2006年2月3日(金)

 「リガムの返品」
各方面からのお問い合わせを頂きながら、直接には関係がないし、殊更出しゃばりたい主義でもないので傍観していた件ですが、物証をもって経験するに至りました。終ったことばかりでなく、現実に事態が進行する中で動かざるを得なくなりました。
きっかけは、次号の出品物として送られて来た、「菊1円 未使用 NH」。一瞥しての判断に何の躊躇も有りません。「下手なリガム」、有り得ない純白な糊が平滑に引かれている。現物を手にすれば、菊のコレクターなら、誰でも同意見でしょう。121/2の時期まで年代が下がれば、ツルリンの糊も有るでしょう。でも、12で初期色では、黄味を帯びたクラック糊でないと可笑しいのです。
昨今話題のというか、気になるデータが有りました。去年の秋から出ている、「ヤフーの岡山県、IDはc・・・」の出品です。全てがNHで極美、ついでに使用済までNHの、中々のクオリティーでの出品者への評価の中で見た覚えが有ったのです。ためしに叩けば、正にドンピシャ、「こんなもの買うなよ君」が何故か、お買い上げの現物でした。このブツがリガムで有るのは100%確かです。なら、同一の出品者の別の物はどうでしょうか。
何分にも、現物を見ていないし、画像でのシェードを過信すると、勘違いも有り得ます。でも、私の経験則で判断すれば、一連の出品物にも、大きい疑問符が付くのです。手彫の数十万円クラスが一杯出ています。そして、その全てがNH・極美品、最低値はカタログ値の1掛けで、落札値はフル型前後。銘柄と状態が触れ込み通りなら、この値段でも良いのです。でも、買ってる人は、本当にウブくて擦れてない、ネットが中心での活動の、切手収集のキャリアの長くない人ばかりです。我が社のフロアに来る人や、切手展に出す人、記事を書く人は、1人を除いていないのです。もっとも、殆どの人が、私の「ヤフーの出品」の良きお客さんでも有るのですが。
物をクールに判断すれば、私でなくとも、オークションに慣れてる人は手を出しません。松田印刷和紙の高額でNH・ウエルセンター・色フレッシュは、100枚に1も無いのです。それがズラリと並ぶなら、違和感が勝ってしまって現実を受け入れるのを躊躇してしまいます。画像で見て、普通より淡い目が多いのは、出品者の書く、画像を撮った際の光線の加減というよりも、アルカリ溶剤による色褪せの方が自然です。ならば、糊は必然的に「リガム」です。
「リガム」の判断は、難しく有りません。最重要のポイントは、手彫・旧小判なら、同じ材質の糊が無いので騙しきることは出来ません。その後にしろ、ピッタリ一致は難しいし、この切手のこの目打になら、こんな糊、時代によればクラック=糊ひびが無いとおかしい、とかも有るのです。目打上の滲みとか、製造工程を無視しての再作業なので紙に反りが生じます。手のひらに載せて、蒲鉾状態に丸々のは好ましいものでは有りません。それに何よりも本物と並べれば、簡単に違いが見えてくるのです。慣れてる人が見るならば、ゼロ秒で判断可能でしょう。
「・・・買うなよ君」は行動力に秀でてます。私が、ダメだよのメールを送ったので、早速動いてくれました。彼以外にも、同じような印象を受けた人がいて、それなりにアクションを起こしてます。問題の出品者の住所・名前・電話番号も分かってます。そして、今現在出品中の品物に対して、「本物でないとの鑑定がされた場合は、落札代金、送料、鑑定費用、その他すべてをお返しいたします。」の意思表示。さらに、私の手元に来た菊1円=過去の出品物に対しても、同じ趣旨で書かれてます。これは、もうシロクロを付けるべきでしょう。

岡山市のイニシャルMさんとしましょうか、ヤフーのIDがc・・・さんが、自分で「リガム」を作ったか、知って売ったか知らずに、NHと信じて出品したかは分かりません。又、「リガムが多い?」という、私の経験上からの危惧が当たっているかは分かりません。でも、手元に来た菊1円は、プライドに賭けて「リガム」と言い切れますし、画像でも印象の悪すぎるものが多いのです。出品者の返答を額面どおり信じるなら、「鑑定」に出して、結果を得て、返金=実費の弁償で良いでしょう。私は、かなり数を見てますが、それは実務上の経験だけで、オークショニアとして、仲介者として流通に携わっても、鑑定者として書類上に署名する立場にはおりません。
鑑定は、「日本郵趣連合」の鑑定委員会に提示して、鑑定書を発行して貰い、その結果に従うことでいいのでは。幸い、「リガム」の判定は、書類を調べるのでなく、現物を当たって、○か×で即断出来るのです。多分時間も掛かりません。提示して10日位で、判断は貰えるように頼みましょう。また、費用は、「リガム」なら@5000円+送料実費です。鑑定の有効性の云々でなく、今起きている現象をどう処理すれば良いかを考えます。
該当の出品者からヤフーで昨年秋以来落札された未使用切手で、糊が「リガム=オリジナルでなく後で引いたもの」の疑問をお持ちなら、現品を落札時のデータ(日付・値段)と共に、弊社

530-8694 大阪中央郵便局私書箱807号
ジャパン・スタンプ商会           へ記録便にて送って下さい。

弊社が、取りまとめて、日本郵趣連合の鑑定委員会へ鑑定書の発行を依頼します。機械的に依頼しても構いませんが、私が見て、問題ないものと保証できるものは、そのままお返しします。該当の人の出品物を一渡り見ましたが、「リガム」以外の要因では問題ないと思えます。良い物に対して、特別の費用を負担する必要は有りません。可及的速やかに、鑑定結果は貰えるようにお願いしますが、費用@5000+送料は依頼人様が立て替えて後日結果が出た後に、連合にお支払い下さい。
「リガム」の結果が出た後は、当事者同士で返品・返金の交渉をしていただくことになります。弊社は仲介いたしませんが、客観的事実を得るための鑑定結果を受ける手助けと、もしどこかの段階で悪意が介在し、それにより被害を受けている人がいるならば、知りえた情報を公開して、世間的に注意を喚起いたします。
今回の手続きは、弊社としては有効期限は設けませんが、相手方のWeb.上のメッセージをどこまで信頼していい物か判断に迷います。遅いより、早い方がいいのは確かです。該当する立場におられるなら即行動を起こして下さい。送って貰ったものは、その結果も含めて当欄にて報告することをお含み置き下さい。個人名は、IDにより、結果的に知れる場合を除き、開示いたしません。

リガムというのは、稀なものでは有りません。でも、殊更恐れる必要もないのです。現物を数多く触れば、自然と見えて来るはずです。只、ボストークの2巻が終って、1巻に遡る人が、「切手」そのものを集めるのでなく、状態を、それもローマ字2字の「NH」を相場の数倍も出して買うというのは賢いやり方では有りません。もう直ぐ発送の我が社の次回のオークションにも、綺麗な未使用が並んでます。ひとかどの人のコレクションで、かなりお金も掛けてます。でも、「リガム」が2点入ってました。これは勿論、オークションの記事にも書くし、評価もそれ相応にするのです。紙のオークションならばそれなりにチェックも入るし、下見段階でのクレームも有るでしょう。でも、ヤフーなら、形態はオークションでも、実体は相対取引、知らなければそのままで、知っても、相手の態度によっては、フォーローもないことも有りえます。十分に心して上手に利用して下さい。