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支那字の消印のお話です。

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今回のセールは目玉が一杯有るのですが、想定外のテーマでのご出品が有りました。中国本土での方針が原因で、字入切手の切手展での扱いが難しくなるそうで、展示に出せなくなるのでやる気が失せてしまったので売りたいとういうことでやって来たのです。中国での切手展での扱いとなると私は全く不案内です。詳しくは判る人に聞いて頂きたいと思います。

Lot2737~2795なのですが、その分野のコレクターにとっては垂涎のマテリアルが並んでいます。随分と前の強烈な印象の文献上で知られていても、マーケットに出てくることは想定していませんでした。コレクションのリーフそのものをジャスト100リーフ預かったので、記事の編集は楽でした。物が良いのでストレスが無いのです。最低値はご一任だし、今の評価で出品して、売れる値段は場での競りにお任せです。でも、良くも悪くも30年ほど前のコレクションなのですが、マテリアルの本質部分は当時も今も変わっていません。そして時を経たことにより、希少性の確定という視点で見れば、より輝きが増した物も目立ちます。

でもちょっと気になったのが、国際展に出品されたリーフ上での記述の内で数多くのアイテムに書かれていた、【現存1点=only one, unique、3点の内の1点】とかいう定量での希少性の表現はどうなのかと思うのです。採点基準での知識のポイントを明らかに意図して、これでもかという言うぐらいに書かれています。英語ならそれ程は気にはならないのですが、日本語でのこの記述には違和感を覚えます。弊社のオークションでの記述ならば、100%削ります。限られた条件での定量表現をご自分の名前で書くのは良いのですが、ご自分の知らない場所での物の有無など分かるはずは無いのです。オークショニアのポリシーとしては使いたくない言葉です。切手展ではそれを書いて、間違っても自己責任だから構わないのですが、オークショニアはそのリスクを負いません。実際に30年経ってもここにしかない物も有りますが、軍事郵便系と郵便使用の物は年を経れば連れが出て来てユニークでは無くなります。数が増えても相対的な希少性には変化は無いのですが、定量の希少性を示すのが、【国際切手展】では必須の知識の証明手法という変な常識には与したく無いのです。ゼロで無い物は時を経れば増えますよ。それと国際展でのトラッドの使用例は、機械的にオフカバーがNGというのもどうなのでしょうか。今回のLot2762 博山、2763の周村は電信取扱所なのでエンタは無いでしょう。そしてオフカバーも私の記憶ではここに有る物が唯一の存在かと思います。チョロ消なので高くはならないでしょうが、何人からビッドが有って、どなたが買ってくれるのかに注目しています。リーフの作り方次第で、切手展にも使える性質の物だと思います。使い方によっては持ち主の知識の証明になる物なのです。3点並べた内の支那菊5銭の丸一は今回のセールとは別口ですが、この局は推測はされていても見つかっていなかった物で、恐らくはユニークです。でもこちらは郵便印だと思うので、エンタの出現を待ちたいと思います。単片では切手展のコレクションには使えない物でしょう。

在支局(含む山東省)の消印で思い出深い物が2点有るのです。年号2字のSHIN・・・と欧文櫛のWEI・・・です。単片のチョロ消ですが、多分私しか気づいていないお話が有るのです。30年というかそれ以上の前のお話から入ります。時間を見つけて書きましょう。オーストラリアのおばさんとトリノのドクター、共通項は1971年の国際切手展に日本切手のコレクションを出していた人なのです。

今回のオークション、売上とかハンマープライスの額にはリンクしないのですが、書けるネタが一杯有るのです。金銭的には地味ですが表に出して記録しておきたいテーマです。時間を見つけて書いてみたいと思います。オークションの結果に影響を与えるのが嫌なので終わってからにしたいと思います。

表紙を見てください。

オークション誌は10日(木)に予定通り発送しました。特約ゆうメールなので定形外の普通便ルートで流れます。JPの方針で祝祭土日は配達無しなので、月曜日には届くと思います。物流は国内はまだしも、海外がガタガタです。イスラエルは郵便はNG、アメリカも航空便は△=実際問題NGです。EMSで送りましたが想定通りに届くか危惧しています。でもやらないよりは良いでしょう。欧州はコロナ以外の要因でコンガラガッテいます。ベストのチョイスをしているつもりですが、カタログが税関で通関できずに戻ってきたり、関税がかかる為の受け取り拒否も少なからず有るのです。カタログは無価値のはずですが、相手国によっては通用しないし、日本サイドではどうにも出来ません。相手国の税関次第です。今のところはEUだけですが、今後は気を付けないといけないでしょう。

今回のセールには良質の大きいコレクションの一部が複数出ています。旧小判の最終回、極美に拘った新小判、新たに手彫がお二人からスタートしました。そして知る人ぞ知る、在支局のコレクション。中国本土の切手展ポリシーの変更故に弊社にやって来たのです。まさかという思いです。超一流のコレクションの売り立てなので、オークション誌は結構いい出来で仕上がっていると思います。表紙でちょっと遊んでみたのです。メールの方は【何それ?】でしょうか。葉書の写真のおじさんたちの名前を検索すればその理由が分かります。実は数回前に今回の連れが出ていて、随分と良い値段で売れました。出品者が場での競り上がり方に吃驚してその理由を聞いて来たのです。キッチリ教えたのですが、欲ボケの割には学習能力が無い人なのです。ご本人はこの表紙を見てもその理由は分からないと思います。余り高くならない方が平和かも知れません。

フロアの【Lot1521】発光15円の日立は、理屈が明瞭な珍品です。大宮=発光でそこそこ有るはずだという印象なのですが、日立は珍品です。機械の稼働日が分かっていて、4期間で合計21日しか無いのです。今回の日付が偶然にも最終日。物の出所はH13年に売られた、S45年調整のキリストの紙付というのは嘘では有りません。弊社のセールに、ちょっと前に切手商差し出しのエンタが出て、強い札を持って落とす気で場に来た人が頑張っても買えなかったのです。メールの一番値は100万以上だったことを覚えています。今回は単片なのでどういう評価になるのでしょうか。発光日立は浦和ならば有るそうです。

【Lot1854】梅花10円の宮良印は、オボロゲな話には聞いていたのですが、まさかこういう形で世に問えるとは思って無かった希品です。Philatelic Journal 2021に石澤君が19頁の論文を書きました。追いかけて私もThe Philatelist Magazineの2022 新春号に数頁の記事を書いたのですが、書き洩らしが有ったのです。私は物凄くポジティブに見ているのですが、その理由を書いていませんでした。扱ったのが、重義(弟)・正義(兄)の後藤ブラザーズとスティーブ長谷川さんだというのがそれなのです。沖縄で見つかってから取引された値段は、石澤君が評価している数字の二桁は下だと思いますが、この人たちが本物と思ってディールした事実は重いのです。沖縄暫定切手には通じてはいないでしょうが、それでもプロとしての直感が有るのです。RPSSのマクレランが一人で出した結論は罪だと思います。鑑定は、特にFakeの結論は慎重でなくてはいけません。物に対しての死刑宣告になるのです。悪意で無くても一人の思い込みでそれをやってしまえば取り返しが付きません。今の日本の鑑定でも、他人と議論できない人が、他にやる人がいないからという消極的な理由で、その立場で動いているケースが有るのです。怖いし、明らかに不味いことが起きています。遠からず表に出して議論せねばならないかも知れません。ネタも資料も揃って来ているのです。鑑定自体は法的な争いには馴染まないという、組織とすれば都合の良い免罪符が有るのですが、それで逃げられるとは限りません。それが成立するには民法での【善意注意義務】を果たしていることが前提です。やるべきことをやった上での単純過失なら、間違えていても免責でしょうが、それをすっ飛ばしての思い込みでの独断は許されないと思います。場所を変えて論じたいテーマです。

【Lot2164】旧小判45銭の無地紙目打13、本当は最終ロットにしたかった物なのです。記事は今回通りで最低値は1万で、当然ながらas isでです。意図的に鑑定書は外しました。これに関しては付けるのは野暮ですから。随分前の、連合の市田さんの時の物が付いていました。国際展でもそれを根拠に超目玉として展示されていた物なのです。このアイテムは小判というよりも、当時の目打の研究家としての第一人者、小川孟氏のご自慢の逸品だったのです。1970年代後半か80年代の頭だったと思います。小川氏がメキシコのグアダラハラ自由大学に赴かれることになり、コレクションを一括で処分されたのです。口約束が為されていたのですが、スッタモンダが有ったそうです。当時は物に飢えていた時代でした。皆さん、特にお二人がお元気でギラギラしていた時だったのです。目玉はこの切手です。このディールが因となって、ビッグコレクターが刎頚の友から不倶戴天の敵に変わってしまったのです。問わず語りで双方から昔話を聞かされました。お二人共にコレクターとしての面子とプライドを意識されていたのだと思います。物をクールに評価したならば、最低値は1000円か、100万かのどちらかかなと思います。値段以上にどうしても表紙に持って来たかった物なのです。今となれば値段なんかはどうでも良いのです。

旧小判の目打13には思い入れが有るのです。45銭白紙の13は2枚扱いました。期待したとおりに関西在住のお二人に入っています。全く同じ印象の物が、12銭の白紙に有るのです。オッペンレンダー氏が持っています。もう1枚、想像していなかったのが、50銭薄紙の13です。50銭の場合、薄紙は最後期の印刷でも矛盾はしないでしょう。これも勿論表紙に載せて売りました。45銭の白紙の13をお持ちの方が買ってくれました。私の評価では3銭の11Nよりも格は上だと思います。でも、誰も付いて来てはくれません。45銭の13、勿論白紙の方ですが、番野さんと話をした事が有るのです。結論は、ペアが有れば良い、いや耳付なら使用済でも構わない。12銭でも、30銭でもOKだよ、が結論でした。巡り合える機会が来るのでしょうか。

表紙では無いのですが、書きたいネタが有るのです。在支局の消印です。発端は、丸一のチーフ―の半欠けを見つけた事です。多分新発見かと思います。値段には全く繋がらないし、使えません。最低値は1000円しか付けません。でも少ないことは確かです。今回の一連の山東省の消印でも同じような物が有るのです。博山と周村の電信取扱所です。関連して支那字で思い出したことが有りました。30年かそれ以上前かも知れません。書き甲斐の有るテーマなので覚えているうちに書いて置きたいと思います。昔話でなく今に繋がる事でも有りますから。

驚愕と懐かしさと

大分時間が空きましたが少し時間だ取れますし、いいタイミングで美味しいネタが入って来たのです。2月2日に開催されたアメリカのCHERRYSTONE AUCTIONのレポートです。為替レートはUS$1.00=115円・落札手数料は15%です。日本のオークションシーンでの手彫エンタの相場と今回のハンマープライスの違い、一体何が起きたのでしょうか。桁違いに高いのです。

Lot846 $15,000→29000=385万円 竜48文2枚・500文3枚貼 神奈川検査済

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Lot847 $5,000→9,000=120万円 竜100文1版を裏に貼 西京検査済

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Lot854 $2,500→12,000=160万円 玉六ル貼上海宛 白抜十字+朱◎YOKOHAMA PAID ALL JUL・31・1875

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Lot863 $15,000→30,000=400万円 洋桜30銭イペア(シミ)貼英宛 大型白抜十字+朱◎YOKOHAMA PAID ALL SEP・25・1875

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Lot866 $1,500→32,500=430万円 鳥15銭、房2銭貼英宛 白抜十字+朱◎YOKOHAMA PAID ALL FEB・12・1876

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Lot894 $1,000→10,000=132万円 改桜10銭ニ貼米宛 白抜十字+朱◎YOKOHAMA PAID ALL APR・13・1876

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今の日本の相場の3倍から5倍でしょうか。共通項は朱◎YOKOHAMA PAID ALL、日本人では絶対にこの評価にはなりません。私が知らない海外のビックコレクターがお二人以上現れたのかな。ここで取り上げた物に関しては解説のしようもないのです。ただ只管口あんぐり状態です。でももう一点はしっかり書けるネタを持っています。

Lot864 脇無半銭に鳥15銭、改色4銭、房2銭貼英宛 白抜十字+朱◎YOKOHAMA SEP・11・1875 $1,500→9000=120万

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懐かしいし、思い出深い物なのです。私が嘗て買えるチャンスを得ながら、手に出来なかったマテリアルとして忘れることが出来ない、数点の内の1点です。1980年代の後半でした、イギリス人のブローカーの、デービッド・ディグリーがアプルーバルの条件で送ってくれた現物です。値段もしっかり付いていたのですが、二つ折れ葉書の外信使用、UPU未加入なので勿論葉書の料金は生きていません。でも、日本の官製はがきで最初に海を渡った物というステータスは消えません。改めてオークション誌を見直したのですが、あの時と同じく買えない理由が見つかったのです。鳥15銭の消印です。他の3印とは雰囲気が違います。この条件が有ったので、飛び込むことが出来ませんでした。改めて見ても同じ評価になるのです。でも、もし脇無1銭で、鳥15銭・改色4銭・房1銭=葉書料額含めての21銭だったなら、駄目元の後貼承知で買ったかも知れません。それ程に遊びたくなるネタなのです。何れにせよ今回の120万はちょっと高いかな。参考値が1500ドルなので、売れるとは思って見ていたのですが、手の届かない数字なので有る意味安心できました。どなたがどんな評価をしたのかが気にはなるのですが、それを聞く機会は来ないかなと思います。でも、この葉書の存在は幻では有りません。コレクションには使えない物だとしても、日本の二つ折れ葉書の外信使用は存在しないと書くのは間違いだと思うのです。