時系列

去年末に受け取った、日本フィラテリックセンターの第69回フロアオークション誌を見て、ショックを受けました。また、奴がやっている、性懲りもなく恥知らずに5か所に分けて「作ったエンタ」を出品している。一瞥して、有り得ない珍品が30点+、競れば1千万位の被害になると見えたのです。年末年始の休みが明けてすぐ、確か8日に大阪駅前第2ビルの日フィラの事務所に行きました。西岡さんと1時間ぐらい話をして、大雑把に事情を説明、該当の出品物を預かり、カラーコピーをとりました。写真無しの並び記事だけで感じた、嫌らしい違和感は、現品を個別に単独で見れば消えています。状態の良い珍品・希品が売り物としてそこにある、単品で見るならば全て理屈は合っている。余りにも珍品が不似合いな場所に並んでいるという根拠薄弱な状況証拠に頼らざるを得ない、論理的には否定しにくい現(うつつ)なのです。特定分野だけの、コレクターなら受け入れてしまうでしょう。夢に出てくる珍品でも、出現の可能性はあるのですから。でも、並べると違和感が強まります。画像の3点を見て下さい。全てアルゼンチン宛のカバー、大阪東26.9.28、SHIZUOKA5.12.51、SHIZUOKA28.5.52。タイプ文字のブレ・掠れ・ズレ・欠損が完全に一致しています。特徴から判断して、同じタイミングで3通の宛名を打っている。でも、差出人も、場所も、日付も違います。考えられる可能性は一つです。悪意の輩が、同じタイプで打った封筒に、切手を貼って、自分の意志で適当な郵便印に似せた偽印を押したことになるのです。このポイントは、河原井一彦君が下見だけで気づいていました。一瞥での確認は物凄く困難だと思うのですが、大した眼力です。彼の好みの分野だから分かるのでしょう。タイプの使いまわしのミスは、今までも、時々襤褸を出していた、あやつの大チョンボの一つでしょう。今回はこの証拠が有るので、オークショニアに強気で交渉できたのです。誰もが、薄うすは感じていたはず。でも、西岡さんのオークショニアとしてのスタンスは、首尾一貫しています。いくら私や他の人が警告しても、自分は知識が無いので、彼の出品物は、彼が作った偽物かどうかは分かりません。落とした人が、エクステンションを掛ければ、日本郵趣連合の鑑定委員会に出して、その結果に従います。それが自分のオークションのルールです。今までに、何度かこのケースが有ったけれど、偽物の結論には一度としてなっていないのです。今回もそのパターンでやるとの事でした。だから、私は条件を出したのです。情報に疎いビッダーで事情を知らない人がいる。私がチェックして、疑問のエンタをピックアップするので、それに関しては、エクステンションの要求がなくても、自動的に鑑定に出すようにすればどうでしょうか、という言い方です。それでOKになったので、日本郵趣連合の鑑定委員会に根回しをして、依頼が一杯来るので、頑張るようにと言いました。手ぐすね引いて待っていたはずですが、私以外からのクレームも多かったのでしょう。該当の出品者の出品物は全ロットが引きになりました。極有り触れた平凡品も、100万以上になるかもしれない大珍品も一緒にです。

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これで終われば、私とすれば、何をしたか分かりません。悪魔がゾンビのごとく、場所を違えて出てくるでしょう。ほとぼりが冷めたころを見計らってですが。1回のセールでの出品物WDでは、火をつけたものの、ボヤにもなっていないのです。煙はくすぶってはいるのですが円満解決にはなりません。頭の片隅にずっと残っていたのが、故丹下甲一氏の、郵趣研究の記事なのです。上梓される前にも分析のレポートを貰っていたし、説得力の有る提言なので、誰かが追ってくれると思ってました。この記事の時に彼に頼んだのは、1回限りの無料での研究所の好意での検証でなく、有料で良いので、継続して分析が出来る組織を教えてくれのリクエストでした。実際、彼の記事の末尾には載っています。民間検査会社・例:㈱ミツワフロンテック(大阪市北区)の名前が出ています。今回、ここにメールを送ったのですが、『けんもほろろ』、さすがの丹下もこの件は又聞きの情報を書いていたのです。ミツワ・・は検査依頼は全く受け付けておりません。この会社は販売代理店だったのです。もし機械本体を買うならば、で聞いたのですが、XRFは民間の門外漢の一企業では手に負えない、鉛で遮蔽した管理区域を作って、液体窒素で冷やして、検査技師がやらないとダメですよの返事です。別ルートで持っていた、私の情報とは齟齬が有るのです。ここは相手にせず、改めてその気になって、ネットで調べれば、結構有望なデータも見つかりました。島津製作所の1000万の機械は無理、オリックスの中古を探せば、お手頃の物の可能性も有りそうです。ただ、メーカーの保証が付かず、アフターサービスにも危惧が残ります。幾つかの代理店を調べて、有望な1社にメールを送ったら、速攻で動いてくれました。メールの10分後に電話が来ました。日フィラのオークションが終わって数日で連絡を取って、同じ週に先方が東京から機械を持参でデモに来て、こちらが要求する条件をやれる確認をとって、それに対応するアプリケーションを決めて仮契約、行政への手続きは、天満の労働基準監督署への届け出だけ、管理区域も液体窒素も鉛の壁も放射線技師の資格もいらないのです。データの出力には、エクセルとPHOTO-SHOPが必須なので、運用にはそれなりのテクニックはいるのですが、放射線には疎い、大学の先生でも機械自体は使えます。弊社のパソコンおたくでもデータは取れるのです。カバーで5か所を計るにしても、15分でチャートでの結論が出るのです。現品を持参してくれれば、その場での回答ができるのです。最速で機械を入れて貰ったのが3月18日、数回の微調整を経て想定以上に稼働しています。やってみて、トライアル・アンド・エラーで見つかる結論が有るのです。つくづく残念だったのが、丹下君に報告できなかったこと。落ち着いてからと思っていたのですが、まさかの事態が起きてしまいました。でも彼の鋭い発想力を基にした、遺志は引き継ぎます。方向性は見えていますから。

現時点でもXRFの分析結果を元に、特定人物が作ったものに限っては、完全に偽物の結論が出せると思います。一人の人物が世に出した、カバーからのみ検出でき、それ以外の出所の物からは、欠片も出て来ない元素があるのです。伝手をたどって調べたので、まぎれの要素の無い、出現時期が限定出来たのです。今までにも書いて来たのですが、元素番号22=Ti=チタンの詳細が分かりました。同じチタンでも性質によって、2つに別かれてしまいます。「金属チタン」と「酸化チタン」です。根っこは一緒でしょうが、商業化の段階で、まったく別個のものになるのです。扱っている企業も、業界団体も違うのです。私が知りたいのは、消印のインキの成分におけるチタンです。自然界の物のままでは使えませんから、それが何時から、実用に供されたか分かれば、不存在確定時期にそれが有れば、確実に偽造の証明になるのです。インキには、酸化チタンが使われます。飛行機とかは金属チタンです。論文を読んでも、自分の分野のことしか書かないし、素人相手の文章ではないので、随分解釈に手こずりました。金属チタンはTiで、(社)日本チタン協会様が業界団体、日本での工業用の量産は昭和23年ですが、インキに使われる可能性は殆どないそうです。酸化チタンの業界団体は(社)日本酸化チタン工業会様で、会員会社数は6社、ネットで調べたお馴染みの名前が並んでいます。分子の構造では、TiOかTiON、今の主流の塩素法での製造は1974年から、ただし硫酸法ではそれ以前から有って、日本で最初のメーカーの、チタン工業の設立が昭和11年6月、生産は早くて翌年、最速で商業化できたとしても昭和12年です。更に実際に、消印のインキに使われたのが何時からかが重要なファクターになるのです。一般的には、チタン白=酸化チタンは、黒インキに使うとして、その目的は調色か隠蔽(下地を隠す)のためだそうです。原料メーカーの持っている情報では、その利用法は聞いたことがないそうです。それは本物の郵便印の実例で追わないといけないでしょう。かなり遅いと思えます。だから、挙証義務を物凄く厳しく課されたとしても、昭和12年以前のカバーに、チタンが検出されれば、一発でアウトです。(一部の例外は既に紹介しております。)そして、現時点でのXRFによる分析で、Tiが出ているものは、一人の人物からもたらされた真正でないと疑問を持たれるマテリアルに限られ、その数倍の、真正なマテリアルからは、時代を問わず、一切出て来ていないのです。手元のデータですが、Ti出現マテリアルを21ロットを押さえました。その内訳は、MSAが6点、ヤフーのtomopu0527が4点、日フィラが4点、福丸及びプライベートのディールが7点、落札値又は相場で評価して総額で1500万ぐらいの被害額になってしまいます。本人が戯言で豪語していた、創るとするなら、エンタは1本で100万かなは大げさではないのです。

情報の公開の了承を得たものに限りますが、順次、具体的に詳しく説明していきます。2014年1月26日開催の、日本フィラテリックセンター65回フロアセールのLot649です。房1銭、旧小判黒1混貼 未発表の不統一 ◎相川/淡路国郵便局消→KG淡路由良、淡路相川在住の中村重次郎差出、由良港喜宝丸銀蔵宛てです。近接した出品ロットに、中村重次郎宛ての駄物が出ており、一連の連続便=コレスポンデンスと思われます。中村宛と中村発が一緒にある理由とすれば、船が出港での戻し便なら辻褄が合います。淡路相川は10年5月の開局、6月には上灘に改称、極めて短期間の使用例になります。手彫と旧小の同一額面異種貼、未発表の短期間使用の不統一、ルックスはいまいちですが、見事な珍品です。最低値15万円、そのままフロアで落札です。お買い得です。売りに出す場所を間違っているのです。◎不統一と、KG由良から、Tiが出ました。だから、この2印は偽造です。朱色の○相川からは、Hgが出て、墨筆書きからはTiは出ていません。この部分は、総合判断して、本物でしょう。理屈に合う、切手のない封筒を使っての偽カバーを作り、一連の蔵出しを装って出品したものと思われます。このやり方は、彼の得意技です。福丸の道具市に出た、木箱入りのカバー、竜48文単貼 西京検査済を含む、桜あたりのカバーの初出しロットというスタイルでの出品、数年前にどこかで見た記憶が有るのです。折あらば調べたいと思います。簡単に結論が出るでしょう。この消印は、科奴の最も数が多い仕事なので、押さえた数は多いし、朱色の干支印からもHgを調べられるのです。因みに、西岡さんがいうには、彼からの出品物は、送ってきた順番で掲載しており、かつてはいつも最終の出品者、ここ数回は、複数回で別れてきている。取引はすべて郵送、10年ぐらいは会っていない、たまには事務的な電話があるだけとのことでした。

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