2007年7月7日(土)

「郵税としての郵便切手」
郵便切手の持つ意味を、歴史を紐解いて解釈いたします。これはローランド・ヒル以来、本邦も含めて郵便制度を導入した組織は共通の認識を持っています。つまり、郵便役務の提供に対する支払い=郵税として、唯一、郵便切手を前払いの証紙として認め、実際の郵便物に直接貼付するのが大原則になってます。実務上は、創業時は封の裏に、最近は左肩にというように、貼付位置すら、法令で指定されているのです。
歴史的な要素として、ヨーロッパでの郵便制度における郵便切手の採用は、郵便物の料金前納と郵便差出箱への差出しを容易にし、そのことが郵便制度に飛躍的な発展をもたらす一大要因になってます。今日でも、郵便切手による料金前納が郵便料金納付の原則になっているのも、この効用の外、郵便窓口における金銭出納事務の簡便化に役立っていることによるのです。別納でも、切手での納付がオペレーションに過重な負担がかかるという郵政公社の言い分は、的外れだし、余りにも視野狭窄と言わざるを得ません。
郵税に限らず、登記費用や、自動車税、健康保険料等は、印紙を潰すことで国庫に料金を納付しているのです。別納郵便のB4版にきっちり、四角に同一額面の切手を貼った台紙を、無効にするのに、どれだけの手間が要るのでしょうか。まさか、一枚づつ、消印を押す義務が有るとは思ってはいないでしょうに。納付する方も、受け取って、即ルートに流したいはずなので、プロの大量の差出代行者は、一目瞭然で計算が出来るように収めるはずですから。
翻って、歴史上郵便役務への支払いに、郵便切手を直接貼付しない場合を探して見ました。創業当時の別段急便、明治16年以前の、郵便局これ無き土地への別仕立はユニバーサルサービス以前の、複雑な料金体系故に、あと精算でも已むを得ないでしょう。金子入り書状は、内国通運等の外部への委託なので、郵便切手は使えません。それ以外は、相当厳しく見ても、内容証明の謄本に貼付(封筒でなく)、官製はがき・郵便書簡等の切手でなく料額印面での支払い位しか見つかりません。これらは世間的には郵便切手での支払いと同じ意味になるでしょう。その後、大正8年になって、料金別納制度が出来ました。利用には幾つもの制限が掛かってますが、差出人にとっては、個々の郵便物への切手貼付の手間が省け、当局も消印の仕事をやらずにすむ、双方にとって労力軽減のメリットが生まれます。誰も損をしないし、郵税の納付は、切手を台紙に貼って収めるので、郵便切手の効力と、役務に対する納付手段としては、本質的な変化は生じてません。
観点を換えて論じます。郵便法等で規定されている、郵便に関する料金(法32等)を現金で特別に納付することができる場合は、次のケースに限られます。ネタ本が少し古いので、一部変更があるやもしれませんが、本質は変わってないと思います。
①  料金別納郵便物に関する料金
② 料金計器別納による場合の料金
③ 「料金後納による場合の料金。」この場合には、現金で納付することとされている。その意味は、後納=後精算と、郵便切手の持つ、前払い=差出と同時の支払いとが相容れないための制度かも知れません。
④ 転送料及び還付料
⑤ 料金未納又は不足の普通通常郵便物の不納額及び手数料
⑥ 料金未納又は不足の郵便物を還付の際の料金
⑦ 郵便法19条に違反して差し出された郵便物の還付の際の料金
⑧ 切手類の交換手数料
⑨ 第三種郵便物認可申請料及び第三種郵便物の題号等の変更認可料
⑩ 私設郵便差出箱の取集料及び郵便私書箱の使用料
で全てです。平成7年に或る特殊なシステムが導入されるまでは。それは、次回に論じますが、①~③は、料金額が高額になることが多く、現金での納付の方が利用者・郵便局双方に便利であるし、④~⑦は利用者に郵便切手の手持ちがないことが多いと考えられるし、⑧の葉書の場合は切手の手持ちがない場合があり、⑨~⑩も或る程度高額になる場合が多いと考えられているのでしょう。
なお、もとより、③の場合を除き、全てのケースで郵便切手で納付することも差し支えなく、その選択は利用者の随時なのです。郵便役務に対する支払い手段は、ひとえに、「郵便切手」であると郵便法は定めているのです。そして、実務規定である、郵便約款は郵便法の規定に反しないことが大前提なのですよ。
次回につづく。