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訃報です。

つい1週間前の大橋武彦氏に続いて、たった今ショックな情報に接しました。
丹下甲一氏、4月6日、午後7時、膵臓癌で加療中の都内の病院で亡くなりました。通夜は14日午後6時から、告別式は15日午前10時半から、築地本願寺で執り行われます。彼の収歴は約40年とのことですが、私はそのすべての期間を共有してきました。数年前に、郵趣界からは距離を置き、表に出ての活動はされていませんでした。今となっては、彼の遺筆の論文が、郵趣研究2011年の「科学的な分析による・変造カバー解明への試み」です。やっと緒について、これから本格的に動こうとしている、XRFによる元素分析を用いた、偽造品の摘発のきっかけを与えてくれた彼の示唆が、まさに名実ともにレガシー=遺産になってしまいました。最後の手紙のやり取りは、今年の1月にしたのですが、鳩居堂の便箋に墨筆書き、体調に関しては毛ほども触れていませんでした。売った、買ったでの思い出は、刹那に完結するのですが、それ以外の部分での付き合いが思い出深いのです。XRFに関しては彼には何の報告も出来なかったことが今更ながら悔やまれます。この件に関しては、彼は戦友でした。でももう共に戦うことは出来ません。ならばひとりで完結させましょう。
XRFは、データの集積中です。中国の赤猿は、本物と偽物で、印刷用紙の違いが顕著に見つかっています。本物は何枚調べても、極めて近いデータが出ると思います。比較するための複数の偽物のデータが欲しいのです。ラベル1枚が18万円になりますから、何パターンも有るのです。本命の日本の方は、発表するには時期尚早です。HgとTiは予想通りなのですが、他の元素でも幾つかヒントも見つかっています。データを積み上げてからポイントを絞って報告します。今はまだまだ、無駄だとわかっても下準備が必要な状況です。

XRF導入しました。

今年の年初に思い立って検討を重ねていた蛍光X線分析装置=XRFを昨日付で弊社に導入いたしました。その目的は、偏に、郵趣品の偽物の摘発です。調査したい試料に0.15μシーベルト/hの弱い放射線を当て、その反射を測定して、元素の濃度を調べるのです。消印・糊・加刷が対象です。一般的には真正品が世に出てから、偽物が作られるまでには、ほぼ100年ほどのタイムラグが有るため、両者の元素濃度の差異を調べれば、真偽の判定が出来ると考えています。このアイデアは、2011年に丹下甲一氏が1度だけ行い、そのレポートが郵趣研究に論文として上梓されております。その際の試料は、明治初年の手彫切手のカバーに特化し、社会的な要因として、当時の真正カバーの朱印にはHg(水銀)が含まれており、墨や黒印にはTi(チタン)が含まれていないという事実が一つの結論として示唆されております。目からうろこの検証でしたが、コスト的にも負担が重く、分析可能な機関も容易に探せないため、誰も後追いをやっていませんでした。Hgなり、Tiなりの有無を調べるだけならば、地方公共団体の分析機関が1検体で1万円程度のコストでやってくれます。そのサービスは、元素分析のチャートの作成に限られ、真偽の結論は依頼者が判断するしか有りません。判断に至るテストを行い、データベースを作ることは不可能です。ピンポイントの分析なら精度は落ちますし、また万能では有りません。XRFそのものを、手元に置いて、試行錯誤を繰り返しながら、数百~数千のデータを取って初めて、事実を世に問うことが出来るのです。ただ、正しい目的が有ったとしても、少し前までは、島津製作所の謳い文句で、1000万円を切る低価格を実現、という表現がされていたレベルですし、放射能漏れを防ぐために、管理区域に鉛で囲いを作り、液体窒素で冷やす必要が有るということが言われていました。でも、探せば何とかなるもので、定価よりも一ケタ安いオリックスリースの中古品や、2ケタ安いヤフーオクのsold as isの鉄の箱でなく、2015年モデルの新品で、メーカーと代理店の保証付の機械が買える状況になっていたのです。労働基準監督署への届けは要りますが、運用には放射線技師の資格もいらないのです。試料に対しては、非破壊ですし、何らの影響も残りません。
数回のデモをやって、コリメーター4ミリの円、元素番号⒒~92までが読めることが確認できました。今は手探りですし、やってみて初めて必要なポイントが分かるというレベルです。機械メーカーとしては、弊社の使い方に合わせた設定は当然してくれていないのですが、「鉱石」の分析と同じアプリケーションです。検出可能な元素の濃淡を数字で示すことになるのです。「金属・合金」モードなら、読んだ元素の含有量を合計100で出せるのです。パンダ金貨24K=金100%、クルーガー金貨22K=金90%、18k=金75%と出ることが確認できています。このままのアプリで、インゴットや、古銭の真偽の見極めなら完璧に出来るはずです。切手の場合は、特に消印の炭素=元素番号6が軽すぎて読めないし、元素数もかなり多いため、ボタン一つで結論を出せる物では有りません。でも、機械は手元に来ており、エクセルで数値を出す準備も完了しています。いろいろやってみて、目途がついた時点で、より詳しくご報告いたします。期待してお待ちください。