オークションの手数料の考察 消費税と諸般の事情

まだちょっと不透明なのですが、本年の10月から消費税率が10%に引き上げられます。郵便料金は確実に値上げされるのですが、この機会にオークションの手数料を考えて見たいと思います。単純に消費税率が8%から10%になるので、落札手数料も比例して2%値上げしますという訳には行きません。過去を振り返って、情報を精査してみます。数字を見やすくするために、落札値を1万円として論じます。

本邦で消費税が導入されたのは、1989年4月です。踵を接して、オークションでの手数料が変更になったと記憶しています。消費税率がゼロの時には、落札者手数料・出品者手数料共に10%でした。それに対して、3%になった際に落札者手数料が13%に引き上げられました。基本的な要件ですが、オークションハウスが税務申告する場合は、委託品に限ってですが、一般的には落札額+落札手数料を売上計上して、落札金額-出品手数料を仕入れ計上するのでなく、本体=ハンマープライスを外して、手数料部分のみを売り上げとしています。1万円の場合、落札手数料1300円+出品手数料1000円が売上です。計算式だけの問題なので、考え方としてはハンマープライス1万円を加えて、売上を12300円(或は11300円)、仕入を1万円(或は9000円)にしても残る額が2300円なのは同じ事ですが、消費税の課税区分(はっきり言えば簡易課税を使う為)で優遇措置を受ける為に、手数料のみを売り上げにしたのです。この事は何の問題でも有りません。

さて、消費税率0%時の、落札手数料10%・出品手数料10%と、3%時の落札13%・出品10%を分析いたします。この時点では、消費税は内税です。落札者から頂く1300円x3/103=37.86円に出品者からの1000円x3/103=29.12円を足して66.98円が消費税額です。実入りベースでは300円増えており、随分と便乗値上げをやっていると見えるのですが、それは正しくありません。消費税としての発生する納付額は67円ですが、業を為すために支払った消費税分が増えているので、この分も加えねばならないのです。差額の233円=2.33%が所謂、諸般の事情の金額です。フレキシブルな要素が多すぎるので、この計算式が正しいかどうかは容易には検証できません。消費税云々でなく、諸外国の同業者に比してオークション仲介業務としての手数料は安すぎたと思います。かかる手間に対しての単価の安さが問題なのです。

1997年4月に5%になりました。この時点で落札者手数料が15%・出品者手数料が10%になっています。3%が5%になったので、落札者からは1500円x5/105=71.43円、出品者からは1000円x5/105=47.61円、合わせて119.04円です。200円実入りが増えたのですが、消費税ベースでは52.06円増加、147.94円=1.48%が諸般の事情です。2014年4月に8%になり、16%・10%で今に至っています。1600円x8/108=118.52円、1000円x8/108=74.07円、合計で192.59円が消費税です。15%→16%で実入りの増加は100円です。比して消費税の増加は73.55円、諸般の事情は26.45円=0.26%まで落ちました。

消費税の賦課を外税にしてしまえば、計算式としては簡単です。但し、8%が10%になった時に、消費税率のみを動かしたなら、一般の事務経費に掛かる消費税の増額には対処できないのです。消費税を掛ける前の手数料も諸般の事情で値上げする必要が有るのです。遠くない将来にはインボイス方式になって、否応なしに消費税は外税に替わります。会計上は分かり易くなるのですが、お客さんにしてみれば、トータルの支払額が問題なので、内税でも外税でも、合計で安い方が良いのでしょう。オークショニアとしては、今回の場合は、商売的には消費税の増額と諸般の事情を勘案して、1%のアップが正しい計算式かも知れませんが、必ずしも数式に拘る必要も無いかと思っています。17%という奇数にすれば、50円に対しては50銭の数字が残るのです。切り上げか切り捨てか、1点毎の対応か、インボイス1枚での合算かを考えねばなりません。どうあがいても、きっちりしたゼロサムにはなりません。返品が起きた場合の計算が面倒になって、細かな端数が浮いてきます。50銭という微差ですが、それも結構なストレスなのです。個人的な考えですが、今回はちょっと頑張って据置にしようかと思っているのですが・・・。