2009年5月26日(火)

『大正白紙25銭単線12 未使用』
J.& H. Stolow の名前にはほろ苦い思い出が付いて回るのです。どなたの文章だったかは忘れましたが、確かヒロユキ・カナイさんが、かの事務所を訪れた際、金庫から英領ギアナ1セント=世界一高価な切手を取り出して見せられたとかの記事を読んだ覚えがあるのです。ニューヨークの事務所主催でのフロアオークションは盛況で、弟はミュンヘンの一等地での店頭販売の店を持つ、当時はステータスの高い商売をしていたはずなのです。
私のこの会社との実体験は、矢鱈と暑い時期に見た、手彫の写真が数十頁続いていたオークション誌、洋桜2銭カナ揃いの写真が出て、不統一がチラホラと・・。その類が数百ロットはあったはずです。この当時でも、私は海外へのメールビッドで、小判以降は結構買えてました。ただ、手彫は落ちないし、このボリユ-ム大のセールにも然るべき人が場に出ていたのでしょう。手彫系は掠りもしなかったはずなのです。その後も極当たり前にオークション誌は来ていましたが、いい買い物をした確たる記憶はありません。そして、いつしかフロアセールが無くなって、或いは並立だったかも知れないけれど、GoldMedal Mail Sale の名前でのメールオークション誌に業態を変えたのです。
コレクションや高級品でなく、スコットアルバムを崩したような単品を写真入りで載せているセールでした。このパターンの場合、基本的に買い気がそそられる物はないのです。小売りと同じ意味なので、評価ミスで抜ける要素は少ないし、目が覚めるようなバラエティーなど1種1枚が分母の場合、普通は有り得ないことなのです。但し、白黒でも写真は非常に鮮明なので、物が有れば見落すことも有りません。そして、奇跡が起きたのです。 記事はSc.124 ヒンジの有無のマークが有って、スコットのカタログ値の記載だけ。今も昔もアメリカのオークション誌での単品の1点売りの当たり前のパターンでした。そして一目で分かる単線12、センターもフレッシュ度も何の問題も無いVFのコンディション。 オークションのカタログで見つけはしたものの、問題は完全なメールセール、テクニックの使いようの無い、ただ数字をビッドしての高い安いが全てのルールです。今なら、少し努力をするかもしれないけど、この時は売れる値段を踏んで、逆算で目一杯入れるだけ。25銭の単線12なら、使用済でもかなりの物、それのユニークな未使用なので、100万円をベースにした数字を出したはずなのです。その値段で落ちれば厳しいけど、人より上でなければ負ける。メールセールでもオークションなので、ゴミの値段で落ちる可能性も有る・・。コレクターは見てないはず、だからこの数字なら負けることはないはずでした。だけど結果は来なかった。即売誌の延長のメールセールなので、多分全体の落札結果表も出してないはずです。E-メールは勿論、FAXも存在してない時代です。電話をかける知恵も無く、ただ、○か×の結果を待つだけ。来ないというのは×なのです。
目一杯のビッドで負けて、それならそれは仕様が無い・・。直ぐに気持ちは切り替わるのです。ところが、次号か次々号に全く同じものが再出品されたのです。まさにその現物が・・。記事は前のまま・・。目打云々の記載も無く・・。再チャレンジでも全く同じビッドを、今度は書留郵便で送ったはず。そしてその結果は、前と同じままなのです。
私のビッドのマナーは物凄くまとも。何の捻りも入ってない。持ち主は当然ながら、オークショニアそのものだから、1番札だから、絶対に買えるとは限りません。入った札を見てもっといい客にプライベートのオファーでも掛けたのでしょうか。落札結果表も出さないし、任意の即売ビジネスだと思って見れば、高く入れても買えないことも無くはない。ただ、再出品というのが分からない。そして、このものの行方は未だに誰も知らないのです。見違えるはずはなく、物は確かに有った。ナイト・メアーの結末は永遠に謎のままなのでしょうか。そして、GoldMedalMail Saleは何時しか消え、かのStolowの名前を最後に聞いたのは、その甥がオークションのRingの一員として刑事被告人として郵趣雑誌の記事に現れた時なのです。
気分を変えて、少し遊びの情報を出しましょう。豊中市在住の故山本義之さんから、かつおつり(目打あり)シート=現在逓博にある・・を預かったとき、幾つか面白いシートの資料を貰ったのです。琉球の100円加刷とかと共に、大白の完セット「みほん」のシートも有ったのです。逓信省の資料で、門外不出のメモがありました。その目打は、5銭が13×131/2、10銭が12×121/2、それ以外が全て単線12、今単片で残っている結果のままの資料でした。大白のみほんは、発行時の局への周知用というよりは、黒表紙の見本帳用に使われてますが、その何れもが目打はここに書いた一種しかないのです。25銭のL12の未使用を望むよりも、「みほん」でちがう目打が出てくれば、結構珍しいかも知れません。新小判3銭や他の額面のP12の「ひらがな・みほん」がそれに匹敵するバラエティーなのですから。
次は、「1次昭和10円貼 日泰航空カバー」、フランクフルトの駅の裏、電車の音がゴトゴトと・・・。