japanstamp Archive

訃報です。

今日メールを貰いました。アイホン君からです。ここんとこ、ご無沙汰のアメリカ人で、ちょっと気になる人がいたのです。Stephen Chazen  76歳 Sept.22に旅立ちました。アメリカの独立系の石油会社のCEO、フォーブスの長者番付の常連でした。Occidental Petroleum は、北海油田の大事故で知られていますが、彼は確か3代目ぐらいの経営者でした。多くの会社の経営に携わっていたと思います。

1920年までの中国関係の郵便史がメインで、純日本も少し絡んでいます。ビッダーとしての、弊社とのお付き合いは、大分前の大龍3Cと旧小判5銭とのコンビネーションカバーのハワイ宛、絶対に落とせる自信が有ったでしょうが、強烈なライバルが現れて、彼はアンダービッダーだったのです。900万か950万だったと思います。出品者はご健在だった榎さん。喜んでくれました。弊社のハンマープライスのレコードです。落札者は在フランスの中国人、リクエストされたので、香港のジェフリー・シュナイダーのオフィスに持参しました。UPU絡みでのハワイ宛の料金が非常に面白いのですが、片山七三雄氏と山崎文雄氏の御助力で解明出来たのです。彼は知っていたのかな。漏れ聞く所では、彼がオークションで負けたのはこの時が初めての経験だったかも知れません。

彼の私セールでのビッドでのエージェントは、Andy Holtzなのですが、他にも居たと思います。私の記憶では何故かGeorge Alevizosの名前が残っているのです。ドイツの小さいオークションに竜100文の西京検査済の極美のカバーが出たのです。安ければ欲しかったのですが、300万円位になりました。日本人は当然ノータッチ、エージェント同志がChazenの札で競ってしまったみたいな印象を受けました。香港のセールでは、Andyの依頼を受けたエージェントがテレフォンビッドをやってました。顔見知りのMichael Jhonsonでした。兎も角強かったのです。私が村岡さんと若桑さんから預かった、在日外国局の札も結構強かったのですが、香港のフロアでは掠りもしませんでした。背の高いM.Jがテレフォンビッドの受け手になったロットは、その瞬間でノーチャンスになるのです。実際に私が一桁間違えた物まで、しっかり落し切りました。

弊社でのお買い上げで、印象深いビジネスが2件あるのです。白井二実さんの外国局です。完璧に買ってくれました。1000万位になったので、白井さんの最晩年を過ごす費用にお役に立てたと思います。或る意味奇跡的な僥倖だったのです。もう1件は、ニューヘブンから但馬八鹿へのコンビネーションカバーです。絶対に高値で売らねばいけない理由が有ったのです。確か520万だったかな、オークショニアとしては、結構なリスクを被ったのですが、乾坤一擲、勝負したのです。Andyからのテレフォンビッドのリクエストが来た時点で、勝てることを確信したのです。フロアでのコールが早すぎると怒られましたけど。このマテリアル、一杯書けるネタが有るのです。墓場に持って行く気は無いのですが、まだ全ての案件が片付いてはいないのです。だから本当の最後の結論を書けるのは、私がハンマーを置いた瞬間になると思います。さあ、何時のことでしょうか。

Andy Holzのルガノのオークション、近年は活動していないのです。気になっていて調べるつもりだったのですが、最良の顧客の状況が原因だったのでしょう。彼もいい加減稼いだのでハッピー・リタイア出来ているのかな。私にしても、一つの思い出深いディールが終わったことがはっきりと判りました。Chazenコレクション、既に売りに出ているのかも知れません。アメリカのオークションハウスに出るはずです。キーワードは【Magnolia】、目玉の中国には、水原明窗コレクションの大龍3枚貼のアメリカ発上海宛のコンビネーションカバーが有る筈です。

世界中のアジアの郵便史を扱うオークションハウスが随分とお世話になっていた人なのです。日本人で彼と接点が有った人、私以外に何人いるのかな。

34年ぶりの再会です。

8月のオークション誌の編集が佳境に入って来ています。後3週間弱で入稿せねばなりません。何時もの同じで結構きついタイムテーブルで動いています。

本当に偶然なのですが、全く繋がりの無いお二人から同じような物が届きました。偶然としか言いようが有りません。欧文櫛型YARUTOです。最初は1.5銭のオンピース、後が3銭のオフペーパーです。記憶に有ったので、ちょっと探ったら、キッチリと資料が見つかりました。昭和63年12月28日の日本郵趣連合の鑑定書、署名者は金井宏之氏です。【真正では有りません】の結論に私も同意いたします。印色が気に入らないのです。疑って見れば、幾つも瑕疵が見つかります。今回の出品物は、この現物を剥がした物です。34年ぶりのご対面です。現時点ではルートを手繰っての出所のトレースはしていないのですが、少なくとも複数人の手を経ての流通だと思います。偽物として出品して啓蒙するよりも、黙って返すことと致します。

当時の噂では、ある人の固有名詞付きで出何処が話題になっていました。名古屋方面だったと聞きましたが、定かでは有りません。もう1点の3銭のオンピースは、当時に私が入手して、サンプルとして持っていた物です。1.5銭の方は別の人からの今回のセールへの出品でした。この3点を並べれば、雰囲気は全く同じです。素性も出所も一緒でしょう。全く繋がりの無い2か所からの30有余年を経ての私の手元での再会です。こんなことも有る物だと改めて実感したのです。まさか、もっと続けて出るとは思わないのですが、もし見かけたら十分に注意が必要だと思います。

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こんな物が・・・見つかりました。

手元に超一流の越後国の初期消印のコレクションが来ています。8月のセールから順次オークションに出品いたします。竜から旧小判4銭貼までの不統一のカバーが主体です。殆どが表に出ていなかった物だと思われます。まともな珍品で無いのですが、毛色が変わった物を見つけました。小判1銭葉書の〇新潟消です。着印から、12年11月29日の抹消だと分かります。故玉木国夫氏のメモが有り、12年の使用例が2点見つかっているとの記載でした。もしかすれば、その現物がここに有るのかも知れません。新版・明治郵便局名録=近辻喜一氏校訂に新潟の抹消印が時系列で出ています。不統一での抹消は〇新、そして〇新潟しかないのです。単片は改桜20銭チと旧小2銭紫が有りますし、出現している額面から判断すれば、同年代=12年と推定される物が他にも若干あるかと思います。9年のそれは私に来た資料からは見出せません。

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この2点の葉書は最初にコピーを貰った時には、【複写】のメモ書きが有りました。一瞥して、正に一方はコピーだと思ったのです。でも、現物は違っていました。同じ物?が2枚重なって入っていたのです。画像をしっかり見てください。〇新潟の右辺の欠落、二重丸印のデータと特徴、どう見ても同じ物でしょう。でも、物は2枚です。宛名も文面も一見【コピー】に見えたのです。でも、疑ってよくよく見れば細かい差異が見つかります。コピーや変造では無いでしょう。同じ人が同じタイミングで2枚の葉書を書いたのです。同時に投函、全ての行程で同じタイミングで抹消されたのでしょう。こんな偶然、どうすれば起きるのでしょうか。奇跡としか言いようが有りません。今回のコレクションには、もっと本筋の良い物が本当に沢山有るのです。それは是非次回のオークション誌でお目に掛けるようにいたします。赤二の◎、記番エンタ、不統一の単片からスタート致します。

支那字の消印のお話です。

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今回のセールは目玉が一杯有るのですが、想定外のテーマでのご出品が有りました。中国本土での方針が原因で、字入切手の切手展での扱いが難しくなるそうで、展示に出せなくなるのでやる気が失せてしまったので売りたいとういうことでやって来たのです。中国での切手展での扱いとなると私は全く不案内です。詳しくは判る人に聞いて頂きたいと思います。

Lot2737~2795なのですが、その分野のコレクターにとっては垂涎のマテリアルが並んでいます。随分と前の強烈な印象の文献上で知られていても、マーケットに出てくることは想定していませんでした。コレクションのリーフそのものをジャスト100リーフ預かったので、記事の編集は楽でした。物が良いのでストレスが無いのです。最低値はご一任だし、今の評価で出品して、売れる値段は場での競りにお任せです。でも、良くも悪くも30年ほど前のコレクションなのですが、マテリアルの本質部分は当時も今も変わっていません。そして時を経たことにより、希少性の確定という視点で見れば、より輝きが増した物も目立ちます。

でもちょっと気になったのが、国際展に出品されたリーフ上での記述の内で数多くのアイテムに書かれていた、【現存1点=only one, unique、3点の内の1点】とかいう定量での希少性の表現はどうなのかと思うのです。採点基準での知識のポイントを明らかに意図して、これでもかという言うぐらいに書かれています。英語ならそれ程は気にはならないのですが、日本語でのこの記述には違和感を覚えます。弊社のオークションでの記述ならば、100%削ります。限られた条件での定量表現をご自分の名前で書くのは良いのですが、ご自分の知らない場所での物の有無など分かるはずは無いのです。オークショニアのポリシーとしては使いたくない言葉です。切手展ではそれを書いて、間違っても自己責任だから構わないのですが、オークショニアはそのリスクを負いません。実際に30年経ってもここにしかない物も有りますが、軍事郵便系と郵便使用の物は年を経れば連れが出て来てユニークでは無くなります。数が増えても相対的な希少性には変化は無いのですが、定量の希少性を示すのが、【国際切手展】では必須の知識の証明手法という変な常識には与したく無いのです。ゼロで無い物は時を経れば増えますよ。それと国際展でのトラッドの使用例は、機械的にオフカバーがNGというのもどうなのでしょうか。今回のLot2762 博山、2763の周村は電信取扱所なのでエンタは無いでしょう。そしてオフカバーも私の記憶ではここに有る物が唯一の存在かと思います。チョロ消なので高くはならないでしょうが、何人からビッドが有って、どなたが買ってくれるのかに注目しています。リーフの作り方次第で、切手展にも使える性質の物だと思います。使い方によっては持ち主の知識の証明になる物なのです。3点並べた内の支那菊5銭の丸一は今回のセールとは別口ですが、この局は推測はされていても見つかっていなかった物で、恐らくはユニークです。でもこちらは郵便印だと思うので、エンタの出現を待ちたいと思います。単片では切手展のコレクションには使えない物でしょう。

在支局(含む山東省)の消印で思い出深い物が2点有るのです。年号2字のSHIN・・・と欧文櫛のWEI・・・です。単片のチョロ消ですが、多分私しか気づいていないお話が有るのです。30年というかそれ以上の前のお話から入ります。時間を見つけて書きましょう。オーストラリアのおばさんとトリノのドクター、共通項は1971年の国際切手展に日本切手のコレクションを出していた人なのです。

今回のオークション、売上とかハンマープライスの額にはリンクしないのですが、書けるネタが一杯有るのです。金銭的には地味ですが表に出して記録しておきたいテーマです。時間を見つけて書いてみたいと思います。オークションの結果に影響を与えるのが嫌なので終わってからにしたいと思います。

表紙を見てください。

オークション誌は10日(木)に予定通り発送しました。特約ゆうメールなので定形外の普通便ルートで流れます。JPの方針で祝祭土日は配達無しなので、月曜日には届くと思います。物流は国内はまだしも、海外がガタガタです。イスラエルは郵便はNG、アメリカも航空便は△=実際問題NGです。EMSで送りましたが想定通りに届くか危惧しています。でもやらないよりは良いでしょう。欧州はコロナ以外の要因でコンガラガッテいます。ベストのチョイスをしているつもりですが、カタログが税関で通関できずに戻ってきたり、関税がかかる為の受け取り拒否も少なからず有るのです。カタログは無価値のはずですが、相手国によっては通用しないし、日本サイドではどうにも出来ません。相手国の税関次第です。今のところはEUだけですが、今後は気を付けないといけないでしょう。

今回のセールには良質の大きいコレクションの一部が複数出ています。旧小判の最終回、極美に拘った新小判、新たに手彫がお二人からスタートしました。そして知る人ぞ知る、在支局のコレクション。中国本土の切手展ポリシーの変更故に弊社にやって来たのです。まさかという思いです。超一流のコレクションの売り立てなので、オークション誌は結構いい出来で仕上がっていると思います。表紙でちょっと遊んでみたのです。メールの方は【何それ?】でしょうか。葉書の写真のおじさんたちの名前を検索すればその理由が分かります。実は数回前に今回の連れが出ていて、随分と良い値段で売れました。出品者が場での競り上がり方に吃驚してその理由を聞いて来たのです。キッチリ教えたのですが、欲ボケの割には学習能力が無い人なのです。ご本人はこの表紙を見てもその理由は分からないと思います。余り高くならない方が平和かも知れません。

フロアの【Lot1521】発光15円の日立は、理屈が明瞭な珍品です。大宮=発光でそこそこ有るはずだという印象なのですが、日立は珍品です。機械の稼働日が分かっていて、4期間で合計21日しか無いのです。今回の日付が偶然にも最終日。物の出所はH13年に売られた、S45年調整のキリストの紙付というのは嘘では有りません。弊社のセールに、ちょっと前に切手商差し出しのエンタが出て、強い札を持って落とす気で場に来た人が頑張っても買えなかったのです。メールの一番値は100万以上だったことを覚えています。今回は単片なのでどういう評価になるのでしょうか。発光日立は浦和ならば有るそうです。

【Lot1854】梅花10円の宮良印は、オボロゲな話には聞いていたのですが、まさかこういう形で世に問えるとは思って無かった希品です。Philatelic Journal 2021に石澤君が19頁の論文を書きました。追いかけて私もThe Philatelist Magazineの2022 新春号に数頁の記事を書いたのですが、書き洩らしが有ったのです。私は物凄くポジティブに見ているのですが、その理由を書いていませんでした。扱ったのが、重義(弟)・正義(兄)の後藤ブラザーズとスティーブ長谷川さんだというのがそれなのです。沖縄で見つかってから取引された値段は、石澤君が評価している数字の二桁は下だと思いますが、この人たちが本物と思ってディールした事実は重いのです。沖縄暫定切手には通じてはいないでしょうが、それでもプロとしての直感が有るのです。RPSSのマクレランが一人で出した結論は罪だと思います。鑑定は、特にFakeの結論は慎重でなくてはいけません。物に対しての死刑宣告になるのです。悪意で無くても一人の思い込みでそれをやってしまえば取り返しが付きません。今の日本の鑑定でも、他人と議論できない人が、他にやる人がいないからという消極的な理由で、その立場で動いているケースが有るのです。怖いし、明らかに不味いことが起きています。遠からず表に出して議論せねばならないかも知れません。ネタも資料も揃って来ているのです。鑑定自体は法的な争いには馴染まないという、組織とすれば都合の良い免罪符が有るのですが、それで逃げられるとは限りません。それが成立するには民法での【善意注意義務】を果たしていることが前提です。やるべきことをやった上での単純過失なら、間違えていても免責でしょうが、それをすっ飛ばしての思い込みでの独断は許されないと思います。場所を変えて論じたいテーマです。

【Lot2164】旧小判45銭の無地紙目打13、本当は最終ロットにしたかった物なのです。記事は今回通りで最低値は1万で、当然ながらas isでです。意図的に鑑定書は外しました。これに関しては付けるのは野暮ですから。随分前の、連合の市田さんの時の物が付いていました。国際展でもそれを根拠に超目玉として展示されていた物なのです。このアイテムは小判というよりも、当時の目打の研究家としての第一人者、小川孟氏のご自慢の逸品だったのです。1970年代後半か80年代の頭だったと思います。小川氏がメキシコのグアダラハラ自由大学に赴かれることになり、コレクションを一括で処分されたのです。口約束が為されていたのですが、スッタモンダが有ったそうです。当時は物に飢えていた時代でした。皆さん、特にお二人がお元気でギラギラしていた時だったのです。目玉はこの切手です。このディールが因となって、ビッグコレクターが刎頚の友から不倶戴天の敵に変わってしまったのです。問わず語りで双方から昔話を聞かされました。お二人共にコレクターとしての面子とプライドを意識されていたのだと思います。物をクールに評価したならば、最低値は1000円か、100万かのどちらかかなと思います。値段以上にどうしても表紙に持って来たかった物なのです。今となれば値段なんかはどうでも良いのです。

旧小判の目打13には思い入れが有るのです。45銭白紙の13は2枚扱いました。期待したとおりに関西在住のお二人に入っています。全く同じ印象の物が、12銭の白紙に有るのです。オッペンレンダー氏が持っています。もう1枚、想像していなかったのが、50銭薄紙の13です。50銭の場合、薄紙は最後期の印刷でも矛盾はしないでしょう。これも勿論表紙に載せて売りました。45銭の白紙の13をお持ちの方が買ってくれました。私の評価では3銭の11Nよりも格は上だと思います。でも、誰も付いて来てはくれません。45銭の13、勿論白紙の方ですが、番野さんと話をした事が有るのです。結論は、ペアが有れば良い、いや耳付なら使用済でも構わない。12銭でも、30銭でもOKだよ、が結論でした。巡り合える機会が来るのでしょうか。

表紙では無いのですが、書きたいネタが有るのです。在支局の消印です。発端は、丸一のチーフ―の半欠けを見つけた事です。多分新発見かと思います。値段には全く繋がらないし、使えません。最低値は1000円しか付けません。でも少ないことは確かです。今回の一連の山東省の消印でも同じような物が有るのです。博山と周村の電信取扱所です。関連して支那字で思い出したことが有りました。30年かそれ以上前かも知れません。書き甲斐の有るテーマなので覚えているうちに書いて置きたいと思います。昔話でなく今に繋がる事でも有りますから。

驚愕と懐かしさと

大分時間が空きましたが少し時間だ取れますし、いいタイミングで美味しいネタが入って来たのです。2月2日に開催されたアメリカのCHERRYSTONE AUCTIONのレポートです。為替レートはUS$1.00=115円・落札手数料は15%です。日本のオークションシーンでの手彫エンタの相場と今回のハンマープライスの違い、一体何が起きたのでしょうか。桁違いに高いのです。

Lot846 $15,000→29000=385万円 竜48文2枚・500文3枚貼 神奈川検査済

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Lot847 $5,000→9,000=120万円 竜100文1版を裏に貼 西京検査済

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Lot854 $2,500→12,000=160万円 玉六ル貼上海宛 白抜十字+朱◎YOKOHAMA PAID ALL JUL・31・1875

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Lot863 $15,000→30,000=400万円 洋桜30銭イペア(シミ)貼英宛 大型白抜十字+朱◎YOKOHAMA PAID ALL SEP・25・1875

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Lot866 $1,500→32,500=430万円 鳥15銭、房2銭貼英宛 白抜十字+朱◎YOKOHAMA PAID ALL FEB・12・1876

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Lot894 $1,000→10,000=132万円 改桜10銭ニ貼米宛 白抜十字+朱◎YOKOHAMA PAID ALL APR・13・1876

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今の日本の相場の3倍から5倍でしょうか。共通項は朱◎YOKOHAMA PAID ALL、日本人では絶対にこの評価にはなりません。私が知らない海外のビックコレクターがお二人以上現れたのかな。ここで取り上げた物に関しては解説のしようもないのです。ただ只管口あんぐり状態です。でももう一点はしっかり書けるネタを持っています。

Lot864 脇無半銭に鳥15銭、改色4銭、房2銭貼英宛 白抜十字+朱◎YOKOHAMA SEP・11・1875 $1,500→9000=120万

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懐かしいし、思い出深い物なのです。私が嘗て買えるチャンスを得ながら、手に出来なかったマテリアルとして忘れることが出来ない、数点の内の1点です。1980年代の後半でした、イギリス人のブローカーの、デービッド・ディグリーがアプルーバルの条件で送ってくれた現物です。値段もしっかり付いていたのですが、二つ折れ葉書の外信使用、UPU未加入なので勿論葉書の料金は生きていません。でも、日本の官製はがきで最初に海を渡った物というステータスは消えません。改めてオークション誌を見直したのですが、あの時と同じく買えない理由が見つかったのです。鳥15銭の消印です。他の3印とは雰囲気が違います。この条件が有ったので、飛び込むことが出来ませんでした。改めて見ても同じ評価になるのです。でも、もし脇無1銭で、鳥15銭・改色4銭・房1銭=葉書料額含めての21銭だったなら、駄目元の後貼承知で買ったかも知れません。それ程に遊びたくなるネタなのです。何れにせよ今回の120万はちょっと高いかな。参考値が1500ドルなので、売れるとは思って見ていたのですが、手の届かない数字なので有る意味安心できました。どなたがどんな評価をしたのかが気にはなるのですが、それを聞く機会は来ないかなと思います。でも、この葉書の存在は幻では有りません。コレクションには使えない物だとしても、日本の二つ折れ葉書の外信使用は存在しないと書くのは間違いだと思うのです。

ラスト ワンピース

119回フロア・JAPEX特別セールは入稿完了、10月8日(金)発送です。大阪での下見の準備は出来てますので何時でもお越しください。

オークション以外で懸案だった2件でほぼ方向性が見えて来ました。後、ワンピースが埋まれば私なりに完結出来るのです。一つは、【東芝ゼロ円】が郵摸違反で摘発された件です。9月9日の報道発表で公の結論が出ています。東京地検は、書類送検された8名を不起訴にしました。その理由は明らかにしていませんので、それを探る術は有りません。恐らくは誰よりもコアな資料を持っているので、発端からかなり詳細に書く自信は有るのですが、総務省郵便課と議論を重ねて来て絶対に確定しておきたい最後のピースが埋まってからにします。明らかになった事実を元に、起きた現象を推測して論じるしか無いのですが、出来得る限りの検証はして置きたいのです。警視庁との会話での共通の結論は、警察は馬鹿じゃないので同じ案件でこれ以上は動けない、それにしても郵政民営化はどうなんだろうか・・、だったのです。

もう1点は、【印刷鑑】完全復刻のご案内です。JAPEX前に発売される、ビジュアル日専・手彫版の巻末に11ページのコラムを書いています。テーマは国際展とお伽話なのですが、そのイントロに、印刷鑑を初めて完全に復刻した話を持って来ています。横40.3センチx縦27センチで、表紙以外に中タイトル、旧小判が2種類、印紙が1種類、債券と地券の6ページで全てです。銘版が他には無い物が有りますし興味深い資料です。カラーコピーで作成して折らずに送ります。A3サイズなので、割引料金が使えず、送料が結構高くなります。代価は送料込みで1000円です。こちらは何時でも送れるのですが、おまけを1ページつけようと思っています。ビジュアル日専コラムではちょっと抜けてしまった事が有るのです。【印刷鑑】の最後のパートの11年の蚕種免許印紙の再構成の経緯と、2ちゃんねらーのお兄さんが持ち込んでくれて、国際展セールに出品した1次昭和1円の無目打エラーの素性です。ゲーベル印刷に無目打は存在しないという定説を覆せる物が見つかったのです。フライング情報なのですが、郵趣研究にその記事が発表される前に、書いて置きたいと思います。これは【印刷鑑】の復刻版を買ってくれた人だけに提供できるプレゼントです。日専ビジュアル・手彫の発刊とタイミングを合わせたいと思います。だから【印刷鑑】の発送は、10月中旬以降に致します。ご注文は代金後払いでお願いいたします。こちらの最後のワンピースはこれから頑張って書きますよ。

PA118回 追加のレポート

オークション誌発送後1週間経過です。ビッドもそうですが、早速いろいろとお問合せをいただいております。既に一部の方の札を見ておりますので、それに絡むことはセール終了までは書けません。元からオークション誌には書けないけれど、開示して差しさわりの無い、ちょっとした情報をここで書いて置きましょう。

Lot990 【青島軍事】 未使用 よく聞かれる質問なのですが、オークションでは何が売れますか?というテーマが有るのです。簡単にはマーケットに出て来ないけれど、或る程度物が有って、金額が張って、欲しい人が沢山いる物という意味で言えば、これが一番かも知れません。ボストークコレクターでメインナンバーでこれだけが抜けていて、気に入れば金銭的に全く問題が無い人が何人かいるのです。10数年前には連続で数枚扱ったことが有ったのですが、ここ10年位は全く縁が無かったのです。今回の物は、多分弊社で扱った現物だと思います。鑑定書が面白くて、日本郵趣連合 金井宏之氏のサインです。No.1504 平成12年5月8日です。ご丁寧に、鑑定書自体にNo1154と同一品です、の記載が有ります。正確な日付はトレースできないのですが、市田左右一氏の時代だったのかと思います。効力には何らの瑕疵は有りません。綺麗な田型を除けばかなりハイレベルだと思います。小OHですがセンターはこれで十分です。未使用とすれば最良の状態です。フロアでの競りが楽しみです。メールビッドでは落とせないでしょう。

Lot991 【かつおつり】 全型目打12・透かし無し・糊付、この3条件を満たす偽物は存在しないのです。序でながら耳付で全型なのですが、この切手に関しては目打も当局製で無いので、耳には抜けていないのです。鑑定書(正確に言えば、山本義之・中井輝典・新生スタンプ連名の書面)が付いていないのですが、それには理由が有るのです。100%の確認は取れて無いのですが、昭和40年と41年に2回に分けてシートが分割販売されているのです。ほぼ半々だったと思います。最初の売り立ては鑑定書無しだったのかな。マーケットに出て来る鑑定書付は、昭和41年1月14日の日付のはずです。この時の売値は35000円でした。今回の物は1次の分割品なので鑑定書無しですが、目打12の糊付で透かし無なら偽物の心配は要りません。それ以外の、無目打・糊無は、まず透かしを見て下さい。透かしありは100%偽物です。透かし無の偽物が有るかどうかは断言できないのですが、南関東の政治家の保家氏の無目打シートは、郵趣サービス社が分割販売しています。この時には全て切手の博物館の鑑定書付で売っていますので、紛れが生じる恐れは有りません。残念な情報が有るのです。無目打・糊無・銘付10B・透かしありで、鑑定書付の物が有るのです。弊社に2度、出品物として送られて来ましたが、事情を説明してお返ししました。売った人も分かっているのですが、ここではそんなものが有るという注意喚起に留めます。かつおつりで市場に有る本物は、新生スタンプ分割の目打ち有り・糊付・透かし無と、郵趣サービス社の無目打ち・糊無・透かし無しか有りません。そしてシートは、この2タイプ共に、国内に於いては旧逓信博物館にしかないはずです。

Lot784~991は綺麗な未使用を熱心に集められていた人のコレクションです。手彫他の本体は、大分前に弊社で処分されていい値段で売れていました。それが全部だと思っていたのですが、こんな物が残っていたのは嬉しい喜びでした。オークションで競り勝って買ってくれていたので、買い値は安くありません。基本的には往復の手数料はマイナスになるはずです。でも、【青島】と【かつおつり】は別格です。今の方が勢いが有るのです。最低値は絶対に売れる値段で付けているのですが、お支払額が買い値を超えることを期待しているのです。

Lot1177 三五六の5銭独宛 OCT.25.1878 YOKOHAMA消 UPU加盟と葉書は強烈にリンクしています。面白いテーマでは有るのですが、ドンピシャの書きたいマテリアルが中々出て来ないのです。でも三五六なら単品で勝負が出来るのです。日付が最重要です。今回の物は秀逸です。葉書の発行が1877.11.20、独宛5銭は1879.7.31までです。三五六の3銭と5銭は随分と新規の物が出て来ていて、20万も出せば結構良い物が買えるでしょう。でも、日付に拘れば難易度は格段に上がります。2種共に適正期間の適正宛を揃えている人は果して何人いるのかな。その上に今回はこの消印、頑張って落し切って後で後悔はしないでしょう。

Lot1328ー1338 旧中国孫文です。当時現地にお住いだった著名なコレクターの遺品です。ご親戚のコレクターが30年程抱えていて、手付かずに今回巡り合えました。このテーマは当時は随分と賑やかだったと思います。でも、実逓のエンタが無いのでオークションのネタにはなりにくいのです。私の知識では個別のロッティングは出来ません。大きく分けて、フロアセールの場に出せば見る人が見て、競って買ってくれるでしょう。正直、ご希望者が何人いるかは全く見えていないのです。10年に一度の日本国際切手展のオークション、場所とすれば最高だと思います。まさかこの分野のコレクターさんで見落としは無いでしょう。

Lot1561-1577 著名人の書簡です。このテーマで切手の世界で売る場合、条件が有るのです。直筆が絶対です。印刷は無価値です。そして人物とすれば、山川出版の高校の日本史の教科書に出ている人か、切手になったか描いた人。欲ボケの出品者はWikiに出ていればそれが著名人だと勘違いして、素っ頓狂な物を出してくることが多いのです。歌人・俳人・日本画家は基本的にNGです。別の場所で売って欲しいのです。綺麗ならまだしも、キズや読めない物はオークショニア泣かせです。今回は良い物が有りますよ。澁澤栄一、清瀬一郎、湯川秀樹・・みな条件を満たしています。残念だったのは、平沢貞道(帝銀事件)は次の機会となりました。大きい、アコーディオンブックの方は更に豪華です。東郷平八郎、後藤新平、板垣退助・・。同一人宛で封筒のみをベタ張りです。在北海道の内田武一氏宛ですが、この人の素性は判りません。政治家か軍人か官僚かと思うのですが・・。切手のオークションよりも、古書の方が高いかも知れません。でも、封筒だけで、手紙が一切なしが微妙です。もし全部残っていたらさぞやいい値段になったでしょうに。

Lot1736-2000 U小判

Lot2158-2169 飛脚便

Lot2207-2558 旧小判

何れも超一流のコレクターの遺品コレクションです。書き込みがしっかりしている、リーフの状態で預かっているので、編集は楽なのです。物は一級品、状態は極美、値段も張る物が多いのです。オークショニア冥利に尽きますよ。分類は基本的に故人のそれを尊重します。勿論、深刻な意見の相違は有りません。でも、値段が問題です。良い物をオークションで競って競争者を撥ね退けて買われているので、明らかにその場の勢いでの高買いされている物が多いのです。結構買い値のメモが残っていて、その数字を見ると、今の相場が御気の毒になる物も少なくありません。それは変えようが無い現実なので、納得して貰うしか無いのです。ディスクライブは有るがまま、見たままの表現です。最低値は今まさに現役の私の評価で、売れるだろうの数字で付けました。中には手品を使っても昔の値段に近づけて売りたいような物も有るのですが、それは市場に任せましょう。物が良ければ、今だって欲しい人がいると思います。良い物は競って、高くなるのがオークションの神髄なのですから。

異形のみほんと法的考察

懸案の【郵摸】案件、やっと動き出しました。総務省郵便課に書面を送ってほぼ1ヵ月が経過しても何らの音沙汰も無かったのです。コンプライアンスマターととして、総務省監察室にメールを送ったところ、今日返事がきました。予想通りの内容です。「当室は総務省職員についての法令違反他を担当している為、お申し出の案件は対象外なので、該当部署に回します」です。仕事上のミスや能力不足での間違いは対象にはなりません。でも、効果は絶大で、踵を接して郵便課から即刻、電話が有りました。来週中に書面での返事をくれて、それをたたき台にして私と議論したいとの事です。こちらは既に準備が出来ているし、論点の整理も完了です。現在進行形の案件は【東芝ゼロ円】なのですが、警視庁保安課の解釈は、【郵摸】の条文に於いて、東芝ゼロ円のオリジナルが合法に扱えるのは、当初の目的に則して正当に利用した東芝株式会社に限られるということです。詳細は繰り返しになりますので、今は流しておきます。もし警視庁の見解が正しいのなら、【みほん】を合法的に使えるのは、郵便局だけで有り、周知・公報・照鑑以外に売買や頒布すれば、それは【郵摸】で摘発されるという事になります。法の不遡及と、公訴時効を除いての原則論で議論をして、【みほん】の合法性を確認したいと思っています。もし、みほんの販売が違法ならば、カラーで切手の図版が載っている、書籍も全て、出版元が最初に売った時以外は違法になってしまいます。【郵摸】の後半部分は売り手の属性を限定している物では無いのです。電話でその旨を話したところ、趣旨は理解してくれています。当初に照会を受けた弁護士さんが警視庁に出した返事を元にしての議論になるのですが、兎も角返事を待ちましょう。

 

今回のオークションでも、みほんで面白い物が出ています。ギャグですが、法的には時効になっているので、これを売っても【郵摸】で摘発はされません。Lot308は木工船2銭の横ペアです。タイプ12+15なので、山本義之さんのデータには有りませんでした。2次昭和と3次昭和+同時代の記念切手は字体に多くのバラエティーが有るのです。100面シートでの加刷なので、ブロックが有ればPosも分かるかも知れません。2昭の3銭と7銭は塊が有るので研究は結構進んでいるようです。船の2銭はペアでも少ないし、このタイプは単独でも珍しいと思いますし、タイプ違いのペアは貴重です。

20210731-0001-0308

Lot1237は菊5円・10円のひらがなみほんです。発行周知用は見本で、朝鮮と台湾まで有るのです。平仮名は、後年の大字しか見つかっていないと思います。それ以上に、今回の物は他に例を見ないタイプです。菊は無論、田沢にも無いと思います。無加刷未使用の価値から判断して、偽物の可能性も無いでしょう。しっかりした活字なので、後年の照鑑用だとしても、連れが全く見つかっていないと思います。でも、1点有るという事は、複数あっても良いはずだと思っていますが、買った人が研究してくれるのを望みます。

20210731-0002-1237

Lot6154は吉野熊野の小型シートです。異形の字体です。他には無いし、それ以上に、4種の切手で全て字体が違うのです。たとうが無いのが残念です。ごく最近に海外のオークションの出ていたロットの1点です。このステータスは、正に見たまま以上の物では有りません。

20210731-0003-6154

ほんの1回のオークションでも、こんなに楽しい物が出て来るのです。【郵摸】をきっちりクリアして、みほんも安心して買って頂けるようにしたいと思っています。

旧小判 薄紙の系譜

本日、第118回フロアオークション誌【日本国際切手展記念セール、8月29日開催(メールビッド8月26日締切)】を発送いたしました。同時に大阪の事務所での下見も可能になっております。今回は目玉品が沢山集まりました。物が良い物だという前提が有っての事ですが、意識的に編集したのでテーマで見易く並んでいることが多いのです。どの分野でも注目品を含んでおり、大いに楽しんで頂けると思います。旧小判は超一流のコレクションのPart1を出しました。誰もがご存じの珍品は無論ですが、前所有者のお気に入りの物が目白押しです。骨格とすれば、1997年のサンフランシスコ国際切手展に出品されたコレクションが主体です。その後に入手された珠玉の別枠のエキストラの追加分も有るのですが、アルバムへの書き込みは桑港展の物を其のままの状態で預かりましたので、編集に際しても基本的にはその分類を尊重しています。

1点だけ勝負したいものが有りました。Lot2287 6銭無地の未使用です。リーフ上の展示箇所は、エスパルトよりも上で、無地としての位置づけです。初期色で無斑点の縦紙なので、無地と書いて何の問題も有りません。でも、かなり薄いのです。平滑で無斑点、色は蒼白と表現できると思います。同じ紙が50銭に有れば躊躇なく【薄紙】と書くのです。クールにデータを数字で並べて見たいと思います。厚さはマイクロメーターで計測したμ表示です。今回の場合に限ってですが、贅沢な検証が出来るのです。機械計測での比較の数字が命なので、条件が均一でないと駄目なのです。完全未使用で、オリジナルガムの部分を2か所+測りました。そのデータを並べます。

額面   発行日    厚み(µ=ミクロン)  Lot番号

1銭黒  1876.5.17     55.50         2252

2銭狸   〃        54.50         2259

4銭   1876.6.23     55.00         2272

5銭    〃        59.50         2284

10銭  1877.6.29      56.75         2220

6銭    〃        64.60           2287

3銭  1879.6.30     62.33         2322

50銭   〃         62.50            2335

20210729

発行日を基準に取れば、前後半で4種ずつ2組に分かれます。厚さで分ければ、前半5種と後半3種で2組です。さあ、この6銭、どういう位置づけになるのでしょうか。60μ未満ならば良かったのですが微妙な数値です。【欲目の薄紙】結構気に入っている表現です。眼で見てわかる特徴もそうですが、こうやって並べると単独では見えない部分も見えて来るのです。薄紙は短期間のみで使われています。目打9Sは有りません。出現期は11年~12年ですが、短期集中でのスポットの使用とは限りません。3銭・50銭は主力に近い使われ方ですが、1銭黒~10銭は主流では有りません。さあ、6銭はどうでしょうか。見つかっていなかったから、頭ごなしに否定はできないと思います。同じような例が、45銭の白紙の13(複数存在)と50銭の薄紙の13目打にも有るのです。表紙に使っての最低値5万円、評価は???