出品物カラー版は、オークション誌では、モノクロで掲載している、単片・田型のパートのカラー掲載です。
本来のカラーページは48ページですし、モノクロページのカバーのパートも別に有るのです。
6000点+も有れば、いろいろと仕掛けも出来るし、偶然の集合体も現れるのです。
本が出るまでの空き時間に少し遊んで貰いましょうか。テーマは2つ、「ラストロット」と「速達」です。
4395「プラハの乃木」の稲刈りシート 日曜日の5時40分がその時間、6時の丸ビル発の伊丹行きの空港バス、乗り込む彼の顔に笑顔が有るや無しや、うちひしがれし倦怠感のみなるや?
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4394 2新昭50銭6B 広島小郡29・11・3鉄道郵便 珍印だけど、切手としては遅使い、台次第で良い値段になったのでしょうが。
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4393 1新昭15銭横透右耳付8B 櫛(強消し・無理読み)麹町四谷見付23・5・13東京都
座布団引いてお待ちかねの人に声を掛けておきました。
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4112 「これは速達」 和桜10銭、松田1銭、中間2銭貼東京宛「別便」 名古屋検+2月18日名古屋
郵便取扱所→葵酉2月20日 東京郵便役所 M6年の距離別時代の第1種の3銭です。残りは10銭、 書留でなく、別段急便・別仕立てなら封筒には切手を貼りません。でかでかと筆書きの「別便」、この料金を解明して下さい。制度としては「別配達」の超地域限定フォアランナー、しかも、行きと帰りで料金が倍にもなるのです。カナダとパキスタンの航空第3地帯その他59円と同じように、日専には載りません。でも、次の手彫切手専門カタログには載るでしょう。このカバーを図版に使えるか否かは分かりませんが。
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2934 「これぞ速達」 1次風景10銭貼京城市内便速達 櫛京城本町三10.12.31
数年前に某オークションに葉書の朝鮮速達が出てました。料金として貼っていたのが7銭だけ、本来は8銭のはず、だjから、1枚脱落と読んでしまって、飛び込める人が少なかったとか。料金表や速達の文献には出てないけれど、朝鮮の市内速達は7銭で合ってると、「南洋」の豪華本の著者が教えてくれました。根拠の資料が有るのだそうです。だから今なら安心して買えるでしょう。あのあと、何が売れるのと聞いてくれる、あらゆる人に声を掛けて、箱一杯の朝鮮物の中から、やっと見つかった1点です。料金は当然の如く3銭+7銭です。
因みに、この前葉書が出た、件のオークション、今回もひっそりと良い物が出ています。最低値は1000円でモノクロ写真、記事もきっちり?書いてます。キーワードは船、締め切りは11月20日、コピー請求、一杯来るでしょう。カラーコピー機を入れたばかりなので、喜んでやってくれるでしょう。
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1023 「これも速達」 0付塔20円貼航空便東京宛 大分発 櫛福岡26.10.25→櫛落合長崎26.10.25
8日間料金。 いわくつきというか、「ヤフー」に出た時のお話で、1本のでっち上げの面白記事が書けるのです。でも、直近のJAPEXでも見てしまいました。1フレームに出ていた「速達郵便発達史」に同じものがしっかり入ってました。しかも、カシェt付き・特印のFFCが。郵便物の種別としては、「速達でなく航空便」。去年のJAPEXの1フレに同じテーマで出した人がいて、完成度は抜群で、マテリアルも貶せる要素は全く無く、それでいて、賞はやたらと低かった。その理由は「審査員との対話」によれば、「速達」のテーマで有りながら「速達」でない「国内航空」の実逓便を入れていたから、大減点だと先生が「明言」してました。
今回の1フレ作品、賞は大金銀賞!マテリアルも○特、あかつき便も無かったし、時期と地域も去年の物が数段上、でも賞のランクが逆ということは、国内航空の位置づけが1年にしてひっくり返ったのでしょう。JAPEXの審査基準ならば、一夜にして大転換は有るとしても、オークションでの評価では、国内航空の最初の短期間適正実逓が、FFCより下に来る事はないと思いますが。
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「制定シート」
18種の原版刷りの小型シート、残るは、愛国3種だけになりました。ポイントは、目打です。他は全て「全型」13x131/2ですがコレだけは131/2のピッチです。恐らく同じ時期に調整されたのに違いないのに、発売用のそれと見事なまでに一致させて作ってます。18種を分析すれば、1936.7.10~1938・2・11までに発行されたものに限られてます。逆に見れば、この期間の発行で、展示されなかったものは、関東局30年は内地発売がなく、昭和毛紙と昭白の田沢・富士鹿・風景は同一図案の用紙変更なので除かれた、年賀の2種がなぜ入らなかったいは解りません。逓信省における、ステータスが違っていたのでしょうか。
ここで、制定シートの在り処を示して置きましょう。決定的な資料は、切手趣味第18巻3号=1938年9月刊の記事です。PRAGA1938の概況 我逓信省の出品として図版が載っています。1次昭和5厘・1銭・4銭・14銭、昭白5円、愛国3銭、議事堂11/2銭・6銭、富士箱根11/2銭・6銭・10銭の11種です。出品目録から取った図版らしく、英文でシートサイズが116x163mm(これがちょっとしたミス)と書かれ、品目は日本語で印刷されてます。
「普通切手」 新五厘切手(御朱船 )、新一銭切手(収穫の図)、新二銭切手(乃木大将)、新四銭切手(東郷元帥)、新一四銭(春日神社)、五円切手、十円切手
「記念切手」 帝国議事堂竣功記念切手11/2、3、6及10銭、富士箱根国立公園11/2、3、6及10銭、愛国切手2+2、3+2及4+2銭。そして改行して、一番下に「此に航空組合せシート」と共以上十九種。
最初は、別口の情報で、制定の4面掛けを見たとか、余白の大きい芦ノ湖4種組みが有るとかで、色んな伝手を当たったのです。でも、原文をよく読めば、「18種の原版刷り小型シート」と「制定シート」。実際、1934・4・20日発行の制定を、新たに刷る必要も無いし、見てくれが、発売されたものと違うものが有るならば、図版に載せているでしょう。逆に表現するならば、「制定シート」こそが、日本で最初の、原版一枚刷りの小型シートなのですから。探しても出てこないし、まさか、「透かし無し・制定」は作られていないでしょう。思い込みで夢を見たのですが、単純な読解力の問題で解決できました。
今年の初頭にスイスから情報を貰い、5月のセール、実際に落札して、プライベートで処理して、記事を書いてと随分楽しんで来ました。最初に思っていたことと、調べた事実での違いも出てきてます。決定版のパンフレットでも作ろうかとも思ったのですが、今でも解明できない点も有るのです。1次昭和の版式=原版は果たしてどちらを使ったのか?14銭はゲーベル原版です。此れが悩ましい。原版シートの縦寸は22・3ミリ、発売切手は0.5ミリ伸びるのです。ならば、他の4額面も原版シートと「ゲーベル」印刷の発売切手に0.5ミリの差が出ても当たり前。5厘・1銭は製版時期から考えれば「平台」でしょうが、2銭・4銭が伸びてるとするならば、「平台」と言い切る証拠は有りません。コダマ先生に、乃木を語らせれば、自信満々、2の字の特徴と印刷の雰囲気で「平台の最初期」のご判断ですが、彼のいつもの言い切りには、ちょっと眉に唾して見たほうが良い場合が多いのです。今回の「プラハの乃木」でも、彼の大著には、プラハ国際展がS12年10月に開かれたとなってるし、逓博の倉庫は地下と書いてるし、ヤマザキ先生ともどの、達者だし素早いけれど、物事の検証能力という点では、やや早とちりであることを否めないのです。18点の小型シート、何故か、愛国と議事堂は、我が社の金庫を出るのを躊躇しているのですが、それ以外は既に我が手を離れてます。最高で最適の新所有者により、敬意をもっての分析がなされると思います。私の文での表現は、これにて暫しの余裕を置きましょう。折があれば、何れは決定稿を上梓するかも知れません。
当コラム、印刷も出来ると思いますが、シートの鮮明度が如何なる程度か分かりません。画像に使った「原版刷シート」18点、ご希望ならば、鮮明なカラーコピーを差し上げます。メールのお申し込み限定で、無料です。10月中にお申し込み頂いて、発送は11月に入ってから、何せ今が、11月のオークションの編集の追い込みで、10月27日が入稿日、あと、2000程を12日で書かねばなりませんから。動けるのはそのあとです。
愛国切手(1.27MB)
「皇室切手展」
エッセイやプルーフの類の評価の基準など、定量的に量れるものは有りません。1点ものですから。切手そのものの場合は、その存在数や、カバーとしての希少性と重要性、他額面や他シリーズでの同種の物との比較で、有る程度の基準が出来てます。その物の「格」という表現で売り買いの場合の値段を評価するのです。それ以外の重要なポイントは欲しい人が複数いるかという「人気」をどう読むかで行くか止めるかを決めてます。
物がスイスに出た、5月の時点では、今持ってるほどの情報は入ってません。それに、資料で見るのと現物を手にして調べるのとでは、気合に雲泥の差が出ます。今回の場合は、直感の評価では@30万円、それが売りか・買いか、また需要と競争が有るか、といった人的な要因をそぎ落としての裸のマテリアルとしての評価でした。ビッド以前の段階で、「富士箱根」はガチガチに売れていて、しかも欲しいという人の思い入れは、私のそれの数倍以上に強かったのです。他のテーマも、1次昭和と記念なら、好みに合いそうな人は複数いましたし、1点ものの場合は買ってしまえば、その値段が一つの基準として通るのです。そうなると、ビッドは幾らまでで無く、実質的に、落ちるまでというか、誰かの一声上までで構いません。それに、色んな条件で、こちら以上に、強い人は出てこないとも読んでましたから。的確な前宣伝でも有れば、別ですが、ゲテモノに飛び込む人は多くは有りません。
記憶の片隅に有ったのが、もう随分前ですが、確か「サンケイホール」でやった、弊社のフロアオークション。物は、新毛?10円の試刷の無目打、台紙に貼って担当者の個人判が確認の為に一杯押してあったもの。印象的なのが「樋畑」の名前、サマーペックス2001の、見返り・月雁と同じようなつくりの物でした。あの時の出品者は、郵政関係か軍関係かは判りませんが、それなりの素性のものという印象を持ちました。最低値は安くして、カラーに載せても、実際相場が幾らかなど誰も判らないものなのです。でも、きっちり2人で競って、落ちた値段も安くはなかったと記憶してます。
落札者は、完成出来ない田沢のコレクターというか、波長に有った珍品を愛でる人。大将はいても、兵隊が居ず、3フレは無理、1フレなら騙しが効く程度のコレクションを作れる人。だから、今回の昭白5円・10円の原版1枚刷りは、きっちり好みに合うのです。でも、こんなものがスイスのオークションに出てるけど・・・、は野暮なこと。落とせたらどうヒネッテ、からかおうかと思ってました。
流石というか、予想よりも遙かに早くメールが来てました。こんなものが有ったよ、と載せた瞬間に「昭白5円・10円」をプライベートで欲しいとのこと。値段とかでなく、この前の試刷と並べて貼る為に、とだけ書いてました。値段は二の次で、この感性は判るので現物が届く以前に取引は完了してました。
18種の小型シートを並べても、一番気に入っているのが、この2種です。出来映えからして、くり抜けば、まず発売されたものとの区別は出来ません。透かしが無い事のみが違うだけ。現物は、早くもJAPEX期間中に、目白にて開催の「皇室切手展」に登場とか、眼にされたなら、この意味が判るでしょう。
「プラハの乃木」のテーマも、あと少しで終わりです。画像漏れは、愛国3種だけ、そして、「制定シート」の在り処も、発見出来ました。それの画像もお見せできるのです。
昭白5円・10円(869KB)
「国立公園小型シート」
目打の話を書いていて、面白い事実に気づきました。「プラハ・・・」やそれ以外の小型シートの1枚印刷や、年賀の4面掛けの場合は、一度の作業で穿孔が出来るように目打機を作ってます。区別するならH=全型目打を一度操作すれば完了です。
弊社第38回フロアのロット3523の写真です。記事を編集した時には、随分20銭がズレテいて、珍しいエラーだな程度の受け取り方でした。だから、モノクロでしか載せてません。でも、良く見れば、目打はズレタ20銭を追いかけて打たれているのです。この事実だけで、国立公園の4種刷りの小型シートの目打は、4種用にセットした、全型目打の一度打ちでなく、切手毎に、4回の作業をしたと判ります。一度の作業で1枚ずつでは無いでしょうが手間暇掛けた仕事です。そして、この作業のやり方は、戦後のものも同じです。吉野・十和田・阿寒で、日光と同じく、印刷がズレテ、目打がそれを追っているものが見つかっているし、重ねての穿孔作業でしょうから、反対に印刷が定位置で目打が一部の額面でズレテいるのも有るのです。
ここらの話を、最近、関東から関西に仕事の都合で引っ越して下見や、フロアに来てくれている人としてました。キャリアは長いし、一応ゼネラル、人と競って頑張ってオークションで落とすのが「国立公園」だけの人です。人よりも高くても買うということも重要ですが、自分でポイントを決めて、その可能性を求めて、即売やオークションで丹念に下見をするのです。値段は二の次で、欲しい物が有るか無いかが問題です。だから、オークションでは勝手にやってくれるし、値段で勝負して、他に強烈な人がいたら、その上で買うも、自分の評価でやめるのも、この人なら納得してできるのです。ベタベタのお付き合いは不要で何の手間も掛かりません。以前は電話で「疑問消し」のことを聞かれて、それは見知った消印だったので割りと簡単に答えられたと思います。
好みが判るというか、国立の分厚い紙のインパーフを、機会が有れば、全部買っていたと聞いてました。だから絶対的な素性が知れてなかった、変な小型シート、しかも、国立富士箱根の情報を貰ったならば、それなりにオファーを掛けるのです。オークションのディスクライバーは、20年前にプライベートで、「旧小4銭田型貼りの白抜けキ」の極美のカバーを買ったことの有るグレッグ・トッドくんで、特別のインフォメーションも貰ってました。彼の考えでは、出所から見て、在日米国駐留軍の高官が持ち出した、試刷のようなものでした。
調べたけれど、絶対の確証は得られずに、セールの日が近づきました。直感で「買うべし」と思って、エージェントも手配したのですが、問題は値段です。素性は定かでなくて、確信は有りません。@10万と言えば10万だし、@100万でも欲しい人がいるかも知れないし。売り方を考えれば、富士箱根・議事堂・愛国・昭白高額はセット売り、1次昭和はバラします。特に乃木は別格で、もし持って無ければ、幾ら高くても売れるでしょう。そこそこの数字を頭に入れて準備してました。昭和を一番高くして、次いで好みで欲しがるに違いない「珍品コレクター」にはまる、昭白2種・・、あとはセット売りが、かえって足かせになるのです。
ギリギリのタイミングで来てくれて、当然のように、「富士箱根」は欲しいとのこと。こちらの思っている数字を出したら、その程度でなら大喜び、どうしても欲しいので、値段は構わずお願いしますとのこと。確かにフロアでのビッドの遣り方を見てればその通りです。メールが相場以上に強いので、止めたらと思っても、最後まで行ってましたから。特に最近は、買う物が無くなって来ているとのこと、切手に限った予算でも賄えるし、車の買い替えを暫く延ばしても、こちらが欲しいとまで言うのです。値段はさておき、物に対するリスクは被ってくれるので、ならば後は落とすだけ。必要な手配をして、ビッドを預けました。不発行4完の未使用・みほん・特印付きの葉書がセットで買えるぐらいの数字です。昭和や他の物も、それに鞘寄せした数字なので、まさか負けないし、上で取られるならば、ノンリミットで来られた場合だけ。それならそれで、賑やかになって結構なことなのです。
でも、落ちた値段は安かった。拍子抜け位でした。前もっての話で、日本からのメールビッドが一杯有ると聞かされていて、一人だけかなり強いとか言ってましたけど、それは何時もの事なので、メールの場合は、参考値基準の数字でしかないのです。スイスのオークションで、目玉的な物をメールで落とすのは無理なのです。
富士箱根は、私としては完全なノーリスクのビッドでしたし、空振りの可能性も無い札なので、エージェントの費用も賄えるのです。この場合の売り値は、ハンマープライス+経費の1割増しで構いません。ビッドした値段より一桁安くても、それは勿論納得です。落ち値の3~5倍は覚悟をしてましたが、その差は、物に対する安心感の違いが大きかったのです。確証は無いけど、多分素性も正しいものだろう・・という意識でやってましたから。
「富士箱根」は一つの歴史的なマテリアルです。他のものと比べても、発売されたものと、少し違いが有るのです。この時は印刷局でグラビア印刷が出来なくて、実際の印刷は大日本印刷(株)でやってます。「プラハ・・」はグラビア用の原版で、スクリーン線は180線で共通ですが、多分内閣印刷局で刷られてます。だから、これこそが、日本で最初の「グラビア印刷の切手」かも。発売されたものとの細かい違いは、いずれ、「国立公園」のコレクションが展示される時に、タイトルページで表現してくれるでしょう。でも、残念ながら、今年のJAPEXではないのですが。
38回フロア Lot 3523(1.91MB)
「全型目打」
この小型シートの場合、 目打形式の分類で言えば、可能性の有る物は、単線(4周を1辺ずつ打つ)か全型(4周を一度に打ち抜けるように設定した器具を用いる)の何れかに限られます。ここでの「全型」とは、平版・平台なら櫛型、平版ゲーベルなら全型と表現されるものとは意味が違います。実際、日専等でも、小型シートの殆どは、一度に打ち抜くという点で、「H=全型」という分類表現を採っており、ここでもそれに従います。
「プラハ・・」の目打形式は何だったのでしょうか。一見して、4隅がきっちり揃っているので「単線」でなく「全型」と見られます。でも、菊切手や田沢や新高額においても、4隅が揃っていれば単線を櫛型と見誤ることも有り得ます。数が少ないロットの場合、慎重に1辺ずつ打ち抜けば、飛び出したり、ずれたりせずに揃えることも可能でしょう。現物を慎重に見ましたが、1次昭和の5種と昭白高額2種の計7種は全く同じ目打器で打たれてます。単線で1点ずつ打ったのでは有りません。但し、7枚を重ねて一度に作業した可能性も残ります。この場合は、単線目打を慎重すれば4隅揃えも出来るでしょう。でも、別の資料が現れて「全型」で打たれたことの証明が出来ました。記念・国立の大型サイズの方は、富士箱根4種・議事堂4種の計8種が同じ目打器で打たれてます。当然ながら、4隅は揃っているのですが、重ね打ちの可能性が残るので、全型とは断定出来ません。
昨日の画像を見てください。郵趣2001・7月号から引用の「逓博所蔵」の議事堂10銭、原版刷で目打有り、透かし入り用紙に刷られて、多分糊も有るのでしょう。4周の白耳をくり抜けば、発売された物との区別が困難なように仕上げてます。そして、その目打は13x131/2、この目打を打った器具で、「プラハ・・」の8種も打ってます。議事堂の発行はS11年11月、このシートはその少し前に作られていて、プラハのシートはS13年年初あたりの印刷でしょうから、1年以上もズレテます。単線で打って、1年過ぎて同じ仕上がりにはなりません。だから、11年の議事堂を打った「全型」仕様の目打器をそのまま保管して置いて13年にプラハの為に引っ張り出して来たのでしょう。1次昭和とは器具のサイズが、愛国の場合はピッチも違いますが、何れも「全型」仕様で打ったと判断して間違いないと思います。
次回は国立公園小型シートのお話です。
議事堂竣工(1.56MB)
「原版は平台?ゲーベル?」
昨日の記事に関して早速電話を貰いました。有益な資料の開示と共に一部訂正いたします。逓博での2回の展示の内、後のもの「世紀をこえた秘宝展」は2001年の国際展の直前に、テイパークにて「サマーペックス」の特別展示としてなされています。この催しの詳細は郵趣2001年7月号にカラー4ページで展示物の目玉が紹介されました。今回の記事に関連するマテリアルのみを3点、引用させて頂きます。
これではっきり判ることは、1次昭和19種完・2次昭和の内の10種が「原版刷」の無目打・白紙に小型シートの如く印刷されていた事実です。糊に関しては更なる情報は有りません。2次昭和が途中で途切れていることや、それ以前の普通切手・記念切手等の展示物から判断して、印刷の大元になる原版(平台なら25面x4・ゲーベルなら10面x10=100面の実用版の元になったもの)を用いて、最終仕上げで実用に供する直前の段階での1枚の用紙に平刷りしたものを、昭和19年の年初ぐらいまでは然るべき場所に保管していたのでしょう。児玉氏の話によれば、内閣印刷局は戦災で全焼し、恐らくは資料も燃えたらしく、逓信省かどこかに保管されていたものが、今は逓博の4階(地下でなく)の保管室に厳重に収納されているらしいのです。実用に供された印刷形式が、凹版・凸版・平版(平台とゲーベル)・グラビアを問わず、実際に用いられた「原版」の1枚刷りで本当の色鮮やかな最初期印刷なのでしょう。
問題は1次昭和などの、実用において、平台とゲーベルを併用した場合ですが、みほん切手の製造思想から判断すれば、逓博保管の「原版刷」は最初の版式の原版のみで刷り、両方の版式原版では作ってないと考えていいでしょう。1枚刷りなので、シリンダーの輪転機にセットしたから「ゲーベル」という分類をしているのでなく、窓口シートとしては、ゲーベル機で印刷されて全型目打で穿孔された100面シートの元になった原版を用いたものを「ゲーベル」と表現しているのです。ここらは解説の必要もない基本のルールです。まさか誤解される人はいないでしょう。
ここで面白い要素が出てきます。同一額面で平台・ゲーベルが存在する物の場合、我々は一般的には縦寸法の長さで判断します。印刷時にドラムに巻きつけ印刷なので、結果としてゲーベルの方が0.3~0.5ミリ程度長いのです。この差はかなり顕著ですし、時期の違いや刷り色等の要素もあって分類は然程困難では有りません。実務上は、特に銘10やシートでしかする意味がないし、これは目打違いで100%判ります。但し、「プラハの乃木」は事情が違います。原版刷は正規の機械に掛けてない1枚刷りなので、原版段階では、平台よりゲーベルが幾ばくか長いとは言い切れません。
別項目で書きましたが、慎重に現物からサイズを計測した結果、
5厘・1銭・14銭が 18・2x22・3センチ、 2銭・4銭が18・1x21・8センチでした。日専のデータを引用すれば、
ゲーベル 5厘・1銭 18・5x22・7センチ、 2銭・4銭 18・2x22・3センチ
平台 〃 18・5x22・5センチ、 〃 18・2x21・8~21・9センチ
になっています。2銭・4銭は出現日はゲーベルが先なので、当然の如く「プラハ・・」はゲーベル原版使用の1枚刷だと思ってました。でも、これだけの長さの差が出て、児玉氏の表現で言うならば、「平台の最初期」の特徴が出ていることと、プラハ展の開催がS13年6月26日~7月4日で、2銭の平台の出現期がS13年2月、4銭がS12年11月なので、「プラハの乃木」を作ったのが開催の数ヶ月前だとしても、平台原版で刷ったとしても矛盾はしないのです。最初の原版でなく、手元に有る物でも刷ったと考える方が自然です。
他の3額面を検証します。「たんぶるぽすと」の山崎好是氏の記事では、私の情報の引用として、5厘・1銭・14銭はゲーベルと断じてますが、その根拠は見出せません。14銭の場合は、実用版式がゲーベルしかないので、ゲーベル原版で良いでしょう。ただ、14銭の銘10を10点程は測りましたが、概ね18・3x22・8センチでした。推測ですが、原版1枚刷と100面実用版でのゲーベル機での印刷された切手では0・5ミリ程縦寸法に差が出るのかも知れません。この縦寸の伸びの理由に言及するのは事態を複雑にするだけなので今は避けておきます。これは推測以上に的確に検証する術はないのです。
ならば、5厘・1銭の原版は平台なのかゲーベルなのかどちらなのでしょうか。14銭を基準に考えれば原版より発売切手が0.5ミリ程伸びるのでゲーベルかも?ではここで出現期に注目したいのです。両額面とも発売当初は平台です。5厘のゲーベルの出現はS14年5月、1銭のそれはS15年3月です。1年以上プラハよりも後なのです。仕上げた原版を1年以上も放置は出来ないでしょうから、この要素を重視すれば5厘・1銭は平台原版になるでしょう。
2銭は「乃木に魅入られた人」に納まり、5厘・4銭・14銭は「昭和に魅入られた人」の手元に有って、夏の台湾展のフレームの中で目にされた方もいるでしょう。折あれば改めて、この4額面が平台かゲーベルかを論議したいと思います。そして、只今フリーの最後の1点、「1次昭和1銭」は平台なのかゲーベルなのか、そのサイズの意味は、出現期の矛盾もクリアして、いずれの版式の原版刷かの証明を、説得力を持って出来るのは、現物を入手できる方お一人だけの権利で義務なのです。そしてそのチャンスはどなたにも有るのです。11月の弊社セール、第42回フロアセールのラストロットとして、売りに出しますから。
次回は目打を検証します。切手の周囲4辺を一度に打ち抜く「全型」ですが、並べると面白い要素が見えて来ています。
郵趣2001年7月号(2.60MB)
「逓信博物館所蔵品」
プラハの乃木の記事を書くにあたっての資料収集をしてましたが、既に手に入ったもの以外は差し当たり出て来そうに有りません。「稲刈り1銭」は日専の広告にも使っており、11月のセールのラストロットで売りたてます。そのタイミングを考えて第1弾のレポート以後に判明したことを数回で纏めます。
児玉氏の本に引用された、切手趣味70巻4号のおまけ頁の乃木2銭「無目打」小型シートの素性が気になってました。プラハのものとは、似て非なるもの。でもこの現物は確かに逓博に所蔵されており、当局の意図によって作られたものでしょう。
児玉氏が尽力してくれて、逓博の担当者から、関係しそうな所蔵品の写真を貰ってくれました。14枚、地下かどこかは判りませんが、今現在の所蔵されてる状態そのまま?の物も含めたパネルに貼られたモノクロ写真をFAXしてくれたものです。
逓博の特別展示は目的や規模の大小の違いは有っても何度も行われています。1991年のPHILANIPPONの後に「ていぱーく」でなされた「秘蔵切手資料展」は郵趣1992年2月号にレポートが載っております。今回のFAXの資料は、恐らくはさらにそのあとの2回の展示会?に出された様なパネル状態のものです。「日本切手の20世紀(1)(2)(4)」、「サマーペック特別展示・世紀を超えた秘宝展」の標題がついています。
その品目は有名な、不発行4完シート、震災切手20面シート、貯金切手実用版試刷・・・・・・。ただこれらは今回のテーマから外れるので詳しくは触れません。注目したいのが、2件の資料に共通して入っている、1次昭和19種・2次昭和10種と思われる、小型シートなのです。ご覧の通りの、ボケボケですので推測するしか術はないのですが、「・・秘宝展」と「・・20世紀」に使われたマテリアルは共通、「秘宝展」にはコンパクトに無目打小型シートだけを並べて、現在は「20世紀」の場所に、一部は原画写真的なものと並べて、元に戻して保管されているのではないでしょうか。
1次昭和は発行された19種完、2次昭和は昭和19年1月8日発行の3種(20銭・30銭・40銭凸)までの10種、見事に時系列に並びます。現物を見てませんし、「サマーペックス・・」で当然見たであろう人に聞いても、決定的な答えは得られませんでした。ただ、このデータを積み重ねれば、当時の逓信省か印刷局の意志として、少なくとも我々が「昭和切手」と呼ぶものに対して、実用版=100面にする以前の、印刷原版を用いて、最終の段階で、発行する切手と同じ刷色で印刷したプルーフを少数作り、保管していたと考えています。写真で見る限り、無目打で、恐らくは透かし無しの上質紙で糊は引かれてないような気がします。
この推論が当たっているならば、用いられた原版は、窓口から売られた切手の版式のうちの最初に発売されたものと同じ、1昭で平台とゲーベルが存在する、5額面の内、2・3・4銭はゲーベル、5厘と1銭は平台の原版が用いられたと考えられます。
ここで、「プラハの乃木」に入るのですが、1昭5額面の版式は当然のように最初の版式=乃木・東郷はゲーベル、朱印船・稲刈りは平台、(春日大社はゲーベルのみ)と思っていたのです。売った私も、買ってくれた「Mr.乃木」と「GOLD 昭和」氏も。
この続きは次回です。
世紀を超えた秘宝展(3.88MB)
当コラムで書くべく準備していたテーマで、国内外の多くのご協力者からの資料を精査していました。この程、意外にも突然に「月刊たんぶるぽすと VOL29 No9]に私が6月に作成し、お世話になった方10名程にお送りしていた資料を元にした記事が掲載されました。そのこと自体は、「資料提供者」「筆者=編集者」と、私との日頃のお付き合いの緊密さ故に目くじらを立てる必要も有りません。
ただ、幾つかのポイントでの事実誤認の訂正と、将来引用情報として使われることを考慮に入れての検証が必要です。あらゆる伝手を辿っても記事には有っても文章以外には姿を見せていない「航空切手組み合わせ小型シート」=制定シートの存在は?1次昭和の版式が平台かゲーベルか、打ち抜き全型の目打形式などなど。
このマテリアルがオークションに出品される数ヶ月前、今年の年明け直ぐから情報を海外から貰っていましたし、セールの後も出所を追っています。その後のプライベート・トリーティーやら、「日専」2006年版の見開き広告など、情報を一番持っているのが私なので、分析して検証記事を書きましょう。
やっと終わった「日専」の巻末の11ページの記事はここでは出せません。これはJAPEX直前に発売されるので、そちらでお読みください。会場での「平気の2割引販売」を待つと、時代に遅れるかも知れません。
本論に入る前に、「たんぶる・・」誌の記事の元ネタを載せておきましょう、現物を入手して、ご協力者に提供して貰った文献を基にして書いた資料です。6月に一気に書いてますので、不十分な面も多々有ります。じっくり時間をかけて表現いたします。
表題は、やっぱり「プラハの乃木」が良いでしょう。幾つか画像を入れながら。でも、もう売り物は1点しか残ってないのです。
プラハの乃木(2.43MB)