静岡の御仁の表現で幾つもの気になるフレーズが有るのです。郵趣界の構成員なら余りにも当たり前に身に付いている常識をもろに否定しています。真偽の判断に係る鑑定に関してなのですが、彼はよく骨董商組合のそれがいい加減だと書いています。過去にそれに近い業態の人と、何らかのトラブルが有ったのかと思いますが詳細は不明です。また、骨董商と切手商との違いが分かっていない様なのです。混同して使っています。元から骨董商組合という名前の組織は無いと思います。強いて探せば、東京・大阪等にある、美術商協同組合か美術倶楽部の事かと思うのですが、何れも厳しい資格検査を経て加入できる業界団体で有り、突然に降って湧いて来た素人さんには何らの関係も無いでしょう。また、美術系の鑑定は切手や古銭とは異なるルールで、極めて限定した範囲で為されていると思いますからここでは議論の対象になりません。

古銭は、日本貨幣商協同組合さんが鑑定書発行業務をされている旨周知されています。一般的には古銭界に於いてはステータスを得ていると思います。切手の方は、日本郵便切手商協同組合さんは、【組合カタログ】掲載品のオフカバーに限定して、真偽の鑑定を行っています。切手そのものの真偽であり、目打、糊、消印等の専門要素に関しては対象外としていますし、依頼も切手商組合加盟店のみから受け付けています。他の組織に比して結論を貰えるまでの期間が短く、費用も割安な設定です。専門的なマテリアル、大雑把に言って【日本切手専門カタログ】に掲載されている物への鑑定は、全日本郵趣連合と水原フィラテリー財団が、国際機関から認証を受けて実施しています。限られた人員が判断する結論が、将来に亘って、100%正当で且つ正確かを法的に保証されるか否かは真正面からは論じられていないのですが、郵趣界のコンセンサスとしては客観的に認知されています。国内外のオークションでの取引や売買に於いては、十分な説得力を持って通用しています。但しそれは、【郵趣界】という限定された価値観の中でのルールで有り、民事又は刑事事件化した場合の法廷で通用する決定的な証拠能力は保持してはおりません。でも、それで生じる不都合な事案は郵趣界内部に限定されていたのです。人が為す判断なので、間違いも起こりますし、鑑定機関に依り異なった結論が出る場合も有り得ます。でも悪意なき結果でのミスならば訂正も出来るし、受け入れねばならない場合も有るのです。但しそれでも全てのケースで免責になる訳でなく、元から鑑定者としての能力に欠けたり、他者と議論できない人物に過大な権限を与えたりした場合は、組織として善意注意義務違反の責めを負う場合が有る事を心得ておかねばなりません。無事では済まないケースも起こり得ます。

今回の静岡ディールの場合は、上記の事案からは元から逸脱しています。【鑑定書】という言葉を曲解して弄んでいるのです。用語の使い方の齟齬はさて置いて、ヤフオク等の取引で、買い手の無知と誤解を、自らの詐欺行為の手段に遠慮なく用いています。買い手は、郵趣界での常識を前提にしています。お買い得な商品を見つけた人は、多少の疑念は有ったとしても、コレクターの買い意欲に誘われるです。悪意の詐欺師の商品なのですが、作っているのは概ね一人でしょうが、売っているのは無知な提灯を付けた第三者も含めて結構な範囲に広がっています。そそられるセールストークで謳うのです。『鑑定書を付けますよ。偽物なら返品出来ますよ。』ノーリスクで買える旨の強調です。Web.の画像でなら分かりにくい物も有りますが、現物を手にしての鑑定ならば、看板を上げている鑑定機関は間違えません。偽物師が知らない情報は一杯有るので、簡単に見破って偽物の結論を出すのです。売り主が知識不足の本来は善良な人物なら、偽物なら返金の条件も充たされる場合も有るでしょう。でも、今回のケースは、騙すことを前提にした詐欺師の所業なのですよ。最初から承知の上で準備をしています。郵趣界の真っ当な鑑定機関の鑑定は、ペーパー1枚に、結論を1行だけ書いています。『真正では有りません。』本来の鑑定はそれで良いのです。世界中どこででも、どのマテリアルでもそれで通ります。コンセンサスが出来ていますから。但し、悪意の主は、当然の如く突き返して来るのです。返品物への【鑑定書】は、書式として不十分、だから返金は出来ません、お望みなら、日本で最高の鑑定機関を紹介いたしましょう。

12頁の詳細なレポートです。走査顕微鏡で撮った拡大写真、紙の透視写真、XRFでの元素分析、無意味だし、Fakeなのですが見てくれとしては一見立派な【検査結果報告書】です。表現用語とすれば、贋作である証拠の発見はされませんでした・・かな。このペーパーのお値段は1万円、簡易版は3480円だそうです。お作りの如何様書類とすれば、結構高いかなが印象なのですが、本当の分析器具を用いた【鑑定書】なら、10万円はかかる筈なのです。でも、見栄えに騙されてしまう人がいるのです。絶対に信じてはいけません。疑って冷静に判断して下さいよ。勿論、静岡県牧之原市の、コイン屋名の【分析鑑定結果表(切手用)】なる物は本人作の偽物の証明書だと思っておいて良いでしょう。相手にしてはいけません。