2008年6月7日(土)

『団扇の花』 

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フロアオークションの演台にいる者だけが見られる光景です。弊社の場合はスタート値をリストにして提供してますから、相当なスピードで進行してもフロアビッダーがロット番号をミスしてのビッドは殆ど起きません。これをやってないと、番号のみならず、値段の聞き取りミスも起こる恐れがあるのです。このシステムは海外の同業者がやっているのを見て、私がかなり早い時期から取り入れて、今や国内でも他社も含めて完全に定着しています。
オークションシーンでの、派手さや劇場的な面白さは場での競り合いなのですが、結果のデータをアナライズすればかなりの部分はメールの段階で決してます。目勘定での割合ですが、弊社の普通のフロアセールの場合は落札金額ベースではメール2対フロア1程度が平均的です。下見無しの人のメールビッドでも有る程度は勝負できることを目指して記事を書いてますから。
その時の状況にもよるのですが、人気の有る分野には必ずそこそこのメールビッドが入ってます。自分しか分からない超掘り出しのポイントはオークションでは極めて希な要素です。だから、場で手が挙がってメール相手に競る数は1~2人が殆どで、5人ぐらいから同時に札が挙がって、さしずめ『団扇の花』が満開になることは滅多に有りません。それに、私の手札にはメールの1・2番札の数字とビッドした人の名前が書いてあり、それと場で手を挙げた人の面子と値段を見れば、オークション誌を見ずとも何を競っていて誰が幾らぐらいで勝ちそうかも殆どの場合は判るのです。だからこそ、場を仕切ってのオークションが出来るのですが。
今丁度来月の郵趣の広告=PA53の落札結果速報を見てますが、出来た数字以外の裏情報をちょっと書いて見ましょうか。昨今のオークションの値段という物は、マテリアルに対する普遍的な評価でなく、ヒューマニックな要素、誰と誰が競って・・今回だけの値段・・のケースが結構有るのです。オークションは所詮は刹那の世界であって、参加者が一人抜けるか、ご新規さんが入るかで天と地ほどの差が出るのです。解説します。別のウインドウでデータを見てください。
1172 理屈ではこれ以上のものはないはずです。希少性、地域、日付、このケースでは欧文の要求はされません。NAGANOの欧文櫛は無理ですから。でも、戦後の記念が100万クラスでも驚きのニュースではない風潮に驚きます。
1175 数字としては予想の範囲内。最低値15万ですが、80万以上で5人のメールが有りました。葉書と封書は同一料金、存在数は1対100、ただこのケースの場合はカバーでもほぼ同じ評価でしょう。85円の第5の印刷物を是非扱って見たいのですが。
2430 『団扇の花』が5枚は有りました。誰もが同じ考えで、派手さと希少性が乃木のキズを評価の向こうに追いやるのです。以前売ったペア貼の完全品が70~80万だったかと思います。あの時は随分強気の最低値と思ったのですが、今回の結果を見ればコンディションに我慢して希少性に惚れ込める人の数に多さに認識を新たに出来ました。
3098 表紙に持ってきた意味を理解してくれた人が少なくとも2人以上はいたのです。松田の高額10銭・20銭・30銭の未使用のP11の少なさを金額に置き換えて認めて貰えたのはちょっと嬉しい驚きでした。
3147 表面は本当に綺麗です。色フレッシュ、ウエルセンター、目打完全、でもリガム、これを「NH 極美」と書いてヤフーに出すのは詐欺ですが、リガムと書いてもこんな値段になるのです。勝った人も負けた人もこの数字なら納得でしょう。
3629 理屈的には抜群に珍しいものでしょう。ただ消印がやや弱い。落ちた値段の5倍以上のメールビッドが入っていたのですが・・。入れてた人は拍子抜けかも。
3709 何ともはや・・としか言いようの無い値段です。プライベートで値付けするなら20万以上にはなりえません。ルックス的には合格なので後は誰と誰が競るかだけ。値段を切ってない人と強気で降りない人がぶつかっただけ。出品者もオークションを良くご存知だし理解力が有る人なので、率直に喜んでくれるでしょう。記憶からも記録からも消しておきたいデータです。
3847 棟方の直筆は、例の特徴のある汚い筆書きが結構残っています。私の売値なら2~3万でしょうか。但し、この人の場合は木版の版画は別格なのです。展示会の案内の印刷葉書や文字だけの葉書なら一桁は値段が下がります。
3917 直感で付けた最低値ですが、メールも結構入ったし、フロアにもその分野の人が数人来てくれてました。小判のプルーフなどと違って、昔はそこそこ見かけたという話を聞きました。今回程度の値段が相場なのでしょう。
4084・4089 型録値を見て下さい。フレッシュという以外に製造面のバラエティーの手変わりの要素は皆無です。メールで強気に入れていて、更にわざわざ、たまたま場に出てきて、しかももう一人の滅茶値で入れてる人のメールビッドに負けているのが許せずに場で手を挙げて落とし切った故の値段です。この値段の1/3なら喜んで売りますけど。この調子が続くなら手彫の未来は明るいのですが。一連の桜のVFの出品者、随分高い値段で買ってた人ですが、今回は報われたと思います。オークションでは「2人いれば」この値段になるです。「一人いる」のは結構多いのですが、二人目が中々難儀なのです。
4098 直近の他社のセールの上耳付の3連が200万、下耳付の3連も多分これっきりで終わりのはず。メールビッドは最低値120万に対して、200万と210万のキッチリ2本だけ。情報は行き渡っているしグロスの金額故にアワヨクバや抜け目狙いのビッドは皆無です。ただ、1枚札が抜けたとしてスタートが120だったとしても、落ちる値段は紛れずに200か210か220のどれかでしょう。皆さん賢すぎるのです。