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時系列

去年末に受け取った、日本フィラテリックセンターの第69回フロアオークション誌を見て、ショックを受けました。また、奴がやっている、性懲りもなく恥知らずに5か所に分けて「作ったエンタ」を出品している。一瞥して、有り得ない珍品が30点+、競れば1千万位の被害になると見えたのです。年末年始の休みが明けてすぐ、確か8日に大阪駅前第2ビルの日フィラの事務所に行きました。西岡さんと1時間ぐらい話をして、大雑把に事情を説明、該当の出品物を預かり、カラーコピーをとりました。写真無しの並び記事だけで感じた、嫌らしい違和感は、現品を個別に単独で見れば消えています。状態の良い珍品・希品が売り物としてそこにある、単品で見るならば全て理屈は合っている。余りにも珍品が不似合いな場所に並んでいるという根拠薄弱な状況証拠に頼らざるを得ない、論理的には否定しにくい現(うつつ)なのです。特定分野だけの、コレクターなら受け入れてしまうでしょう。夢に出てくる珍品でも、出現の可能性はあるのですから。でも、並べると違和感が強まります。画像の3点を見て下さい。全てアルゼンチン宛のカバー、大阪東26.9.28、SHIZUOKA5.12.51、SHIZUOKA28.5.52。タイプ文字のブレ・掠れ・ズレ・欠損が完全に一致しています。特徴から判断して、同じタイミングで3通の宛名を打っている。でも、差出人も、場所も、日付も違います。考えられる可能性は一つです。悪意の輩が、同じタイプで打った封筒に、切手を貼って、自分の意志で適当な郵便印に似せた偽印を押したことになるのです。このポイントは、河原井一彦君が下見だけで気づいていました。一瞥での確認は物凄く困難だと思うのですが、大した眼力です。彼の好みの分野だから分かるのでしょう。タイプの使いまわしのミスは、今までも、時々襤褸を出していた、あやつの大チョンボの一つでしょう。今回はこの証拠が有るので、オークショニアに強気で交渉できたのです。誰もが、薄うすは感じていたはず。でも、西岡さんのオークショニアとしてのスタンスは、首尾一貫しています。いくら私や他の人が警告しても、自分は知識が無いので、彼の出品物は、彼が作った偽物かどうかは分かりません。落とした人が、エクステンションを掛ければ、日本郵趣連合の鑑定委員会に出して、その結果に従います。それが自分のオークションのルールです。今までに、何度かこのケースが有ったけれど、偽物の結論には一度としてなっていないのです。今回もそのパターンでやるとの事でした。だから、私は条件を出したのです。情報に疎いビッダーで事情を知らない人がいる。私がチェックして、疑問のエンタをピックアップするので、それに関しては、エクステンションの要求がなくても、自動的に鑑定に出すようにすればどうでしょうか、という言い方です。それでOKになったので、日本郵趣連合の鑑定委員会に根回しをして、依頼が一杯来るので、頑張るようにと言いました。手ぐすね引いて待っていたはずですが、私以外からのクレームも多かったのでしょう。該当の出品者の出品物は全ロットが引きになりました。極有り触れた平凡品も、100万以上になるかもしれない大珍品も一緒にです。

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これで終われば、私とすれば、何をしたか分かりません。悪魔がゾンビのごとく、場所を違えて出てくるでしょう。ほとぼりが冷めたころを見計らってですが。1回のセールでの出品物WDでは、火をつけたものの、ボヤにもなっていないのです。煙はくすぶってはいるのですが円満解決にはなりません。頭の片隅にずっと残っていたのが、故丹下甲一氏の、郵趣研究の記事なのです。上梓される前にも分析のレポートを貰っていたし、説得力の有る提言なので、誰かが追ってくれると思ってました。この記事の時に彼に頼んだのは、1回限りの無料での研究所の好意での検証でなく、有料で良いので、継続して分析が出来る組織を教えてくれのリクエストでした。実際、彼の記事の末尾には載っています。民間検査会社・例:㈱ミツワフロンテック(大阪市北区)の名前が出ています。今回、ここにメールを送ったのですが、『けんもほろろ』、さすがの丹下もこの件は又聞きの情報を書いていたのです。ミツワ・・は検査依頼は全く受け付けておりません。この会社は販売代理店だったのです。もし機械本体を買うならば、で聞いたのですが、XRFは民間の門外漢の一企業では手に負えない、鉛で遮蔽した管理区域を作って、液体窒素で冷やして、検査技師がやらないとダメですよの返事です。別ルートで持っていた、私の情報とは齟齬が有るのです。ここは相手にせず、改めてその気になって、ネットで調べれば、結構有望なデータも見つかりました。島津製作所の1000万の機械は無理、オリックスの中古を探せば、お手頃の物の可能性も有りそうです。ただ、メーカーの保証が付かず、アフターサービスにも危惧が残ります。幾つかの代理店を調べて、有望な1社にメールを送ったら、速攻で動いてくれました。メールの10分後に電話が来ました。日フィラのオークションが終わって数日で連絡を取って、同じ週に先方が東京から機械を持参でデモに来て、こちらが要求する条件をやれる確認をとって、それに対応するアプリケーションを決めて仮契約、行政への手続きは、天満の労働基準監督署への届け出だけ、管理区域も液体窒素も鉛の壁も放射線技師の資格もいらないのです。データの出力には、エクセルとPHOTO-SHOPが必須なので、運用にはそれなりのテクニックはいるのですが、放射線には疎い、大学の先生でも機械自体は使えます。弊社のパソコンおたくでもデータは取れるのです。カバーで5か所を計るにしても、15分でチャートでの結論が出るのです。現品を持参してくれれば、その場での回答ができるのです。最速で機械を入れて貰ったのが3月18日、数回の微調整を経て想定以上に稼働しています。やってみて、トライアル・アンド・エラーで見つかる結論が有るのです。つくづく残念だったのが、丹下君に報告できなかったこと。落ち着いてからと思っていたのですが、まさかの事態が起きてしまいました。でも彼の鋭い発想力を基にした、遺志は引き継ぎます。方向性は見えていますから。

現時点でもXRFの分析結果を元に、特定人物が作ったものに限っては、完全に偽物の結論が出せると思います。一人の人物が世に出した、カバーからのみ検出でき、それ以外の出所の物からは、欠片も出て来ない元素があるのです。伝手をたどって調べたので、まぎれの要素の無い、出現時期が限定出来たのです。今までにも書いて来たのですが、元素番号22=Ti=チタンの詳細が分かりました。同じチタンでも性質によって、2つに別かれてしまいます。「金属チタン」と「酸化チタン」です。根っこは一緒でしょうが、商業化の段階で、まったく別個のものになるのです。扱っている企業も、業界団体も違うのです。私が知りたいのは、消印のインキの成分におけるチタンです。自然界の物のままでは使えませんから、それが何時から、実用に供されたか分かれば、不存在確定時期にそれが有れば、確実に偽造の証明になるのです。インキには、酸化チタンが使われます。飛行機とかは金属チタンです。論文を読んでも、自分の分野のことしか書かないし、素人相手の文章ではないので、随分解釈に手こずりました。金属チタンはTiで、(社)日本チタン協会様が業界団体、日本での工業用の量産は昭和23年ですが、インキに使われる可能性は殆どないそうです。酸化チタンの業界団体は(社)日本酸化チタン工業会様で、会員会社数は6社、ネットで調べたお馴染みの名前が並んでいます。分子の構造では、TiOかTiON、今の主流の塩素法での製造は1974年から、ただし硫酸法ではそれ以前から有って、日本で最初のメーカーの、チタン工業の設立が昭和11年6月、生産は早くて翌年、最速で商業化できたとしても昭和12年です。更に実際に、消印のインキに使われたのが何時からかが重要なファクターになるのです。一般的には、チタン白=酸化チタンは、黒インキに使うとして、その目的は調色か隠蔽(下地を隠す)のためだそうです。原料メーカーの持っている情報では、その利用法は聞いたことがないそうです。それは本物の郵便印の実例で追わないといけないでしょう。かなり遅いと思えます。だから、挙証義務を物凄く厳しく課されたとしても、昭和12年以前のカバーに、チタンが検出されれば、一発でアウトです。(一部の例外は既に紹介しております。)そして、現時点でのXRFによる分析で、Tiが出ているものは、一人の人物からもたらされた真正でないと疑問を持たれるマテリアルに限られ、その数倍の、真正なマテリアルからは、時代を問わず、一切出て来ていないのです。手元のデータですが、Ti出現マテリアルを21ロットを押さえました。その内訳は、MSAが6点、ヤフーのtomopu0527が4点、日フィラが4点、福丸及びプライベートのディールが7点、落札値又は相場で評価して総額で1500万ぐらいの被害額になってしまいます。本人が戯言で豪語していた、創るとするなら、エンタは1本で100万かなは大げさではないのです。

情報の公開の了承を得たものに限りますが、順次、具体的に詳しく説明していきます。2014年1月26日開催の、日本フィラテリックセンター65回フロアセールのLot649です。房1銭、旧小判黒1混貼 未発表の不統一 ◎相川/淡路国郵便局消→KG淡路由良、淡路相川在住の中村重次郎差出、由良港喜宝丸銀蔵宛てです。近接した出品ロットに、中村重次郎宛ての駄物が出ており、一連の連続便=コレスポンデンスと思われます。中村宛と中村発が一緒にある理由とすれば、船が出港での戻し便なら辻褄が合います。淡路相川は10年5月の開局、6月には上灘に改称、極めて短期間の使用例になります。手彫と旧小の同一額面異種貼、未発表の短期間使用の不統一、ルックスはいまいちですが、見事な珍品です。最低値15万円、そのままフロアで落札です。お買い得です。売りに出す場所を間違っているのです。◎不統一と、KG由良から、Tiが出ました。だから、この2印は偽造です。朱色の○相川からは、Hgが出て、墨筆書きからはTiは出ていません。この部分は、総合判断して、本物でしょう。理屈に合う、切手のない封筒を使っての偽カバーを作り、一連の蔵出しを装って出品したものと思われます。このやり方は、彼の得意技です。福丸の道具市に出た、木箱入りのカバー、竜48文単貼 西京検査済を含む、桜あたりのカバーの初出しロットというスタイルでの出品、数年前にどこかで見た記憶が有るのです。折あらば調べたいと思います。簡単に結論が出るでしょう。この消印は、科奴の最も数が多い仕事なので、押さえた数は多いし、朱色の干支印からもHgを調べられるのです。因みに、西岡さんがいうには、彼からの出品物は、送ってきた順番で掲載しており、かつてはいつも最終の出品者、ここ数回は、複数回で別れてきている。取引はすべて郵送、10年ぐらいは会っていない、たまには事務的な電話があるだけとのことでした。

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『スタンプショウ=ヒロシマ ’15 ドラフト ルール説明』

『スタンプショウ=ヒロシマ ’15 ドラフト ルール説明』

今年も6月27日(土)に、広島県立産業会館西館に弊社がブースを出展、会場にて、日本関連の郵趣品、200点を「ドラフトシステム」にて販売いたします。

(90%以上は、今回が初お目見えで、全て消費税込みの値段を明示した即売品です。)

販売は、直接会場にご来場の方に限ります。当日の10時10分頃から正午まで、エントリーを受付、エントリーシートにて、ご希望品を「指名」していただきます。

ま ず、エントリーの際に、抽選箱から、エントリーシート投票用紙を引いていただきます。「A~Z、あ~を」の記号の書いたがエントリーシート抽選箱に入って います。一つの記号に対し1~10の番号入り「A1、A2、・・・A10」(ご希望によりそれ以上も可)をお渡しします。展示しております200点の商品 の内、ご希望品ごとに1枚の用紙を使ってください、優先順位の高い物から若い番号にご記入下さい。投票締め切りは13時00分になります。

投 票を開き、各ロットごとに集計します。投票がお一人の場合は、無競争でその方にお買い求めいただけます。投票の順位(番号)は無関係です。もし、特定の ロットに複数の投票が入った場合は、①投票用紙の番号が若い方を優先します。1>2>3・・・>10になります。②同じ順位で複数の札が重複した場合は、 若い記号が優先です。A>B>C・・・・>あ・・・>をになります。

優先順位は記号が優先されますので、「A」を引いた方の1位は100%のパワーですが、「A」の2位よりも、「を」の1位の方が強いのです。他のメンバーの投票行動を読んで、賢く投票して下さい。

10時~13時00分まで下見可能です。

今 までの実績では、200点のエントリー品のうち、約半数が指名を受けており、上位指名はかなりの確率で重複します。1位~3位あたりは本筋から外した物の ほうが買える確率が高くなります。また、記号が遅い場合は1位チョイスでも安全ではありません。弊社は当ドラフト200点=即売品の抽選の結果には何らの 特別な意思も反映させませんので、是非、当日ご参加の上、運と頭を使ってチャレンジして下さい。残品は、投票後、発表の値段で先着順で販売いたします。

商品のお渡しは、14時30分より、行います。

ジャパン・スタンプ商会会員様は、現品先渡し、口座通し、後日送金にて結構です。

200点の画像は、準備でき次第順次、当ブログに掲載します。

2010年 夏

今回の私の動きの最大の動機になったきっかけは、故丹下甲一氏の存在です。2010年の8月か9月、松原市の故大西二郎氏宅を訪問しての帰り道、やたらと暑かった記憶が残ってます。日曜日の夕方だったと思います。突然、携帯に彼からの電話、興奮しきった口調で、「チタンが出た。これでかなり進められる。」だったと思うのです。氏の名実ともに最後の論文になった、郵趣研究の2011年の99号と100号の「科学的な分析による、偽造・変造カバー解明への試み」に詳しいレポートが載っているので、ぜひご一読願います。最初の検査は同年の5月か6月、赤外線反応を使って、朱印の水銀の有無を調べたい、水銀中毒での自主規制以前の、朱印には辰砂=水銀と硫黄の化合物が入っている、もし水銀反応が出なければ、使用年代で疑問が出るという発想でした。協力を頼まれたので、朱印が押されているカバーを数点提供しました。偽と分かっている物と、たまたま手元に来た疑問品ですが、見事に水銀反応は出なかったのです。朱印が有れば、それで分かります。でもその確率は高くない。彼のことだから、問題提起では終わりません。その後伝手をたどって動いたのでしょう。考古学の研究組織で、物の時代特定がやれる機械を持っている、確かめたいので、明治時代のカバーを、出来るだけたくさん貸してくれ、特に色んな偽物が欲しいというリクエストでした。正にXRFによる元素分析です。今となれば、コリメーター5mm、測定時間180秒は古いけど、分析能力は変わりません。でも、試料を持ち込んだ時点では、判断できる基礎データがないので、蛇が出るのか虫が出るのかは全く不明。明治のエンタの真偽というカテゴリーで、結論まで持って行った、研究所の先生が偉いのか、丹下が鋭いのか今となっては分かりません。

彼が物にした論文の結論では、①黒印で、日本で酸化チタンが抽出されていない19世紀のカバーに、Tiが有れば、それは偽物、但しTiが無くても本物とは限らない、②朱印で一応昭和30年頃以前の物として、Hgが検出出来なければ偽物、Hgが出ても、意図的に使った可能性も排除できず、真正とは断定できない・・です。着眼点は見事だけれど、ある意味、私が提供した試料がちょっと偏り過ぎていたし、何分1回だけの検証では、他の可能性を示す、異常データが出て来なかったのです。チタンの場合、インキに含まれるのは酸化チタンに限られます。金属チタンは無視して構わない。その成分が何時から日本で実用化されたがが、重要なので、今それを調べている真っ最中。話はそれるのですが、「佐伯佑三の雪景色」が偽造か否かで名誉棄損の裁判が起き、偽造の判断した、中島誠之助氏と二見書房が被告になっています。ポイントは、ルチル型チタン白が、佐伯がパリにいた時に現地に存在していたかの判断にかかってます。「雪景色」からTiが見つかったのは、まさにXRFでの分析によるのです。それだけでは無いかもしれませんが、商業的Ti不存在時期のTi存在を根拠に、偽物の判断をして訴えられるのでは、他人事ではないので、Tiの使用時期の確定を興味津々でウオッチしています。幾つかのしっかりした論文を読んだのですが、本邦での商業化は昭和12年を遡ることはないでしょう。竜から田沢までのカバーで、Ti出れば偽物です。機械を入れる際に代理店の担当者に、しつこく聞いたのです。誤読みの可能性と、検出精度についてです。誤読みはAs=ヒ素では、微量の場合、起きることが有る。土壌モードで、有害物質を探る場合は要注意、でも御社の場合は大丈夫でしょう。能力に関しては、ここ数年で、大学や研究所を中心に、300台ほど入れているけど、想定のデータが読めないという苦情は1件だけ、たぶん大丈夫でしょうという話でした。あくまで、現時点での結果ですが、弊社の場合は、読みたい元素はTiとHgだけと言って過言ではないのです。これはしっかり出ていますから、あとは誰がどういう風にチャートを判断するかということです。

丹下氏の出された結論の内、①にはちょっとした追加が必要です。弊社のデータ取りで、大正4年の本物の葉書にTiが出たのです。不存在時期にTiが出てしまいました。有り得ないデータなので、メーカーへの問い合わせを考えたのですが、弊社の分析担当の浅羽博が正解を見つけました。この葉書のポイントは、朱印に水銀が出るか否かのデータ取りのために、朱色を2か所読んだのです。Hgは1か所から出て、他は出ずですが、Tiが2か所から出たのです。何それで、いろいろ弄ってたら、どの箇所からもTiが出るのです。朱印からTiでなく、葉書からTiです。表も裏もです。それならば解決です。保存の際のビニールか、アルバム、他の絵葉書にくっついていた等の、大正4年の消印が原因で無い、ずっと後年の保存状態が原因でしょう。ひとつ勉強できました。だから、明治のエンタを見る場合も、消印だけでなく、複数の箇所を計って、消印からTiが出ても、他からは出ないことを確認しています。②の水銀はもっと多くの例外が出ています。偽カバーに昔の朱印押しというケースは無いのですが、本物でもHgが出て来ないケースも見られます。また、Hgの出現も、朱印だけでなく、竜の200文の印刷インキとか、場合によっては、黒の消印でも出ることがあるのです。私の手元にある、結論としてダメなカバーの朱印で、HgとTiが共に出た物もあるのです。この場合は、Tiが優先、Hgは朱印以外の混じりかなと思っています。ここらの想定外のデータは、機械が手元にあり、試料も時間も無制限に使える、標本の数も年代も幅広い、弊社だからでてくる現象ですが、今のところは、矛盾は十分にクリアできていると思います。例外としての、そのままでの放置では先には進めませんから。

2010年5月の後半、弊社のオークションの東京下見会で、一人の若いコレクターを捕まえました。大阪弁で言えば、「お前、あほちゃうか、ヤフーであんなもんを120万で買って!!」2008年夏頃に、突然現れた、父の収集品を出品します・・のtomopu0527、ある人物のにおいがプンプンしていました。お調子者の、yoshi・・・・が調べていて、妙齢のご婦人、お住まいは墨田区だったかな、不思議な大珍品が途切れなく出るので、話題沸騰、当然疑う人がいるので、質問欄には、偽物なら返品できますかの問い合わせが来ていました。答えはイエスなので、お兄ちゃんに言ったのです。鑑定に出してやるから、物を送れ。このボンボンは、自称プロ、集めているのは竜と飛信逓送、ヤフーの出品で荒稼ぎなので、高いものも買えるのです。2010年5月13日頃の締め切りの、「竜48文単貼 西京検査済 市内便」一瞥して、NG、鑑定も絶対にダメと思って、日本郵趣連合に送ったのです。5月31日付の請求書が現物とともにやって来ました。このカバーは真正です、鑑定料50000円、再審制度は無いので、黙って握りつぶして、従うしかありません。誰にも言えないのです。ところがもう一枚の鑑定書が有るのです。2010年10月17日付、切手の博物館、このカバーは偽物です。ただし貼付された竜48文Pos33真正です。5か月のタイムラグ、きっちりと時系列に書けないのですが、この現物が、丹下氏の記事、郵趣研究100号に正に出ています。私が見せたと書いてあるのでそうなのでしょう。博物館の鑑定に出して、丹下の最初の水銀鑑定に協力するという流れにたまたま乗ったのでしょうか。連合の鑑定結果を握り潰して、いらいらしながら待つ身の5か月は長かったのです。結論が出て、依頼人に送って、則返品、tomopu嬢は何も言わずに即返金してくれたそうです。私も、2か所の鑑定料を頂けて、ハッピーエンディングになりました。博物館の鑑定が終了した、2010年10月頃が、彼女の最後の出品になったのです。突然にヤフーから、取引停止の扱いです。データは今でも残っています。

このカバー、XRFには掛かっていません。西京郵便役所の干支印に水銀が無いことが鑑定の決め手の一つになったようです。もし今、機械に掛けたなら、西京検査済と箱場の〇丸からは、Tiが出るはずです。墨筆の宛名も後で書いた物でしょうが、これからは、Tiが出るか出無いかは、5分5分です。筆耕屋さんを何人か使っていて、特定の人物の仕事ではTiが出るのですが、違う筆跡の偽カバーからは出ないのです。消印は、依頼人本人が同じパターンで作業をするので、間違いなく足跡を残しています。

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プロローグ

XRF=蛍光X線分析装置による珍品カバーの真偽の判定、急スピードで進んでいます。確定的な結論に導くには、まだ幾つかの懸案は残るのですが、100点ほどの具体的なアイテムを分析することにより、出来ることが明瞭になり、方向性は、はっきりと見えてきました。快く試料を提供して下さった方々に感謝いたします。かなり控えめに見積もっても、総額で1億円は下らない詐欺事件ですが、責を負うべき人物には何らのペナルティーは課されておりません。そしてそれは今後も極めて困難だと推察されます。事を荒立てて、検証しても、金銭的に益を受ける物は居ず、数多くの方の財産権が棄損される可能性が強いのです。でも、事実を知り、不確定な疑いを白日の物に晒せる手段を得た以上、何もせずに悔いを末代に残すことは出来ません。時間をかけて詳細を報告いたしますが、検証を進めれば進めるほど、特定の人物による悪意が、巧妙かつ広範囲であることが明確になりました。そして現時点でも、弊社のXRFを用いることにより、真偽のみならず、如何にして作ったまでも、高確率で証明できるようになったのです。偽物を真正品の値段で買ったという、金銭的な被害を受けた数多くのコレクター以外にも、流通に携わった、私も含めたディーラーも、鑑定委員長の席にいた、故金井宏之氏、故澤護氏も完全に欺かれていたことが明瞭になる事実が判明しております。一流、著名のキャプションが付くコレクターで、全く被害を被っていない人は皆無だと思います。数多くの人は、ある種の茫洋とした疑いを持っていたのですが、悪意の輩は、それを超えて事を為していたのです。所有者の許可を得た物に限るのですが、現物を画像で示し、分析結果を添えて、説明していこうと思います。実際問題、疑うことは出来ても、肉眼・目視で100%見抜くことは誰も出来ませんでした。それが可能になったのです。XRFの機械は安くないし、弊社には金銭的なメリットを与えてくれないのですが、事実を知りたいという、好奇心を満たしてくれるくれる高揚感と、事実が判明した達成感で、もう十分に元は取れたと思います。

分析手法をごく一部開示いたします。現時点で確定している知識だけでも、元素番号22=Ti=チタンは、国内外の何れでも、昭和12年以前には商業化されていないことが確認できました。四日市市の石原産業の磯部薫氏が、情報をくれました。何時から、実用化されたか、更にインキにチタンブラックとして、白色顔料として使われたかを更に詰めようとしています。昭和30年か40年代までTi不使用≒不存在時期としてカバーできると思っています。XRFでは、Tiは、明瞭に分析できるので、Tiが存在しえない時期のカバー又は単片に、Tiが出てくれば、ほぼ確実に偽物と言い切ることが出来るのです。極僅かな例外への対処法もわかっておりますが、複雑になるのでここでは触れません。Tiを根拠にした分析は、私が今ターゲットにしている人物の悪事に関しては極めて有効ですが、明治時代に作られた、那覇ボタの真偽の判定は出来ません。その時点でTiが存在していないので、偽物にも現れてこないのです。それ以外にも、HgとZn等で、それなりの情報も取れるのですが、それは後日に回します。

追々、詳細をお見せできるのですが、大きく分類して、流通ルートでは3か所プラスに絞られます。1993年1月を幾分か遡って2002年までの、名古屋のMSAオークションの出品物、もっと具体的に書けば、編集者「水口正春」のクレジットでオークションが動いていた時代の少し前から、親会社の(株)服部商会が倒産して、このオークションが消滅するまでの期間。改めてオークション誌を今眺めれば、これもダメ、あれもダメと言い切れるものが数多く目に飛び込んできます。但し、この時点では、かなりの珍品でも、真正品と確認できたものが有り、どうでも良い、多くの格安品の本物に、真正品の高額品と、高額品のダメな物が混在しています。どういう基準を取るかによるのですが、高級品に限定しても、偽物の割合は、次の2件と比してならば、かなり下がるのです。この時は、混ぜて偽物の色を消すための真正品の高級品をかなり持っていたと思われます。あえて1点だけ記すならば、200文リタッチ貼の刈谷検査済=偽物と判明と、別の竜のカバーと並んでいた、青一貼の大溝検査済は、確実に本物である事の裏が取れました。後で書きますが、故丹下甲一氏が2010年にやった検証でも、真正になっていたのですが、今回私の尺度で再分析しても、全く同じ結果になりました。出何処と、出た時期が悪いから、全部ダメという言い方は、根拠のない無責任な妄言です。謹んで頂きたいと思います。

落札結果表を紐解けは、色々思い出してくるのです。私自身のアカウントでは、こんなオークションでは買いませんが、頼まれての代行ビッドが有るのです。お前に任せると言われても、買わなければ怒られるし、所詮はメールオークション、代行を頼むのは、明らかに論理矛盾なのです。私には神の眼力も特段の超能力は有りません。改めて、落札結果を見て、嫌な思いが読みがってきてしまいました。結果として、数百万のビッドをして、買えなくてギリギリセーフみたいなものが結構有るのです。頼まれればビッドはするのですが、メールの札を預けるオークションハウスとして、水口正春+服部清なら、当然の如くブレーキを踏みますから。変に信用されるのも結構辛いものが有るのです。

MSAが無くなって、どのぐらい経過したか分かりませんが、ヤフーで、絶対に水口の出品と分かる、一連の珍品カバーが出て来ました。2010年の前後の数年間、ヤフーのIDは、お馴染みのtomopu 0527です。どういう経緯か分かりませんが、今は利用制限扱いになっていると思います。父親のコレクションを出品しますとの触れ込みですが、漏れ聞くところでは、東京在住の妙齢の女性で、水口とは血縁関係はないそうです。活動期間は数年間ですが、50~60ロットの出品に、ギョッとするものが数点、@100万円のカバーは、高確率で作り物だと思えます。めくら千人・めあき千人ですが、皆さん、気が付くのが遅すぎます。ここでは、私は物は買ってはいないのですが、出しゃばって、今日に続く水口の商売の邪魔をしたのです。次回に書きましょう。ヤフーと並行だったのでしょうか、今年の1月のセールで、全品が出品者引きになったのが、日本フィラテリックセンターのフロアオークションの出品です。10年ぐらいのスパンだと思います。初期は本物も結構混ざっていたと思うのですが、ゴミの本物に、珍品の偽が混じっていただけで、分母を珍品の高級品に限定すれば、分子の高級品の偽物との日率は、限りなく1に近づいてしまうと思います。言葉を変えれば、最近になるほど、混ぜるべき本物の高級品が枯渇して来て、日フィラのフロアの水口の出品と思しき高級品は、全部ダメ。手彫や小判だけでなく、大竜と旧小判のコンビネーションも、創始75年の単貼適正や、ゼロ付立山の第4・第5宛、5国の図入り年賀まで作っていると思います。

プロローグはここらあたりにして、次回からは、現物をお見せいたしましょう。一瞥では分かりません。私が悪意を剥き出しにして、疑ってかかって、「ダメの鑑定を出してください」とリクエストした物で、澤護氏が、自分が欲しいか欲しくないかで判断して、真正の鑑定を出した物がかなり手元に来ています。データ上の類似とか、当時の文章の言い回しとか、言われればご尤も、と引き下がるしかないのですが、水口正春への評価とすれば、私の直感が正鵠を得ていたと自負しています。ちょっとショックというか、吃驚カバーが続きます。覚悟してご覧ください。

 

 

郵趣研究124号

竜1銭コンビネーションカバーにつき、早く書いて宣伝しろとの某所からご連絡を頂きました。6月15日発行の郵趣研究124号に、松本純一氏が3ページの記事を書かれるとのことです。123号での出現の経緯のマテリアルの、デールとして成功裏に完了した・・との論文になるはずです。因みに、私はその記事をヒントと言えども一切目にしておりません。『正解』が遠からず出ることが分かっていて、「推論」を書くのは分が悪いのですが、その前提でこそ書けるネタが有るのです。20~30年前からのトピックを幾つか入れてお話を作ってみましょうか。

今回のセールの結果は、Webbに出ています。竜1銭のコンビカバーは€42000、デグロンは€6200~8200、手数料を入れて€@1.00=160円ぐらいです。随分と良い値段だと思います。セールは「フロア」で行われたのですが、本来今のフランスでは不可能な筈なのです。システムが変わったとは聞いていません。ここで思い出すのは、10数年前に、在仏の中国人から貰った電話です。三五六の仏船内印消、実逓がパリのオークションに出ている、幾らで買えば良いのか教えてくれでした。何処のメールオークション?と聞いたら、弁護士事務所が主催のフロアセール、貴方(私のこと)の知らないとこ、と言われました。相手がKong Wen-Sunなのでごちゃごちゃは一切不要。電話だけで全てがけりがつく、要は値段を決めさえすれば良いのです。結局200~250万なら買うよのオファーをして、送られて来て、プラーベートで納めて、それでビジネスは完了です。彼がいくらで買ったかは聞いてません。セールのやり方は、今回のFerriも同じような形式でのフロアセールと思えるのです。でも、Kongさんは最早鬼籍に入っているので今回は連絡を取ってません。

竜のカバー、邦貨では700万位になるのです。結果が出てのマテリアルの評価ではなく、問い合わせを貰った2人の国際展LGレベルのコレクターには、極めてネガティブなアドバイスをしたのです。多分2人共、ビッドはしていないと思います。松本さんのご判断は、竜切手を貼った唯一の外郵カバー、日本切手を貼った郵便物として、最初期の外郵便です。外見上の判断ではその通りだと思います。私に意見を求めた2人も同じ視点でのそれでした。でも、一流の伝統郵趣コレクターが郵便史的な文脈でコレクションに入れる場合は、十分条件が満たされて無いと思うのです。竜1銭の位置づけとしては、100人中98人は同じ解釈をすると思います。真正品の前提で考えて、東京~在日横浜仏局への国内料金=1銭、明治5年6月末の使用例、青の角検ですし、何の矛盾も有りません。但し、日本で郵便制度が出来ての2年目、このカバーを日本の郵便制度でフランス宛の料金で分析すれば、正規の手続きとすれば、駅逓寮あて差出手続き願い、2重封筒での仏宛なら32銭料金になるはずです。後のデグロンカバーは、日本国内料金+在日仏局のフランス宛料金を1通で片づけたのです。日本郵便扱いの煩雑さを省き、経済的な面でも在日仏軍大尉を含む陸軍顧問団への便宜供与がなされた実例です。日本郵便の立場では、有り得ないシステムでしょうが、力関係から受け入れざるを得ず、また実例が100点以上存在すれば、もはやその存在を丸ごと否定すれば笑われます。だから今回のカバーは、「推測」としては、デグロンカバーのフォアランナーの位置づけになると思います。但し、この条件でマテリアルを見ても、客観的に証明できる要素が決定的に欠けています。東京郵便役所の干支印が無く、それ以上に、東京郵便役所からフランス横浜局宛に送られたエビデンスが無いのです。封筒に書き込みが有るか、付箋(その跡)も有りません。このマテリアルが単独で、E-Bayに出たとしての評価がどうなるかを想像してほしいのです。変造品の証拠も有りません。竜1銭が貼られる、有り得る解釈も成り立ちます。でも、パリで他のコレスポンデンスと一緒に見つかったという「事実」がこのカバーが「真正」であるという「推測」に大きな影響を与えています。

松本さんは、「善意のムッシュー」なので、123号の文面から判断して、情報提供者(もしかすれば発見者)を毛ほども疑われて無いと思います。盲目的と言えるほどに信用されています。誤解を恐れずに書くならば、Andre Rolandの名前には強烈なインパクトが有るのです。特に関西のベテラン収集家は、彼に嫌悪感を示します。40年ぐらい前でしょうか、フランス宛の旧小判高額や桜切手を貼ったカバーが、この人物により日本に持ち込まれました。あくまで、又聞きの噂なのですが、少なからず変造品が含まれていたのです。パリの着印の青印・朱印が、切手にタイしているのですが、それが真正で無いのではという話になっています。今も2次流通~3次流通でその流れのカバーが出てくるのですが、マーケットではポジティブには受け入れられません。私自身は、彼に悪い印象は持っていません。付き合いも非常に薄いのです。1980年頃のパリ国際切手展だっと思います。フルウチ・キタゾノ・ヤマザキ・ゴトウさんだったかな、向うで会った日本のディーラーと食事に行きました。パリなので話題の中心は、何といっても、ローランの悪口です。皆で大声で、しゃべっていたら、にっこり笑って近づいてくる2人連れ、アンドレ・ローランその人です。お連れは、もしかして、江戸京子(バイオリニストで、小澤征爾の最初の妻)と思ったら、はるかにお若い美人の日本人、切手の話でなく、芸術論で花を咲かせました。その2年後ぐらいかな、突然ローランから、自宅に電話を貰ったのです。パリのデマレ(Demarest)のロット、談合しようというオファーでした。誰に私の電話番号を聞いたか知りません。でも、物にはきっちり、心当たりが有ったのです。500文2版の赤坂検査済、風船12銭のKB2遠州二俣、他にも中々のコレクションが、パリのメールオークションに出ていたのです。この時点で、日本人で強いビッドが出来るのは私だけ、と読んだのでしょう。こちらの返事は、2人だけでは意味がない。Kongとフランス人のHN、パスカルをどうするのと聞きました。一切をローランがアレンジして、ロットは私の手元に来ています。ディールをして何の問題も無かったのです。でも、パリのオークションでのビジネスはこの1回限りです。その後のお付き合いも有りません。

竜1銭カバーを聞いてきた人には、ローランがらみの話はしていません。ただ、絶対に安くないし、コレクションに使う場合は、理由が明瞭に「書けないとダメ」という理由で止めたのです。このカバー、真正か偽かどちらでしょうか。「ムッシュー」の根拠は、突き詰めれば、ローランは絶対に信用できる、彼が言うように、初な出現のロットに有った1通だから、誰も手を加えてないので「真正」に違いないということでしょう。真偽の検証の必要性を認めておられないと読みました。でも、客観的に評価する場合、その感情は排除せねばなりません。マテリアルとしての要素の不足はやむを得ないのです。その条件で、真偽の判断も出来るかも知れません。写真で見たところ、強靭紙の可能性も有ると思います。それならば、まずOK、それ以上に、消印を弊社のXRFで見てみたいのです。切手上の元素・封筒部分のそれが完全に一致、他の竜1銭の角検青印と比較して、朱印のPDを調べれば、「推測」以上の結果が得られるかも知れません。もし日本の方が落したならば、是非声を掛けて頂きたいと思います。

 

 

速報です。

パリのDrouot Live.com, Ferri & Associesの竜1銭貼コンビネーションカバー、5月19日にセールが終了、42000ユーロでのハンマーです。手数料は22%とのこと、邦貨では700万円位になります。現時点で落札者は不明、少なくとも、弊社で把握できている方では有りません。後日続報をお知らせできるかと思います。

元素番号22 Ti チタン

XRFを説明する為に画像やチャートを見せるなら、相当なページ数が必要です。本来は、いろはから説明をしたいのですが、今回はそこは省いて、現時点でハッキリ分かっていて、将来も否定されない結論から書いていきましょう。丹下氏の郵趣研究99-100号の記事を後追いで検証することになるのですが、彼は一度だけの調査で貴重な問題提起をしてくれています。機械が私の手元に来て2カ月です。時間の制限もなく、慎重に試料を調べているのですが、見事なまでに彼の推測は当たっています。ピンポイントでターゲットを絞りましょう。試料の出所は、京都のMが作った珍品類、見事な出来栄えのカバーです。名古屋のMSA・ヤフーのtomopu・・・、日本フィラテリックセンター、Mからプライベートで入手した某業者から流れた物で、古くは30年ぐらい前から、今年の1月の日フィラへの戦後カバーの出品物と続きます。完全に一つのグループだと見ています。かつてから、余りにも多数の珍品・希品が一人の人物の手から解き放たれるのに違和感を感じた人は、私以外にも数多くいたはずです。でも、それは疑いと推測に過ぎず、事実の証明は不可能でした。彼の扱った珍品でも、全てが偽物でないことを私も知っていたのです。親しく付き合っている、それなりの知識のある知人とよく話をしていました。「Mが死んだ後で良い、どのカバーが本物で、どれが駄目かを書き遺してくれてないかな」。

それが現実になったのです。Mは健在で、今日も懲りずにカバーを作っていたとしても、です。故丹下氏の記事の2つの元素、Ti=チタンと、Hg=水銀が見事に真実を語っています。①のカバーは、問題のない真正カバーです。aは東京郵便役所の干支印、bは朱筆書き、cdは角検印、eは朱色の四日市の角印の、それぞれの元素分析結果です。残念ながら、軽い元素、6番のC=炭素、7番のN=窒素等は読めません。これは全ての試料で読めないので、読める元素での検証になるのです。ポイントをかいつまんで言えば、照射範囲=コリメーターは4ミリの円、厚みは上から50µを分析しています。K=カリウム、Ca=カルシウムは印刷用紙の属します。肝心の真正印の黒印には、V・Fe・Nb・Sb等が検出出来るです。Ti=チタンは全く出て来ません。朱印と朱消しには、Hgが必ず入っています。偽物にはそれが有りません。年代を区切って明治初期~昭和30年頃までの50通、消印数では200~300個を調べましたが、Tiに関しては、検出できたものは皆無でした。Hgは、僅かな例外も有るのですが、郵便局の明治期の朱色のそれからは100%検出できています。

XRF1

②は、協力者のご厚意でお借りした、Mの2年ほど前の製品です。出品物として来たのですが、ストップを掛けました。余りにもMの臭いがしたのです。aは切手上の消印、bは封筒上の抹消印、cは東京郵便役所の干支印です。何れも見事にTi=チタンが検出できました。ちなみに仕切印と墨筆にはTiは出てきていません。本物のスタンプレスカバーに細工したか、消印と違う作りかのどちらかです。①と②の2点での比較ならば、データとすれば不十分です。でも、竜から関東神宮、創始75年までの、Mが出所のカバーを、3人の有力なコレクターに声を掛けて、合わせて10点、消印数で35個検証して、100%の確率でTiが出ることが確認できています。具体的なマテリアルを示すことの了承は貰ってないのですが、何れも元の出所がMであることの確認はとっています。チャートとしては、同じ性質の物なので、冗漫になるだけなので割愛しています。これだけの標本数が有れば、たまたまとか、例外でなく、Mが作ったカバーの黒印にはTiが入っていて、その対極の真正の黒印にはTiは含まれていないと結論付けて良いと思います。Hgに関しては、データ数が20~30通と少ないし、例外を理論で消さないといけないので、朱色にHgが含まれて無いカバーでも、まだ強い疑いを禁じ得ないという表現に留めます。最後の単片③は、洋紙2銭ソの不統一印、かつてMSAの表紙を飾った物ですが、Mの出品と思われ、Tiが入っていることから判断して、偽印と思われます。

XRF2

XRF3

まだまだ、精査が必要ですが、Mが出所と思しきカバー、不本意でしょうが、お手元にあるならば、是非分析させていただきたいと思います。分析結果でTiが入っているか否かを調べてみませんか。送料さえご負担いただければ費用は一切無料です。また、弊社のデータベースには残しますが、ご意志に反してデータを公開いたしません。機械は動き出したばかりであり、データの集積は極めて不十分です。現時点で出来るのは、調べたい試料と、同じような性質の、明らかな真正品を同じタイミングで、並べて比較したいのです。TiやHg以外にも、キーになる元素が出てくるかも知れません。この条件がクリアできるのなら、Mのカバーでなく、他の物でも機械で検査したいと思います。取りあえずは、結論を出すよりも、誤差の範囲を広く見て、判断基準の一つになれば良いと思います。特に、鑑定委員会が望まれるなら、全て無料で協力いたします。照射は50秒で完全に非破壊、データ出力に1件5分+、カバーで5か所見るならば30分ぐらいで作業できますから、興味ある方は是非お問い合わせください。もう30年は経ったと思います。「全日本切手交換会」「MSA」の表紙を飾った極美の珍消印、機械の目で見てみませんか。疑念が消えて、大手を振ってお天道様の元を歩けるものもあるはずです。

竜1銭コンビネーション

郵趣研究123号の巻頭に興味深い記事が出ています。複数の方からお問い合わせを頂いているので、タイミングを計って情報を公開していきます。マテリアルの出現の情報としては、松本純一さんの記事は秀逸です。でも、興味が有って買いたいと思っても、どうやれば買えるのかが全く分からないのです。記事に出た、Richard Menozziは、フランス専門の切手商で、オークションもやっています。フランスの切手商組合の会員ですが、私も含めて、そのカタログは誰も見たことが有りません。有名なオークションエージェントのネットワークにも引っかかって来ないのです。IFSDAの情報では、1 Villa du Sahel, F-75012, Paris が住所です。ホームページは持っていません。

フランスのオークションの場合、ドゴールから、ジスカール・デスタンを経て、ミッテランが大統領になった頃から、我々がタッチできる形での、フロアオークションは出来なくなりました。又聞きですが、弁護士事務所が絡めば出来るという話です。だから、現状では、ルメーや、ベア、ロビノーと言った、私がカタログを手にできるオークションハウスはメールセール専門になっています。今回の郵趣研究の記事のセールは、5月19日14時にDrouot-Richelieu,11号での開催とのことです。下見は前日の11時から18時です。ただ、私のフランス語の能力では、的確に読み切れないのですが、主催者がMenozziか否かも定かではありません。オークション誌の書き方では、フロアセールらしいのですが、セール自体が切手のみでなく、オートグラフとか、古書と一緒くたになっています。切手商のオークションが、フロアが駄目ということを考えれば、テクニカルの理由で、フロアセールをやれる組織に運営を投げているのかも知れません。

興味をお持ちの方の為に、Webbでのアクセスをお教えいたしましょう。FERRI & Associes、53, rue Vivienne, F-75002 Parisのホームページでカタログが見られます。www.ferri-drouot.comです。5月19日のカタログを叩いて、ページをめくってください。Lot1~14です。因みに、竜のカバーはLot2で参考値は€20000~25000、安くても320万円です。Lot3は、和桜1銭のデグロンで€6000~7000、さすがアンドレ・ローランという値付けです。ルメーやデマレみたいな、知っているオークションハウスなら、ビッドの可能性も有るのですが、今回のやり方なら、私はアクションを起こしません。超強力な国内と海外のお二人のビッダーからの前のめりの問い合わせも頂いたのですが、事情を説明して、お手伝いは辞退いたしました。結果が出た後なら、もっと詳しく書けるネタも有るのですが、セールの邪魔をするのは本意では有りません。5月19日のセール終了後に事情が許せば書いてみたいと思います。

弊社の仕事ですが、オークション誌は明日14日の発送です。東京下見会は24日(日)、セールは月末です。3月18日に導入した『XRF』=蛍光X線分析装置、順調に稼働しており、幾つかの事実が明瞭に見えて来ているのです。MSA・tomopu0526・日本フィラテリックセンター・人を介したプライベートセールで、完全に出所が同じ物=京都のMのカバーと単片の、有ってはいけない消印の成分が判明しています。竜から関東神宮、創始75年まで同じ元素が出て来ました。本物には全くないのです。幾ら出来が良くても、機械の目はごまかせないのです。MSAに出ていた、洋紙2銭ソの篆書不統一「石見浅利」の単片でも同じ成分が読めました。言葉だけでなく、画像とチャートで示さないとなりません。近日中にお見せすべく準備中です。公の利益のためにやるべきことを考えています。そろそろ動き出して不都合では出ない程度にはデータが整理できつつ有るのです。