2007年12月4日(火)

『オークションと文献と』

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終ったオークション、PA51・MA44のレポートを郵趣の広告に載せるべく原稿を書きました。幾つもハイライトが有ったのですが、場での競りで面白かったのが「航空切手」の使用済単片⑩の幾つか。元気に競っていた人に、何であんなに高いの?と聞かれたのです。その答えは、貴方が競ったから、としか言えないし、競る人が2人いれば高くなるのがオークションなのですから。
2209  0付立山55円 紫櫛YOKOHAMA10・4・52 最低値  15000→240000
2210    〃 75円 紫櫛YOKOHAMA10・4・52  〃     12000→280000
2472  きじ103円   ロールKOBE22・ⅹ・1952  〃     5000→210000
3539  0付立山75円 櫛北浜27・6・6         〃     6000→100000

こういうケースは大体が、超強気のお一人の独占買いに、ダメ元で競りかかる人が出た場合が多いのですが、今回はこの4点が見事に4人に分かれました。だからこの分野は当分ホットに続くでしょう。皆さん、複数のロットにチャレンジしているので、大満足の方はいないでしょうが、競って取れた1点という物には結構満足感が有るのです。買った値段は忘れてしまえば良いのです。
場での話題というか、おしゃべり雀が少し騒いでました。私が直接耳にした情報ではないし、説得力のある根拠は全く聞けてないのですが、2209・2210の櫛型YOKOHAMAが「偽消」だというものです。55円は前述の人が落札して、ちょっと気にしてましたが、75円はこの分野の自他とも認める超専門家のお買い上げ。カラーの表紙の情報で十分な判断が出来る人のはずなのです。私が手にとって記事を書いたときには、何の違和感も有りません。それに、経験上、色印で材質ゴムの場合は偽印は極めて作りにくいのです。余程ちゃちな物は別ですが、この条件での偽印は見たことが有りません。ただ、これで終ればちょっとした水掛け論に留まるのでもう少し調べてみたのです。
同じ雰囲気の接近した日付の物は少ないながらも有って、典型的なものはYOKOHAMA11.2.52 当然ながら0付立山のFDCです。どう見ても全てのポイントで本物だし、今回の出品物と同一の判子と思えます。更には特徴的な印なので、戦後航空や戦後記念・国立・観光・文化人の収集家は結構お持ちの方がいるのです。情報では2年位は使われたかもしれませんが、ゴム製のくせに崩れてなくて綺麗過ぎるのが疑問を持つ人が出てきてしまう理由かも知れません。ただ、大量に見かけるものではないので、使い勝手からして、本格使用で無く、補助的な使われ方がされていたのかもしれません。
今回の出品物の日付で、決定的な理由が知れました。S26・10・20 公達159号、
外国郵便取扱規定の一部改定の通達です。「1952・4・10より外国郵便の取扱に関し使用する日付印を改める」です。我々が言うところの、欧文三日月印使用の告示です。
因みに、27・4.10告示111号では、この日から東京中央・同羽田・横浜・大阪中央・神戸中央・博多で使い、近く追加して90局に配布されるとのことです。
だから、YOKOHAMA10・4・52は欧文三日月印初日使用の直前の、櫛型紫最終使用=ラストデーのCTOなのでしょう。この根拠なら、どこに出しても通るでしょう。告示や通達は一般の人には縁遠いものなのですが、今は簡単に手に入る手段が有るのです。このパートの必要なデータは、弊社で扱っている「戦後の郵政資料 第2巻 S27・1~36・12」に詳しく出ています。
行徳国宏さんの『戦後の郵政資料』、現在第4巻まで発刊済み、収集の対象としている年代の本は取り敢えずは持っておくべき良書です。読んで面白いものではないのですが、知りたい事柄が出てきて、公示・通達が要るならばかなりの確率で応えてくれる本なのです。切手を1点、フロアで頑張る確信が持てるなら、本に費やす金額など端金に過ぎないのですが。