ブログ アーカイブ

朝鮮字菊完貼りカバー 30.SEPT・00

その名前は、バーゼルのメリヤン宛の旧小判貼の素敵なカバーでお馴染みです。。ここも横浜の貿易会社で切手を扱っていて、ニューイッシューを輸出していたと思います。印刷でなく、宛先文字が綺麗なペン書きなのが好ましいのです。横浜からバーゼルなので、デスティネーションも料金も捻りは無いのですがルックス故に人気が高いのです。詳しい経緯は知らないのですが、郵趣のマーケットでのメリヤン物は、スイス・バーゼルのハッセル婆さんから出ています。時系列の並べればちょっとした矛盾もあるかも知れませんが、体験した事実を軸に推測を交えて書いてしまいます。私のビジネスに於いての、不戦敗・ボロ負け・歓喜・負けても納得、そして今・・です。

ハッセルのメリヤン小判で有名なお話は、Dr.市田左右一氏が買った、ドンゴロス一杯の紙付でしょう。1980年をそんなには遡らないと思います。きっかけは、ドイツ・エッセンでのアジア切手展?だったような気がするのです。切手のコレクションのテーマとしての【アジア】をメインにしてなのか、何かのイベントとのタイアップだったのかも知れません。この時点では私は全くの門外漢で部外者でした。そんなお話が有る事すら知りませんでした。でも、北園君は行っていたのです。随分と日本物が有ったと聞きました。名前は売れていないけれど、アジア物に強い欧州のディーラーが沢山出ていたのです。ベルリン・ビスマルク通りのシュルツundシュラーゼ、アムスのフィル・ツワルト、同じくヨハン・クラベンダム、リヨンのペリューは知りませんが、大陸中のアジア物を扱うディーラーが集結していました。そして、バーゼルのハッセル婆さんも。北園君にも声が掛かったのです。自宅においで、JAPANはもっとたくさん有るから・・。市田さんがドンゴロス小判を買ったのがこの時かどうかは判りません。でも、結構良い読みかなと思います。北園君は千載一遇のチャンスを逃したのです。私は当然不戦敗、敗者復活の術も無いと思ったのです。今にして思えば、エッセン展あたりで、ハッセル婆さんは店じまいに入ったのでしょう。色んなところで物を目にするようになったのです。

1980年より少し後に、私は海外でのオークションのビッドする術を覚えました。スタートして本当に直ぐ後です。アメリカ・ミシガンのちっちゃなオークションで驚きの出会いが有りました。このオークションハウスは今は有るか無いか分かりません。Robert E. Lippertという名前です。あんまり買った覚えが無いのですが、忘れられない1通のカバーが有るのです。物は朝鮮字完貼 局はNINSENかFUSANのどちらかです。日付は今も目に焼き付いています。30・SEPT・00、現地の郵便局長差し出しで、バーゼルのメリヤン宛、そこそこ大きい封筒の書留です。日付がポイントです。朝鮮字11/2銭発行の前日です。完貼りだけれど、勿論11/2銭は貼ってません。中身は翌日発行の新切手の二つ折れシートだったと夢見るのです。この時でも物の希少性は判ります。でも、オークションのEstimateの値段に引きずられてしまったのです。カタログには、スコットの値段が出ていました。使用済の数字です。11/2銭抜きなので、300~400ドルだったかな。頑張って10倍も入れたら落ちるかな?・・でも、一声負けてしまったのです。朝鮮字の完貼りは他にも有るのです。肥後増雄さんが持っていた物と混同されることが多いのですが、これとは全く違います。それ以降もずっと、意識して出てくることを待っているのですが、杳として行方は不明です。私が負けた相手は日本人ではないような気がします。一声違いでもボロ負けです。

良い物を見つければ、飛び込まないと勝てない事を実体験出来たのです。1983年だったかな、ドイツのマイナーなオークションハウス、Waigand & Waigandのモノクロの写真版に赤二の使用済が10枚程並んでいました。全部目打が13で、ボタと◎と電信印、ボリュームは2~3万枚と書いてあったと思います。値段は数百マルクだったでしょう。直感で買いにかかったのです。この時点でドイツ人のオークションエージェントを使っていたので、数字でなくてプラスアルファの条件を付けたビッドをしたのです。外人さんは日本の束は買いません。こんなマイナーオークション、誰も知らないでしょう。ただ一人を除いては。日本からのビッドには絶対に負けない数字で預けました。参考値の数百倍、予想通りで期待以上に一桁安く落ちたのです。誰が入れるかが分かっていたから、エージェントを使ってこそやれた勝負なのです。明治21年限定の赤二の万束が2つです。藁紙が皆無、基本的に郵便消で全国網羅の紙付でした。バーゼルから零れた、メリヤン小判だと思います。ハッセル婆さんは商売を止めたのかな。ゴミだと思って捨て値で処分したのでしょう。物が着くのが待ち遠しくて・・・、水剥がしで水が真っ赤に染まりました。

スイスのウイルのInterphila AG、ジョン・ポール・バッハがオークショニアでした。当地の大手4社の次の次に位置するオークションハウス、ここも今やありません。最後のメリヤンのマテリアルが出たのです。ハッセルでなく、メリヤン自身の手彫のコレクションだと思います。1銭MLLのペア・〇郡、200文のリタッチを含むペア・白抜神戸、基本的には使用済で良い物が目白押し、30万ぐらいの参考値、この時になると、ある程度メリヤンの赤二を売った利益が有ったし、オークションでの飛び込み方も分かっていて、良い値段でビッドしたのです。落ちるかなの数字でなく、売りたい値段にプラスしてMaxの数字を切るのです。自分が買うならMaxプライスより安く落ちる、負ける場合は自分の値段の上で買っていただく。安くは買わさない数字です。700万だったかな。でも、一声負けました。私が場で負けた相手は北園君、ノンリミットで代行札を預かっていたのです。依頼者に随分と嫌味を言われたと聞きました。

フランスとスイスと、40年程昔に戻っての旅でした。今度は大阪での今のビジネスを書きましょう。東証マザーズ上場の似非同業者「買売株式会社」、一枚残らずパートのオバちゃんが1銭まで評価する真面目な「切手専門買取屋」さん、数字を並べて遊びましょう。実際にこんなことが有るのです。

AUDOYERとPEYRIEUX

前回の記事に反応が有りました。お一人が正解をくれました。昭和切手のコイル貼、昔オークションで見て吃驚したというコメントで、同時に続きの話をリクエストされました。今回のディールでは一杯ネタを持っています。書きたい気分なので幾らでも書けるのです。楽しみながらボチボチやりましょう。思い出話だけれど、初い情報が満載です。我ながら改めて振り返って、あんなこともやって来たんだという、ノスタルジーに浸ってます。忘れていた思い出話から書きましょう。

AUDOYERとPEYRIEUX

〇〇Philatekic Centerの〇〇は、Sunです。名前の伏字はAUDOYER、見覚えがあるでしょう。差出人も受取人も共にGEORGESです。横浜で貿易会社を経営していて、取引品目に日本切手を含んでいたのだと思います。30年程前でしょうか、この名前絡みのマテリアルが大挙して日本にやって来たのです。出所はメリヤンに於ける、ハッセル婆さんという立場で、Lyonのディーラーに膨大な量の日本切手のストックが有ったのです。噂では聞いていました。お宝の持ち主の読み方はペリューなので、恐らくはPEYRIEUX爺さんだと思います。気難し屋だと聞きました。何人かの日本人がチャレンジしたのですが、誰も商売できなかったそうです。風の便りでは日本人が大嫌いだそうです。理由は判りませんが。この頃のフランスに日本切手が分かるセミプロが4人いたのです。巴里響のチェリストのアンドレ・ローラン、アフリカの土地改良技術者から転じて台湾料理の店を持った、ディジョンのコン・ウエンスン、そして名前だけの間接的な付き合いだけれど、パスカル君とH・N。

パリのDemarest=デマレというオークションに素晴らしい綺麗な単片のロットが出たのです。500文2版の赤坂検査済のカット、旧小12銭のKB2遠江二俣、あと数点目玉が入った小ロットでした。この頃の私は、今よりも遙かに真面目に仕事をしていました。良い物を見つけたので、当然やる気満々でセールの日を待ち構えていたのです。突然に、予告も前触れもなしのローランからの電話でした。今度のデマレ、パリの他の連中を降ろすから、一緒にやらないか、の誘いでした。参考値は1万円、私は普通に踏んで200万位は覚悟してました。札を1枚外したら、フランスでのオークションなら如何なる珍品のロットでもゴミの値段で落ちるのです。ローランのコーディネートなのでストレスは有りません。喜んで受けました。私は100万を払い物を貰う、現金はパリの4人で分配でしょう。ただ1回この時だけの不思議なデーールだったのです。コンからも面白いオファーが来たのです。三五六の6銭にフランス船内印消の実逓がオークションに出ている。幾らで私が買うかを教えてくれだったのです。消印の日付がちょっと遅いのが気になったのですが、聞いた話では良い物だと思いました。200万の数字を出しました。これも勿論商売成立です。

アメリカは広すぎるので対応不可能、ドイツとスイスと北欧は自分で出かければ勝負できる。イギリスとオランダとベルギーは北園君頼りだったのかな。でも、フランスには手が出なかったのです。特別なお誘いが有れば別ですが。LyonのPeyrieuxにはローランもコンも、気難し屋の爺さんに商売を拒否されました。噂では、手彫の本物を偽の値段で買おうとしたのがばれたというのが有るのですが、私の直感ではそれはガセだと思います。騙しているのがバレテ、機嫌を損ねて出禁にされるよりも、真っ当に教えて信用されて買ってしまえば、売る時点で知識の付加価値を付けて儲ける事を、ローランもコンも出来るからです。ペリュー爺さんとは相性が悪かったのでしょう。結局、マルセイユのSussman,Paulが取りました。人当たりが柔らかく、いつもニコニコしているパリジャンです。コイルのカバーのサンフィラへは出品は彼が直接か、誰かが間に入ったのかは今や分かりません。ハンマープライス210万は当時のレコードでした。産金ビルでのフロアです。私は場に出ていないのです。絶対に知っているであろう人に聞きました。小林君にです。オードワイユのコイルの210万、誰が買ったの?即答でしたよ。でもその答えの人の名前は今はまだ内緒にして置きましょう。競ったのは誰かは彼も覚えていません。成田さん、和田さん、白木さん、大穴で林君、今度売りに出せばガラリと面子は変わるかな。乃木2銭貼盲人用点字のパターンを密かに期待しています。このお話はもう少し引っ張って、今は過去にタイムトリップ致しましょう。

間接ですが、私もAudoyerの使用済を扱ったことが有るのです。芦ノ湖の8.5銭抜きのブロック、欧文櫛型YOKOHAMAです。それ以外に芦ノ湖9.5銭とUPU加盟50年4種完のフランス船内印が有りました。サスマンが持ち込んできて、後藤ブラザーズの弟さんが丸ごと私に振って来ました。当時はいいネタだと思ったのです。オードワイユの事は知っていたし、実逓のエンタからの剥がしだと分かっていました。フランス船内印と言うと、知ったかぶりをして、全部がローランが作った偽消しだと触れ回るお馬鹿もいるのですが、ちょっとは勉強しなさいよ。物のルートを精査すれば良いか悪いかは判ります。後藤重義さんは早死にしたのが惜しまれます。彼とは短い付き合いだったのです。この山の彼の売値は、型価の35%だったかな。200万位は払ったので、相当なボリュームだったのです。同じ物が一杯ある、物が良くても物凄く扱いに悩みます。芦ノ湖の欧文の田型とフランス船内印なら、売る値段とすればフル型なら楽勝です。でも無制限には売れません。売れる数を逆読みするのです。最初は高くなりすぎるのでそれの対処も必要です。値段を意図して抑えるのです。割戻して3分の1売れば、トントンです。後藤重義さんが矜持を保つであろう事に掛けたのです。チョロ消を除いて、消印が読める物は一切他には流さない、自分のコレクションにする気すらない、これが彼からのオファー時の条件でした。信じましたよ。20数年は経っているのですが、彼は約束を守ってくれていたのです。芦ノ湖のYOKOHAMAのブロックとUPU加盟のフランス船内印消は、ペリュー→サスマン→重さん→私のルート以外にこぼれた物は無いはずです。芦ノ湖のブロックはまだ残っているのです。随分と売ったはずですが、元は取れているので良しとしましょうか。

本筋に入る前にもう一本書いて置きましょう。メリアン→ハッセル婆さんのお話です。1980年頃の伝説のエッセンでのアジア切手展、私は数年、間に合わずでした。

 

 

それは何?

コロナ下のワンデーフロアセールは終了、発送も完了して、私の仕事のリズムは8月末のパシフィコ横浜でのスぺッシャルセールの編集に入っています。予定していた物以外にも期待していた物、思わぬ物もやって来て、フロア分だけで3000ロット位になりそうな雰囲気です。各分野に於いて良い物が並びます。

5月のフロアセール開催中に、気になる情報が有りました。5月15日のSNSの2チャンネル(5チャンネル)に面白いネタが流れたのです。雰囲気的に、お茶らけや100%のガセでは無いと見えました。でも同時に、あっそ、縁が無いとも思ったのです。こちらからは動くわけには行かないのです。でも、数日を経ずして、まさかの電話が有ったのです。弊社を推薦してくれる書き込みを見てのアクションでした。話の雰囲気で一発で判りましたよ。当然、持って来てよの話になるのです。でも、こちらはオークションの真っ最中、余計な時間は取れません。取りあえず、何が有るかを確かめに入ったのです。先方はずぶの素人さん、アルバムとストックブック、シートファイルの区別が出来ません。カバーと葉書の違いも分かりません。竜と見返りの違いだって無理なのです。この前提条件で全体像を探るのです。コレクションの評価なら、どんな物でも同じ条件で値段を踏めば、誰が相手でも勝てる自信は有りますよ。弊社の場合、合い見積もりは大歓迎だし、後だしジャンケンをされても負けたことは有りません。でも、兎も角物を見ないと駄目なのです。

色んな方向から探りを入れたのです。当然ながら高そうなものを聞くのです。何とか聞き出せたのが、210万の数字の封筒が有る。〇〇PHILATEKIC CENTERの台紙が付いている、フランスの封筒だと言うのです。瞬時にデグロンと思ったのです。ちょっと割高だけど、有り得なくはない。封筒の裏を見てください。横浜郵便汽船会社社長・デグロン君の四角い判が付いてない? 違ったのです。ならばバロンモンテにチャレンジです。フランスから日本宛のふる~い封筒、宛先はEDOになってない? これもノーです。貼ってる切手を聞きました。日本切手なのは確かだという返事です。5円と2円、3円、4円、14円を沢山貼って有る。消印を読んで貰ったのです。YOKOHAMA 19.5.39、これで私は判りました。

大きく硬い封筒でクリーム色、差出人と受取人の名前が印刷してある、差し出しはYOKOHAMAで、宛先はフランスのENTRAIGUES、両方ともに同じ名前のGEORGES 〇〇〇〇〇〇〇でしょう。相手は吃驚してました。ドンピシャで当たっていたのです。的確なヒントを出しましょう。先方さんは切手には素人です。額面は正しくは5円は5厘、2円~14円は【銭】です。貼ってる枚数は5額面が各6枚、他に料金合わせで15銭、締めて156銭貼の書留です。情報は過不足なく示しています。さあ、分かる人居るのかな?

郵便切手類等模造取締法の法的考察

5月14日(金)に新聞、テレビ等で大きく報道された郵便切手に関する案件が有りました。社会的な関心が大きく私の周辺でも話題になっています。公権力の法的な行為での事案なのですが、摘発した警視庁高輪署保安課及び報道機関が、細部に於いて幾つかの部分で明らかに法解釈を誤っており、適切でない取り扱いをしている旨推測できる故、根拠を示して公表周知したいと思います。あくまで、報道されている事例が事実であるとして論じます。私を含め切手に携わっている物全員の総意として、昨今のヤフオクを初めとしての郵趣のマーケットでの変造・偽造品の氾濫には強い怒りを覚えており、法的な措置によりその流通を差し止めたいと思っておりました。本年1月に、郵便切手類等模造取締法(以下郵摸と記す)により、数人の不心得の輩が立件された事は嬉しい驚きでした。その際の押収物に、【東芝ゼロ円】のリプリントが含まれていたのですが、今回の摘発のメインマテリアルとして、【東芝ゼロ円】のオリジナル20面シートが含まれているのです。警察署が誤認するのは当たり前なのですが、法的に考察すれば、根本的に間違っている措置なのです。警視庁保安課から所轄地の地検に書類送検され、今後の扱いが決まるのですが、法的には100%の確率で不起訴になってしまいます。警察レベルでは法を精査はしませんが、検事は公判維持=有罪判決を得る事を前提に処分を決します。迷うことなく有罪の立証が無理なことに気付くと思います。

郵模_01

郵模_05

郵摸の法文を載せて置きます。

郵模_02

 

ポイントは公布日が昭和47年6月1日、施行は同年12月1日であるです。法律のイロハのイとして、法令不遡及の原則が有ります。施行日以前の行為を法の名で罰する事は出来ません。この法律は作る際の準備段階で、当時郵政省にお勤めの職員(故人)が主導的役割を果たされており当時の資料も残されている事をご遺族から聞き及んでいます。私もお付き合いが有った郵趣家なので、法文もストレスなく解釈できる表現になっています。

今回の案件では郵摸の第一条のみで結論が出せます。該当のマテリアルが法に触れるか否かをアナライズ致します。〇は郵摸に抵触しない物、Xは郵摸の抵触し摘発の対象になる物です。

Ⓐ 昭和47年12月1日以前に製造された物は全て〇です。法令不遡及の原則が根拠です。

Ⓑ 郵摸の第一条2項に該当する、国内外の全ての正規の郵便切手及び、郵政大臣(総務大臣と読み替え)が認めた関連品は〇です。

Ⓒ 郵便切手でない、印紙・シール・ラベル・証紙類は対象外なので、オリジナルもリプリントも〇です。

上記に含まれない、郵便切手の類似品・変造品、模造品で、昭和47年12月1日以降に当局の許可を得ずして作成された内外の郵便切手に類似した顔を持つ紙片がXになります。

具体例を例示すれば、菊切手の郵便目的用の偽物、手彫・旧小判の和田製の模造品・新昭和の輸出用のリプリント・切手経済社の月雁と見返りの摸刻はⒶに該当しますので〇です。全てのみほん切手・エッセイ・プルーフなどはⒷなので〇です。ⒶⒷ共に郵便法の解釈を越えての包括の定義なので間違いは起こりません。村送り・坂東ラーゲル・印紙・証紙は真正品もリプリントもⒸなので郵摸の対象外です。

今回現実に事件化している物を整理します。ヤフオクに流通している物を含んでの分析です。手彫切手の偽物は製造日で分かれます。昭和47年12月1日以前は〇、以降はXです。直近のヤフオクに出ているパソコンで作った物や一部を変造した物はXです。模造品・リプリントと謳っても郵摸ではXです。免責されません。作ることも売ることも同罪です。郵便法上の有価証券としての効力でなく、外形での類似性で判断されます。月雁も昭和40年前半以前作は〇、今作ったらXです。リプリントでの〇Xは、ベースが郵政大臣が許可したか否かで結論が分かれます。琉球の100円加刷は正規品は勿論〇ですが、直近作の物はXです。満州の国防献金も本物は〇、リプリントはXです。村送り・坂東ラーゲルは本物も偽物も郵摸では〇です。かつお釣りが微妙です。郵便切手であるか否かの定義が定まっていないのです。当局から印刷会社へに発注書は存在するのですが、窓口では売られておらず、郵便法上の切手では有りません。本物は勿論〇ですし、当時に作られたリプリントも〇です。最近に悪意で作った偽物は郵摸ではグレーゾーンになるのです。本物が切手なら、直近の偽造品はX、切手で無いのなら偽物は〇です。リプリントが〇の物もあくまで郵摸に於いての区分なので、真正品と偽って売れば、詐欺罪に問われます。郵摸とは比べ物にならない重罪なので絶対にやってはいけません。ヤマセミ80円他の現行切手の郵便使用目的の偽造品は、郵摸でもXですが有価証券偽造罪・偽造有価証券使用罪で摘発されます。郵摸とは比較にならない犯罪です。ヤマセミの使用済は微妙です。郵便法や有価証券偽造罪違反にはならないのですが、郵摸には該当の記載が有りません。△として置きましょう。

最重要のテーマに移ります。【東芝ゼロ円】金魚と弥勒です。絶対的に結論が出せる資料が有るのです。

郵郵管 第 464号 昭和41年10月20日

東京芝浦電気株式会社 機器事業部長 〇〇〇〇殿

郵政省郵務局長  △△△△

実験用模擬切手類の作成について

『昭和41年10月17日付けをもってお申し越しの現行切手・料金印面の図柄の一部を使用することにつきましては、当該模擬切手類の現品を必要な実用実験以外の用途に使用しないことを     条件として、承認いたします』 発行枚数は各3万枚です。

後日の流通の実態はさて置いて、マテリアルとしては、郵政大臣の許可のもとで作成されており郵摸第一条2項で記された紙片に該当いたします。郵摸では〇、リプリントはXで紛れは有りません。大蔵省印刷局にて作成され、ゲーベルグラビア印刷・スクリーン230線・PVA糊、シート構成は2x10面、1500シートで41年10月後半印刷です。

(因みに東芝及び日本電気の2本バー加刷に於いても、昭和42年3月6日から47年3月31日付で同様の許可書が発行され、作製されています。)

今回摘発された該当品には私も接点が有るのです。3年間でヤフオクで1000万以上荒稼ぎした、横浜の古物商(53)からは、弊社を含めて複数の同業者が売込みを受けています。袋単位で持っているから値段を付けろのオファーでした。各自理由は色々ですが、当然ながら取引は不成立です。幸運にも東芝ゼロ円を数袋バッタで手にした彼は大儲けをしたでしょうが、運悪く蹴躓いたという事でしょう。私とのビジネスの断り文句が、信頼感が構築できないので取引しないという捨てセリフだったことを忘れていません。被摘発者が私の知り合いなら、何としても助けに動きますが、この人物には関わるつもりは有りません。今年1月の摘発時にも【東芝ゼロ円】は有ったのですが、今回とは別個のリプリントだったと思います。これは郵摸Xなのです。警察が同じ物だと誤認するのはさもありなん、なのですが当事者は大変な思いをしたでしょう。私が持っている貴重な情報を持ってはいないでしょうから、証拠を示しての反論は困難だと思います。郵摸は最高刑が懲役1年なので、必要弁護事件では有りません。弁護士が付かずに法的措置が済んでしまう可能性も有るのです。法律を根拠に争えば絶対に無罪だし、普通の流れなら検事がストップを掛けて不起訴でしょうが、無知ゆえに略式起訴とか罰金での現品没収も有り得ます。法的に無知なら自身がその責を負うのです。

警察と報道機関が誤認するのは判りますが、腹が立つのはヤフオクです。東芝ゼロ円は最初の摘発から出品をシャットアウトしています。郵摸を根拠にすればこれは不当な扱いです。でも、その反面、郵摸でXな物を、平気で出品させているのです。判断基準に整合性が取れていないし、議論をすることも不可能です。ならば公権力動かしましょうか。パソコン作の紛い物は模造・リプリントと謳ったとしても、出品させるのは違法なのです。高輪警察署保安課がマジで動いてくれるなら、喜んで情報提供も物の判断の協力も致します。今回の件がきっかけになって、ヤフオクでの紛い物追放に繋がれば郵趣界にとってパッピーな結果になるのですが。ヤフオクはオークショニアでなく単なる寺銭稼ぎの場所貸しだと承知の上でちょっと誘って見ましょうか。

 

 

 

ホットな情報を公開します。

幾つか引っかかっていた案件が解決、本日のオークションの準備も完了いたしました。ちょっと時間が出来たので直近の情報を3件公開いたします。

PA116回のフロアとMA101回のメールですが、メールビッドの受け付け番号は555番まで来ました。PA分のメールビッドは26日正午で締め切りです。MA分のメールは来週火曜日AM9時まで受け付けます。これの追加のビッドが約100名、フロア参加者は実数で100名弱かなと思います。トータルのご応札者数は700+、ご出品者が70~80名、つまりオークションの会員さんのジャスト半数が1回のセールに参加してくれるのです。この比率は常に一定です。PA116分しかデータは見ていないのですが、ロット数2709に対して、入札有りが1686ロット、62.22%です。フロアでは1割程度伸びて68%、不落札品の即売で3%プラスして、落札率は70%を少し超える雰囲気です。PAの最低値の合計は31,145,000円に対して、フロアのスタート値の合計が42,027,100円なので、ビッドが入った分での最低値に対しての伸びが1100万円弱です。因みに1番札の合計値が44,130,150円で、ここらの数字がフロアセールの目標になるのですが、それの達成はかなり困難です。MAにはこの指標は使えないのですが、落札率に於いてはフロアもメールも然程差は出ません。PA・MAトータルでのハンマープライスの合計は最低値の2割増し、落札率は70%が大雑把の目標になるのです。コロナ下のフロアセールなので、場に来てくれる人の人数は何時もの7割ですが、売上他は普段と然程変わらないと思います。でも、バザールも含めて皆さまに以前のようにお目に掛かれる日が戻ってくることを望んでいます。

【明治初期消印・ビジュアル印影集】のご注文は予想通りの人たちから順調に頂いています。当初は当ブログでのご案内、数日前に広告掲載の「郵趣」がお手元に届いたと思います。情報オープン後の1ヵ月で、ほぼ9割は来てしまうと思います。たらたらとは売れ続けることは期待できません。ブログと郵趣のご注文の比率が気になるのですが、スタートの違いから現時点では圧倒的にブログ経由が優勢です。ターゲットが地元印のコレクターなので、100%弊社の会員さんです。現時点では当然ながらブログ経由のE-メールでのご注文が9割以上、郵趣がソースのFAXとレターが極まれに混じります。当初の予想では、日本全国・全部のご注文が5名弱、個別のご注文の頭数が100名+と読んでいました。スタートして10日弱で、全部が3名から、頭数で70名ぐらいです。これから「郵趣」経由と口コミさんが入って来るので、目標はクリアできるかなと思います。ちょっと違うよ、でもさもありなんの要求が2件来たのです。全部買うから安くしろ。一国全部でなく、特定の郡だけ欲しい・・。即座にゼロ回答で返しました。この企画はビジネスベースでは合いません。イニシャルコストが、編集者への謝礼で10万円、データでお世話になった、タカハシスタンプさんと鳴美さんへセット贈呈、郵趣の広告費を入れて、締めて40万掛かっています。弊社の利益は1頁@10円です。4万ページ売れてトントンです。セットが1807頁なので、22組売らねばなりません。これは無理な相談です。ターゲットは地元印のコレクターです。この人たちはオークションでの最良のお客さんなので、サービス出来れば良いのです。駄目元のつもりか、合理的な要求かわかりませんが、値引きご要求のお二人にはちょっと失望したのです。全部買うから安くしろのお気持ちは判ります。定価の63,000の設定を最初から50,000にして、個別の単価を@50円ならイーブンかも知れません。でも、個別の国の方がご希望者が多いはず、最多枚数の越後と信濃で3,000円をMAXと考えました。1国の内の特定郡だけのリクエストは意外でした。要るか要らないかは貴方の勝手でしょう。最大限で3,000円、郡限定なら200円かな。もしそのご希望に応じるとして、その場合の単価は1頁@1,000円は貰いたいのです。単純計算での100頁なら3,500円、5頁なら175円という身勝手な計算は成り立たないのです。色んな人が居ることを改めて知りました。冗談で言ってくる人には、馬鹿じゃないの!で済むのですが、実際にマジで申し込む人が居るのです。

クリストフ・ゲルトナーセールが、無事に開催されました。日本よりもコロナ対策が厳しいはずのドイツですが、ビジネスとしては成り立っているようです。結果速報でも随分高いなと思いました。コアな情報を貰ったので、1ロットだけ書いて置きましょう。Lot16724 14カートン 100アルバムのロットです。参考値の10,000ユーロでフロアがスタート、ハンマーは19,500ユーロ=約300万円になりました。オークションの図版でも判りますが、制定の初日特印・竜から直近のふるさとまでの、未済パラレルのアキュムレーションです。ドイツのオークションで未使用を買っていた、ボン在住のコレクターの出品だそうです。ロットに対する表現の意味で、ディスクライブは非常に正確、現物を見れば、なる程、納得だったと言ってました。一揃いのゼネラルコレクションをベースに、新切手解説書のみほんが一杯、全般的にリーフにギッシリでなく、貼ってる枚数が10枚弱の頁も有ったのです。値段の大部分がモダンの未使用のニューイッシューで各5枚、ふるさとはコンプリだったようです。夢見る人もいたでしょうが、基本的に額割れが幾らあるかがポイントのロットです。落としたのはポルトガルの全世界のモダンの未使用を扱うディーラーさん、競ったのはフランスかオランダの額割れ屋さんだそうです。オランダの彼なら、私が何時も額割れを買っているご本人かも知れません。このロットは、セールの結果から判断して、落とした人が儲かるロットだったと思います。でも、飛び込んでギャンブルすべきものでなく、日本人には用無しの物だっと思います。平穏無事の時ならば、行った人が居たならば十分に商売になったかも知れないセールでした。ちょっとした言葉の遊びをしましょうか。今回のニュースをくれた人からのレポートですが、買ったのはポルトガル人、[競ったのは]仏・蘭人・・。英語での表現はunder bidder =競って負けた2番札の人と書いているのです。言葉を変えれば、the person who against, second highest bidder・・なども同じ意味です。正に私の認識もその通り、競ったの誰?アンダービッダーは?という表現をするのです。でも、吉田敬さんだけは違っています。under bidderを参考値以下のビッドをする人の意味で使われています。あくまで私が使う表現なのですが、参考値以下のビッドでは、under estimate・・が正しい表現だと思います。実は、私の情報源の彼ですが、本年に発行予定のビジュアル日専・手彫切手の英訳のトランスレートをやる人です。去年のその仕事やった人はちょっと問題が有ったので、然るべき人に人選のアドバイスをしたのです。郵趣用語の日本語の英訳には、英語のスキル以外に必要な能力が有るのです。日本切手が判ってこそ出来る仕事だと思います。オークションでの言葉でもプロならば使う用語も有るのです。

 

 

ビジュアル印影集 御注文状況のご報告

当ブログに情報を公開後予想通りの皆様から順調にお申し込みを頂いております。丸一日は経過しておりませんが20数名からのご注文です。当初の予定では3月初旬からの発送でしたが何とか前倒しでお届けしたと思います。受注してから、製作・発送に複数人の手を経る必要が御座います。即刻には処理できませんので、当方の事務作業でミスが起きないように、ご注文は電話及び口頭ではお受けいたしません。オークションの入札用紙へのメモ書きもお断りします。ベストはE-メールですが、FAXまたは郵便でも構いません。この件に関しては、単独の要件でのご注文で、記録が残るようにお願い致します。

情報公開

【ビジュアル印影集】準備が完了致しました。ご注文をお受けいたします。特に最初は集中が予想されますので、発送まで少し時間がかかる場合がございます。必ずお送りしますので暫くお待ち願います。会員さんは後払いでお願い致します。今月末発行の「郵趣」3月号にも広告を出しています。当初はドット集中すると思います。作る方とすれば、各国で複数注文が纏まっている方が有難いのです。オークション業務との兼ね合いも有るのですが、今からご注文を受け付けして頃合いを見てコピー機を動かして、発送は3月頭からとさせて頂きます。前金を頂いても優先発送は致しませんので、後払いでのご注文をお願いいたします。

少しコアな情報を開示して置きましょう。郵趣界に於いて、最近は本当に本が売れなくなっています。専門書もカタログもコレクション集も全てでです。幸い、的確な手段を取れば、印刷コストが大幅に下がっているのですが、郵趣出版も鳴美もスタンペディアもビジネスとすればとても合わない仕事をやられていると思います。本で儲けるというよりも、社会的な意義を重要視されているのでしょう。頭が下がる思いです。今回の図録は弊社が編集しているのではないのですが、実務上の頒布のコストは完全に弊社が負担せねばなりません。イニシャルコストとして、編集者へ10万円支払いました。追加してのライセンス(パテント料)として売れるごとに1ページ毎で10円払います。カラーコピーのコストは@13.2円(税込み)です。コピーの機械は買取りですが、紙代も含めてそれは考慮致しません。販売時に@35円頂いても、ザックリした数字で1ページあたりの弊社の利益は10円でしょう。手間賃のコストを考えれば間尺に合わないのですが、損さえしなければ良いのです。この仕事で数字的に目に見える利益は望みません。

この企画を立てるにあたっての法的というか、モラルの問題を考えました。オークショニアとしての私の考えは、オークションでの出品物のデータは、誰の物でもなく公の情報であり、誰もが自由に使える物だと思うのです。引用するにあたっての出所の注記も不要です。生真面目過ぎる方からたまには許可を求められる場合が有りますが、ご自由にどうぞ、何らの条件も付けませんが基本的なスタンスです。でも今回の場合は、一般の出版物へのデータ引用とは異なります。編集に際しての重要な情報を複数のオークションハウスの生きたデータを使っています。編集の基本スタイルは、鳴美の明治郵便局名録がベースです。旧版の田辺卓躬さんのそれを使われています。編集をスタートした時点で、残念なことに近辻さんの新版は出ていなかったからなのです。オークションのデータは、弊社の物が圧倒的に多いのですが、次いでタカハシスタンプ、MSA、サンフィラです。一部「消印とエンタイヤ」「菜の花」他の文献も有るようです。消えてしまったオークションハウスは勿論ですが、出版に当たって仁義を切るのは、(株)鳴美、(株)タカハシスタンプ様だけで良いと思いました。両社へは1807頁の揃いを進呈いたします。そして鳴美さんには、不統一印の本の決定版を作って貰わねばなりません。弊社も図録の編集者氏も喜んで協力いたします。

鳴美の綺羅星の如き出版物の数々で最も利益を受けているのは私だと思います。「小包送票」「国際返信切手券」「村送り」「サザーランド」などは、鳴美のそれが、まともに使える唯一の文献なのですから。これらの良書のおかげで、弊社のオークションが恥をかかずにやっていられるのです。でも1冊だけ強烈にクレームを付けたい物が有るのです。平成22年5月20日発行の『日本記号入切手カタログ』です。安達直氏の日本記号入切手図鑑を30余年を経て改訂した物です。情報量は遙かに増えていますし、完成度も数段上だと思います。でも、絶対にやってはいけない暴挙をやってしまっています。基本的には執筆者の責ですが、出版元も気づかねばならなかった落ち度です。安達本の編集のスタイルを踏襲して、グループ化に同じ記号を与えながら、マテリアルに違う番号を付けているのです。Bが押し印で、安達本で85種・鳴美本で79種、Eがローマ字2字で、安達本で93種・鳴美本で89種、Hがローマ字4字以上で安達本で56種・鳴美本で60種です。正確さでは当然ながら鳴美本が上でしょうが、それは自慢にはなりません。この本を出したことにより、安達本の分類番号を抹殺しています。同時に鳴美本のそれも無力化しているのです。オークショニアだから分かります。出品者は穿孔の出品物に記号を書いて来るのですが、どちらの本の記号かがこんがらがってしまうのです。本の発行部数で言えば、圧倒的に安達本が多いのです。データの完成度では鳴美本が上なのですが、コレクターにすれば、最重要の要素はマテリアルに与えられる記号・番号のみなのです。それ以外はおまけに過ぎません。私の場合も、出品物の表現に、鳴美本が出た瞬間に、記号・番号が書けなくなってしまったのです。どうしても必要なら、使用文献を区別して書かねばなりません。書いたとしてもその本をお持ちでなければ、無意味な暗号に過ぎな番号なのですよ。今までは安達番号のみでコンセンサスが得られていた物を、新本の登場の結果として穿孔記号その物をフルに書かざるを得ないのです。穿孔収集が一気に後退したのです。罪は重いと思います。穿孔切手の専門収集家は、2冊のカタログの存在を知っています。この人達には益で有って害では無いことは事実です。でも、一般の出品者とオークショニアにすれば、鳴美本の存在は害の方が大きいのです。出版社の責を問うのは気の毒ですが、執筆者が原稿を持ち込んだ時点で、気づいて欲しかったポイントです。マテリアルの分類記号には積み上がって来た常識が詰まっています。消してはいけない文化遺産です。幾ら動機が純粋で有って、悪意が全く無くてもやってはいけないことが有るのです。旧来の記号を変えるのなら、錯誤が起きないようにすべきです。全面的にゼロから新記号でスタートするか、旧来の情報を生かして、追加番号かサブナンバーを付けるかが必須でした。山崎君の出版元としての立派な業績は、多いに、恐らくは私が誰よりも評価しているつもりですが、この件は大チョンボだと思います。出版者としては甘いと思います。彼のお得意のパターンの、分厚い文献を作るにあたって、データを引っ張ってきたことに依って生じる数多くのケアレスミスは、功績の大きさ故に笑って許されるのですが、穿孔の本の2種の存在では与える影響が違うのです。救いようがない罪の部分が大きいのです。

そして郵趣出版の出版物でも良くない事態が起きています。組織の形態として、公表されている情報では、出版に当たっては合議制での事前のチェックが入るのだと思っていましたが、いつの間にか、必ずしもそうでないケースが見受けられます。その原因がケアレスミスでなく、執筆者のスキルに起因する本質的な問題なので深刻です。結果としてかなりのパートに於いて、一人の執筆者に任せてしまっている為の不具合です。例示すれば、日本郵便印ハンドブックの兵庫HIOGOの無声印の西野番号からの変更、さくらカタログ2019~2020年版での手彫切手他の暴虐な値下げなどです。洋桜30銭ブッチの使用済の価格ですが、この2年間分だけ35万になっています。2018年版までと2021年版以降は125万です。どちらが正しいかの議論はいたしません。執筆者にすれば、今のマーケットプライスを反映させるのが正しいと言うのでしょうが、それをやることによって生じる不都合にも目を配らねばなりません。ある種狭量な思い込みにとらわれて、事実のみを重視するばかりでなく、動機は正当であったとしても、行為を為した後の社会的な結果に思いを寄せる必要が有ったのです。専門分野に於いては抜きんでた知識が有っても、一般社会が受ける反応に対しての想像力に欠けている人が変に力を持ってしまって、チェック機能の欠如故に暴走を止められていないのです。合議制とか相互のチェックというのは形式上のエクスキューズであり、実態は出来上がった書籍から判断すれば、全く機能していないと言わざるを得ないのです。厳しすぎる表現ですが、根本的な原因を含めて、何故そうなのかを幾らでも実例を提示できますよ。ちょっと怖い事が起きているのです。今の郵趣出版さんの実態からすれば改善は不可能だと思います。大局的に見て何が不味いのか気づく人は居ないでしょうから。いや分かっていても、狼の首に縄を付ける度胸の有る人がいないのでしょう。ここらは書き始めると止まらないので又の機会にしておきましょう。真正面から論を張ることに躊躇は致しません。因みにさくらカタログの値段に関しては、流石に放置する事が出来ないので私が動きました。オークションの編集に普段は使うことが皆無なので全く知らなかったのです。それは私のチョンボなのですが、2019年版の時点ではこの暴挙に気付いていませんでした。たまたま必要に迫られ2020年版を見て、初めて深刻さを知ったのです。無視はできません。だから2019年の年の暮れにメールを1本送って、その結果2021年版から旧に復して貰ったのです。メール1本でケリでした。カタログの値段その物に関しては私は関わりたくないし、これ以上は次元が違うので今回は触れないで置きましょう。

【ビジュアル印影集】世に問う価値は有ると思います。編集者のポリシーで嬉しかったことが有りました。この人は、一切コピーを請求されていないのです。オークション誌から画像処理で消印を抜き出して、台切手に被せています。凄いスキルだと思います。それ故の欠陥も有りますし、完成度では明らかに不十分な図録であることを承知の上でのスタートです。オークションでのコピー請求にはどのオークションハウスも基本的には応じてくれると思います。でも、それに甘えてコピーでコレクションを作るのが平気になってはいけません。弊社でも事故印のコレクターでそういう人が居たのです。毎回数十点の請求です。そしてビッドは一切なし、確か会員さんで無かったので一発でシャットアウトしたと思います。もし当印影集でそれをやっていたら、当然ながらこの仕事は成り立っていないのです。コピー請求はあくまで、買う事が前提のサービスで有る事を覚えておいて欲しいのです。勿論例外も有るのですが、オークショニアに「コピーコレクター」と影口を叩かれるようになればその人は終わりです。オークションをやっていての感想ですが、地元印のディールは良い商売になるのです。ひと昔前のホットだった時の値段を思い出します。信州・近江・播磨・御影・・二桁安くなりましたし、最終の処分は目方で売らねばなりません。但馬・千葉・越後は大丈夫です。地元印は二人いれば何処までも高くなり、一人抜ければ最低値、もう一人消えればゴミになるのが現実です。今回の注文状況を3月末に一度締めて見ましょうか。各国毎のご注文数を公表いたします。どの国に地元印のコレクターが何人いるかが判ります。今回の企画はそれを知りたくて始めたようなものなのです。直感でご注文人数は100人+と読みました。日本全国は5人ーかな。現時点での販売情報の開示のソースは当ブログと【郵趣】だけです。期待しているのは口コミです。同好の士に教えてあげて欲しいのです。

越前国・吉田郡・森田(もりだ)局

タイミングよく面白い出品物がやって来ました。だいぶ以前からの弊社の会員さんの遺品で、アルバム70冊程のコレクションが関東の買い取り屋さんに流れていたのです。高級品は少なくて、殆どはブック単位でヤフオクで既に売られたのですが、手彫を含む数冊が弊社にやって来ました。その中の2冊が故人の地元の福井の消印です。そちらでは名家の出で、お名前に心当たりが有ったので、地元の情報通の方に連絡を取り、調べたところ完全に素性が知れました。切手自体のコレクションの手彫の部分にも、地元印の方にも竜はゼロでしたが、記番印と二重丸は結構揃っているように見えました。【ビジュアル印影集】の完成度を見るには格好の材料です。

越前と若狭ですが、記番印に関しては、印影集のデータが完勝です。故人のコレクションに有って印影集にない物は皆無で、その逆が結構有りました。記番印は前回書いた、第10回フロアの特集号のパワーが強烈ですから。でも、二重丸では様相が変わります。預かった出品物に有って、印影集に載っていない物が複数あるのです。この現物のセールは次回の5月末のフロアに100点弱並べますが、単片でKG稲多・脇本・「紛来付箋」に安澤・そして『森田』が印影集に載っていないのです。何れも私の記憶では少ないかなと思っていた物ですが、印影集にデータなしという事でその希少性が再確認出来ました。

ビジュアル印影集-0021

注目すべきは森田です。印影集の最初の原稿の該当ページを見たのですが、越前の最後の頁の吉田郡の欄にこの局が無いのです。図録の編集方針が、明治郵便局名録=田辺卓躬編の復刻版の順に並べているのですが、この本にもこの局は欠片も有りませんでした。でも現品が有るのです。連続便で2通です。1通が無切手での越前吉田森田宛、N2B2東京9.7.6→KG越前森田 脱落跡無し。もう1通が無切手(或は脱落)で同じ宛先、N2B2東京9.7.2→配達局で未納倍額の房2銭ペア貼 KG越前森田です。使用例もへんてこですが、物に厭らしさは有りません。コレスポンデンスなのですが、差出人が何らかの事情が有って何時も差出時には切手を貼らなかったのかな。

この局の沿革を調べてみたのです。田辺本に出ていないという事は駅逓局達書に載っていない局なのでしょう。郵趣出版の全国郵便局沿革録・明治篇のデータでは、「舟橋」14.12.15=五等郵便局(開局)中略 24.11.1 「稲多」(いなだ)と改称・ 39.1.1 「森田」(もりた)と改称です。鳴美の分厚く重い2分冊の日本郵便局名鑑では、「稲多」 9.6.28 五等郵便局で設置・14.12.15 廃止=「舟橋」に引き継ぎです。24.11.1 「稲田」と移転改称・39・1.1 現名称=「森田」に改称です。この2冊の立派な局名録にもKG越前森田の影すら見いだせないのです。でも、現実に物が有るのです。コレクションのリーフにもそれらしき記載が有りました。地元で調べたが開局時期は不明になっていたのです。

念の為に新版・明治郵便局名録を繰ったら、186ページの上から2行目に有りました。吉田郡・森田(もりだ)9.6.1 五等郵便局で開局です。理屈に合うのですが、近辻さんは9年6月の稲多=森田の情報を一体どこで見つけたのでしょうか。是非聞いて見たいと思います。印影集の最初の原稿では空白だった「森田」ですが、編集者にお願いして、私の情報で修正をして貰いました。森田=もりだ・9.5.1? 五等郵便局 →稲多 9.8ー 五等郵便局→ 14.12ーです。森田はKGが存在するとの表示ですが、図版は有りません。現時点ではまだ売りに出た記録が無いのです。そして房2銭ペア貼のへんてこな使用例のエンタですが、誰が買うかは既にはっきりと見えています。余りにもドンピシャな不思議な出会いに我ながら唖然としている次第です。改めて認識できました。資料を掘り当てた近辻さんはご立派です。そして探せばこんなケースは一杯見つかると思います。この印影集がきっかけになって、記録の修正にお役に立てば幸いですが。

 

記番印特集セール

どうしても確認しておきたい弊社の過去のセールが有りました。第10回フロアセール(通算20号)・1996年11月9日(土)10時半から茶屋町ボイス3Fでの開催でした。ロット数は2014点、全てが記番印です。トータルの落札金額とかの細部はどうでも良いでしょう。私にすれば完全に忘れていたのですが、時々、今の出品者から変な出品記事が来るのです。このセールに出ていない珍局と書いてくれ・・、みたいな、ちょっと面はゆくなる評価も有るのです。特集号と言ってもお一人のコレクションです。希少性の評価をそれに求めるのは無意味です。25年も前なので、もう書いても良いと思うのですが、故大西二郎さんが持ち込んでくれました。親しかった知人のご遺族に頼まれた、信州だけは既に処分済みだけれどそれ以外は手付かずの本体のコレクションとの事でした。私も強いてはどなたの物かは聞かないし、やるべきことをやって、精算を済ませればそれでケリです。大西さんの生前の時点ではその後も一度も話題にも上りませんでした。実際は、記番印コレクションの「信州抜き」で、何方の物か判るのです。村川さんか榎さん、いや正確に言えばご両人から聞きました。かつて京都にいて、長野へ移られた林清登さんの物でした。この方は私は全く存じ上げない方でした。教えてくれたお二人の口ぶりからして、親しくされていたことが分かります。信州のパートが何処へ行ったかもインパクトの強いお話を聞いたかも知れません。

ビジュアル印影集-0011

ビジュアル印影集-0012 ビジュアル印影集-0013

改めて記事を見直して見ると、オークション誌の編集方針とすれば、今と全く変わりません。イロハ順で国ごとに並べて、若い番号順、葉書・カバー・単片の順。記事のヘッダーに局名を持って来て、見易さを重視するのです。違いと言えば、オールカラーで無いことです。今ならもっと綺麗に仕上がるのですが、当時とすれば十分な出来栄えです。物を並べてしまえば編集は楽です。10日間ぐらいの作業だっと思います。このオークションでの私の記載はその当時の文献の情報で書いているので、今となれば局名とかで、少し動いている物も有るのです。今回の【ビジュアル印影集】の記番の局名が間違っていたならば、そのすべての責はこのセールでの私の拙き記載が原因でしょう。今回の図録の編集者のお仕事としては個々のケースでの検証は無理なので、オークションの記事を信じての引用で、仕事とすれば立派にされていると思います。そして記番印の情報のかなりの部分は、2014ロットのこのセールから採られているので結構穴が埋まっているはずです。惜しむらくは『ウの国』が弱い事、その原因も明らかなのですよ。

このオークションの段階で林清登さんがお持ちでなかった物ですが、印影集と付きあわせれば、多くのケースで穴が埋まっているのです。年数を掛けてオークションの出品物を集合させれば、たかが30年の、ほんの60万ロットであっても、超一流の記番印コレクターを遙かに凌駕することをはっきりと認識できました。記番印は、⓾が原則の単独抹消なので、画像のデータを取りやすいという有利さも有るのでしょうが、目で見られる印影という意味では、【ビジュアル印影集】は実際に良く出来た資料です。地元印のコレクターなら、是非とも勝負して欲しいのです。ご自身がお持ちの局数でここに出ている物を上回るのは結構ハードルが高いと思います。オークションの年季の積み上げには非常に重い物が有るのです。オークションは良質のデータの宝庫なのですがそれを集積して分類する作業が為されていなかったのです。今回の企画は手前味噌ですが、クリーンヒットだと思います。

現在進行形でのオークションでの情報です。記番印に関しては、全国のそれをターゲットにされている熱心な方がいるのです。でも、幸か不幸かその人は、旧小判2銭狸・1銭黒しか集めません。カバーも単片もそうなのです。お持ちでない物は良い値段でビッドしてくれる、オークショニアにすれば有難い方なのです。でも、大分埋まって来ているようにも思えてきましたが・・。毎回何点かは嬉しいビッドが来るのです。地元印の人とぶつかれば良い値段になりますよ。落札結果を見ればよく分かります。勿論お入り用は1点だけ、どのぐらい集まったかは聞かないで置きましょう。オークションでのビッドでその結果が判りますから。

庭瀬・東風平・紗那・根室

膨大なデータは勿論編集者の手元に保存されています。アレンジさえすれば、使い方次第で有益な資料として生かすことが可能です。CDロム化とか、次のアイデアも幾つも有るのですが、まずはやれることから進めます。この資料の存在は、だいぶ前から概略はお聞きしていたのですが、完成状態の現物を拝見したのは昨年暮れでした。主たる作業として、弊社のオークションの出品物のデータ化をやられていたので、私の記憶と付きあわせて完成度で確認できるポイントが有ったのです。直ぐ確かめたのが千島と琉球です。二重丸以前の消印ですから、このレベルなら何を売ったかのみならず、出品者も落札者も完全に覚えている位に少ない物なのです。千島はOKでした。売った人は何処かへ消えましたが、買ってくれた人は現役です。千島のコレクションとして、赤二党とかの並み居る強敵を討ち負かしたのです。値段も含めて私の記憶と完全に一致しました。琉球は那覇以外がポイントです。DK東風平を売った覚えが有りました。切手は大傷ですが、消印のかかり具合はGood。琉球のトップコレクターがこの状態でも買うのかなと注目して、場に来て落し切ったので覚えているのです。因みに今回の本には⓻ですが切手の状態が綺麗ものが載っていますが、勿論それでOKです。データの押さえ方は問題無しと思いました。

編集者のコンセプトは、消印のタイプ違いを1点ずつ局ごとに時系列に並べる事です。同一印でも色違いは異種と見做します。二重丸では同タイプでも局名の字体違い、「島」・「嶋」なども異種扱いです。この方は情報分析のスキルは勿論ですが、画像処理も達者です。でも物凄く辛口の視点で見れば、消印に対してのシビアな郵趣知識が十分ではないと思いました。チラッと見ても、理屈に合わないミスが見つかってしまうのです。不統一の〇谷ですが、古い文献では羽前谷地になっていますが、私がこの消印で別のエンタを売った覚えが有ったのです。青一の19版ペア貼で備中庭瀬でした。文献に谷地として出ている、有名な〇谷が実は庭瀬だと確定したのです。このカバーは故中村道章さんが落として、今は安藤源成さんがお持ちです。このミスはやむを得ないし、指摘する方が酷ですし当然許される範囲ですが、私の場合は何故かどうしても見つけてしまうのです。訂正が間に合うので指摘して谷地の図録からは外して貰いました。琉球の北谷の不統一で四角に済印を採録されています。何らかの根拠が有るのでしょう。聞いたところ元ネタは、「消印とエンタイヤ」だと判明しました。でもこの消印は、備中板倉のそれと思った方が無難です。もし琉球北谷の不統一で、エンタで確認ならビッグニュースですが、今回は削除をお願い致しましょう。北谷だと確認出来ればそれはまた物凄くハッピーなことですが。

ビジュアル印影集-0001

二重丸で気になるポイントが有るのです。分類記号のDとdの区別です。私の場合は、表現に於いてブレることは有りません。【同一因子の二重丸印】が有れば【大きい方がD・小さい方がd】で統一しているのです。問題になるのはDN3B1とdN3B1=根室・大分、DN3B2とdN3B2=四日市・横須賀他のケースです。弊社では当然ながらdと明記して区別するのですが、例えばサンフィラ?の場合、N3B1根室、N3B2横須賀の表現でオークションの記事を書いているのです。セールの時点ではそれで何らの問題は起きません。でも、今回の図録に使う場合、編集者の郵趣スキルでは、N3B1根室とdN3B1根室を違う物として載せてしまっています。これを修正するのは結構な手間ですし、利用する人は先刻ご承知なので、誤差の範囲として置きましょう。

ビジュアル印影集-0002

不統一に於いても、編集者の責でなく、オークションのディスクライバーの不注意での記載ミスが起きています。水口郵便役所は三等ですが、二等郵便役所の印影を載せています。有り得ない表示なので、たまたま気づいたのですがこれは削除の方が良いと思います。

 

ビジュアル印影集-0003

この図録の位置づけとすればバイブル化して、正しいのが善、間違いは悪という狭量な価値観で些事に拘るのでなく、収集のための下書きのデータとして見て欲しいのです。たまたま気づけば、編集者に連絡して間違いは訂正のお願いを出すつもりです。でも、データの洩れ、特に空欄部分を埋める物を持っている・・ので追加、訂正は考えておりません。ご協力者から、100%ご厚意での新規のデータ提供を頂いても、それに即座に対応して真摯に向き合えるシステムは作れません。今回の仕事は今のままでの未完成の物が最終形だと思っています。地元印コレクターには、これを上回るコレクションを作って欲しいのです。不統一は困難ですが、記番と二重丸の局名数勝負なら恰好な目標だと思います。実例で示して見ましょうか。今のタイミングで記番印と越前・若狭で格好のネタが有るのです。