2009年1月31日(土)

『外信代引カバー・完全状態』

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第57回フロア・49回メールオークション誌は2月12日に発送します。今回もまた時間ギリギリまで編集作業を引っ張りましたが、それでもまだまだ次回への積み残しが出ています。かっちりした記事は必要ないのですが、アキュムレーション的なアルバムやストックブックで頂いていた物は、掲載記事を書くまでに相当な作業量と集中力を要するのです。グレードの高いものを黒台紙に発行順に並べてしまえば、1日200ロット以上の相当なスピードで書けますが、その準備作業に手間がかかるのです。記事の有る無しは全く無関係ですし、元よりグレード的に出品に適しないものが混じっている場合はどうしても後回しになるのです。次回あたりから更に取捨選択を厳しくせねばならないでしょう。オークショニアに出来る作業量には限りが有ってその範囲で運営しないと業として成立しませんから。

さて、今回のセールにはかなりの書き甲斐の有るものが出ています。私の編集のポリシーは、事実を有るが儘に書くことですが、記事を見た人が果たして分かってくれているのかなと思う場合も有るのです。ただ、矢鱈と珍品とか、現存何点という表現は主義として使いません。それは主観に属するし、自分で把握できてない情報も数多くあるに違いないという自制心からなのです。オークショニアは、マテリアルを提供すれば良い訳で、そのアイテムへの評価は買った人の責任で表現してくれればいいのです。切手展への作品にユニークと書いて、間違ってもそれは所有者が責を負うべきことですから。

Lot3093 菊10銭8枚貼書留オーストリア宛は、随分と書ける要素があるのです。オークション誌レベルなら、5行のディスクライブで必要十分な情報を書けるのですが、ここで思うままに詳しく書いて見ましょうか。この記事を書くに当たって、何時もながら「片山七三雄・Florian Eichhorn」両氏の多大なるご協力を得たことを特記して先を続けます。

2006年の夏だったと思います。誰からのメールか忘れたのですが、E-bayで面白い物が出て、その落札者は弊社に何時も結構面白い出品物を送ってくれる人だという情報でした。この時点では、出品物としての具体的な話でなく、コレクションとして残すつもりみたいかなニュアンスでした。ただ、画像を見て、その希少性は即座に分かったので、詳細のデータを突き詰めて見たのです。このケースになると聞ける相手は前述の2人に限られます。

マテリアルの解説に移ります。「菊切手10銭8枚貼書留代引(Kr.11.25=45円)墺宛小早川商会発 紫櫛YOKOHAMA30.5.13 柿色△REMBOURMENTシール貼」

Rembourmentはフランス語で「代金引換」の意味を持ち、このラベルはUPUの情報誌1907.10.1にて紹介されています。外信の代引の制度は始まりは1899.9.1で確定ですが、終わりは多分1940年1月あたりと思われます。現在はその制度は有りません。この時の対象国は欧州の14カ国と更に16カ国かそれ以上の植民地(独・仏・伊・蘭・と在トルコとモロッコ局)であり、金額の表示は相手国の通貨で表示され、外国為替のレートが適用されます。代引き料は邦貨で8円迄毎で8銭です。

該当のカバーの場合80銭の内訳は、基本料金20グラムまでが10銭・3倍重量で15~50グラムまでの追加が6銭X2=12銭、書留料10銭、代引料が8銭X6=48銭=合計80銭でぴったりです。代引額がオーストリアKrで11.25、この時のレートは1Kr≒4円なので45円、40円~48円の範囲で48銭の料金になるのです。封筒が21X16センチなので35~50グラムまで、差出しが小早川商会なので、45円相当の未使用の郵便切手を送ったと推定できます。完璧に辻褄は合うのです。2年前の情報交換ではこれにてケリ、縁があれば出品してくれるかなとの思いでそのままになってました。

その後気をつけて見てましたが、これに類する物が発表された情報には接してません。ただ、アイホン君から貰った情報では、他にドイツ宛が2点有る、但し貼り合わせは菊10銭2枚の20銭だけ、代引きラベルは貼って金額の表示もあるが、料金分の切手は貼付なし、

その他に、切手脱落のカバーの情報もかつて聞いた覚えがあるのです。ただ、完全状態で、料金のきっちりクリアできるのは、今回の出品物が初めてかもしれません。

2年も間が開いて、取りあえずは縁がなかったかなと思ってましたが、年末に突然送られて来ました。E-bayでの落札値は、定かではないのですが、数字を聞いた時点で「良い買い物だな」との印象が残ってます。このアイテムに関しては、小早川の名前は何のマイナスにはなりませんし、きっちり評価できる人が何人かはいるでしょう。結果を楽しみに待ちましょう。私が現時点で知り得た情報はこれが全てです。さあ、3月8日のフロアで首尾よく落札できた幸運な方は如何なる表現でこのマテリアルを料理するでしょうか。