2011年6月2日(木)

『ジェムス・ベンドン UPUみほん』
前の日曜日が丁度、弊社の東京下見会だったので、古家氏の他に山田廉一氏に会い、気になっていた資料の提供を頼みました。直ぐに送ってくれたので、約30年前のオボロゲ記憶を時系列に並べても、チョンボのない記事を書けると思います。
結論を先に書けば、前述した物は、いずれも「UPUみほん」で表現される、加入各国が未使用切手をジュネーブの当局に送り、該当国の言語のゴム印を押して、パクボー郵便物が入ってくる国に送ったと解釈しています。ベンドンの立派な文献が英語で出ています。
SPECIMENは英領東アフリカのナタールとべチャナランド、ULTRAMARとAMOSTRAはポルトガル領のアフリカ、COLONIASとESPECIMENはスペイン領アフリカだと思います。以上は後述するひとつの資料から導きましたが、別ルート=ジョージ・アレビゾスのオークションに、菊5円・10円を沢山貼った、MADAGASCARのそれが有りました。共通点は、全てアフリカでヨーロッパ列強の植民地、完全にグループ化できるので、出所は「UPUアフリカ局」から流れ出たものでしょうか。
この種のマテリアルの日本への登場は、1980年頃のロブソン・ロウが、東京の郵趣会館でやったフロアオークションでした。U小判・新小判13完=SPECIMEN加刷が7点のカットに貼られていました。不幸なことに同じセールに、平和記念の無目打=ワイドマージンをカットした変造品と、平和記念が台のトンボ偽加刷が出ていて、SPECIMENもこの時点で誰も素性を知らず、何のことか分からず、セールでは不落札になったと思います。
その現物が回り回って、弊社のオークションに出てきました。30年の時を経て、間に少なくとも2人のコレクターが入っています。そして、それには1981年5月15日のBPAの鑑定書が付いています。ベンドンの本のタイプではナタール型で、同じタイプが別額面でもたまに出てきています。菊と一部の記念切手の場合が多いのですが、動機的に偽物は作るメリットはないので、見つければ買って良いでしょう。ゴム印で簡単に作れるから、まやかしだ、とブッタ切るのは収集マナーとして貧困です。分からなければ検証すればいいのです。ただ、ナタールとべチャナ・・の区別は今でも私では無理なのです。あのセールの時点では、日本の郵趣会では誰も海外用の異タイプのみほんの存在には気づいていません。
その後、私がオークションに出品した、かんむり10銭のSPECIMENが、落札者のエクステンションで、日本郵趣連合の鑑定に出ています。鑑定不能か資料不足で判断できないとして戻されました。この時点で、私は何故か根拠のない自信が有ったので、RoyalPhilatelicSocietyの鑑定に出しました。結果は真正になっています。
同じタイプが旧韓国と旧中国切手でたまに見かけるので、このマテリアルは、JAPANのそれというよりも、英領切手の分野で判定が行われます。今なら、多分日本郵趣連合の鑑定でも、OKはでると思いますが、あの時点では止むを得ない判断です。
次の出現が、20年以上前に、1899年10月発行の菊切手数種、縦5連のULTRAMAR加刷、ジャンボ・ゴトーさんが、ポルトガル(領)のUPUみほんとの触れ込みで、アメリカで見つけて、今は亡き柘植の森下さんに売っています。最初期印刷の素敵なクラックの入った糊で、昨日発行されたばかりの雰囲気でした。何故か菊封皮の2種にも複数の同じタイプが見つかっています。ピカピカの状態を見れば、まやかしとは誰も思いません。随分立派な値段で動いています。ペアと単片3枚に切られて、最大ブロックのペアは、20年の眠りの後に数年前に弊社で陽の元に出ました。これも、今度の国際展出品者のコレクションに入っています。
切手やステーショナリーが出れば、最初にUPUに送るべしという決め事が有ったのかもしれませんが、U小判・新小判は100面版の目打13です。出た都度直ぐにではなく、ある程度の期間を纏めて送ったのでしょう。そのルールは推測するしかなく、検証不可能です。
SPECIMEN=ナタール・べチャナ・・とULTRAMAR=ボ領は、その後も希に出てきています。珍しい割りには、値段も伸びないことが多いのです。でも、買っている人は、私の説の信奉者でなく、独自にベンドンの本の情報ぐらいは知っていて、鑑定云々抜きで買っています。正しいマナーだと思います。
もう10年位経ったかも知れません。イギリスのクリスティー(ロブソン・ロウかボーンマスかも知れない)に、そそられるロットが出ていました。参考値は数万円、全頁の青焼きのコピーを貰いました。状態はぐちゃぐちゃ、でも私の好みに合致する。フロアビッドを頼めるので、自分が買うなら限りなく安く落ちる、負けても納得、私の評価の上で買う人がいるならどうぞ・・の数字で入れました。マジで、商売にはならない数字を出したのですが、フロアできっちり負けました。希少性は抜群だし、ひねっていじりたいマテリアルですが、状態ゆえに商売にはならないものなのです。負けて納得の結果でした。
このセールの以前に、同じ様な物が、ハンブルグのエドガー・モールマンに出ていました。不落札になった現物かも。イギリスの物は落した人から収集分野のマテリアルを買った人もいるのですが、皆が同じことを言ってました。「高い」「状態が・・」、それは仕様がないことなのです。原価が原価ですから。元がとれたのなら、立派な商売をやってのけたと思いますが、震災や阿蘇の小型はまだ残っているかも・・。我ながら、変なことを良く覚えているものだと感心しています。場ではいつもながら、2人のエージェントがスタート値から2桁変わるまで、延々と競ったはずですから・・・。
実は、オークションが終わった後、コピーを私が持つよりは役立ててくれそうな、古家氏にあげたのです。全ての情報は公には記事の形では開示してくれてはないのですが、頼んだらきっちり見つけてくれました。その意味で私の取った選択は正しかったと証明されています。自分では保存せずに捨てますから
感謝を込めてデータを出しておきましょう。
ULTRAMAR 菊5銭・8銭・15銭・20銭・25銭・50銭・1.5銭紫・3銭赤・6銭・5円・10円・東宮婚儀。
COLONIAS 旧毛5厘・1銭・1.5銭・2銭・3銭・4銭・5銭・10銭・20銭・25銭・1円・5円・10円・震災9完・1次風景3種。
SPECIMEN 芦ノ湖9.5銭・赤十字会議4完・愛国3完・昭和毛紙3完・乃木2銭(乃木馬鹿くん、買ったかい?)・1次富士箱根4完・関東局30年3完。
ESPECIMENUPU加盟50年3種・昭和大礼4完。
AMOSTRA 阿蘇4完・同小型シート。
このデータで推測すれば、この現物に関しては、該当国へ配った後にそこから流れたというよりも、本部に残っていたものが出てきたと思います。他にチラホラ出ている物とは性質が異なるユニークな物でしょう。私の経験では、注意しているのですが、SPECIMEN・ULTRAMAR以外は接した機会が有りませんが、そのチャンスが有れば、飛び込むと思います。