2011年5月21日(土)

『2匹のうなぎ』
昭和切手の括りで、1次昭和の活版=凸版2タイプは明瞭に時期で分かれます。児玉氏の「乃木2銭」の大著では中々立派に解説されていますが、2タイプ間での切り替わりは金剛山7銭と飛行機12銭でなく、10円梅花と金剛山7銭の間に変わってます。また、この本の解説の図の内、「ん」の字体はいけません。跳ねの角度が一緒です。同一字体を並べており、最も分かりやすいポイントが「ん」のちがいだけにこの手抜きは残念です。ゴム印手押しの2タイプは、時期のみが異種の原因でなく、説得力のある理由は見つかっていません。このタイプが最初に出たときは、雑な作りゆえに疑われ、オークションでは精精、「as is」で売られていたような扱いでした。でも、菊やステーショナリーの「見本」の朱色が、台湾使用と解明されたように、検証を重ねればマテリアルが持つ素性が明瞭になってくるのです。全てのケースに於いて、強い先入観に拘って、新たな事実を疑って排除し、頭ごなしに否定するのは正しい収集態度とは思いません。
2昭~3昭の版組みの確定にはマテリアルの少なさから、相当な努力が必要です。でも、私が示唆した事実を広げれば関連分野で遊べる要素が見つかるでしょう。同じ時代の記念切手の「みほん」はどうでしょうか。これも時期できっちり分かれます。1次昭和の2タイプのどちらかのみが存在する時代の記念・特殊切手の場合は、1種集めて「みほん」はコンプリです。でも、異タイプが同一シートに存在する時代の物はどうでしょうか。手元の数枚を見ても、靖国75年は2枚で2タイプありますし、大東亜は、2銭・5銭でタイプが違うものがあります。さらには、戦争を挟んだ戦後はどうなっているのでしょうか。100面刷、記念切手、20年代の連刷の小型シート・・、雑に見ても、異なるタイプが存在します。字は崩れて来ていますが、基本的には戦前活字の流用です。さあ、何時までそれが続くのでしょう。山本さんが、「きじ航空」で調べたところ、ほぼ5タイプの存在が見つかってます。残念ながら、航空切手のコレクターでこのテーマで収集されている人は存じ上げません。戦後でも20年の前半は、タイプ違いが存在することを知った上で集めるなら、かなりの遊びが出来ると思います。産業あたりまで十分に可能性はあるでしょう。
私の経験ですが、「うなぎ」=東京切手展のみほん、極少数の製作のはずが、近年束で見つかった・・物なのですが、オークションに出品した際、エクステンション=鑑定依頼が有ったのです。活版のプレス跡も明瞭で、何の為の鑑定?が率直な印象でした。でも、結果は意外にも、「意見なし」=資料不足ゆえに判断できない・・になりました。もう少し詳しく言えば、鑑定する人の判断基準のサンプルは、関西の某郵便局ルートで貰った物で、郵政当局が出所の、間違なく本物、それと並べて比較したら、タイプが違っていた。製作数が極少数の物での異タイプの存在は疑問、字体の違い以外のトータルの印象は悪くない。だから結論としては「意見なし」になりました。鑑定結果には依頼者は対応策は取れないのですが、今回の私の記事を梃子にして、みほんのステータスを熟考すれば、うなぎが2匹で字体が違っていても問題なくOKだし、シートの中の単片15枚で違うタイプの可能性すら大きいのです。印刷のプレス跡には注意しても、誰も、字体は意識してなかったと思います。該当の人は今も元気な弊社のお客なので、今度説明して安心させてあげられます。
「みほんの偽物」は、藤田卯三郎氏が10年ほど前に一生懸命警告してくれていた、2次新昭和~産業の数種にある、東南アジア製?ぐらいしか思い浮かびません。字体が全く違っているので、比較することを前提で検証すれば間違う恐れはありません。今や値段的にも本物よりも高いし、近頃は本当に見なくなりました。私も何枚か持っているのですが、残念ながら今回は直ぐには出てきませんでした。
あと1回、書くべきテーマが有りました。「万国郵便連合・アフリカ局」の「みほん」、結構自信があるし、ハードに闘ったマテリアルなので次回、最後に纏めます。