2009年2月7日(土)

『速達3点』

今回のPA57の出品物の内、オークション誌には書きたいけど書けないテーマのお話を続けます。共通ワードは「速達」ですが、郵便制度上の、早く送るという目的を超えて語れる要素が有るものです。

まずはLot2649 二二六事件が絡んだ「速達」です。

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カバーと葉書が各1点、評価的にはカバーの、2種の検閲関係印、裏の小型「戒厳令ニ依リ開緘」表に大型「戒厳司令部査閲済」が押されている。この例が一般的というか、他に有るのか否かは知りません。見覚えがない使用例なので多分珍しいし、出品者の評価もこちらのウエートが重いのでしょう。でも、私的な好みでは、葉書の速達=濁点楠公の新改鹿8銭貼の東京の市内速達の文面に興味を引かれます。「拝啓 明二八・九日も引続き休業致し候に付御通知申上候 敬具」 二月二七日 東京府立第一中学校。戒厳令に拠る中学校の休校通知です。27日に出してその日に配達されてます。速達ここに在りの証明です。

検閲もなければ、文中に、叛乱云々の記載はなくても、正に二二六の速達そのもの、連れは、相当数出てるはずなので、この文面を手がかりに上手に探せば連れが見つかるかも知れないのです。

Lot3067 紫雲丸事故の付箋つきカバー

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国鉄戦後五大事故というのがあって、1951年の「桜木町事故」、1954年の「洞爺丸事故」、

1955年の「紫雲丸事故」、1962年の「三河島事故」、1963年の「鶴見事故」、いずれも死者が3桁を超えてます。郵趣的に直に絡むのは、「○○の事故・・・」又はもう少し固有名詞の少ない説明での遅延の詫び状の付箋つきのマテリアルです。日本絡みで有名なのは、洞爺丸、木犀号墜落、イタリアでのフィリピン航空墜落、よど号乗っ取りが良く知られてますし、何れも弊社のセールで数回は扱っており、いつもそこそこの値段で売れてます。クールにランク付けすれば、値段=「人気」は洞爺丸>よど号>木犀号>イタリアの並びです。このテーマは、国際的にも認知されていて、広い意味では、飛行試行の事故飛行中止や、川支延着や差出人戻し等の、正常に配達されなかった郵便物も含まれます。

ローカルの雑誌に発表はされていて、垂涎の的となりながら、現物が競の場に出て来ていなかったのが、今回の「紫雲丸事故カバー」そのものです。高松郵便局の事故から4日目の付箋付の通信事務書留速達、中には銀行宛の書留便、事故の悲惨さは次元が違うのですが、郵便物の取り扱いとしては完璧な措置が講じられてます。セールでもホットな競りになるでしょう。

3点目はLot3363 通信事務の第2種速達 京都中央郵便局の特殊部差出

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文面が強烈に面白く、「本日青ポストに投函されました・・、速達には切手が貼ってありませんでしたので、便宜当局で立替えて・・、追ってお電話を・・・」です。最近とんと見かけない、速達専用の青ポストですが、昭和28年には郵政も制度としての速達には強烈な責任感で仕事をしていたのでしょうか。

ちょっと嫌味を言うならば、料金不足の速達郵便物に「便宜立替て切手を貼って速達の扱いをするべし」は、郵便法には有り得ない規定だし、郵便約款(或いは郵便規則)にもその定めはないはずです。ただ、個人の郵便局員が、勝手に出来る仕事ではないので、地方郵政局か、中央局レベルの通達では有ったのかも知れません。実際、数回前の弊社のセールには、速達料金不足の郵便物に、郵便局が貼り足して、便宜配達し中身を渡して、封筒のみを取り戻して、差出人から料金を徴収した例があり、その根拠の法令も、確か地方郵政局の通達で出ていたことが確認できた実例も有るのです。ただ、これは郵便法の概念でならNGなので全国に適用される制度にはならなかったのか、いつの間にか沙汰闇に消えたのです。今回のマテリアルも流れとしては同じでしょうか。私はこういう話は好きなので、結構高い評価をするのですが、残念ながら反応してくれる人は少ないのです。実際、どういう使い方をするかは難しく、単に持ってないから集めるというレベルの人ならば、ちょっと料理に困るでしょう。結果を楽しみに待ちましょうか。