祖父江ノートを再検証

David Feldmanからは、豪華装丁で、500文逆刷の別冊も含めて2冊、ほぼ同じタイミングで、スタンペディアオークションからも、同一内容の手彫のオークション誌が届きました。こちらはホンチャンのカタログと同じPDFを元にして、プリントパックでの印刷でしょう。無線綴じのページ制限が164なので、必然的に2分冊になのです。ディスクライバーはアイホン君なので、突っ込みどころ満載のカタログです。じっくりと楽しませてもらいましょう。このセールに関しては私はノータッチなのですが、前所有者が超現役のコレクターなので当然ながらお付き合いも有りますし、このセールのマテリアルに関して知り過ぎていることも多いのです。書けるネタは一杯有るのですが、慎重に筆を進めて行きましょう。このセールのエスティメイトの設定は、大物に関しては前所有者の買い値のメモを参考にして、現所有者が決めたのかなと思います。一般の物のロッティングは記事も含めて、アイホン君の世界観でやりたい放題でやっているのでしょう。彼の場合、エンタのルートとレートは誰よりも分かるのですが、トラッドの切手そのものでは、売買という意味での修羅場を踏んでいないので大甘だと思います。だからオークションとすれば面白いのですが。

オークション誌の記事と言う視点では、読んでいてウザく感じてしまう所が多いのです。余計な事を書きすぎですし、目に付くのが、現存何点という記載です。国際切手展へのコレクションの記載として推奨されているらしいのですが、私は極めて否定的です。極一部の例外を除いては、日本切手では定量で数を示す程の情報網は整備されていないのです。だから現存数など分かる訳が無いのです。一生懸命、文献を漁っても、完璧にトレースできるものでは有りません。今回のカタログでも、書き十の未使用5枚、使用済1ダースは酷い表現です。山田祐司コレクションの記載を引っ張って来ていますが、割と普通に数えても、未使用は11枚、使用済は少なくとも30枚、恐らくは50枚以上は有るでしょう。存在数の単純計算でも15銭ロの2版分=80Pos分の1なので推して知るべしなのですよ。和紙墨六の未使用のカナ毎の枚数は、山崎氏のデータを使っていますが、比較的最近に、私一人が扱った物でデータから漏れているのは、レアシラビックのカナ混合で6~7枚は増えてしまいます。現存何枚とはこの程度の物なのです。それに定量の存在数は値段には全くリンクいたしません。定量の存在数の少なさよりも、該当品のルックスの方が値段への影響力は絶大なのです。高い切手のオフセンターは、リーフに貼った見栄えが悪く、第3者が貶す格好のネタになるのです。値段が下がるのでなく、集める対象から排斥されるのです。

本題に移ります。和桜20銭縞なのです。今回のコレクションもそうですが、最近の切手展の作品で必ず引用される数字が、存在21枚です。珍品としての枚数としての多寡を云々するのは野暮ですが、皆さんどこで情報を得ているのかなが気になったのです。局別の数字も誰もが同じタッチで書かれていると思います。しっかりした元ネタが有るのでしょう。推測ですが、私も少し協力した、祖父江義信さんの一覧表かなと思います。画像付きで、データが余すことなくリストアップされています。作製当時とすれば特に所有者名は完璧だったのですが、ここに来て結構動いている物が多いのです。総数21枚、その内博物館物が5枚なので、マーケットに有るのは16枚です。この切手には私は昔から何故か縁が有って、矢鱈と扱っているのです。掘出しが1枚、オークションでもろに落札した物が1枚、実質的にプライベートディールが7枚、もう1枚も次のJAPEXセールに出品することが確定しています。私如きが一人で市場或る物の過半数超の10枚も扱えるのですから、存在数21枚は眉に唾して数えねばなりません。ここではオリジナルの祖父江ノートを元にして、私が持っている最新のデータを書いて置きましょう。データは書籍等に発表されている物は、所有者名を書きますが、画像は種々事情を鑑み、ノーガードで引用する事は出来ません。番号は祖父江番号で、★は私がディーラーとして扱った物で、一部はコメントを付けました。

①②ペア N1B1東京7.6.13 有馬切手文化博物館

③    N1B1東京 不鮮明 三井文庫

④⑤再接ペア N1B1東京7.6.13 今回の出品物 書けるネタが一杯有り過ぎるので、別項目で書きます。④★

⑥    N1B1/K越前敦賀7.11.28 Pos33ピンホールあり シャピラが掘り出しで、ナタ二エル ★

⑦    N1B1/K越前敦賀7.11.10 ゴールドスミスが掘り出しで、関西のコレクターを経て、祖父江義信 ★

⑧    N1B1/K越前敦賀7.11.8 カロル2世→林喜一郎→日本フィラテリックセンターに出品

⑨    N1B1/K越前敦賀7.11.25 Pos1ピンホール無し 元ウッドワード 香港John Bullに出て、セールで不落札を後にプライベートで購入 某コレクター所有 ★

➉    N1B1/K越前敦賀7.11.6 Pos3 ⑪と同時使用の下側 オランダのVan Dietenで私が日・韓の古いリーフの中で落札 タカハシスタンプ ★

⑪    N1B1/K越前敦賀7.11.6 Pos11 ➉と同時使用の上側 山本謹一

⑫    N1B1/K越前敦賀7.11.8 スミソニアン博物館

⑬    KG羽後久保田 タカハシオークションで売られた物。唯一行方が定かでなかった物だが、今回の調査で判明。秋田の地元印コレクターが所有も、没後所在不明

⑭    KG羽後久保田 ウエーバリー→村川恒夫

⑮    マ23号 手彫切手専門カタログの表紙に採録 某コレクター ★

⑯    マ23号 元市田左右一 本年のJAPEXセールに出品 ★

⑰    マ1号  福原一信→太田克己

⑱⑲縦ペア キ1号 三井文庫

⑳    秋田調 某コレクター(関東地区)★

㉑    秋田調 アメリカ業者がE-Bay入手 鈴木鉄一 ★

㉒    N1B1/K越前敦賀7.11.9 昨年イギリスのオークションのロットから出現した新発見の物 某コレクター ★

祖父江データの21枚に、㉒が加わって、⑬が消えました。だから暫くは、知られている枚数は21として良いでしょう。後で一寸コメントを書いて置きましょう。