郵便切手類等模造取締法の法的考察

5月14日(金)に新聞、テレビ等で大きく報道された郵便切手に関する案件が有りました。社会的な関心が大きく私の周辺でも話題になっています。公権力の法的な行為での事案なのですが、摘発した警視庁高輪署保安課及び報道機関が、細部に於いて幾つかの部分で明らかに法解釈を誤っており、適切でない取り扱いをしている旨推測できる故、根拠を示して公表周知したいと思います。あくまで、報道されている事例が事実であるとして論じます。私を含め切手に携わっている物全員の総意として、昨今のヤフオクを初めとしての郵趣のマーケットでの変造・偽造品の氾濫には強い怒りを覚えており、法的な措置によりその流通を差し止めたいと思っておりました。本年1月に、郵便切手類等模造取締法(以下郵摸と記す)により、数人の不心得の輩が立件された事は嬉しい驚きでした。その際の押収物に、【東芝ゼロ円】のリプリントが含まれていたのですが、今回の摘発のメインマテリアルとして、【東芝ゼロ円】のオリジナル20面シートが含まれているのです。警察署が誤認するのは当たり前なのですが、法的に考察すれば、根本的に間違っている措置なのです。警視庁保安課から所轄地の地検に書類送検され、今後の扱いが決まるのですが、法的には100%の確率で不起訴になってしまいます。警察レベルでは法を精査はしませんが、検事は公判維持=有罪判決を得る事を前提に処分を決します。迷うことなく有罪の立証が無理なことに気付くと思います。

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郵摸の法文を載せて置きます。

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ポイントは公布日が昭和47年6月1日、施行は同年12月1日であるです。法律のイロハのイとして、法令不遡及の原則が有ります。施行日以前の行為を法の名で罰する事は出来ません。この法律は作る際の準備段階で、当時郵政省にお勤めの職員(故人)が主導的役割を果たされており当時の資料も残されている事をご遺族から聞き及んでいます。私もお付き合いが有った郵趣家なので、法文もストレスなく解釈できる表現になっています。

今回の案件では郵摸の第一条のみで結論が出せます。該当のマテリアルが法に触れるか否かをアナライズ致します。〇は郵摸に抵触しない物、Xは郵摸の抵触し摘発の対象になる物です。

Ⓐ 昭和47年12月1日以前に製造された物は全て〇です。法令不遡及の原則が根拠です。

Ⓑ 郵摸の第一条2項に該当する、国内外の全ての正規の郵便切手及び、郵政大臣(総務大臣と読み替え)が認めた関連品は〇です。

Ⓒ 郵便切手でない、印紙・シール・ラベル・証紙類は対象外なので、オリジナルもリプリントも〇です。

上記に含まれない、郵便切手の類似品・変造品、模造品で、昭和47年12月1日以降に当局の許可を得ずして作成された内外の郵便切手に類似した顔を持つ紙片がXになります。

具体例を例示すれば、菊切手の郵便目的用の偽物、手彫・旧小判の和田製の模造品・新昭和の輸出用のリプリント・切手経済社の月雁と見返りの摸刻はⒶに該当しますので〇です。全てのみほん切手・エッセイ・プルーフなどはⒷなので〇です。ⒶⒷ共に郵便法の解釈を越えての包括の定義なので間違いは起こりません。村送り・坂東ラーゲル・印紙・証紙は真正品もリプリントもⒸなので郵摸の対象外です。

今回現実に事件化している物を整理します。ヤフオクに流通している物を含んでの分析です。手彫切手の偽物は製造日で分かれます。昭和47年12月1日以前は〇、以降はXです。直近のヤフオクに出ているパソコンで作った物や一部を変造した物はXです。模造品・リプリントと謳っても郵摸ではXです。免責されません。作ることも売ることも同罪です。郵便法上の有価証券としての効力でなく、外形での類似性で判断されます。月雁も昭和40年前半以前作は〇、今作ったらXです。リプリントでの〇Xは、ベースが郵政大臣が許可したか否かで結論が分かれます。琉球の100円加刷は正規品は勿論〇ですが、直近作の物はXです。満州の国防献金も本物は〇、リプリントはXです。村送り・坂東ラーゲルは本物も偽物も郵摸では〇です。かつお釣りが微妙です。郵便切手であるか否かの定義が定まっていないのです。当局から印刷会社へに発注書は存在するのですが、窓口では売られておらず、郵便法上の切手では有りません。本物は勿論〇ですし、当時に作られたリプリントも〇です。最近に悪意で作った偽物は郵摸ではグレーゾーンになるのです。本物が切手なら、直近の偽造品はX、切手で無いのなら偽物は〇です。リプリントが〇の物もあくまで郵摸に於いての区分なので、真正品と偽って売れば、詐欺罪に問われます。郵摸とは比べ物にならない重罪なので絶対にやってはいけません。ヤマセミ80円他の現行切手の郵便使用目的の偽造品は、郵摸でもXですが有価証券偽造罪・偽造有価証券使用罪で摘発されます。郵摸とは比較にならない犯罪です。ヤマセミの使用済は微妙です。郵便法や有価証券偽造罪違反にはならないのですが、郵摸には該当の記載が有りません。△として置きましょう。

最重要のテーマに移ります。【東芝ゼロ円】金魚と弥勒です。絶対的に結論が出せる資料が有るのです。

郵郵管 第 464号 昭和41年10月20日

東京芝浦電気株式会社 機器事業部長 〇〇〇〇殿

郵政省郵務局長  △△△△

実験用模擬切手類の作成について

『昭和41年10月17日付けをもってお申し越しの現行切手・料金印面の図柄の一部を使用することにつきましては、当該模擬切手類の現品を必要な実用実験以外の用途に使用しないことを     条件として、承認いたします』 発行枚数は各3万枚です。

後日の流通の実態はさて置いて、マテリアルとしては、郵政大臣の許可のもとで作成されており郵摸第一条2項で記された紙片に該当いたします。郵摸では〇、リプリントはXで紛れは有りません。大蔵省印刷局にて作成され、ゲーベルグラビア印刷・スクリーン230線・PVA糊、シート構成は2x10面、1500シートで41年10月後半印刷です。

(因みに東芝及び日本電気の2本バー加刷に於いても、昭和42年3月6日から47年3月31日付で同様の許可書が発行され、作製されています。)

今回摘発された該当品には私も接点が有るのです。3年間でヤフオクで1000万以上荒稼ぎした、横浜の古物商(53)からは、弊社を含めて複数の同業者が売込みを受けています。袋単位で持っているから値段を付けろのオファーでした。各自理由は色々ですが、当然ながら取引は不成立です。幸運にも東芝ゼロ円を数袋バッタで手にした彼は大儲けをしたでしょうが、運悪く蹴躓いたという事でしょう。私とのビジネスの断り文句が、信頼感が構築できないので取引しないという捨てセリフだったことを忘れていません。被摘発者が私の知り合いなら、何としても助けに動きますが、この人物には関わるつもりは有りません。今年1月の摘発時にも【東芝ゼロ円】は有ったのですが、今回とは別個のリプリントだったと思います。これは郵摸Xなのです。警察が同じ物だと誤認するのはさもありなん、なのですが当事者は大変な思いをしたでしょう。私が持っている貴重な情報を持ってはいないでしょうから、証拠を示しての反論は困難だと思います。郵摸は最高刑が懲役1年なので、必要弁護事件では有りません。弁護士が付かずに法的措置が済んでしまう可能性も有るのです。法律を根拠に争えば絶対に無罪だし、普通の流れなら検事がストップを掛けて不起訴でしょうが、無知ゆえに略式起訴とか罰金での現品没収も有り得ます。法的に無知なら自身がその責を負うのです。

警察と報道機関が誤認するのは判りますが、腹が立つのはヤフオクです。東芝ゼロ円は最初の摘発から出品をシャットアウトしています。郵摸を根拠にすればこれは不当な扱いです。でも、その反面、郵摸でXな物を、平気で出品させているのです。判断基準に整合性が取れていないし、議論をすることも不可能です。ならば公権力動かしましょうか。パソコン作の紛い物は模造・リプリントと謳ったとしても、出品させるのは違法なのです。高輪警察署保安課がマジで動いてくれるなら、喜んで情報提供も物の判断の協力も致します。今回の件がきっかけになって、ヤフオクでの紛い物追放に繋がれば郵趣界にとってパッピーな結果になるのですが。ヤフオクはオークショニアでなく単なる寺銭稼ぎの場所貸しだと承知の上でちょっと誘って見ましょうか。