者へ10万円支払いました。追加してのライセンス(パテント料)として売れるごとに1ページ毎で10円払います。カラーコピーのコストは@13.2円(税込み)です。コピーの機械は買取りですが、紙代も含めてそれは考慮致しません。販売時に@35円頂いても、ザックリした数字で1ページあたりの弊社の利益は10円でしょう。手間賃のコストを考えれば間尺に合わないのですが、損さえしなければ良いのです。この仕事で数字的に目に見える利益は望みません。

この企画を立てるにあたっての法的というか、モラルの問題を考えました。オークショニアとしての私の考えは、オークションでの出品物のデータは、誰の物でもなく公の情報であり、誰もが自由に使える物だと思うのです。引用するにあたっての出所の注記も不要です。生真面目過ぎる方からたまには許可を求められる場合が有りますが、ご自由にどうぞ、何らの条件も付けませんが基本的なスタンスです。でも今回の場合は、一般の出版物へのデータ引用とは異なります。編集に際しての重要な情報を複数のオークションハウスの生きたデータを使っています。編集の基本スタイルは、鳴美の明治郵便局名録がベースです。旧版の田辺卓躬さんのそれを使われています。編集をスタートした時点で、残念なことに近辻さんの新版は出ていなかったからなのです。オークションのデータは、弊社の物が圧倒的に多いのですが、次いでタカハシスタンプ、MSA、サンフィラです。一部「消印とエンタイヤ」「菜の花」他の文献も有るようです。消えてしまったオークションハウスは勿論ですが、出版に当たって仁義を切るのは、(株)鳴美、(株)タカハシスタンプ様だけで良いと思いました。両社へは1807頁の揃いを進呈いたします。そして鳴美さんには、不統一印の本の決定版を作って貰わねばなりません。弊社も図録の編集者氏も喜んで協力いたします。

鳴美の綺羅星の如き出版物の数々で最も利益を受けているのは私だと思います。「小包送票」「国際返信切手券」「村送り」「サザーランド」などは、鳴美のそれが、まともに使える唯一の文献なのですから。これらの良書のおかげで、弊社のオークションが恥をかかずにやっていられるのです。でも1冊だけ強烈にクレームを付けたい物が有るのです。平成22年5月20日発行の『日本記号入切手カタログ』です。安達直氏の日本記号入切手図鑑を30余年を経て改訂した物です。情報量は遙かに増えていますし、完成度も数段上だと思います。でも、絶対にやってはいけない暴挙をやってしまっています。基本的には執筆者の責ですが、出版元も気づかねばならなかった落ち度です。安達本の編集のスタイルを踏襲して、グループ化に同じ記号を与えながら、マテリアルに違う番号を付けているのです。Bが押し印で、安達本で85種・鳴美本で79種、Eがローマ字2字で、安達本で93種・鳴美本で89種、Hがローマ字4字以上で安達本で56種・鳴美本で60種です。正確さでは当然ながら鳴美本が上でしょうが、それは自慢にはなりません。この本を出したことにより、安達本の分類番号を抹殺しています。同時に鳴美本のそれも無力化しているのです。オークショニアだから分かります。出品者は穿孔の出品物に記号を書いて来るのですが、どちらの本の記号かがこんがらがってしまうのです。本の発行部数で言えば、圧倒的に安達本が多いのです。データの完成度では鳴美本が上なのですが、コレクターにすれば、最重要の要素はマテリアルに与えられる記号・番号のみなのです。それ以外はおまけに過ぎません。私の場合も、出品物の表現に、鳴美本が出た瞬間に、記号・番号が書けなくなってしまったのです。どうしても必要なら、使用文献を区別して書かねばなりません。書いたとしてもその本をお持ちでなければ、無意味な暗号に過ぎな番号なのですよ。今までは安達番号のみでコンセンサスが得られていた物を、新本の登場の結果として穿孔記号その物をフルに書かざるを得ないのです。穿孔収集が一気に後退したのです。罪は重いと思います。穿孔切手の専門収集家は、2冊のカタログの存在を知っています。この人達には益で有って害では無いことは事実です。でも、一般の出品者とオークショニアにすれば、鳴美本の存在は害の方が大きいのです。出版社の責を問うのは気の毒ですが、執筆者が原稿を持ち込んだ時点で、気づいて欲しかったポイントです。マテリアルの分類記号には積み上がって来た常識が詰まっています。消してはいけない文化遺産です。幾ら動機が純粋で有って、悪意が全く無くてもやってはいけないことが有るのです。旧来の記号を変えるのなら、錯誤が起きないようにすべきです。全面的にゼロから新記号でスタートするか、旧来の情報を生かして、追加番号かサブナンバーを付けるかが必須でした。山崎君の出版元としての立派な業績は、多いに、恐らくは私が誰よりも評価しているつもりですが、この件は大チョンボだと思います。出版者としては甘いと思います。彼のお得意のパターンの、分厚い文献を作るにあたって、データを引っ張ってきたことに依って生じる数多くのケアレスミスは、功績の大きさ故に笑って許されるのですが、穿孔の本の2種の存在では与える影響が違うのです。救いようがない罪の部分が大きいのです。

そして郵趣出版の出版物でも良くない事態が起きています。組織の形態として、公表されている情報では、出版に当たっては合議制での事前のチェックが入るのだと思っていましたが、いつの間にか、必ずしもそうでないケースが見受けられます。その原因がケアレスミスでなく、執筆者のスキルに起因する本質的な問題なので深刻です。結果としてかなりのパートに於いて、一人の執筆者に任せてしまっている為の不具合です。例示すれば、日本郵便印ハンドブックの兵庫HIOGOの無声印の西野番号からの変更、さくらカタログ2019~2020年版での手彫切手他の暴虐な値下げなどです。洋桜30銭ブッチの使用済の価格ですが、この2年間分だけ35万になっています。2018年版までと2021年版以降は125万です。どちらが正しいかの議論はいたしません。執筆者にすれば、今のマーケットプライスを反映させるのが正しいと言うのでしょうが、それをやることによって生じる不都合にも目を配らねばなりません。ある種狭量な思い込みにとらわれて、事実のみを重視するばかりでなく、動機は正当であったとしても、行為を為した後の社会的な結果に思いを寄せる必要が有ったのです。専門分野に於いては抜きんでた知識が有っても、一般社会が受ける反応に対しての想像力に欠けている人が変に力を持ってしまって、チェック機能の欠如故に暴走を止められていないのです。合議制とか相互のチェックというのは形式上のエクスキューズであり、実態は出来上がった書籍から判断すれば、全く機能していないと言わざるを得ないのです。厳しすぎる表現ですが、根本的な原因を含めて、何故そうなのかを幾らでも実例を提示できますよ。ちょっと怖い事が起きているのです。今の郵趣出版さんの実態からすれば改善は不可能だと思います。大局的に見て何が不味いのか気づく人は居ないでしょうから。いや分かっていても、狼の首に縄を付ける度胸の有る人がいないのでしょう。ここらは書き始めると止まらないので又の機会にしておきましょう。真正面から論を張ることに躊躇は致しません。因みにさくらカタログの値段に関しては、流石に放置する事が出来ないので私が動きました。オークションの編集に普段は使うことが皆無なので全く知らなかったのです。それは私のチョンボなのですが、2019年版の時点ではこの暴挙に気付いていませんでした。たまたま必要に迫られ2020年版を見て、初めて深刻さを知ったのです。無視はできません。だから2019年の年の暮れにメールを1本送って、その結果2021年版から旧に復して貰ったのです。メール1本でケリでした。カタログの値段その物に関しては私は関わりたくないし、これ以上は次元が違うので今回は触れないで置きましょう。

【ビジュアル印影集】世に問う価値は有ると思います。編集者のポリシーで嬉しかったことが有りました。この人は、一切コピーを請求されていないのです。オークション誌から画像処理で消印を抜き出して、台切手に被せています。凄いスキルだと思います。それ故の欠陥も有りますし、完成度では明らかに不十分な図録であることを承知の上でのスタートです。オークションでのコピー請求にはどのオークションハウスも基本的には応じてくれると思います。でも、それに甘えてコピーでコレクションを作るのが平気になってはいけません。弊社でも事故印のコレクターでそういう人が居たのです。毎回数十点の請求です。そしてビッドは一切なし、確か会員さんで無かったので一発でシャットアウトしたと思います。もし当印影集でそれをやっていたら、当然ながらこの仕事は成り立っていないのです。コピー請求はあくまで、買う事が前提のサービスで有る事を覚えておいて欲しいのです。勿論例外も有るのですが、オークショニアに「コピーコレクター」と影口を叩かれるようになればその人は終わりです。オークションをやっていての感想ですが、地元印のディールは良い商売になるのです。ひと昔前のホットだった時の値段を思い出します。信州・近江・播磨・御影・・二桁安くなりましたし、最終の処分は目方で売らねばなりません。但馬・千葉・越後は大丈夫です。地元印は二人いれば何処までも高くなり、一人抜ければ最低値、もう一人消えればゴミになるのが現実です。今回の注文状況を3月末に一度締めて見ましょうか。各国毎のご注文数を公表いたします。どの国に地元印のコレクターが何人いるかが判ります。今回の企画はそれを知りたくて始めたようなものなのです。直感でご注文人数は100人+と読みました。日本全国は5人ーかな。現時点での販売情報の開示のソースは当ブログと【郵趣】だけです。期待しているのは口コミです。同好の士に教えてあげて欲しいのです。

越前国・吉田郡・森田(もりだ)局

タイミングよく面白い出品物がやって来ました。だいぶ以前からの弊社の会員さんの遺品で、アルバム70冊程のコレクションが関東の買い取り屋さんに流れていたのです。高級品は少なくて、殆どはブック単位でヤフオクで既に売られたのですが、手彫を含む数冊が弊社にやって来ました。その中の2冊が故人の地元の福井の消印です。そちらでは名家の出で、お名前に心当たりが有ったので、地元の情報通の方に連絡を取り、調べたところ完全に素性が知れました。切手自体のコレクションの手彫の部分にも、地元印の方にも竜はゼロでしたが、記番印と二重丸は結構揃っているように見えました。【ビジュアル印影集】の完成度を見るには格好の材料です。

越前と若狭ですが、記番印に関しては、印影集のデータが完勝です。故人のコレクションに有って印影集にない物は皆無で、その逆が結構有りました。記番印は前回書いた、第10回フロアの特集号のパワーが強烈ですから。でも、二重丸では様相が変わります。預かった出品物に有って、印影集に載っていない物が複数あるのです。この現物のセールは次回の5月末のフロアに100点弱並べますが、単片でKG稲多・脇本・「紛来付箋」に安澤・そして『森田』が印影集に載っていないのです。何れも私の記憶では少ないかなと思っていた物ですが、印影集にデータなしという事でその希少性が再確認出来ました。

ビジュアル印影集-0021

注目すべきは森田です。印影集の最初の原稿の該当ページを見たのですが、越前の最後の頁の吉田郡の欄にこの局が無いのです。図録の編集方針が、明治郵便局名録=田辺卓躬編の復刻版の順に並べているのですが、この本にもこの局は欠片も有りませんでした。でも現品が有るのです。連続便で2通です。1通が無切手での越前吉田森田宛、N2B2東京9.7.6→KG越前森田 脱落跡無し。もう1通が無切手(或は脱落)で同じ宛先、N2B2東京9.7.2→配達局で未納倍額の房2銭ペア貼 KG越前森田です。使用例もへんてこですが、物に厭らしさは有りません。コレスポンデンスなのですが、差出人が何らかの事情が有って何時も差出時には切手を貼らなかったのかな。

この局の沿革を調べてみたのです。田辺本に出ていないという事は駅逓局達書に載っていない局なのでしょう。郵趣出版の全国郵便局沿革録・明治篇のデータでは、「舟橋」14.12.15=五等郵便局(開局)中略 24.11.1 「稲多」(いなだ)と改称・ 39.1.1 「森田」(もりた)と改称です。鳴美の分厚く重い2分冊の日本郵便局名鑑では、「稲多」 9.6.28 五等郵便局で設置・14.12.15 廃止=「舟橋」に引き継ぎです。24.11.1 「稲田」と移転改称・39・1.1 現名称=「森田」に改称です。この2冊の立派な局名録にもKG越前森田の影すら見いだせないのです。でも、現実に物が有るのです。コレクションのリーフにもそれらしき記載が有りました。地元で調べたが開局時期は不明になっていたのです。

念の為に新版・明治郵便局名録を繰ったら、186ページの上から2行目に有りました。吉田郡・森田(もりだ)9.6.1 五等郵便局で開局です。理屈に合うのですが、近辻さんは9年6月の稲多=森田の情報を一体どこで見つけたのでしょうか。是非聞いて見たいと思います。印影集の最初の原稿では空白だった「森田」ですが、編集者にお願いして、私の情報で修正をして貰いました。森田=もりだ・9.5.1? 五等郵便局 →稲多 9.8ー 五等郵便局→ 14.12ーです。森田はKGが存在するとの表示ですが、図版は有りません。現時点ではまだ売りに出た記録が無いのです。そして房2銭ペア貼のへんてこな使用例のエンタですが、誰が買うかは既にはっきりと見えています。余りにもドンピシャな不思議な出会いに我ながら唖然としている次第です。改めて認識できました。資料を掘り当てた近辻さんはご立派です。そして探せばこんなケースは一杯見つかると思います。この印影集がきっかけになって、記録の修正にお役に立てば幸いですが。