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2011年10月12日(水)

『スタンプショウ=ヒロシマ ’11 ドラフト ルール説明』

今年も10月15日(土)に、広島県立産業会館西館に弊社がブースを出展、会場にて、日本関連の郵趣品、200点を「ドラフトシステム」にて販売いたします。

(90%以上は、今回が初お目見えで、全て消費税込みの値段を明示した即売品です。)

販売は、直接会場にご来場の方に限ります。当日の10時10分頃から正午まで、エントリーを受付、お渡しする用紙にて、ご希望品を「指名」していただきます。

まず、エントリーの際に、抽選機で「記号の玉」を引いていただきます。「A~Z、あ~ん」がガラガラに入っています。同時にエントリーの投票用紙を、一つの記号に対し1~10の番号入り「A1、A2、・・・A10」(ご希望によりそれ以上も可)をお渡しします。展示しております200点の商品の内、ご希望品ごとに1枚の用紙を使ってください、優先順位の高い物から若い番号にご記入下さい。投票締め切りは13時00分になります。

投票を開き、各ロットごとに集計します。投票がお一人の場合は、無競争でその方にお買い求めいただけます。投票の順位(番号)は無関係です。もし、特定のロットに複数の投票が入った場合は、①投票用紙の番号が若い方を優先します。1>2>3・・・>10になります。②同じ順位で複数の札が重複した場合は、若い記号が優先です。A>B>C・・・・>あ・・・>んになります。

優先順位は記号が優先されますので、「A」を引いた方の1位は100%のパワーですが、「A」の2位よりも、「ん」の1位の方が強いのです。他のメンバーの投票行動を読んで、賢く投票して下さい。

10時~13時00分まで下見可能です。

今までの実績では、200点のエントリー品のうち、約半数が指名を受けており、上位指名はかなりの確率で重複します。1位~3位あたりは本筋から外した物のほうが買える確率が高くなります。また、記号が遅い場合は1位チョイスでも安全ではありません。弊社は当ドラフト200点=即売品の抽選の結果には何らの特別な意思も反映させませんので、是非、当日ご参加の上、運と頭を使ってチャレンジして下さい。残品は、投票後、発表の値段で先着順で販売いたします。

商品のお渡しは、14時30分より、行います。

ジャパン・スタンプ商会会員様は、現品先渡し、口座通し、後日送金にて結構です。

200点の画像は、10月13日の夕方、当ブログでご覧いただけます。

2011年9月6日(火)

『好々婆と赤い花』
今回のセールでのJAPANは2つに分かれていて、一つはロイス・エバンスさんのネームドセール、ノンブル221ページのバイリンガルの立派な作品集兼オークション型録でした。同じことを私がやればコストは500万円位は掛かります。売り上げと手数料という数字だけで分析すればビジネスとしては厳しいのでしょうが、これからどんどん続く他の出品者へのプロモーションなのでしょう。スイスの豪華カタログとは雰囲気は違うのですが立派な仕事だと思います。かなり前に米国西海岸のセスカルで彼女の作品の展示を見たことが有って、クラシックで良い物も有るけれど、最後の締めが、菊切手の貯金台紙・・??というのが強い印象で残ってます。弊社への出品を仲介する、というお話も有ったのですが、具体化せずに終わっています。結果としては、今回のやり方で正解です。ご本人も香港へ来ていて、競りを見てニコニコしていました。
私の方は、1点だけ、彼女に敬意を表して値段かまわずに落としたいロットがありました。Lot2354 手彫封皮の研究のロット、American Philatelist誌に数年間連載された、オリジナルの版の分類記事の基の材料のロットです。マテリアルとしては不人気で、商売にはならないのですが、ちょっとした後悔の念があり、それをクリアしたかったのです。エバンスさんが最初で、川崎の吉田卓司さんが続いて、伊藤典昭さんがフィラテリストに記事を書いていたテーマでした。勿論、後になるほど完成度は上がるのですが、吉田さんのデータの資料は誰も持っていないのです。実は縁あって、ご本人から連絡を貰って、コレクションは随分前に私が丸ごと扱ったのですが、資料もそのまま記録せずに次の人に渡したので、数人の手を経て、どこかのタイミングで無くなっています。何人かからコピーぐらい残せよと、怒られました。
このテーマは、材料があれば料理はし易く、日本で研究は大きく進んでいて、今の知識で膨大なエバンスさんのロットを再検証してみたい思いがあったのです。スタート値から競らないかなと思ったら、あにはからず、3倍を超えましたが、下見もしてないノンリミットなので買値は既に忘れました。彼女には、日本のしっかりしたサクセッサーが、あなたの研究を続けるからと言っておきました。商売を抜きにしてもやりたい仕事だったのです。
後半の薄いカタログの出品者は3人だと書いていました。エバンスさんはほんの少し、封皮と二ツ折葉書ぐらいで、主たる出品者は、コードネーム『RedFlower』さん、更にこのオークションハウスの3月の第一回セールの全てが同じ出品者だと書いていました。伝を頼って素性を調べたのですが、一言、confidentialで逃げられました。でも、公表されている資料でも調査が出来たのです。ヒントは、前回の最初のロット、小判のコレクションで、1960年代のアメリカの国内展で賞を得ている、それを梃子に、JapanesePhilatelyを紐解けば、見覚えのあるカバーが出て来るのです。
ライシャワーやドナルド・キーンと同じような立場で戦後の日本と接した、ISJPの大立者。売りに出たマテリアルを逆に引けば、誰もが納得できる人物です。まだご健在と聞いています。彼のコレクションこそ、ネイムドセールでやれば、インパクトは強烈、『みほん』は、不発行・トンボ・制定・富士山を含めて完揃い、もしかすれば創始75年S/Sだけが無かったかも。弊社でやれば3倍にはなったでしょうに。旧小判の銘付やエラー・製造面のバラエティーの大群は、彼なら持っていて不思議はないのです。私としても、今になって分かった事、彼の名前を知っていればもっとやったかなと、今振り返るなら、幾分かの取りこぼしをしています。海外のオークションのビッドでも、情報があるかないかで大いに結果に差が出てきます。
セールとしては盛り上がりがなかったのですが、特記すべきは南方のパートです。表面上のマテリアルよりも筋のいい物がありました。大川如水=岡本金三郎とはご本人が接点が有ったのでしょう。魅力的なカバーが一杯ありました。勿体無いロッティングなので、ビッドする方は面白かったのです。持ち込みのフィリピン使用などはここにしかないかもしれません。ゴミ扱いになっていましたけど。
裏表紙の目玉扱いのアンダマン・ニコバルのCTOのカバー、頓珍漢な似非情報通の出鱈目話で、弊社で数年前に売られた現物が出品されたという噂が流布されたのですが、これは100%ガセ、よく似たものですが別物です。弊社のものは、出所は九州のコレクターでしたが、カバーと切手数枚のロットで、135万+15%で、南方切手収集グループの枠の外の人が落としてます。まさかのお買い上げだったので、インパクトは強いのです。アメリカのオークションに出品する訳はありません。逆算して、今回のカバーもその時の2番札の人に100万なら売れるのでしょうが、想定の人が横浜でオークション誌を手にして歩いていたので、邪魔をするのは止めました。ハンマーは84万円、高くはないのです。それ以外もこのパートは、メールの一声か、私が撥ねたかのどちらかです。こちらは、南方というよりも昭和の評価でビッドしたのですが、安くはないけれど結構買えました。基準は、昭和切手の無加刷か加刷貼、北ボルネオの日本宛の実逓カバー、宛先問わず、大川如水も浅野物産もOK、暫くは温めておきましょう。

2011年9月2日(金)

8月8日に送金、お盆休みが入り、先方の組織が丸ごとアメリカに帰国したのでしょう、メールもFAXも連絡が全く付かず、ちょっとイライラが入って来ていました。1週間ほど前に、旧知のAmyちゃんからメールが来て、発送の事務は、Phila Chinaがやってくれるとのこと、この時点で一安心、でも、Fedexを使うので余計なトラブルが起きるのです。こちらは数百回の経験があるので、的確な交渉は出来ますが、素人さんにはきついかも。日本切手の輸入なら、原産国=OriginJAPANとして、デコ=declareは絶対に、フルデコ=インボイスの金額=CIF(運賃・保険料込み)そのままでやるべきです。これでもお馬鹿なFedexの通関士は税関の名前を騙って邪魔をします。ただ、喧嘩をすれば100%勝てるので、勘違いしての無意味な過少申告をしてなければ、交渉の手段がありますから、同じ立場でお困りなら助けてあげましょう。再輸入の免税に「輸出証明書」を出せというのは、滅茶苦茶だし、法令はそれを求めてないのです。DYNASTYの場合は、インボイス上で、ロットごとにタイトルでJAPANが入っているので説明がし易かったのです。でも、外郵=郵便ルートの税関に比べて、民間の通関は要領が悪いのです。税関自体は絶対にうるさいことは言いません。丸1週間で通関でき、物も確認、これから次の作業にはいります。一区切り付いたので、書いていたテーマを続けてUpいたします。

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2011年8月11日(木)

『ライブの情報』
国際展が終わっての帰阪が8月2日夜、3日は会社で仕事、4日早朝から香港へ行き、8日に帰ってきました。DYNASTYオークションへの参加です。結果は既にWEBに公表されていますので数字としてはご存知だろうと思います。ただ、実際にフロアに出たものでないと得られない情報を一杯持っていますから、幾つかのテーマで何回か書いてみましょうか。
私のトータルの落札額は国際展での売り上げと誤差の範囲と言える位の数字で一致、直近の香港ドルで送金したかったので9日付けで送金を済ませました。
今回のテーマは、①出品者のエバンスさんに敬意を表すること、②エージェント=成功報酬5%の約定で、トラブル無く依頼を受けたビッドを完遂すること。③日本からの下見なしのメールビッドには負けないこと。以上の3点です。あとは場での流れ次第なのですが、下見に2日、ビッドが2日の必要十分条件を充たした仕事なので、アドバンテージは強烈、下見なし、値段の調整が不明?のメールビッドには負けるわけには行きません。
私の普段の取り扱い品目は、竜のシート・カバー~現行の銘付きとCM・・A1/B2まで・・。でも今回は、勢いで外国局、南方までもやりました。
南方はちょっと特殊ですし、異常なデータなのですから別項目で書きましょう。だからJAPANの2冊のカタログの内、メールビッドと場が競って、結果としてメールに落ちたのは恐らくはゼロだろうと思います。メールの一声、オープニングコールで落ちたのは、余程のゴミ?を除けば10点はなかったと思います。パドル番号をメモしたのでほぼ間違いはないでしょう。アナライズすると今回のセールの雰囲気が見えるのです。
ハンマープライスをHK$で書きますから、15%の手数料を加算して@12を掛ければ日本円になります。何れも、メールの一声、そのままで落ちています。
1627 HK$10000=房2銭ロット、宇佐検査⑩他・・単片なので・・。
1642 HK$11000=写真と記事がテレコで、ロットとしては記事が優先、写真の関駅検査済は前のロットに含まれます。
2001 HK$16000=写真の通りです。◎MEIJIのNIIGATA、鎌ヶ谷検査済等、物は良いのですが、コレクターの値段です。
2053 HK$40000=少なくとも大白切手帳の完本は入っていません。私の評価7万円が48万円で落ちています。2番札有ったかな?
2128 HK$55000=竜5銭田型、良い物ですが日本の小売りの2倍です。
2204 HK$10000=旧小判1銭茶 未使用15B、綺麗なものですが、私の即売の値段とほぼ一緒、まだ一杯ありますよ。因みに、小判切手関係の切手のパートは、メールに落ちた物はこれ1点、他も結構強いメールの札でしたが、全部フロアで撥ねて落としています。
2340 HK$8000=紅枠2種未使用・官葉研究会の摸刻なので、返品して下さい。まともな葉書と封皮はエバンスさんのライフワークなので、値段構わずに全部買いました。感謝されて写真をとられましたけど。
2377 HK$12000、2381 HK$1200、2382 HK$18000、菊他のカバー、下見すれば買いにくいロットでした。
エージェントとしての仕事は、オークションハウスが国際展の会場でプロモーションをやったので、皆が情報を共有しており、口コミの紹介で15人から頼まれました。皆さん、随分と強い札でした。同じロットに複数からダブった場合が困るし、実際に今回も起きたのですが、この場合でも調整はやらずに機械的に処理をしました。内部での事前調整や連絡は一切やりません。ただ、今回の場合、フロアスタートの時点で、この条件は解消されていました。私は、依頼されたものはその値段までの優先権を100%、依頼人に譲ります。成功報酬は5%、落ちなければゼロです。依頼値を超えれば、優先権は消えます。
結論としては、楽勝で全勝か、完膚なきまでに負けての全敗かのどちらかでした。中途半端はないのです。創始10銭版番号付田型は、ほぼ美品がHK$6000=72000円、同じく古色は31200円というのも、冗談でなく本当です。少しは場でのテクニックを使っていますが、記念切手の未使用は、今は誰も買いません。U小判1銭シート=極美がHK$26000、これは欲しい人が日本に4人、2人が既にお持ちでビッドせず、一人は事前調整で止めさせて、残りが一人になりました・・の値段、あまり安く落ちても後の処理に余計な手間が掛かるのですが、私なら何とか丸く裁けます。
負けたカバーの素性の分析が結構面白い結果でした。完全に一人のストロングビッダー=T23の電話入札、私自身のビッドも含めて、1勝10敗、次回に一本の記事に仕上げます。場でのビッドは「マイケル」爺さん・・、多分彼だと思います。昨今の欧米・香港での高値落札の疑問が解決、弊社の大竜コンビで900万で負けた人?
「猿」と「パンダ」と「Y1カバー」と「日中コンビ」は今すぐにでも売りましょう・・、「tomopuと福丸の市の竜のエンタ」もここで売れば大金持ち・・が結論になるのです。

2011年6月14日(火)

『大津小舟入・・』
日専に書いた記事の反響は、有るような無いような、なかなか微妙な状況です。こうすれば全てが解決と言える絶対的な結論は見出せていません。でも、市場の波は、良きに付け悪しきに付け、動きを止めることは有りません。6月4~5日の弊社のオークションの会場で面妖な情報に接しました。そしてそれは、今までの例では、遠からず波紋を広げて、こちらの世界へ押し寄せて来るのです。
京都には骨董・道具市が幾つか有りますが、昨今は一般的には、「紙物」=エンタや葉書は出ないのです。蔵を潰した流れで、道具や書画骨董の連れで出てくるケースはあるのですが、エンタ類の単独出品は、場の主催者が嫌がるので殆ど出品されることは有りません。その理由は、個人情報の関係なのか、競りに関わる面子が少ないから値段が伸びないから廃れるのかは、現時点では確認は出来ておりません。ただ、結論としては、1箇所の市を除いては最早、そのスタイルでの出品は無くなっているとのことです。その例外は、日専にも書いている、「市の竜」の出所です。
またしても、そこで竜のエンタが3通出たのです。48文横ペア貼り、100文貼り、草津と西京の検査済・・。初い蔵出しの竜のカバーの風情です。でも今の道具・骨董のマーケットの実情から判断すれば、見るからに、仕掛けて作った如き、取って付けたような出方です。ここにそんなものが出て、いったい誰が買うのかな?
競りは声掛け発句で、元気な若者が嫌味でチョッカイを出したのが、お遊び値段の35万、当たり前の如くいつもの輩が、上で撥ねて、落ちた値段は40万・・。蔵出しには似つかわしくない非常に綺麗な状態とか。あたかも、そのまま直ぐにオークションで出せるようなコンディション・・。普通なら、最初から、お天道様の下の郵趣シーンのオークションに出るでしょうに。
宛先が何れも、「大津小舟入・枡(升・舛)屋佐助」、一連の明らかにダメな「水口=みなくち=検査済」と同じ宛先です。この宛名は相当な量の封筒が各年代で蔵出しで出ていて、竜文から丸一までが確認されています。日専の記事を書く時の検証で、或る時から、住所の表示は小舟入から平蔵町に変わり、屋号も桝屋佐助から平田佐助になっています。竜文時代では、「小舟入りの枡屋」でないといけません。今回の草津他の3通は、必要条件を充たしています。でも、仮に悪意が存在したとしても、私の日専の記事を読んで浅知恵を働かせれば、まさか今度はチョンボはしないでしょう。
さあ、突然出現の3通の竜文カバー、落ちた値段は本物ならば滅茶安だけど、どういうパターンで陽の光を浴びるでしょうか。今度の国際切手展にギリギリに間に合う、どこかのフロアオークションに出たりして?物を見ない情報のみでの記事なので、憶測、推測、仮定の要素のオンパレードです。責任ある結論は出せません。
今、書けることと言えば、郵趣研究100号(近日発行)の丹下甲一氏の記事の続編にかなりのヒントが出ています。3通の内の少なくとも1通は、朱色の西京の干支印が押されているらしいのです。この印の顔料を分析すれば、かなりの確率で真偽の判断が出来るのです。今のタイミングで、この記事を書くには少し躊躇を感じます。ギリギリ出品へのデッドラインが微妙なので、物が危険を察知して引っ込んでしまうかも知れません。でも、実際に起きる事実の方が私の思惑を凌駕することがままあるので、ドキドキしながら待ちましょう。カバーの真偽の確定は困難かもしれませんが、マテリアル自体の劇場型出現の有無は、7月初旬にはっきり結論は出るでしょう。触れ込みは、最近出現の「初い=うぶい市の竜」として。くれぐれも情報に接してない純情な方には、惚れ込んだからといって、飛込みでは手を出して欲しくないのです。ヤフーで一時期活発にご活躍の、お父上のコレクションを処分していた、問題の「tomopu・・・」は依然利用停止中。終わったデールは闇に埋もれてしまっていて、何が起きても誰も助けてはくれません。十二分にご注意願います。

2011年6月2日(木)

『ジェムス・ベンドン UPUみほん』
前の日曜日が丁度、弊社の東京下見会だったので、古家氏の他に山田廉一氏に会い、気になっていた資料の提供を頼みました。直ぐに送ってくれたので、約30年前のオボロゲ記憶を時系列に並べても、チョンボのない記事を書けると思います。
結論を先に書けば、前述した物は、いずれも「UPUみほん」で表現される、加入各国が未使用切手をジュネーブの当局に送り、該当国の言語のゴム印を押して、パクボー郵便物が入ってくる国に送ったと解釈しています。ベンドンの立派な文献が英語で出ています。
SPECIMENは英領東アフリカのナタールとべチャナランド、ULTRAMARとAMOSTRAはポルトガル領のアフリカ、COLONIASとESPECIMENはスペイン領アフリカだと思います。以上は後述するひとつの資料から導きましたが、別ルート=ジョージ・アレビゾスのオークションに、菊5円・10円を沢山貼った、MADAGASCARのそれが有りました。共通点は、全てアフリカでヨーロッパ列強の植民地、完全にグループ化できるので、出所は「UPUアフリカ局」から流れ出たものでしょうか。
この種のマテリアルの日本への登場は、1980年頃のロブソン・ロウが、東京の郵趣会館でやったフロアオークションでした。U小判・新小判13完=SPECIMEN加刷が7点のカットに貼られていました。不幸なことに同じセールに、平和記念の無目打=ワイドマージンをカットした変造品と、平和記念が台のトンボ偽加刷が出ていて、SPECIMENもこの時点で誰も素性を知らず、何のことか分からず、セールでは不落札になったと思います。
その現物が回り回って、弊社のオークションに出てきました。30年の時を経て、間に少なくとも2人のコレクターが入っています。そして、それには1981年5月15日のBPAの鑑定書が付いています。ベンドンの本のタイプではナタール型で、同じタイプが別額面でもたまに出てきています。菊と一部の記念切手の場合が多いのですが、動機的に偽物は作るメリットはないので、見つければ買って良いでしょう。ゴム印で簡単に作れるから、まやかしだ、とブッタ切るのは収集マナーとして貧困です。分からなければ検証すればいいのです。ただ、ナタールとべチャナ・・の区別は今でも私では無理なのです。あのセールの時点では、日本の郵趣会では誰も海外用の異タイプのみほんの存在には気づいていません。
その後、私がオークションに出品した、かんむり10銭のSPECIMENが、落札者のエクステンションで、日本郵趣連合の鑑定に出ています。鑑定不能か資料不足で判断できないとして戻されました。この時点で、私は何故か根拠のない自信が有ったので、RoyalPhilatelicSocietyの鑑定に出しました。結果は真正になっています。
同じタイプが旧韓国と旧中国切手でたまに見かけるので、このマテリアルは、JAPANのそれというよりも、英領切手の分野で判定が行われます。今なら、多分日本郵趣連合の鑑定でも、OKはでると思いますが、あの時点では止むを得ない判断です。
次の出現が、20年以上前に、1899年10月発行の菊切手数種、縦5連のULTRAMAR加刷、ジャンボ・ゴトーさんが、ポルトガル(領)のUPUみほんとの触れ込みで、アメリカで見つけて、今は亡き柘植の森下さんに売っています。最初期印刷の素敵なクラックの入った糊で、昨日発行されたばかりの雰囲気でした。何故か菊封皮の2種にも複数の同じタイプが見つかっています。ピカピカの状態を見れば、まやかしとは誰も思いません。随分立派な値段で動いています。ペアと単片3枚に切られて、最大ブロックのペアは、20年の眠りの後に数年前に弊社で陽の元に出ました。これも、今度の国際展出品者のコレクションに入っています。
切手やステーショナリーが出れば、最初にUPUに送るべしという決め事が有ったのかもしれませんが、U小判・新小判は100面版の目打13です。出た都度直ぐにではなく、ある程度の期間を纏めて送ったのでしょう。そのルールは推測するしかなく、検証不可能です。
SPECIMEN=ナタール・べチャナ・・とULTRAMAR=ボ領は、その後も希に出てきています。珍しい割りには、値段も伸びないことが多いのです。でも、買っている人は、私の説の信奉者でなく、独自にベンドンの本の情報ぐらいは知っていて、鑑定云々抜きで買っています。正しいマナーだと思います。
もう10年位経ったかも知れません。イギリスのクリスティー(ロブソン・ロウかボーンマスかも知れない)に、そそられるロットが出ていました。参考値は数万円、全頁の青焼きのコピーを貰いました。状態はぐちゃぐちゃ、でも私の好みに合致する。フロアビッドを頼めるので、自分が買うなら限りなく安く落ちる、負けても納得、私の評価の上で買う人がいるならどうぞ・・の数字で入れました。マジで、商売にはならない数字を出したのですが、フロアできっちり負けました。希少性は抜群だし、ひねっていじりたいマテリアルですが、状態ゆえに商売にはならないものなのです。負けて納得の結果でした。
このセールの以前に、同じ様な物が、ハンブルグのエドガー・モールマンに出ていました。不落札になった現物かも。イギリスの物は落した人から収集分野のマテリアルを買った人もいるのですが、皆が同じことを言ってました。「高い」「状態が・・」、それは仕様がないことなのです。原価が原価ですから。元がとれたのなら、立派な商売をやってのけたと思いますが、震災や阿蘇の小型はまだ残っているかも・・。我ながら、変なことを良く覚えているものだと感心しています。場ではいつもながら、2人のエージェントがスタート値から2桁変わるまで、延々と競ったはずですから・・・。
実は、オークションが終わった後、コピーを私が持つよりは役立ててくれそうな、古家氏にあげたのです。全ての情報は公には記事の形では開示してくれてはないのですが、頼んだらきっちり見つけてくれました。その意味で私の取った選択は正しかったと証明されています。自分では保存せずに捨てますから
感謝を込めてデータを出しておきましょう。
ULTRAMAR 菊5銭・8銭・15銭・20銭・25銭・50銭・1.5銭紫・3銭赤・6銭・5円・10円・東宮婚儀。
COLONIAS 旧毛5厘・1銭・1.5銭・2銭・3銭・4銭・5銭・10銭・20銭・25銭・1円・5円・10円・震災9完・1次風景3種。
SPECIMEN 芦ノ湖9.5銭・赤十字会議4完・愛国3完・昭和毛紙3完・乃木2銭(乃木馬鹿くん、買ったかい?)・1次富士箱根4完・関東局30年3完。
ESPECIMENUPU加盟50年3種・昭和大礼4完。
AMOSTRA 阿蘇4完・同小型シート。
このデータで推測すれば、この現物に関しては、該当国へ配った後にそこから流れたというよりも、本部に残っていたものが出てきたと思います。他にチラホラ出ている物とは性質が異なるユニークな物でしょう。私の経験では、注意しているのですが、SPECIMEN・ULTRAMAR以外は接した機会が有りませんが、そのチャンスが有れば、飛び込むと思います。

2011年5月27日(金)

『デジャブー』
最後のテーマに入る前に、追加で分かったことを書いておきます。1次昭和の「活版みほん」のタイプ2種は、発行日ベースでは、S14.9.21と14.10.16の間にタイプ「18」からタイプ「9」に切り替わり、安定度も高いと思っていました。2次昭和の東郷5銭の17.4.1以降になると、1額面での複数タイプも高い確率で出現してきますが、1次昭和に限定すれば、1額面1種類のみの存在を否定するデータは見ていません。ただ、同じ時期の「国立公園」で気になるデータがありました。S14.9.21-17.4.1の期間に、大雪山・霧島・台湾の計16種が出ています。これが全て1昭後期の、タイプ「9」なら問題は無いのですが、山本さんのデータでは、次高20銭が「18」になっています。他の3種は要チェックです。そして、私の手持ち品でも、霧島20銭・大屯2銭が「18」なのです。国立公園は発行政策上、かなりの期間で、前もって事前準備されたと解釈すれば、旧タイプの後年使用も有り得ます。大量の作成ではないので、この時期なら1額面1タイプが自然です。ただ、山本さんのデータと、私のそれを合わせれば、同一の台切手で、「18」「9」が存在してしまいます。同一シートに混在か、異タイプ複数シートが存在かは確認出来ていないのですが、上記の16種類と、小型シート、それに7銭より後の発行の1次昭和でも異種存在の可能性が否定できなくなりました。我々のデータも、極めて限られており、標本数はお互いに1~2点のレベルなのです。お持ちの方は異種の存在の可能性を前提にして見直して下さい。
数ヶ月前の「JPS菊田沢部会報」に山口充さんが書いていた、支那字大白・高額5円10円の「みほん」が台湾使用だという論文には、結論的に全面的に同意できるし、ある人から、その記事の存在を聞かされた瞬間に、読まずに、あ、あれは「台湾」といいました。私の認識では、ブツの支那字加刷は明らかに「偽」、切手と「みほん」本物、でも、記事の詳細を見ない段階で、該当のマテリアルは「台湾みほん」と思ったのです。根拠のないデジャブーかなと思ったのですが、識者に聞けば、村田さんや成田さんが大昔に記事を書かれているとのこと、それが頭の片隅に有って、そのまま納得していたのでしょう。今の知識なら、発行告示の周知用みほんと、後年の比較照鑑のそれの、全く目的の違う物が存在する事実も、色んなシリーズで自然に受け容れられてます。発行当初の台切手限定とか、字体の比較での真偽の判定とは、次元の違う思想のマテリアルです。記録のある公式品の姿では無く、それがあっても、解説抜きなら疑われるし、元からそれを使えるレベルの人はほんの一握り、それ以上にマテリアルの玉の数が少なすぎます。オークションに登場したのは、2回ぐらいだったと思います。ここらは、売り手の都合でのセールストークがどうこう言う前に、自己判断で評価できる人がオークションのシーンに出たならば、まず見落とすことはないのです。結構良い値段で売れているはずなのです。ここらの記事を書いて、必要と思しき人へマテリアルが出たときに教えても、かなりの確率で、その行為が私の営業上の利益を目的とした行為だと受け取る人もいるのです。その反応を示されるなら、その人への以後の情報提供の可能性は一切消滅してしまいます。郵趣の知識というよりも感性が合わない人とのプライベートの取引は非常に無駄なエネルギーを使います。
前置きが非常に長いのですが、このテーマを書くに当たっての強い動機になった記事がありました。日専を読み解く「震災切手」魚木五夫著、28ページの、■その他の加刷です。
震災切手には・・中略・・横文字のゴム印による、“SPECIMEN”とか、その他の外国語表現の加刷などが、もっともらしい説明と共に、売られたこともありました。しかしこれらは、いずれも公的な性格のものという証拠が無く、特別に意味を考える必要はありません。・・略・・ゴム印もまた、だれでも気軽に作ることができます。確実な裏付け資料の無い物に、余計な投資をしないのが、賢明かと思います。
物凄い表現力の文章ですが、時間をかけて反論いたしましょう。30年位の間のお話になるのですが、筋の通った説明が書けると思います。
ワードは、SPECIMEN・ULTRAMAR・COLONIAS・ESPECIMEN・AMOSTRA、キーになる資料を、かつて、最も生かせるであろう人=古家美和さんにあげていて、ちょっとしたきっかけで、頼んだら見事に見つけ出してくれました。つづく・・・