月別アーカイブ: 10月 2020

JAPEXセール お勧め品アラカルト

オークション誌は予定通りに9日(金)の大阪北局の集荷で発送いたしました。ビッドが入り始めると、それを見て変な方向に誘導するのも嫌なので、意図するしないに関わらず情報の開示は致しません。取りあえずのご案内は今回が最後になります。ビッグコレクションが出所の、手彫・旧小判・昭和~新昭和のトラッドのマテリアルには触れません。珍品・希品・目玉品はカタログの最後の方に、裏表紙扱で5頁、45点をピックアップしています。全て状態も込みにしたお勧め品なので、見たなら分かってくれるでしょう。手品を一つ使いました。海外の超ビッグコレクターの代理人にインヴィテーションレターを出しました。中国のクラシックの郵便史がメインで、その流れで日本も外国局を主体に少しやっています。香港での水原明窗コレクションの大龍3種貼コンビネーションを7200万で買い、テレホォンビッドで弊社のニューヘーブン→八鹿のインカミングコンビも落としてくれました。今回の出品物にお勧めの物が有るのです。【維新の郵便】=旧白井二実コレクションのインカミングコンビカバー2点です。もう1点が鳥15銭のカバー、KIUKIANG差し出しです。この物へのご招待はやってみる価値が有ると思います。最近は音沙汰がないのですが、ご希望品が無かったからだと思っているのです。

先の事を考えて、新規のお客さんの反応が知りたくて、今まで温めていて全く出して来なかった物を一山並べました。飛脚便です。スタンプレス関連品で超一流のコレクターのエキスをそのまま抱えているのです。良い物が沢山あるはずなので、今回の結果を見てこれからの方針を決めましょう。今回はほんのパイロット版としての出品ですが方向性は見えるでしょう。今までの記憶ですが、店印を押した物で不落だったことは無いと思います。私に知識が無いので思い切りの安値で出していたからかも知れませんが。

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お勧め品を数点お目に掛けましょう。Lot1946 改桜1銭ブッチ貼鹿児島市内便 イマ1号 ローカル都市の市内便、しかもブッチ貼です。こんな物が良く有ったと思います。Lot568 小判1銭葉書に旧小1銭黒貼 不統一武蔵大森消 30数年前に見かけて、縁がなく、取れなかった物なので懐かしい思いが強いのです。私のオボロゲ記憶では、元持ち主は琉球切手のコレクター、京都在住のブローカーでセンスが良く、小島勇之助さんのコレクションにもタッチしていた人でした。亡くなった直後に息子さんが沖縄から遺品を送ってくれたのですが、10円加刷の100面の文字の原版?など良い物が有りました。Lot557 支大白11/2銭貼絵葉 初日実逓便 大白の最初の2種は無加刷ならFDCもそこそこ有るのです。でも、支那字は初めてだと思います。FDCコレクターは反応出来ないかも知れません。買っておいて損は無いと思うのですが、ルイスと巴水を買う人が買ってくれるとは思えないのです。Lot1782~1795はモダンの官製葉書のプルーフです。夢殿・飛天は見れば分かるのですが、エログラムは必見です。今回初めて気が付いたのですが、折れ無しに意味が有るかも知れません。同じルートの封緘葉書他のプルーフを大分売って、でもまだまだ有るのですが、一見単なる折れ無しにお化けが居るかも知れません。出何処からして【初刷り】の可能性が強いのです。窓口品と区別が出来なければ、単に折れ無しでしかないのですが、丁寧に見れば何かが見つかるかも知れません。Lot1806 飛天青枠を見て気づきました。売らずに積んである一連の物をもう一度精査してみます。今回のエログラムの売れ行きを注目致します。デッドストックになっている物も、やる気を出して並べればもうひと商売になるかも知れません。

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見どころ満載のJAPEXセールです。お見逃しなく是非ご参加をお待ちいたします。オークショニアとしては今までにない満足感に浸っています。セール開始前だけの仇花に終わらなければ良いのですが。今日からの私の仕事は12月セールの2冊のカタログの編集に専念です。ピッチを上げなければ、デッドラインに間に合わない状況に来ています。目勘定であと2500点を20日弱で書き上げねばなりません。

産業図案切手発行下における速達郵便迅速化4施作

随分と仰々しいセンスの悪いタイトルです。視聴率狙いのテレビ欄の謳い文句みたいで、この言葉を使っては切手展ではご本人が望むような良い点数が貰えないのです。自己陶酔の世界に入っていると見做されます。謙虚さが無いというマイナスイメージになってしまいます。これは性格なので言っても聞く耳を持たないし、作品の評価に於いては、見た目以上には入手の苦労の度合いなどを評価してくれません。だからこの人の切手展作品の作成に関しては、私は意図的に関わらずに逃げまくっていたのです。好きにやって下さいよ、見る人が見れば分かるので、点数は気にしなくて良いでしょうが私の忠告でした。

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ご本人は寿命を自覚されていたと思います。昨年末にお迎えが来て、書き置きのメモの指図に従って、年明け直ぐにお呼びが掛かりました。ご挨拶を済ませて方針を決めて、満中陰を済ませてコロナが落ち着いたタイミングで出品物を預かりに行きました。完璧に整理が終わっていたのです。文献は「郵趣研究」「スタンプコレクター」「ジャパンスタンプオークション」が完揃い、他は極ごく限られた単行本だけ、竹久夢二の婦人画報は10冊近く有りました。切手の方はメインのパートがボストーク2冊+少しの重品だけ、これが全てです。現行切手は随分前にご本人が処分済み、50円の印刷庁銘10Bは100万で売っていたし、おしどり他も、綺麗さっぱり売り逃げ成功です。新昭和の50円右書きは、数年前に私が扱いました。故大井さんの有名な物で、JPSオークションでの買値位だったと思います。螺鈿の無目打も即売で飛び込んだ買い値の元は取れたと思います。良い物は、ご本人が元気な時に売るべきです。高買いしたと思っても、周りの雀が買値を覚えているので、達者なディーラーは上手に売り先を探すのです。手数料も無意味には乗っけません。楽しみ賃が儲けなので、皆が幸せになるハッピーディールが出来るのです。

私が預かった時点では展示リーフを完全に崩していて、現物と書き込みが全くぐちゃぐちゃで物が何処に有るかを心配しましたが、行方不明の物はは有りません。目玉として覚えている物は全部有りました。買った時点で何度も見せられて、滔滔と自慢されていた物ばかりです。お金と時間を掛けてそれ以前に物に拘って集めた物なので、手に取って出品記事を書く時に改めて気付きました。展示リーフでは書いていない目立たない隠れた珍品が有りました。売る時には見る人が見てくれて高い評価を得られるのです。派手さでなく、買う理由と買わない理由をきっちり定めて集めていたのです。オークショニアとして腕の振るい甲斐が有るのです。料金と日付け、郵趣家便の取捨選択を妥協せずに買ってくれていました。大いに楽が出来るのです。マイナス要因になる、些事の欠陥を取り上げて、タラ・レバ・・を感じなくても良いのでストレスが掛かりません。切手展の点数には繋がらないのですが、ご本人の思い入れに私が魂を吹き込んでやりましょう。自信をもってやれる楽しい仕事です。

晩年に拘って収集さてていたテーマが表題の【産業図案・・・迅速化4施作】です。Lot1193~1219に並べました。きちんと書けるかなと思ったのですが、やってみるとそれは危惧でした。物が良ければ、オークショニアに専門知識が無くても満足できる仕事が出来るのです。事実を見たまま書くだけで、買う人が勝手に評価をしてくれるでしょう。〇速を頭にして、特別速達の東京―大阪間の試行期間の往復便、拡大期の長野→東京他の都市マタギ、あかつき便〇特は捻った物が多いのです。それ以上に【即日速達】が目玉です。区間限定時の名古屋→大阪は標語印が出ているので皆さん狙って探していたと思いますが、今回の物が初見かも知れません。私が最も嬉しかったのが、郷ノ浦→印通寺、壱岐の国での即日速達、引き受け印が午前印、配達印が同日午後印、着印にも拘ったことが見て取れます。国内航空は初日実逓、1週間料金の民間便で決まりです。物に相応しい記事を書けたと思います。後は結果を待ちましょう。

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この人の拘りは特にエンタに於いて顕著なのです。捕鯨3円の印刷物船便は12日間の民間便、茶摘み他貼の業務用書類グァム宛は基本が24円+増料金が12円、航空便香港宛は16円+15円で2種共に適正貼り、妥協を排除しての収集だったのです。透かし無も、80銭は中身入り、これは勿論宛名後書きの初日便では有りません。1円の農産物種子は料金と日付けがドンピシャです。宛先の古谷幸介さんは著名収集家のご家族ですが、下関の古谷農園の経営者、勿論完全な民間実逓便なのです。最初に弊社に弟さんから持ち込まれ、オークションに出品して、梶原英太郎さんがわざわざ落としに来てくれたのに50何万かで競り負けて、その後もスッタモンダした事を今も覚えているのです。配達夫30円貼、3倍重量の図入り年賀富士山はヤフーで頑張って落としてます。産業と透かし無は製造面での派手な目玉が少ないので差が付かず、切手展の点数狙いはプルーフ頼みになるのですが、使用例では結構楽しめる分野です。さり気無いポイントで捻りを効かせることが出来るのです。でも、この人みたいに徹底的に拘って執念を燃やして、探し続けてこそ初めてそれが可能になる、良い見本がここに有るのです。続く人たちがしっかりと受け継いでくれることを期待してのセールです。

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盲人用点字

今回のセールの前宣伝を致します。良い物が目白押しなので、幾らでも筆が進みます。オークショニアが意図的に拘ったテーマが二つ有るのです。盲人用点字と産業時代の急速便です。空前絶後の完成度が高いコレクションです。贅沢な仕事が出来ました。前所有者お二人に感謝です。最後のパートのLot1965~1980が盲人用点字です。私はオークションの記事に、唯一とか現存何点という定量の表現は使いません。クラシックの切手その物ならば兎も角、モダンの物は現存数など判る訳は無いし、それを書いても反感を招いて、ビッドの値段にはむしろマイナスになると考えているのです。書かないのは無知ゆえに知らなからでなく、無責任な謳い文句を使いたくないというポリシーだからです。著作物や切手展のコレクションにそれを書くのは構いません。間違えればご本人が恥をかくだけなので、勝手にやれば良いのです。でも、少なくとも私はそれをスタディーだとは評価を致しません。その人が書いたとしてもそれを上廻るマテリアルを見聞きした経験がかなりの確率で有るです。それに現存数が2でも3でも同じだと思うのです。定量表現の数字が少ないから、希少で有り、価値が高く、流通の価格が上がるとは考えていないのです。郵趣品の価値はもっと別のファクターで決まります。

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ラストロットの乃木2銭貼盲人用点字アメリカ宛ですが、よくぞこんな物が有ったと思います。最初は印刷物の不足便だと思ったのです。何のメモも付いていませんでした。盲人用の確信を得た後も手当たり次第に調べました。きっちりした文献には出ていないと思ったのですが、さりげない発表を見つけました。2015年発行の鳴美「昭和切手専門カタログ」の82ページです。図版だけの地味な扱いで、殆どの人が見落とすと思います。このカバーは、私の知る限り売買の記録は無く、切手展への展示や文献上での紹介もなされていないと思います。中身に点字文が入っているので物に間違いは無いのですが、郵便物上に盲人用点字の記載がない外信便を、よくぞ郵便局も正しく取り扱った物だと思います。外信便の点字は、全ての時代を通して、恐らくはオークションに初登場でしょう。しかも「乃木2銭」の単貼適正使用です。ラストロットなので盛り上がって欲しいものです。

乃木の点字は、外信便なのに和文消、野暮な人はそれを貶すかも知れません。無理やりに買わない理由を探すのです。今回の一連の点字は、お金以上に時間がかかっているコレクションです。料金と日付けを吟味して、適正期間の単貼に拘っていることが判ります。盲人用には珍しい程に状態も良いし、消印も読めるのです。ここらは私が拘って、まだまだ複数あるラインアップから本当に良い物から順番にチョイスして並べたからなのですが。全ての要素を精査して、買わない理由が見つからない物が有りました。Lot1970 3昭3銭貼幣原喜重郎宛中身入り、櫛型鬼石21.3.5 極美です。料金も日付もOKです。中身は戦争で視力を喪った傷痍軍人さんの総理大臣あての嘆願書でしょうか。中身を読み下したらリーフの説明に使えます。ここらの日付なら2昭3銭か1銭3枚貼が当たり前だと思います。画に描いたような珍品ですが、物には問題は無いでしょう。残念ですが、点字便専門のコレクターは今は頭には浮かびません。このエンタを熱望して、絶対に落とすから早く出せと何度も急かされた横矢仁先生も間に合わずに逝きました。そして同じような物が弊社のセールに出たことが有るはずです。60何万かで落ちたのかな。落とした人は今回はビッドしないでしょう。さあ、ガチガチで買ってくれる人は居ないのですが、欲しい方は沢山いると思います。珍品コレクターが手ぐすねを引いてお待ちでしょう。絶対に、【買わない理由が見つからない】素敵なカバーなのですから。

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今回の一連の点字便の前所有者さん、凄い物をお持ちでしょた。98冊の濃密なマテリアルを一瞥して、ビックリ仰天したのです。有るはずがない使用例が有りました。適正使用の1枚貼・変な理屈を捏ねない、真っ正直な使用例としてですが・・竜48文から現行の84円までを並べて見ての最珍品だと思うのです。透かし無80銭の盲人用点字です。大河原欽吾宛、怪しい物では有りません。出品する場合は、最低値は100万でしょうが、世が世なら、尼崎のM木先生と神田神保町・荒魂書店のI山さんがガチンコで競れば、1000万になったかも。勿論状態が完全ならばなのですが。ご覧の通りの大傷です。見るからに買わない理由が有るのです。でもご所望の方がいたのです。10万位なら喜んで買ってくれたでしょう。競争展には出せませんが、別の使い道が有るのです。数回前のオークションに出しました。迷うことなく私が付けた最低値は1000円です。1万円位で何人かがビッドすると思ったのですが、アタックはお一人だけ、取りあえずのメールビッドで10何万・・、競る相手がいれば落し切るまでどこまでもやるでしょう。買わない理由は有っても、買う理由も有るアイテムだからです。拍子抜けでした。発句の1000円でハンマーです。これが健全なオークションの姿です。でも、今回の盲人用点字の並びなら、延々と何処までも競ってくれて良いのです。物が良いので、オークショニアはストップを掛けることは致しません。

今回のJAPEXセールですが、当日の会場の大きいイベントが皆キャンセルになりました。だから、5階のフロアの半分を弊社が貸し切りで使えます。収容人数は300人以上のキャパで、ゆったりと机をセットできるでしょう。会場の使用時間は5時までですが、蛍の光が流れる中でラストのパートを競りましょう。皆さんが帰ってしまっての寂しいセールにならないことを望みます。

 

支那字入旧毛高額最大ブロック

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Lot524は字入毛紙10円未使用です。カタログ値は95万ですが状態は極美ではないので抑えた最低値を付けました。ボストークコレクターにとっては、憧れの1点だしアルバムに入れるには十分な状態だと思います。落札値は最低値の2倍ぐらいになって欲しい物です。弊社のオークションのターゲットですが、派手さに於いては場でノンリミットで競り上げて値段構わずに買ってくれる人たちです。でもそのやり方では全部を落せば怪我をするし、当然長続きしないのです。地元印とかに収集範囲を絞りに絞った人であれば十分可能かも知れませんが、その場合、逆に買いたいものが中々出て来ないと思います。それ以上にこの方達が抜けてしまった後の光景は荒れてすさんでしまっているのです。その場限りのスポットの需要で有る事を覚えておかねばなりません。普遍的なディールでは有りません。お客がいるからと言って、ピンポイントにターゲットを絞ったオークションへの出品などやるべきではないのです。

オークションの現状を分析すれば、FDCと製造面のバラエティーがテーマとして有望です。FDCは大手業者の下支えが入ります。小売りで売れているのです。文化部やNCCのよく見る物は駄目ですが、ルイスのFDC=1次昭和と国立公園なら6万円で買っても大丈夫なのでしょう。記念は3割引き位でしょうか。渡辺の巴水カシェも強気でないと落ちません。瀬戸口とか一部の肉筆も大丈夫です。後は版元と銘柄次第ですが、私がチョイスしてフロアに出している物は、間違いなく売れています。メールに回す物は売れ行きがガクッと落ちますが、フロアだから高くなり、メールだから安くなるという物では有りません。正にその真逆で、高く売れる物をチョイスしてフロアに回しているのです。この判断はまず間違えません。この事実を素人さんは随分誤解しています。今回のJAPEXセールに関しても、数人からきついクレームが来たのです。JAPEXセール用に出品したのに載っていない、怪しからんという言い分です。この申し出は聞けませんし、返事も致しません。完全な勘違いなのです。折に触れて、この件は書いていますが、出品物をどのセールに出して、どう記事を書くかは、100%オークショニアの専権事項なのです。最低値に関しては、ルールを定めてその範囲でご希望を聞くのです。ご一任を前提条件とは致しません。それを指定されたなら、極まれに値上げをすることは有り得ます。見落としていた要素を値段にプラスするので値段を上げるのです。当初のままなら、出品記事が間違っていると誤解されそうな場合なら、高めの修正も有り得ます。同時に、売れないと判断しても、一方的に値段を下げることは【絶対に】やりませんし、値段切り下げのお願いも致しません。プロがプライドをかけてやっているので、個々のケースで交渉の余地はないのです。ご不満なら出品はお断りです。ご指定の値段で私が判断して、ノーチャンスなら不掲載で返品です。高いと思っても、物が良くって、間違えたら売れるかな・・の場合は、そのまま載せてしまいます。その代り、全面的に最低値一任で無い場合、不落札なら手数料500円を頂きます。結果としては安くは有りませんし結果を見ても賢明ではないと思います。ご判断は出品者にお任せします。でも最初は一任で出品物を送って来て、事前送付の掲載記事を見て、最低値の変更をする人も中にはいるのです。この希望通でも原則として受け付けますが、全面一任の優遇条件からは外れます。100点出品で、1点変更の場合でも、100点全てに不落札手数料が掛かります。次の出品はこれでなくなるので、このやり方は我ながら大正解だと思います。救済措置は当然ながら一切取りません。一任とはそういう事ですし、値段の設定には、私は自信を持っているのでこの原則は曲げません。その代り、出品物を受け取ってから、売れた物への定めた期日での精算と、不落札なら返品までの全てのシーンにおいて、絶対的に責任を負うのです。弊社のオークションに於いては、何が有っても公的にも、私的にも、ご出品者の責を問う事は有りません。無意味に欲張らなければストレスフリーで完遂できるのです。出品から精算までの期間ですが、思うほどの時間は掛かりませんし、それぞれのタイミングで情報を出しますし、書類も間違いなく送ります。取引機会の提供という、無責任な場所貸しに過ぎない【ヤフオク】と違って、私はオークションに於いて全責任を被る覚悟でやっています。

トラッドのオークションのメインのターゲットは、切手展、ましてや国際展に出す人では有りません。その人たちは自己責任を取れるのです。必要なマテリアルの入手ルートの一部だと見てくれば十分です。手取り足取りのサービスはやりません。最も重要視している顧客層はボストークコレクターなのです。縁あってオークションに入ってくれれば、必ず長続きしています。年4回+JAPEXセール位で良いペースかと思います。待つ楽しみも有るでしょうし、余り頻繁にオークション誌が届いても、思わず買い過ぎて資金的に苦しくなるのは好くありませんし。速攻で買えなくても、カタログを受け取って、マークしで、ビッドして、結果が出て、悔しい思いをして、自然に上手なお付き合いになるのです。あと何年かは弊社はこのペースでやれるでしょう。

ヤフオク1円出品のおかげなのですが、随分と切手の値段が落ちています。昨日郵便局で売られた如き、有り得ないような極美品は別ですが、一般の美品レベルなら、見返り・月雁のシートの相場は1万円台になっています。制定でも10万ちょっとでNHが買えるかと思います。単片の場合、朝鮮字と大白は例外です。NHの美品ならフル型を超ますし、ヒンジ付でもそこそこの値段になるのですが、それ以外の物は竜から昭白までは、日に日に明らかに下がっています。下支えの需要が見えにいのです。日本切手名鑑の値段を見れば判ります。最高級の文献ですが10完+別冊で、10万の値段を保っていたのですが、7万になり、5万落ち、3万でも残ります。売り切りご希望の出品なので、今や1.5万になっています。これが現実なのです。ディーラーさんは残酷です。売れない物には一切手を出しません。銘柄を厳選するのです。コレクターにプラスして、ディーラーの仕入れの需要が強くある、電信切手未使用と不発行ならどんな状態でも売れるのでしょう。問題なく完売です。転売前提の業者さんとエンドユーザーのコレクターがこのテーマにはぶつかります。ボストークのスペースが空いているから売れるのです。単価の金額は問題では有りません。支払い能力への危惧には及びません。欲しい人が居る物をオークショニアが提供できれば良いのです。

その意味で、支那字毛紙10円は絶好の銘柄だと思います。今回の物の場合、かなりフレッシュですから、NHなら表紙に使ったかも知れません。目打がちょっと気になるので、やっぱりそれは無理かも・・。ご出品者はヤフオクで随分頑張って買ってくれていたのです。未使用以上に、みほんはかなりお持ちです。不発行・制定・トンボ含めて記念はコンプリでしょう。普通切手は対象外かも知れません。私事ですが、みほんには先日書いた山本義之さんとの繋がりを含めて縁が有って結構気を付けていたのです。日本国内の複数の郵政関係者の物と、随分前にイギリスのオークションで買った大きい幾つかのロット、香港のダイナスティーセールでのスポルディングの物他で、みほんが存在する物はほぼ完璧に扱ったと思います。少し前までは竜2銭が少なかったのですが、3枚は売りました。墨六イ・ロのひらがなもユニークですが、マーケットに出た2枚とも私が扱って、福原一信コレクションに入っていました。20銭のロかハだけが30数年前に見つけて、メールビッドしたけれど負けました。今後も望み薄なので、残念ながらコンプリならずです。全く無意味な拘りなのでどうでも良い事ですが。

それはさて置き、支那字のブロックで2つのディールが有ったのです。偶然にも、両方共にNYのCherrystone Auctionです。1989年頃だったと思います。毛紙13×13.5の無双、80~90枚ブロックで銘付、それ以外にも支那菊と田沢の低額のシートのロットです。何が根拠かは忘れてしまったのですが、私は無双だと確信して飛び込んだのです。数万ドルの上の方のビッドをしたので、アメリカのエージェントがわざわざ飛行機で飛んでくれていました。無双でない値段で落ちました。シカゴへ帰るラガーディア?かニューアーク?から真夜中に結果報告の電話をくれたのです。楽しみながら無双は時間を掛けて売り切って、もはや欠片も有りません。菊と田沢のシートの記憶が全く無いのですが、ディーラーに一括で売ったのかな。いまなら良い商売になるのですが・・。別件は割と最近です。毛紙高額5円・10円が田型のセットで、バラが何枚かと菊の高額のマルティプルが幾つか出ていました。状態は見るからに極美です。旧高額の場合、銘版が無いのでこれが最高のマテリアルです。値段も考えずに、全部落せになるのです。毛紙は割と安かったと思います。菊の方は随分と高くなったのですが、これは欲しい人が複数いたせいです。菊は直接、コレクターの物になりました。さて毛紙です。単片は極美なので苦も無く収まったのですが、田型は簡単には行きません。単純計算で(45万+90万)x4=540万です。恐らくは現存最大、他に有ってもコンディションでこちらが上、銘版不存在のアドバンテージも有るのです。これはまさか切れません。取りあえず、郵趣ウィークリーに広告を出しました。勿論電話は鳴りません。全日展かどこかの催事で広告の拡大コピーを貼ったのです。チクった人がいたのでしょう。予期せぬミヤコの気紛れのお節介なお殿様からお電話です。田沢はとっくにの昔に卒業されたはずでした。自分が目を掛けている、四国の●●君に入れてやりたいので、取っておいてくれ・・。強力なライバルの●●には売るな・・。素っ頓狂なお電話一本で、10年間の塩漬けを覚悟して金庫に封印したのです。半年ぐらいたった頃、話を聞きつけた時の氏神が現れたました。売るなと指名された正にその人からです。あれ、まだ有る?タイミングよく、取り置きご希望の方とも連絡が取れました。何故かご機嫌さんだったので、即座に誰に売るかを知らさずに様子を聴いたら、封印解除を快諾してくれました。結構エゲツナイ話ですが、これだけのドラマを生んでくれた、支那字毛紙10円田型です。今回の単片レベルなら表紙に持って来なくても十分に仕事をしてくれたと思います。買って、売ってだけが商売でなく、色んなお付き合いを楽しんでやっているのです。

高級品3点のシートと田型を切らなかったお話はこれにて完。今後数回はJAPEXセールの目玉品=わたくし的に好みの物を取り上げます。今回はWeb.に情報をUpしてから随分と反応を頂いています。Web.での写真版の誤アップにお二人から、これは即刻訂正済みです。Web.でコピーのお申し込みが7名から、担当者が手が一杯なので暫くお待ち願います。ビッドが3名から、勿論何時もの面子です。ドイツからも情報が来たのです。Lot430 大連星ヶ浦→哈爾濱中央のエンタです。5銭脱落と書いたのですが、合ってるよのご指摘です。このエンタは、出品募集締め切り日のご来店で受け付けました。私と相手と2人でエンタを眺めての会話です。良い物だけど左下に脱落跡のような物が有る。満州宛の航空料は15銭、だから5銭脱落だよな・・。一瞥して違和感が無いので、何も調べずにそのまま記事にしたのです。ご親切なアドバイスは、勿論フローリアン・アイホン君からです。彼の情報は何時も正確なのですが、成田さんの「日本の航空郵便」で調べました。昭和15年、満州国内郵便物の航空増料金、大連が例外でこの地域に適用です。第1種4銭+航空増料金6銭=10銭です。変な程の安さですが、この料金が有るのです。15銭から6銭への大幅の値下げです。脱落ではないのです。航空15銭は増料金がそうなので、併合料金ならば1種の基本料金がプラスですが、私の思考からは完全に抜け落ちていたのです。扱った覚えもないので覚えていませんでした。Web.の記事を見て、私のミスを見つけて、即座に反応出来るのは神業です。アイホン君なら、ここらの料金体系も頭に入っているのでしょう。さあ、これは何方が落すでしょうか。オークション誌の発送までの数日間、幾つか楽しい記事を書いて見ましょうか。セールがスタートした後は情報の漏洩は出来ません。それ以上に12月セールの原稿書きが既にタイトになっているのです。何時もの秋の私の仕事のリズムです。

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坂東ラーゲルシートの行方

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Lot525は坂東ラーゲル2完です。これもオークションでの人気商品で、今オークションで何が売れますか?の問いには必ず上位で出て来ます。かつおつり・坂東・ちょっと捻って村送り=これは極めて特殊で、安心して買える物は最近は数年に1度しか出て来ません、今回は最高額の16里已上のエンタが出ているのですが、取りあえずはスルーしておきましょう。満州の国防献金も人気品ラインアップに並ぶのですが、ここ数回は日本で売らずに中国ルートに流しています。2011年の横浜国際展の時に最高に面白く、私とすれば快心のディールをしたのですが、この事は別の機会に書きましょう。【パンダ】を使ってわらしべ長者・・がタイトルです。この未発行は一時に比べて落ちて来ましたが、向うの方が今でも高いと思います。別格のご指名品は、青島軍事の未使用です。そこそこの状態をリクエストされますが、ヒンジ有り・ウエルセンターで200万は期待できる程、強い需要が有るのです。記録されていない耳付の田型に掠ったことが有ったのですが、持ち主の方の台所の改修時にアルバム1冊が廃材に紛れてしまったお話です。これも何れは書けるかもしれませんが、今回のご出品物とすれば、残念ながら出物は有りません。ここ10年程は扱っていないと思います。エンタも今なら売れるでしょう。

さて、坂東ですがしっかりと書けるネタが有るのです。シートがどれだけ有るか公開情報を拾って見ましょうか。最初がドイツのオークションに出た物を金井スタンプさんⒶが落札、分割したのです。鑑定書(保証書)付きの物が結構出回っています。この時の直ぐ後に、ドイツのエドガー・モールマンⒷにも売り物が出たのですが、指定値が高すぎて不調でした。次がだいぶ時間をおいて、ドイツのハインリッヒ・ケラー©に出て、これは良い値段で売れました。アイホン君経由の情報ですが、アメリカ?の博物館が落して、値段も1000万を超えたと思います。最後が3~4年前に、ドイツのクリストフ・ゲルトナーⒹに出た物で、これば私が買いました。Ⓑの行方が不明なので、©又はⒹの可能性も有りますが確認は出来ていません。シート構成は2銭が4X5の20面・例外なく裏にR.Scholzの鑑定印が押されています。5銭は4X4で鑑定印は有りません。雰囲気からして大元の出所は1か所だと思います。他にもシートがまだ有っても不思議は無いのですが、それはその時考える事といたしましょう。

ゲルトナーに出た時の参考値は他の3回のセールよりも遙かに安かったのです。今はドイツでの需要はあまりなく、日本が唯一の良いマーケットになっています。日専のカタログ値は2銭が7万、5銭が13万です。数十年以上動いていないかと思います。実勢価格は→上向きです。シートなので安いと言っても数百万の商売です。数字をクールに見つめます。形状はシートですが分割販売が前提になるのです。切ることに躊躇は致しません。田型の需要はゼロと見ます。セットに組めるのは16組、2銭の横1列はおまけです。苔が生えたカタログ値ですが、リスクヘッジとしてこの数字を基準にします。小売りで20万X16組=320万から利益分を引き算します。この値段でもゲルトナーの参考値の2割超えて大丈夫だったと思います。このオークションハウスの場合、ノービッドなら1割引きでOKです。実際のセールでも、締め切り直近までノービッドだったと思います。何時ものクリスの行動パターンが出ていました。ビッドをして欲しい、日本の数人に電話攻撃を掛けるのです。タカハシ・コバヤシ・ヨシダです。多分、誰もポジティブには反応はしなかったと思います。私を除いては、ですが。彼の電話には私の場合は、ビッドは何時ものエージェントに頼んでいる、忘れてないから心配するなと答えています。実際、この時もそうしたのです。売り立ては2銭と5銭が個別の2ロットでしたが、当然ながら2個一のコンバインをリクエストして、Fixの数字を出しました。アワヨクバ参考値の1割引きで落ちるかなと期待して。

何だか変な事になっていました。超速報ではノービッドだったのです。フロアのコールはそうだったと思います。但し、コンバインビッドをリクエストしているのでちょっとややこしくなりました。速攻でエージェントからメールが来たのですが、クリスがゴネている。お前のMaxの数字を教えろと言っている。お前とクリスの直取引は面倒になるので、交渉は自分にまかせて欲しい、だったのかな。ゲルトナーが超金詰りの時だったと思います。結果的に、入れたビッドのMaxで買わされました。3割は損をした(儲け損なった)勘定です。オークショニアの経理担当者から、取ってつけたような、珍品だから鑑定をとってやるのメールが来たのですが、当然それは辞退しました。何の意味も有りません。

買ってしまえば経緯は忘れます。評価した数字で買えているので、次は売ることに集中します。評価としては分割しても大丈夫な設定をしているし、それをやりたい思いも有ったのですが、冗談半分にスタンプショー・広島でカラーコピーを壁に貼りました。値段は小さく書きました。賑やかしになれば良いし、まさか丸ごと売れるとは思ってもいませんでした。でも、あぶく銭を掴んでいた御大尽がいたのです。ショウに出店してる業者さんです。値切り無しで買ってくれる雰囲気でしたが、それは余りにえげつないので、値段を引いたか、他の物を一杯おまけに付けました。当然ながら転売でなく、ご本人のコレクションになっているはずです。最近ブログを始めて、超ご機嫌さんで、あれを表紙に使っているし、商売も順調で2021年のさくらカタログに2ページの即売の広告を出している、今一番元気のある同業者です。その後先を考えないノウ天気さにちょっとあやかりたいと思います。2022年のさくらにも是非2ページの広告を出してあげて下さいよ。私への出稿要請の風当たりが弱まりますから。

随分昔の事になるのですが、日独俘虜郵便、私も結構勉強したことが有るのです。物も大分持っていて、鳴門市立独逸館の郵便関係の展示品は全部私が納めたものだと思います。但し、市立の組織で融通が利かないし、予算も年間数十万だし、今は取引関係は有りません。俘虜郵便でも日本での需要は、郵便物としての収容所ごとの希少性よりも、葉書の綺麗さや、パンプレットの豪華さに行っています。浅草・高良台・大阪ラベル・・と言っても私の知識で設定した値段ではもはや反応は望めません。今回の2種セットのご出品、勿論ビッドは複数あるでしょうが、使用済なら兎も角、未使用の場合は、表紙に持ってくることはやりません。坂東ラーゲルは思い出の中に有って、今なら同じ時に印刷された綺麗な絵葉書の方に気が行くのです。絵葉書は未使用はだいぶ出て来ましたが10万+で売れますし、それの使用済は未だに扱ったことが無いのです。出たら頑張って買いにかかるかも知れません。

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切手の墓場の【かつおつり】シート

Lot1036の【かつおつり】ですが、オークションでは人気銘柄です。ヤフオクでの落札実績の50~70万はちょっと無茶ですが、押しなべて20万位の落札値は当たり前かと思います。でも、私にはその値段を率直に受け入れられない理由が有るのです。印象深いディールが、ある種のトラウマになっています。このアイテムの素性はしっかりした文献も出ているので、そこに記されている事実はさらりと流します。私しか知らない秘密を開示いたしましょう。世に出たシートは無目打のプルーフが2シート、目打・糊付が2シートだと思います。2種セットで郵政博物館=ていぱーくに入っています。時系列で並べて見て、目打有は昭和41年に新生スタンプが@35,000円で分割して分譲、超有名なお話で、一般的に【かつおつり】とはこの品物を指すのです。時代が下がって、無目打は郵趣サービス社が分割分譲しています。こちらの出所は元参議院議員の千葉在住の保家さんの物でした。動いた値段と仲介者については私は知りませんが、サービス社が社運を賭けて勝負して見事に勝利したと思います。買い値も、売値も随分と立派な数字だと聞きました。両方共にこれ以外は有り得ないので、今流通している物は、シートを分割しての販売品なので、全て鑑定書付のはずなのです。最重要のファクターは【透かしが無い】ことなのです。透かし入りは100%偽物です。無目打の銘付10Bが鑑定書付でマーケットに出た事が有り、弊社にも出品物として来たのですが、これは鑑定委員会のチョンボでしょう。暫くうろうろしていたのですが、お気の毒な所有者も納得してくれたと思います。

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【かつおつり】は何といっても、山本義之さんなのです。私がビジネスに於いて最も強く感化された先達です。昭和天皇ご誕生の1週間後に生を受け、御崩御の直後に黄泉の国に立たれた、昭和の時代を過不足なく過ごされた方でした。私が知遇を得たのは最晩年の3年ぐらいでしたが、濃密なお付き合いをさせて頂きました。収集テーマは3つでした。「シート」と「みほん」と【かつおつり】です。根幹のコレクションの昭和~透かし無のシートは、私が知遇を得る前に、金井スタンプのオークションで売られています。産業・透かし無の高額も当然ながら入っていました。買ったのが業者で、ばらして売ったので今は残っていないという評価は暴言で有り、持たぬ人の無知さ加減を示しています。著作物で文字にする場合はこの程度の情報を見落としていては著者本人の功績に傷が付きます。狭い範囲での情報を過信してはいけません。今どこに有るか分からないから自分が持っている物が最大の物だという考え方は絶対に取ってはいけない思考法です。

昭和60~62年頃なのですが、山本さんからお呼びが掛かって、手元に残ったシートの処分を頼まれました。1次円単位1円~500円だったのです。目打形式に着目したシートコレクションでした。今のような体系立てた分類での記事はカタログには出ていません。おしどり5円が白眉でした。時期がまちまちなのが瞬時に分かり、見るからに面白そうだったのです。勿論出品リストは有りません。でも的確な目印が有りました。耳紙に書かれた鉛筆書きの矢印です。正・逆・1段・2段・4段抜けでの分類です。普櫛・逆櫛・全型は問題ありません。連櫛の分類手法を示してくれていたのです。3版・普櫛180線・正一連1あたりも有ったと思います。この時点でのビッダー=現行切手のコレクターは今は何方も残っていないのです。時代がコレクションに追いついていませんでした。その後の現行ブームの値段は勿論、落ち着いてしまった今の値段に比べても、一桁安かったと思いますが、見様見真似でやっつけたのですが、その時点での私の仕事には喜んでくれたのです。値段は二の次でした。ご自分の分類手法を世に出したくれたという事実でのご満足でした。2次円単位以降と、昭白以前のシートはその後にオークションで売ったのですが、こちらは記憶は残っていないのです。記念切手は冠10銭と日清5銭の片っ方、トンボの1.5銭が抜けていました。これはディーラーへの一括オファーでケリでした。みほんは、最後まで持って置くと言われて、処分の対象からは外れました。5年ほど前にご長男さんから声が掛かって、本に使った昭和以降は丸ごと私が買い取りました。明治・大正は本に使った写真は有ったのですが、現品は見当たらず、殆どが何方からからの借り物で当然ながら返却済みだったのです。みほんの2冊の研究書に書かれているデータで、1次昭和~2次新昭和の頒布数が200~300になっていることを根拠に、発行数をその数字だと引用している人もいるのですが、それは正しくありません。山本さんの書かれた公の頒布先からは1枚もマーケットには出ていないのです。市場に流通しているこの時代の物は、中村宗文さん、関雅方さん他の郵政関係者と在日米軍関係者、それ以前からの海外への輸出分などなのです。私一人が扱った物の数から判断して、製造数は一桁多いと思います。昭和の物に関しては、山本さんの研究を超す物は出ていないのですが、手彫~菊は、新たな発見も出て来ています。詮無い事なのですが、私が手にした物を現役時代の山本さんに提示して研究をして貰えれば、この分野の分類手法がガラリと変わったかも知れません。新小判の目打12のひらがなみほん、字入り偽加刷の台湾見本などクリアな意見を貰えたかも知れません。問わず語りの会話の内で、私が青島軍事より、旧毛軍事の山東省使用の方が少ないかもと言ったら、随分褒めてくれた記憶が残っているのです。

最後の仕事が【かつおつり】のシートの処分の依頼でした。これだけは、まさか売るとは思っていなかったので、気持ち的に何の準備も出来ていません。山本さんの買値が100万円、もっと高かったのが、スポークスマンの中井輝典さんの酒代でこれも100万、昭和30年代なので、今とは一桁違いかと思います。処分のご依頼は昭和62年か63年のどちらかです。ご希望値段は1000万でした。楽では無いのですが、それを基準に画を描きました。41年の新生スタンプの分割@35000円を基準にしたのです。話題性が有るし、銘柄としては良い物です。分割で@10万円、銘付とコーナーのプレミアムをみて、若干の手数料を頂いて、残った場合は値引きでの買い取りで、ご希望に合わせてのプラン化しました。速攻で、ノーの返事でした。切るに忍びない、切ったら恨んで化けて出てやる・・。このハンデはきついのです。一括で買ってくれて、しかも切らないことを確約してくれる相手を探すのです。極めて限られてしまうのです。雑談レベルで話をしたら、可能性が出て来たのです。逓信博物館なのです。私は直取引できません。人を介してネゴをして、滅茶安な値段で話を纏めました。当時の私でも喜んで買い取れる値段でです。瞬間、悪魔が囁いたのです。切らない珍品コレクターに売ったことにして、自分で買って、10年抱えよう、ほとぼりを醒まして切ってしまおうか・・・。化けて出られない方を選びました。完璧なノーコミッションでの仕事です。

某所でのパーティーで、郵政博物館の井上館長さんと話をする機会が有りました。【かつおつり】の山本シートの話をしたら、???、何それ・・だったのです。無目打のそれは、森山欽司さんの遺贈品で森山真弓さんの秘書が紙袋2つで運んで来たことをご存じでした。目打有の方はそれが有る事もご存じないと受け取りました。当然ながら展示物としては一度も人の目には触れていないのです。ていぱーくは、切手の墓場だと言われることは尤もな事なのです。故人のご希望に沿ったディールをしたのですが、後の事を考えれば、私が買い取って、寝かせて手品を使って色を付け、マーケットに出した方が世の中の為になったのかなと悔いているのです。だから【かつおつり】は今でもオークションで表紙に使う気にはなりません。

JAPEXセール オークション誌準備完了

今日の午後一で原稿は校了になりました。オークション誌の納品は10月8日の午後なので、発送は9日(金)になります。下見開始は8日なら大丈夫です。原稿書きのデッドラインを1日勘違いしてしまい、想定よりも100点少なく1980ロットでのセールになります。ロット数も最低値の合計額も去年よりは若干少ないのですが、品揃えは今までにないハイレベルの出品物が揃っていて最高だと思います。菊と現行が弱いのですが、手彫・旧小判・大白・1次~3次昭和・新昭和・産業・透かし無・郵便史・ステーショナリーでは超一流のコレクションが出所の見事な目玉品が揃っています。1回のセールに出すのが勿体ない程の並びなのですが、後先を考えずに勢いでやっつけてしまいました。何もせずに売ってしまうのは余りに惜しいので、私しか知らないであろうマテリアルの裏話を数回かけてアナライズしてみましょう。

オークション誌の顔である表紙の選択基準は、珍しくて綺麗で高く売れる物なのです。100%の落札を目指します。ここに持ってくるものは99%が最低値一任のマテリアルです。最低値ご指定の人の物は基本的に私のお眼鏡には適いません。意識はしていないのですが結果的に好みには合わないのです。逆説なのですが、私の好みに合った物は、ご一任であっても滅茶苦茶な割安の最低値を付けません。物が良いと思うので、自分では買いたく無い値段だけれど、絶対に誰かに売れて欲しいというギリギリの線を狙って値付けをするのです。表紙は9割+の落札率だと思います。普通はメールビッド締めの時点では数点は残るのですが、フロアで結構手が挙がるのです。この勝負はオークショニアの腕の見せ所でも有るのです。

今回の場合、ちょっと形態を意識したのです。ペアを並べているのです。大白の銘付が無双と1円、無目打が数字45銭と横螺鈿と農婦6円、不統一が洋紙6銭とブッチ1銭、マックス18点の内14点が埋まります。残りの4点を、書き十(未)・30銭11L・3銭薄紙11N(済)・15銭エスパKB2にしたのです。ジャンルも散っているし、ご出品のオーナーさんは5人なのでバランスも良いのです。改めて見てみると、ちょっと不満が残ります。単片4をペアにすれば更に格好いいのです。書き十と3銭11Nは外せないので、30銭と15銭を外して、6銭のプルーフ横ペアにすれば完璧だったかと悔いています。今回限りの贅沢な見方なのですが。

普段なら十分に表紙になる物でも落選になった物を並べましょう。和桜20銭ハ・旧小4銭完銘ペア(済)・旧小5銭耳に二科九號(未)・支那字旧毛10円(未)・かつおつり・坂東ラーゲル・・・まだまだ一杯有って2回分は余裕で作れるでしょう。この内で今回は表紙にはしていないけれど、私が絡んでディールしたビッグビジネスで、今までに書いていないお話が有るのです。かつおつり・坂東はシート、支那字毛紙5円・10円は田型です。売ってしまえば忘れてしまうのですが、ふとしたタイミングで思い出すことが有るのです。会心の商売と軽い後悔と・・物に惚れて、飛び込んで買ってしまっても、時の氏神が現れて助けてくれて、何時も何とかなっている・・このスリルこそが私のビジネスの醍醐味です。1点ずつ書いて行きましょう。