2012年3月6日(火)

『中国切手のデリバティブ』

昨日と今日で電話が2件、鹿児島からと岡山から、全くの未知の人からでしたが、新中国切手のオークションでの出品に関しての問い合わせです。新中国の相場は、現時点で振り返れば、去年の横浜国際展が天井、売り物を作る端から奪い合いになっていました。その後の11月のJAPEXがギリギリでセーフ、直後の無錫のアジア展で明瞭に下がって、旧正月明けの現在も相場は戻ってきていません。聞くところによれば、中国本国での不動産バブルの崩壊が一因とか。見方によれば、余りに急激に値段が上がったことへの副作用での相場の修正の一休みかも知れません。だから、お問合せへの返事は、今の相場でよろしければどうぞ。クールな値段だけが問題で、相場の値段できっちりと売れますし、将来的に上がるか下がるかは誰も判りません。プロの感性できっちり最低値を決めますから。

具体的な相場としては、本土の業者が買う値段で、T46 赤猿の単片が、最高値で13.5万、今はギリギリで10.5万です。プロが相場を見る参考にするのは、本土で発行される相場新聞です。少なくとも4種は出ていて、勢いの有る時は大いに参考にしていました。値上がり局面では素早く上げています。ただ、値下がり局面では活字に現れる値動きが緩く高止まりしています。4社で元からの数字には差があり、9500元~11800元ですが、少なくともここ数ヶ月は値段は動いていないのです。JPSの赤いカタログや、郵趣の買い入れ広告は、右肩下がりの局面には的確な対応は取れないのです。浮世離れした数字が残ってしまいます。数字はオールマイティーでは有りません。しいて言えば、中国のオークションのサイトのデータが、最も信頼度が高いのです。ライブで動いていますから。私の考えでは、中国は、常に売りたい時が売り時です。オークションに出してのそこでの結果に納得するしかないのです。

ちょっとした面白いお話を聞きました。欧米資本のオークションハウスが数社、香港に進出して、1回のセールで数億円から10億円の売り上げをたたき出しています。未だに羨ましいばかりの勢いが続いています。中国人は、他人に委ねるという行動パターンのメールビッドをしないので、競りは100%、場での強烈なバトルでの結果です。明らかに、相場では有り得ないハンマープライスで落ちています。その数字で、全く同じものをオファーしても、彼らは絶対に買いません。オークションで成立している数字の幾分かに裏の事情が隠れているのです。

「デリバティブ」が掛かっています。大雑把に言えば、落とした後にキャンセルの権利を付けているのです。6ヶ月以内に引き取れば良い。相場が下がっていればキャンセルでも構わない。ただし、その為には一定の手数料(多分5%~10%)が掛かり、それは返金されません。オークションの出品物なので、定めた期日には出品者には支払われます。だから、出品者がこの条件に納得したマテリアル(オークションハウス自身の商品か、影響力を行使できるグループの出品物)に対して、特定の参加者のみが、6ヶ月以内の相場の上昇に賭けて勝負するのです。香港での中国切手のオークション、善良なコレクタブルアイテムの競りとは別世界の鉄火場勝負になっています。今の相場では、当然ながらデリバティブの手数料を捨てて、品物購入権を放棄する方が怪我は少ないでしょう。売れたことになっていても、引き取られない「猿のシート」が、しこり玉になって、うろうろしているかも知れません。新中国切手の相場が円滑に動くには、ちょっと時間がかかるかも。

私事ですが、明日から香港に出張します。弊社のオークションの落札品の現地へのお届けが3件と中国切手の相場勉強がメインです。週末開催のオークションには、先方からのご招待のメールも来たし、セールのスケジュール自体もこちらのリクエストを入れたので行かざるを得ないのです。マテリアルとしては、ウッドワードからスポールディングへ移った、丸菊1銭の版の研究ロット、数千枚の未使用の束・・とかも出ているのでJAPANの買い物も少しは有ればと思ってます。