2009年8月7日(金)

『完全木綿紙の確認法』 

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「三山紙」の方は、ウッドワードの分類のみが唯一の基準なので、今となっては緑1銭のKG備中三山の消印を持つ物以外は推測以上の説得力がないのかも知れません。それを承知でコレクター自身が基準を定めて分類すれば良いのでしょう。オークションの記事の表現は、弊社では100%私の基準で責任を持ってやっています。出品者の分類記事を盲目的に書き写すことはやりません。例えば、ここ数回ハイグレードの出品が続いているU小判のマテリアルには、これでもかと言うほどの珍品が続いてます。藁紙や白紙のコンパウンド目打は出たとこ勝負で、買ったもの勝ちなのです。今ほどの入手機会は今後も無いかもしれません。今回のセールでも、「完全木綿紙」の表現をしたものがかなり有るのですが、これも今だからという特殊な状況でも有るのです。そして、この表現は私の場合は、旧小判茶1銭・緑4銭の木綿粗紙と同一の紙質に限って使ってます。かなりのハードルの高さです。木綿という表現で、対極に位置する藁混木綿は、むしろ否定的に書いてます。分類上は木綿紙だけれど、典型的な粗紙でない場合は「完全」の文字は使いません。この区別は下見で比較してくれれば簡単に判るはずです。
オフカバーなら、肉眼で容易に区別が出来るのですが、カバーの場合はどうでしょうか。今回の場合、出品者がその表現をしてきて、やり取りの末、全てこちらに任せるのでヨキニハカラエ、になったのです。この条件なら、客観的に証明できる手段が有るのです。水につけて剥がしてしまえば誰でも判る、ただその手段は一般的には取れません。ましてやオークションへの出品物なら、手を加えることはご法度です。ただ、出品者の了承が有れば、それに近い状況は作れるのです。
LINDNERの郵趣品にStampRemover という溶液が有って、カバーの状態で、貼られた切手に刷毛で液を塗れば数十秒で糊を残したままで、液を塗った部分だけ封から浮かして紙質を裏から見ることが出来るのです。一部を封にくっつけて・・というのは単に拘り以上の意味も無く、完全に剥がすことも勿論出来ます。ただ、一度剥がして、元の通りに貼りなおすというのは、昔から結構抵抗があるのです。完全に剥がすか否かは些事ですが、その行為をやったことによって正しい分類が出来ても、品物に悪しき影響が残っては駄目なのです。大昔は竜の無地・縞が重要だったこともあり、かなりのケースで水で剥がして調べたことも有ったと聞いています。でも、今はその分類は無意味だし、竜銭の紙は表でわかるので剥がすことは有りません。だから、剥がすか浮かして紙質を見るのは、旧小判10銭の薄紙、U小判の木綿紙、産業か透かしなしかの区別が困難なケースに限られます。旧小判でも3銭。4銭は表で容易に判りますから液を使うことは有りません。
20年ほど前に買った溶液を今も使っているのですが、実際問題では、年に数回自分のカバーを調べるだけなので、殆ど減らずに残ってますし、全く劣化もしてません。揮発性ではないので、塗って浮かす時点で液が多少ははみ出すのですが、和紙の封筒は全く問題は無く、洋封筒でも普通の用紙ならば乾けば痕跡は残りません。ただ、最近の表面につるつる加工を施した絵葉書の場合は、引きつりあとが残るかもしれません。
郵趣目的に用品メーカーが作ったので、「ハガロン」とは比較にならない位に有用に使えてます。オークションへの出品物に関しては、出品者の依頼を受けての作業に限ってますし、表面目視でかなりの確度も保てるのですが、切手展の作品に使う場合はより厳格な調査が必要になるし、10銭薄紙カバーを鑑定に依頼した際には半分浮かして見やすくして出したのです。そのリクエストをされましたから。
手元にある20年前のLINDNERの画像を出しておきましょう。同じような目的で、STUARTとUHUも作っているし値段は非常に安いのですが、私が実際に使っているのがLINDNERStamp Remover8060(最新の型番)です。125mlで定価は8ポンド、ご希望ならば送料共で2000円で取り次ぎます。ご希望の方がおられればこれから発注して取り寄せます。まずはメールでお問合せ下さい。実際に使う場合は、何に使うかはひとえに自己責任なので、安い物で試してから理解した上でやってもらうしかないのです。