那須浄説エンタを解析する。

2015年の事でした。ダンボール50~60箱位の、初いエンタのロットがやって来たのです。出所は京都堀川六角の金融業者の御屋敷で、そこを解体するに当たっての費用とバーターで、都の旧知のブローカーさんが手にした物でした。相談されたので、オークションで生きる物は抜いてオークションに出し、残りは一括で買い切ることでまとまりました。年賀状は一切無し、年代的には旧小判から田沢で、見るからに初出し、状態も概ね綺麗な物でした。こちらで人を使って物をピックアップ、オークション分だけで想定に金額に達しました。雑多な嵩張るジャミは、箱単位で潰しました。残した物は一括りの、U小判から菊の時代の、同じ性質のエンタだけになったのです。見るからに面白そうなので、この山だけは、時間を掛けて料理することにしたのです。状態が今一な物は、ロットの餌にしています。だから残した物は、台も消しも十分に単品売りに耐える物だけになりました。200~300通の、金融屋さんが切手を貼らずに差し出した貸金の返還請求の戻り便なのです。郵便条例時代=明治16年1月1日~33年9月30日に完璧に区切られるし、郵便の制度としても、紛れる要素が消えて、説得力の有る運営が為されていた時代の物なのです。ボタと◎時代=明治21年8月以前は、数も少ないし、使われ方も面白い物は少数です。だけど丸一の時代になってからは、あらゆるパターンが揃っていたのです。想像以上の面白い山だったのです。幾分かは、オークションで売りましたが、残りをじっくり料理したので、その報告を書いてみたいと思います。

切手を貼らずに差し出した借金返せのお手紙です。未納の倍額を払って、名宛人が受け取った物はここには有りません。受け取り拒否と配達不能で那須さんに戻された物ばかりなのです。まず、根拠法令を書いておきます。郵便条例です。

第21条 「未納又は不足の郵便物を受け取る際には、受取人よりその額の2倍を徴収する。受取人が郵便物を受け取る際には、その納税を拒んではならない。」「受取人が郵便物を受け取らず、差出人に還付する時は、差出人よりその額の3倍を徴収する。」

第22条 「未納又は不足の郵便物を配達できず、差出人に還付する時は、その額の2倍を徴収する。後略。」

実際上は、切手を貼らずに差し出すことは極めて稀だと思います。未納・不足で括っても、圧倒的に不足が多く、結果としての未納でも、意図的な無切手差し出しは一般人には出て来ない発想だと思います。マーケットに有る未納便も、このパターンでなく、法規を取り違えたミスによる物が多いのです。那須エンタの、未納郵便=受け取り拒否便には、目から鱗ネタが一杯含まれているのです。当時の京都郵便電信局が、那須さん技対策としてわざわざ最初は21条の付箋を印刷して、後には22条のそれも作ったと思える節が有るのです。郵便条例時代の受け取り拒否=21条後半部分と、22条の未納の還付はほぼ完璧にアナライズできるのです。京都発なので、管内局のバラエティでも「一ハン」プラスになるのです。ここらは、後ほどのお楽しみです。数回にわたって書きますが、お二人から貴重な示唆を頂きました。片山七三男氏の「差出人戻しの料金徴収方法」のリーフと、古家美和氏の新大門会資料「郵便条例時代に未納郵便物について」です。